【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第4分科会 “土佐さんぽ”~若者と考える自治体の未来~

 中標津町を代表する観光地「開陽台」に訪れる観光客に少しでも気持ちよく根釧台地の雄大な景色を見ていただくため、財政難でなかなか手入れができない施設のメンテナンスを青年部を中心としたボランティア活動によって改善したことを報告します。



開陽台展望台木柵塗装奉仕活動


北海道本部/自治労中標津町職員労働組合連合会

 中標津町は根室管内の中部に位置する人口約24,000人の町で、主要な産業は酪農と商業です。中標津町の北側に位置し市街地から車で約15分の距離にある標高270mの開陽台展望台は、1963年に当時の尾崎町長が広大な酪農風景・生産の現場を町民や来訪者に誇るべき資源として展望台を開設しました。視界330度を誇る展望台からは眼下の草原から続く森林や波打つ丘陵がエンドレスに広がり地平線が丸く見え、晴れた日には国後島を望むことができ、夜には大粒の星が降り注ぎ宇宙の大パノラマが広がります。春から秋にかけて多くの観光客で賑わい、冬には太陽が四角く見えるなど珍しい現象に遭遇できる場所です。また、開陽台に向かう真っすぐな道路は牧歌的な風景とともにライダーにとって最高のシチュエーションでミルクロードと呼ばれています。

 開陽台では1991年に道外資本によるリゾート開発計画が持ち上がり、開陽台からの風景と周辺の自然環境を守るための住民運動が起こりました。
 議会からも景観に配慮するよう開発業者に意見書を提出するということがありました。同年、農林水産省により開陽を含む周辺地域が「美しい日本のむら百選」に選定され、2001年には広大な起伏の続く大地に整然と配置された幅180m、総延長648kmを誇る「格子状防風林」は、その文化的景観が評価され、2001年に隣接する3町との連名で、第1回北海道遺産に登録されました。こうした町民の活動により守られた開陽台は、トリップアドバイザーの「日本の展望スポットランキング2015」で第10位にランクインするなど、近年では国内のみならずインバウンドも多く年間10万人以上が訪れる観光地です。
 このような中標津を代表する観光地ですが、財政難の影響もあり施設の維持管理が満足に出来ない中、訪れる方々に気持ち良く雄大な景観を楽しんでもらうために少しでも力になれないかと考え、2017年、中標津町労連青年部では自治研活動の一環として、風雪など厳しい環境に晒され経年劣化した展望台駐車場の木柵を塗装しようと考えました。
 近年このような活動をしていませんでしたが、基本組織から「自治研活動してみない?」と声をかけられ執行委員会で提案したところ、委員から「何故やるのか」や「活動費はどこから? 行事を増やすのはどうか?」といった消極的な意見が出ました。そもそも自治研活動ってなんだろう? ということから自治労の冊子等で仲間と学習し、実施を決定しました。
 2017年6月中旬、曇天の肌寒い中およそ30人の仲間が集まり、観光客が少ない午前中に作業を始めました。劣化が激しく1度塗っただけではすぐに吸着されてしまい予想より塗料を使い急遽買い足しましたが、1時間程で柵をキレイに塗り上げることができました。
 この活動が地元の新聞や道本部の教宣紙に掲載され、町長から感謝状が届くなど、執行部をはじめ参加者も活動継続への意欲がわいてきました。実際に企画してみて、人数が集まるか、費用はどうか、と不安でしたが、楽しそうに作業をしているみんなの姿を見て、「やって良かった」と心から思いました。参加者からも「組合ってこういう活動もするんだ」「みんなでやると楽しかった」といった声が多かったので、とてもうれしく、活動の励みとなりました。
 2018年は第二弾として6月16日(土)に「開陽台階段手すり・木柵塗装奉仕活動」を実施しました。今回は消防職員協議会にも声をかけて、2017年を上回る総勢35人で2017年同様曇天の肌寒い中、駐車場から展望館へと続く階段の手すりと、牛のモニュメントの周りにある木柵を塗り上げました。二度目ということもあり、みんな慣れた手つきでみるみるうちにきれいな手すりと柵に生まれ変わり、初めて参加する人も、先輩方に手本を見せてもらいながら、楽しく作業をすることができました。この活動を通じ、普段あまり関わることのできない消防職員協議会の仲間とも交流ができ、組合活動だけでなく仕事での連携を持つことができました。
 来年度はこれまでで最も範囲が広い展望館の周囲の木柵を塗装する計画を立てています。今回以上の参加者を募り開陽台をより良いものにして中標津に訪れる観光客が「もう一度来たい」と思うような景観を守り・つくり・そだて、交流人口を増やすことによって住みよいまちにするため努力していきたいと思います。そのためには、みんなでアイデアを出し合いながら公共サービスに携わる者として活動を推進していきます。

釧路新聞 2017年6月