【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第7分科会 すべての人が共に暮らす社会づくり

 全国一般に加盟する(株)セレマと、セレマと非常に関係の深い冠婚葬祭業の最大手(株)ベルコの経営実態は、正に「二重偽装請負」です。セレマ労働組合執行委員長として、会社と対峙してきた筆者が、これまでの闘争を含め、(株)セレマ従業員雇用の実態を報告するとともに、働く人が働きやすい環境を作る為には何が必要かを提起します。



許せない こんな働かせ方
―― (株)セレマ従業員雇用の実態 ――

京都府本部/自治労京都府本部全国一般京都地方協議会 川元 啓之

1. 提 起

 昨今、働き方改革についての話題が頻繁に議論されており、所謂、働き方改革関連法案の取り扱いについても、今国会で成立をめざす政府与党と、これに反対する主要野党との激しい論戦が国会で続いています。詳細についてはここで触れませんが、本当に多くの働く人が働きやすい環境を作る為の法律であれば早急な成立を願うばかりです。
 しかしながら、いくら立派な労働関連の法律が出来ても、その法律の適用外の環境に意図的におかれ、労働者でありながら、労働関連法にほとんど守られていない働かせ方をされている人がいたらどうでしょうか。社員と全く同じ働き方をしているのに、社員雇用ではなく請負契約、いわゆる偽装請負です。少し前に大変な社会問題になりましたので、多くの企業でもあからさまな偽装請負は影を潜めていますが、例えば、主たる会社Aが請負会社Bを偽装して創り、Bがそこで働くC従業員と請負契約を結び、指示・命令はAが出し、Aの会社従業員の扱いで働かせる。BもAの会社の部長・課長・係長として社員として働き、Cに指示・命令をする、二重偽装をしている実態があります。Cはその様な偽装請負とは意識せずに、Aの会社の社員との認識で仕事をしています。
 働く人の立場からみると、仕事内容に対する負担と責任は社員と全く同じであるにもかかわらず、労働者として守られるべき法律の適用を受けない請負業者であります。働かせている企業にとっては、人件費を掛けずに、また、責任を全く持たずに仕事に従事してもらえるのです。
 冠婚葬祭業の大手、(株)セレマと、セレマと非常に関係の深い冠婚葬祭業の最大手(株)ベルコの経営実態は正に、この二重偽装請負です。
 私は、1981年(昭和56年)、(株)互助センター(現、セレマ)に新卒採用され、2016年(平成28年)定年退職するまでの36年間、従事してきました。その間、1998年(平成10年)から2013年(平成25年)まで、セレマ労働組合執行委員長として会社と対峙してきました。これまでの闘争を含め、(株)セレマ従業員雇用の実態を報告し問題を提起したいと思います。

2. (株)セレマについて(資料1)

資料1

 セレマは1959年(昭和34年)、(有)京都市冠婚葬祭互助センターとして創立された、冠婚葬祭互助会組織で運営されている会社です。この冠婚葬祭互助会というのは、多大な費用が掛かる、将来起こりうる結婚式や葬式に備えて、毎月一定額のお金を積み立てておいて、儀式が発生した時に施行をしてもらう、事前予約商品を扱う会社のことです。冠婚葬祭互助会の会社は、全国に約300社あり、セレマは深い関係にある最大手ベルコと共にその中心的な存在です。現在では結婚式場の名前が、マリアージュとか朱雀邸とか様々な呼び方に変わっていますが、かつては○○玉姫殿という名前で全国各地にありましたし、○○玉泉院とか○○シティホールという葬祭式場を、関西を中心に経営する会社です。
 資本金1億円、従業員900余人、年商400億円という規模の会社です。かなり大きな会社なのに資本金が少なく感じますが、それには理由があります。まず、一点は資本金を1億円にすることで中小企業としての税法上等の優遇措置があります。次に、セレマは互助会組織で運営されており、顧客が積み立てをしたお金(前受金)が1,100億円あり、そのお金を運用して事業展開していますので、この潤沢な資金のおかげで資本金が少なくても充分なのです。


