【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第7分科会 すべての人が共に暮らす社会づくり

 身の回りの暮らしから考える、男女共同、子育て、仕事について。



男女共同と子育てと仕事


島根県本部/江津市職員労働組合 植田 圭介・大地本江美・松浦真里子

1. はじめに

 自治研を通じて、地域の事や、自らをとりまく課題を考えるきっかけをいただきました。その中で「まずは自分自身が納得し、充実していく事が重要」といった考えにたどり着きました。身の回りの暮らしから考えて、男女ともに働きやすく、子育てしやすい環境作りをテーマに研究しました。


2. 男女共に働きやすく、子育てしやすい環境作り

 江津市では2002年に「江津市男女共同参画推進計画(パートナープランごうつ)」を策定しています。性別で仕事や家庭の役割を決めつけず、その人個人の人格、特性を重視して役割を決めていく事が重要です。現在、江津市の管理・監督職は男女比が男8:女2となっていて、職場の、特に管理職を見る限りでは性差による役割分担が存在していると言えます。では、単純に女性管理職を増やすように考えれば良いかと言うと、そうではありません。
 特性を重視すると、本当に女性が管理職という役職に対して、機会を均等に与えられていると感じるかは疑問を感じます。
 その理由の一つとしてあげられる事が、家庭での責任です。職場の役割分担を均等に、という流れに欠かせない事として、家庭の役割分担を均等に、という事も言われています。しかし、家庭での役割、家事の分担で、実際、女性の比率が高い社会ではないでしょうか。(第3次江津市男女共同参画推進計画でのアンケート調査では、食事、片づけ、子育ての役割分担については、約7割が女性負担となっています)
 家庭でのもろもろをマネジメントしている女性にとって、職場でもなお職責を負う事に、消極的であると感じます。子どもを保育所に預けている場合は、夕方必ず決まった時間までに迎えに行かなければなりません。当然迎えだけではありません。夕食作りやお風呂、翌日の準備をしてから夜に洗濯。すべてをやり終えたときは、もう時間的にも体力的にも寝るだけの状況です。子育てだけではありません。親の介護などでも同じ事がいえます。
 そうなると、仕事においてもリーダーとして責任を負うと、仕事と家庭の間で自分が壊れてしまうのではないかという不安もあり、家庭の事を優先できる非管理・監督職のままでいたいと思う心理もあると思うのです。
 子育てと仕事を比べた時、どちらも大切で、手を抜けない事が分かります。理想論が「仕事と家庭の両立」といったものになると思いますが、実際問題として、仕事と家庭のどちらかを選択しなければならないケースがあるのです。この時の選択については他者から評価はできません。個人が持つ価値観や、人生観、環境によって選択されており、選択に対して否定的な意見を言う事は危険です。
 子育てを例にあげますが、看護休暇など、多くの人からみて「それは仕方ない」と思われるような理由で選択された事は同意も得やすいと思います。しかし「子どもと一緒に遊びに行くため、1か月休みます」と言った時、みんながそんなに休暇を取っては仕事が回らなくなる、仕事に対して無責任だ、と思う方もおられるのではないでしょうか? それは仕事に対する責任感や、平等の意識の価値観から考えると正しいでしょう。しかし、子育てを本気で考え、子どもと向き合うための時間をしっかりとりたいと考える人にとっては、仕事は代理が効くものであって、仕事を優先したがために、子どもにそのしわ寄せをする事は、子育てに対する無責任にも思えるのです。
 ここまで考えると、個々の持つ価値観、人生観が重要なポイントである事が分かります。価値観・人生観について、自分は何を重要に考えているかを自覚し、また周りの人たちは何を重要に考えているか知る事が重要だと思います。お互いに価値観を理解し、認め合う事を優先してみてはどうでしょうか。お互いの価値観を認め合う事で、様々な休暇制度が活きてきます。心にゆとりがある、頼れる、信頼できる人を見つける事ができます。サポート施設の活用もできると思います。不安や相談しやすい人、子育て仲間づくりなどの仲介スタッフの充実など、今までにないサービスを導入すれば、新しいサービスの価値を否定せず、活用できるものだと思います。職場の協力体制についても、個々の価値観から組み上げる方が良いのではないでしょうか。価値観を起点にする場合は、男女の性差は関係ありません。相手の価値観を認める事で、お互いに納得のいく仕事・子育ての方法が話し合えるものだと思います。


3. お互いの価値観を知るために

 お互いの価値観について、お互いに理解し、認め合うための方法として2つの方法を紹介します。

① 「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」著ケリー・マクゴニガルで紹介される、自分の価値観について考えるきっかけのものです。次の中で、あなたにとって、もっとも大切なものはどれでしょうか? 3つ選んでください。もし、書かれている以外のキーワードが浮かんだら、追加してください。

・度量・説明責任・冒険・アートや音楽・運動競技・お祝い・チャレンジ・連携・有言実行・コミュニティ・思いやり・能力・協力・勇気・創造性・好奇心・規律・発見・効率性・情熱・平等・倫理的行動・優劣・公正・信仰/宗教・家族・自由・友情・楽しみ・寛容・感謝・幸福・勤勉・調和・健康・人助け・誠実・名誉・ユーモア・独立・革新・品位・相互扶助・喜び・リーダーシップ・マインドフルネス・自然・率直・忍耐・平和/非暴力・個人的成長・ペット/動物・政治・プラスの影響・実用主義・問題解決・信頼性・機知に富む・自分への思いやり・自立・質素倹約・強さ・伝統・信用・意欲・知恵
 あなたにとって重要な価値観を3つ選んだら、そのうち一つについて、大切だと思う理由を10分間で書いてみてください。また、その価値観を日常生活でどのように実践しているか、そのために今日はどんな事をしたかも書いてください。もしあなたが今、難しい決断を迫られて悩んでいる場合は、その価値観に従って決断を下せるかを考えてみても良いでしょう。残りの2つについても同様に書いてみましょう。

② 二つ目は「類人猿診断」です。精神科医・名越康文さんにより考案された性格分類ですが、次のサイト「http://yakan-hiko.com/gather/」より簡単に診断できます。相手がどのような事に価値観を置いているのか、また価値観に基づいて、どのように関わると上手く関係が作れるのか、参考になると思います。

 今回のテーマを研究した職員3人は、以下のものでした。人それぞれ価値観が違う事が分かります。また、自分自身の価値観についても気付くきっかけになりました。
① 大切な言葉「幸福、健康、バランス」 類人猿診断結果「感情豊かな寂しがり屋ボノボ」
② 大切な言葉「チャレンジ、思いやり、喜び」 類人猿診断結果「ちょっと小心者ゴリラ」
③ 大切な言葉「好奇心、家族、自然」 類人猿診断結果「職人気質のオランウータン」


4. おわりに

 個々の価値観を互いに認め合うことには、やはりコミュニケーションが大切です。私達は多くの人間関係には多くのストレスが潜んでいる「危機」を避けているかもしれません。しかし、自らの存在は、他者により成り立っているとも言える社会において、危機を避けるより、共感に期待したいと思います。
 今日から職場で価値観を認め合えるコミュニケーションができる社会人に挑戦します。