【要請レポート】

第37回土佐自治研集会
第6分科会 「ごめん」と「いーの」で支え合う みんなにやさしい公共交通

 高知県唯一の有人離島「沖の島」一日二便の定期航路は島民・観光客・事業者にとって、道路や橋と同じようになくてはならない社会インフラです。本レポートでは、改めて、定期航路が「人」以外の運ぶモノに着目し、島で暮らす・生活するとはどういうことか、阻むことが難しい人口減少に向けてどう対応していくかなど、考え続けなければいけない沖の島の現状と課題について報告します。



生活インフラとしての離島航路
―― 沖の島航路の現状と課題 ――

高知県本部/宿毛市職員労働組合・書記長 鎌田 勇介

1. 沿 革

 宿毛湾港(片島岸壁)と沖の島(人口167人)、鵜来島(人口41人)を結ぶ離島航路(沖の島~片島航路)は、本土と島を結ぶ唯一の交通手段である。
 そのため、離島住民や観光客の交通手段としてだけでなく、生活必需品や新聞、郵便物なども当該航路で輸送しており、沖の島・鵜来島地区住民の生活を支えるための必要不可欠な航路となっている。
 しかしながら、沖の島・鵜来島の人口減少は著しく、島民利用による利用者の増加は見込めない状況であり、観光PRや各種イベントの実施などにより、観光客等による利用者増の取り組みを行っているが、本航路については非常に厳しい経営状況が続いている。

2. インフラ=ライフラインとしての沖の島航路

 沖の島航路は当然島民及び関係する全ての人になくてはならないものとなっている。
 人口167人、小学校に加え2012年からは保育園も再開、その中で1日2本の定期便は、島民のインフラとしての交通手段機能はもちろんのこと、食料・衣類をはじめとした生活物資や、医療品、生活に必要な機器や修繕部品の運搬に加え、島から出るごみの搬出なども、定期船が担っている状況である。
 特に医療については、2013年度まで常駐していた診療所の医師を引き揚げ、医師の定期的な訪問に切り替えることとなった。現在医療については、診療所に常駐する看護師に相談するか、1日2本の定期便を利用して島外の病院に掛かっている。薬を取り寄せて対応することもあるが、その薬を運んでいるのも定期船である。
 ごみに関しては、過去、不燃ごみについては定期船にて運搬し、可燃ごみについては島内に設置した焼却場で処分していたが、ごみ焼却の際に発生するダイオキシン等の問題が取り沙汰されて以後は、焼却場を廃止し、すべてのごみを島外へ搬出している状況であり、島の衛生環境を守る上においても、定期船が必要不可欠となっている。
 そのほか沖の島は主要集落をつなぐ県道が存在するが、移動手段である車・バイク・自転車を運ぶのも定期船の役目である。
 その他にも、郵便・新聞・ガソリン・プロパンガス・花・肥料など、日常関わるもの全てに定期船が関わっているといっても過言ではない。
 事実、冬季には強烈な北西風の影響により度々の欠航が余儀なくされ、物資が入ってこないことはもとより、定期船なしでは島外へ出ることすらできない状態となっている。幸運なことに沖の島周辺は西日本でも有数の超一級磯に囲まれており、磯釣り師からは聖地とも呼ばれるほどである。沖の島にはレジャー産業としての磯釣り船が多く存在し、定期船が欠航した際や、船員のインフルエンザ罹患により運航ができない等の危機的な状況の際、磯釣りの渡し船によるチャーターによって人々の移動手段が確保されている。まさに第二のライフラインである。
 一方宿毛市及び高知県西部地域に目をうつせば、時間はかかるものの高規格道路の延伸などによる交通の利便性は増していくこととなり、産業・観光・移住促進など地域住民の福祉向上に寄与していくものと思われる。しかし沖の島の交通については、これからも、この先も、限られた、そして決して多いとは言えない便数の定期航路という手段しかない状況であることを考えていかなければならない。
 もしも定期航路がなくなれば……