3. セレマの特殊性(資料2)

資料2

(1) 同族経営
 創業者の斎藤近次郎氏には、3人の息子がおり、当初は次男が後継者となりましたが故人となったので、長男、真一氏(京阪互助センター創業者)が引継ぎましたが他界し、三男、秀市氏(ベルコ創業者)が社長に就任し、現在は、秀市氏の次男が社長です。

(2) 管理職は請負
 部長・課長は、社員ではなく役職を業務委託された人。セレマでは労働組合とユニオンショップ協定を結んでおり、社員イコール組合員である為、使用者の思い通りの働かせ方が出来ません。そこで労働組合の影響が及ばない、労働法の適用を受けないように管理職にし、役職を請負う形態をとって働かせています。

(3) 社員排除
 従業員900余人、年商400億円という規模の会社でありながら、直接雇用の正社員は10数人、パート社員も10数人という実態。正社員2人は営業部、他の10数人は総務部、パート社員10数人はすべて営業の外務員です。数多い結婚式場や葬祭式場の支配人やスタッフは、セレマの社員ではなく、請負業者であったり、その請負業者の社員であったりします。ここでの従業員900人は、請負で働いている人をセレマ直接雇用の従業員として働かせていること以外の何ものでもないのです。


4. 経 過

 セレマは、冠婚葬祭互助会の会社で、会員募集をしています。例えば、結婚式や葬式に利用できる会員30万円コースであれば、毎月3,000円を100回に分けて前払いをしていきます。そして、儀式が発生した時に、その積立金を利用し、様々な会員サービスが受けられるというもので、営業は会員募集を専門としています。以前は、北支社とか南支社という営業支社があり、正社員の支社長が管理し、セレマ直接雇用のパート営業社員に会員募集をさせていました。1989年(平成元年)当時、ベルコ社長の秀市氏がセレマの社長に就任し、ベルコ方式を持込み、直接雇用の社員を排除し、代理店化を進めていきます。
 その当時、正社員300余人、直接雇用パート社員300余人、が従事していましたが、まず、管理職社員に身分精算をさせ、関連会社を創立させて請負わせます。関連会社で従業員を増やしていき、正社員が行っていた業務を委託させるようになります。
 1994年(平成6年)からは、正社員の採用を完全にストップし、契約社員やパート社員に移行していき、その後は、パート社員も直接雇用としての採用を停止します。この時の社員募集は、セレマという会社名で社員募集し、面接もしますが、採用時は代理店の社員として雇用し、その後は代理店の業務委託にするというものでした。パート社員についても、セレマの名前で募集しますが、代理店のパート社員としての採用です。そして、セレマの社員として管理していきます。
 2000年(平成12年)、経営者は葬祭部門で働く100余人の社員を下請会社を創って転籍させます。その後、すぐに冠婚部、観光部、外商部、調理部と続き、この時点で、正社員100余人、パート社員200余人となります。
 会社経営は益々、利益至上主義になり、消費者無視、法律軽視の状態が著しくなったため、2003年(平成15年)、セレマ労組は、経済産業省に内部告発をします。この行為は、会社に多大なダメージを与え、代理店化スピードは一時鈍ります。
 2007年(平成19年)、今度は、大規模な早期退職優遇制度を実施し、会社の方向性に嫌気がさしていた多くの正社員が去り、残った正社員は僅か30人弱です。この内ほとんどの男性社員を、東京のみどり生命保険株式会社に出向させます。この時、セレマ雇用のパート社員は200余人いましたが、約30か所の営業支社に勤務する会員募集をする渉外社員でしたので、それを管理する男性正社員が足りなくなりました。
 2008年(平成20年)、代理店の店長をセレマ直接雇用の契約社員として偽装雇用し、営業支社の支社長に任命し、パート社員の管理をさせました。更に、任命した支社長を巧みに操り、営業支社の閉鎖や合併をちらつかせながら、パート社員を代理店に転籍させ、直営の営業支社を代理店営業所に移行させました。結局、代理店に移行することを断固拒否し、直営のまま残ったのは3つの営業支社の50人弱のパート社員でした。その後、パート社員も高齢化等の為退職し、現在は10人程です。

