【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第5分科会 人口減少社会をどう生き抜くか!?

 全国の自治体のほとんどが人口減少に対して、大きな問題を抱えています。標津町の総人口は、1965年の8,051人をピークに減少に転じ、2010年の国勢調査では、5,646人まで減少しました。2013年3月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、2040年の人口が3,562人、2060年の人口が2,299人まで減少すると予測され、この課題に立ち向かうべく標津町では、2014年から政策パッケージの取り組みを行っています。



人口減少時代への挑戦
―― 北海道№1の子育て応援のまち ――

北海道本部/標津町職員組合

1. 標津町の人口動態

 国立社会保障・人口問題研究所(以下、「社人研」)の2013年3月に発表された推計によると、標津町の人口は、2040年に3,562人、2060年には2,299人となり、ピーク時(1965年・8,051人)の約3割(28.6%)になると予想されています。【図表1参照】
 また、人口の推移を「年少人口(0歳~15歳未満)」、「生産年齢人口(15歳以上~65歳未満)」、「老年人口(65歳以上)」に区分してみますと、年少人口は、1955年の2,926人、生産年齢人口は1970年の5,400人をピークに減少傾向にありますが、老年人口だけは総人口が大きく減少している中、増加傾向にあり、社人研の推計によると2045年頃より生産年齢人口と老年人口がほぼ同数となるなど少子高齢化が顕著になることが予想されています。
 人口の自然増減(出生・死亡)と社会増減(転出・転入)の動きを見てみますと、自然増減では、2002年までは、出生数が死亡数を上回る自然増の状態でありましたが、2003年以降、出生数より死亡数が多くなり、自然減が続いている状態です。
 また、社会増減では、転出数が転入数を上回る社会減が続いており、1980年以降、社会増に転じることなく、平均して年間約80人が社会移動により減少しています。転出する主な理由としては、高校卒業後の進学や就職などによる札幌市など都市部への人口流出が考えられます。
 このような人口減少が続けば、酪農や漁業などの基幹産業をはじめ、町内での経済活動を維持することも困難であり、本町が将来にわたって活力をもって存続するためには、出生率の向上や若者の定住促進などの施策を早期に講ずる必要がありました。

図表1 総人口及び年齢3区分別人口の推移(1955年~2060年)

2. これまでの取り組み

 標津町では、これまでに移住定住対策として、2006年から『家を建てたら土地を無償で差し上げます』とのPRで、28区画の「宅地無償分譲」(2015年完売)を行い、そのほかにも廃校後の教職員住宅を改修した「定住促進住宅」、「空き地・空き家バンク」などを展開し、一定の成果を得てきたところであります。
 また、2010年に作成したまちづくり基本計画「ふるさと新生プラン・ステップⅡ」(計画期間:2011年~2015年)では、町民アンケートや町民活力推進会議など多くの町民の参画を受けながら、本町の課題を共有し、「人口増加」、「環境対策」、「産業振興」、「人づくり」に対する対策に重点をおいて、行政力・町民力・地域力でスピードを持って課題を解決するべく153の重点事業が掲げられました。
 この「ふるさと新生プラン・ステップⅡ」では、人口について、2020年まで「5,700人」の維持を目標に掲げました。この数値は、当然達成することは不可能な数値でありますが、このような気概を持って事業に取り組んでいこうとするものでありました。


3. 人口減少時代に挑戦する政策パッケージの実施

 今後急速に進むと推計されている人口減少に対し、まち全体を1つの特区と見立てた大胆な政策を効果的に実践するため、まちづくり基本計画「ふるさと新生プラン・ステップⅡ」を充実・強化させ、効果的に推進するため、町民のライフサイクルを応援する政策をひとまとめ(パッケージ)として、2014年度から「子宝・子育ての政策」、「高校・定住・暮らし協働の政策」、「健康・福祉・防災の政策」、「農業・水産業・起業・環境の政策」に関する20にわたる事業を展開してきました。

政策パッケージポスター
「子宝・子育ての政策」
 ①出産祝い金の給付 
 ②標津こども園の開設
 ③幼稚園使用料の無料化
 ④通学合宿の地区拡大
 ⑤中学生までの医療費助成
「高校・定住・暮らし協働の政策」
 ⑥標津高校存置対策の継続
 ⑦住宅取得支援 
 ⑧住宅リフォーム支援 
 ⑨ごみの祝日収集実施
 ⑩地域との連携強化
「健康・福祉・防災の政策」
 ⑪介護福祉関係施設の建設
 ⑫高齢者等の除雪支援充実
 ⑬尿試験紙の全戸配布
 ⑭避難道路・防雪柵の整備
 ⑮新・地域防災計画の実践
「農業・水産業・起業・環境の政策」
 ⑯新しい農業経営者づくり
 ⑰標津ブランドづくり
 ⑱標津川の環境保全等
 ⑲起業支援補助の拡充 
 ⑳再生可能エネルギーの活用等

 政策パッケージでは、特に子育てに関して、教育関連事業の充実と合わせた包括的な支援策に重点を置き、中間アンケートの町民満足度や他自治体の事例から見ても「北海道№1の子育て応援のまち」を自負しております。
 また、毎年、事業効果を検証したうえで、さらに地域のニーズにあわせた事業の追加等を行いながら、2018年は、30事業に拡充して実施しています。


4. めざすべき将来の方向性

 「人口減少時代に挑戦する政策パッケージ」の実践により、1年間に70人程度減っていた人口が、2017年度には、2人の減少にとどまり、徐々にではありますが、成果が出てきているところであります。また、当初の社人研の推計でいくと2018年4月には5,100人程度の人口となる予測でしたが、5,300人弱と減少が鈍化してきております。
 しかしながら、課題として、PRが不足しており、転入してきた町民からも「標津町に来て初めてそのような政策を知った」などの声もあり、今後に向けて、様々なPR活動が必要と考えています。
 人口減少対策の基本的な柱は、「出生率の向上により出生数を増やし、人口構造の若返りを図る」、「転入の促進、転出の抑制により人口規模の維持を図る」。これら2つの対策として、2014年から「人口減少時代に挑戦する政策パッケージ」を推進していますが、今後においても「結婚、妊娠、出産、子育て、教育の切れ目のない支援」、「安心・安全で暮らしやすい生活基盤の提供」、「基幹産業の活力ある発展と安定経営への支援」、「地域雇用の創出と交流人口の拡大を促進」を軸に効果的な政策投入により人口減少時代に向け、果敢に挑戦していきます。