3. 行政としての取り組み

 本航路においては、そのほとんどが島民による利用であることから、利用率を増加させるため、また島民の経済的負担の軽減のため、各種割引制度などを導入してきた。
 沖の島・鵜来島の人口は2017年4月1日時点で、208人と前年から8人の減少となっており(減少率7.3%)、さらに人口減少が進み、島民利用による乗船者数は、増やすことが困難となっている。
 2016航路年度の乗船者数は16,770.5人(前年比△94人)であり、減少率は2015年と同様の0.9%となっている。
 人口減少に比べ、乗船者数の減少が緩やかであるのは、観光客等による利用を増やす取り組みによるものや、公共事業等により島内で仕事をするための利用が多いためと考えられる。
 2017航路年度の乗船者数は、昨年度計画において15,060人を見込んでいたところ、現時点における見込みは16,983人と、前年乗船者数の1%程度の増加が見込まれるが、観光客、帰省客の増加や、定期船の定期検査期間が短く欠航率も低かったことが理由であると思われるため、今後は減少していくものと見込んでいる。
 その一方、旅館業や渡船業などの事業者と地区長や住民有志で構成されている沖の島観光協会では、沖の島の自然を使った振興策や産業の発展のため、島の魅力を県内外に発信している。しかしながら、イベント等を実施する際に参加できるスタッフには限りがあるため、行政による人的協力などをして相互に取り組みを進めている。また、2017年度開所式を実施し、本格的に活動を開始した集落活動センター(沖の島:妹背家・鵜来島:鵜来島集落活動センター)では、持続可能な地域の活動主体として、買い物支援や配食サービスを実施。特に買い物支援においては鵜来島に16年ぶりとなる商店を開店し、地域の買い物を支えている。
 島内での交通手段については、市町村運営有償運送の交通空白輸送(※)によるスクールバスと一般利用者も混乗可能な「愛称:ゆるりんバス」を運行し地域の移動を支えている。島内においては、かつて複数の地区にあった診療所が一つとなるなど、島内の移動手段の確保は必須であり、移動手段を持たない方にとって欠かすことのできない移動手段となっている。また、「ゆるりんバス」については市町村自家用有償運送の許可を得て運行しているが、2015年度に地域住民以外の観光客等の利用についても可能とするよう運行内容を変更し、観光や仕事で訪れる方にとっても大切な移動手段となっている。
 なお、宿毛市においては、2016年度に宿毛市地域公共交通網形成計画を作成、同年に市内交通空白地区解消のための市町村運営有償運送の交通空白輸送(※)によるコミュニティバス「愛称:はなちゃんバス」の実証運行開始等、移動手段の維持確保を核とした公共交通全般についての体系的な計画を作成し各種施策を実施している。
 今後、航路利用者の減少に直結する島の人口の減少などにより、厳しい状況の中ではあるが、引き続き沖の島観光協会や集落活動センターなどの関係団体と連携を図りながら、島への定住、観光客の誘致やイベントの実施による利用者の増加、また、沖の島へのリピーター客の確保に努めていくことや、乗船者が多いお盆時期等に沖の島渡船組合連合会の協力を得てチャーター船を用意するなど定期船利用者の利便性の向上を図ってゆくものである。

(※)自家用有償旅客運送
 道路運送法第78条に基づく許可を受けることが必要で、過疎地域での輸送や福祉輸送といった、地域住民の生活維持に必要な輸送について、それらがバス・タクシー事業によって提供されない場合に、その代替手段として、国土交通大臣または事務・権限の移譲を受けた自治体の首長から登録を受けた市町村やNPO等が自家用車を使用して有償で運送できる。

4. おわりに

 地方における取り組みとして、多くの自治体がそうであるように、沖の島でもその自然やロケーションを生かした交流人口の増加を図るため、様々な取り組みを行っている。
 「沖の島アドベンチャーラン」では、自然豊かな島全体を使ったマラソンやウォーク、サイクルイベントのほか、海を使ったカヌー、スイムのレースを開催している。また「ワイルドレストラン」は、沖の島ならではの海産物などを豪快に味わえる参加型イベントであり、全国の島々が集まる祭典「アイランダー」にも出展を行って、島のPRを行っている。もちろん、SNSを使った情報発信にも取り組んでいる。
 地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図ることで、地域力の維持・強化を図っていくことを目的にした国の制度である地域おこし協力隊には、沖の島振興として県外出身の女性の方が来てくれ、地元住民との交流も行われている。その地域おこし協力隊の女性が、最近、島の漁師である男性と結婚し、30年ぶりに島で結婚式が行われたことは、地方紙である高知新聞で取り上げられた。テレビのインタビューで新婦の父は、「娘からかなり田舎だが、いいところとは聞いていた。でも実際不安だった。しかし、島の人達の温かさを見れば、安心して娘を任せられる。島全体で子を育て。みんな先生です。」と答えていた。島民には島での確固たる生活があり、その中で将来を築いていこうとする人たちがいるのであり、それを支えるのが沖の島定期航路であると改めて考えるものである。
 また、同じ航路にある沖の島よりさらに小さい鵜来島においては、有志による「島を守る会」により、秋祭りが再開された。やぐら、牛鬼、神輿を担ぐ祭りは、島民20人余りの島が、その日だけは200人超の大イベントとなる。なお、宿毛市職員労働組合からも10数人参加し、祭りの盛り上げの一役を担った。そこでは、沖の島定期船が祭りのための臨時便を出すなど、そのような面でも沖の島航路が島を支えているものであることを書き添え、以上、報告とする。