5. 具体的実態(資料3)

資料3

(1) 営業部門
 以下、記述する報告のなかで、数字等については、実際のものとは、若干の相違があるかもしれないことを断っておきます。
 まず、代理店のパート社員は、1か月の基本給が固定されているので、互助契約を2本以上獲得出来ないと、店長は赤字になりますので、パート社員に相当なプレッシャーをかけ、3本、4本獲得出来るように管理していきます。契約が取れないパート社員は直ぐにお払い箱になります。仮に、あるパート社員が、1か月、2本獲得していても、その契約が途中で解約とか掛け金がストップすると、店長は一度もらった歩合を返還しなくてはなりません。互助契約が結婚式とか葬式で利用されない限り、もらっている歩合は負債以外の何ものでもないのです。
 一方、セレマにとっては、こんな良い使い方はほかにないでしょう。直営のパート社員が獲得した互助契約が解約等でストップした場合、もしそのパート社員が退社していたら、支払った歩合はどこからも回収出来ませんが、代理店であれば全て回収できるのです。また、互助契約を獲得するために、店長が夜間や休日に働いても、何の手当も発生しません。本来なら、業務請負契約なので、自由に出退勤をすればいいはずなのですが、休日、出勤日数や時間、朝礼・終礼等細かく決められています。それどころか、1か月に必ず2、3回の当直や葬祭スタッフとしての手伝いを強制させられています。また、次のようなことも頻繁にあります。ある代理店長が、パート社員の成績が良くない為に辞めた場合、別の代理店がそのパート社員を引き受けさせられるのです。今まで順調にいっていた代理店も新たなリスクを背負うことになります。人事異動という名の下に、任されている店を替えられたり、職種を変更させられたりすることもよくあります。「君たちは一国一城の主だ」とか「一つの小さな会社の経営者だ」とか言われ、社員以上に働く労働者でありながら、その待遇は労働法の適用を受けない業務請負です。


(2) 葬祭部門
 セレマの葬祭式場は請負会社で運営されています。そこでは、葬式をされる顧客1件に1人の葬儀担当者(葬担)が、葬儀が終わるまでお世話をしますが、葬儀担当者を補佐する係として営業担当者(営担)がつきます。葬儀担当者は請負会社の社員ですが、営業担当者は請負会社の請負契約です。1か月に4件程の葬儀の補佐をし、担当した顧客の施行後の互助契約の勧誘をします。葬儀を担当することによって、顧客との信頼関係を築き、契約に結びつけるということです。基本給は無く、歩合(支払手数料)が全てです。営業担当者が獲得した互助契約が、解約等で失効すれば、歩合を返還しなければなりません。互助契約を獲得しなければ、生活ができないので、必死に働かなければなりません。例えば、今月、互助契約を4本獲得していても、2年前とか、3年前に獲得していた契約が4本失効すれば、差引0本となって、給与は0円となります。毎日、葬儀担当者を補佐して葬儀を手伝った対価はありません。


6. 結 び

 以上のような働かせ方は、冠婚葬祭最大手ベルコでも採用されており、この様な働き方に疑問をもった人達が、ベルコ労働組合を結成したたかっています。また、ベルコ事件については、あまりにもひどい働かせ方だとして、連合を挙げて解決に向けて取り組んでいます。非正規雇用で働いている多くの労働者の処遇改善も喫緊の課題ですが、労働者と同じ働き方をしながらも、労働法の適用を受けない環境で働いている人達の問題を解決しないまま、放置すれば、この様な働かせ方を多くの企業が取り入れ、我が国から労働者がいなくなるのではないでしょうか。