【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第9分科会 子どもと地域社会~子どもの居場所をつくるのは誰?~

 松江市社会福祉協議会は、地域福祉を推進する『公共性』『公益性』の高い民間団体として、誰もが安心して暮らすことができる『福祉でまちづくり』を地域住民の方やボランティアの方、福祉・保健・医療の多様な機関と共に推進することを使命とします。
 核家族化や少子高齢化など社会を取り巻く環境が複雑多様化し、地域におけるつながりの希薄化が進展する今日、地域におけるつながりづくりに向けて労働組合としてどのような取り組みができるのか、こども食堂の取り組みを切り口として検討しました。



こども食堂を切り口としたつながりづくり
―― まつえこども食堂さいか店の取り組みから ――

島根県本部/松江市職員ユニオン・社会福祉協議会支部 加茂 絵菜・三上 貴大
・門脇真希子・中島 大棋

1. はじめに

 松江市社会福祉協議会(以下、「本会」という)が実施した「こども食堂」は、各課を横断したプロジェクトチームとして検討した企画(図1)をもとに実施することになりました。何より、地域に暮らすこどもであれば誰でも参加できる「こども食堂」にするために「こども食堂」=「貧困」のイメージを払拭し、職員が取り組み方針を共有して進めてきました。

図1 こども食堂に関する企画書

企画書(抜粋)

1. 背景
2. 目的
 食事確保という課題だけでなく、「食事の場面」を人格形成に大きな影響を与える場と捉え、こどもの人格形成に必要な知識や体験を学ぶことができる場づくりを目指す。
3. 内容
テーマ:「こどもの食事会と居場所作りと学び合いの場」
こどもが気軽に参加できる居場所づくりから始める。
食事の提供と宿題の手伝いだけでなく、家族以外の大人(地域の人)との交流、様々な体験が図れるような内容にする。また、こども同士の交流が図れるようにする。

2. 現 状

 2017年6月1日現在、本会は松江市内において5箇所のこども食堂が存在(本会の行うものも含む)することを把握しており、その詳細については下記(図2)の通りです。

図2 本会の把握する松江市内のこども食堂一覧

 開催頻度参加費
こども食堂A金曜日、土曜日17時~18時30分500円(日替わりメニュー)
こども食堂B毎月第4土曜日10時~15時未就学児は無料
小学生以上は200円
こども食堂C毎月第2土曜日11時~14時300円
こども食堂D不定期中学生までは100円
それ以外は200円
本会の行った
こども食堂
7月~8月:毎週水曜日週1回10時~15時
10月~3月:毎月第3火曜日16時~20時
高校生まで無料
それ以外は200円

3. 本会の行ったこども食堂の取り組み

 実施に至るまでは、チラシ(図3)を活用し、近隣小中学校や公民館、松江市職員ユニオン等を中心に「こども食堂」の周知を行いました。また、本会ボランティアセンターやホームページ等を活用しボランティアの募集を行いました。財源は「松江市職員ユニオン結成70周年記念事業」としてこの事業に対し50万の寄付をいただき、その寄付を調理器具、のぼり旗(図4)や食材費(図5)、調理器具(図6)の購入などの運営費に充てることができました。
 「こども食堂」は小中学校の夏休み期間(日中)から始まり、10月以降は夕方からの開催に移行し、合計11回実施しました。こども食堂には、みんなで食事をすること、宿題があるこどもはできるだけ宿題をすることなど、大まかな決まりはありましたが、何事も強制はしませんでした。
 各実施日で参加者人数の変動はありましたが、中には、毎回参加するこどももいました。
 参加するこどもの中には、朝食を食べてこない子や、家族以外の人と接する機会が少なく、他者との関係がうまく築けない子もいました。また本会の相談機関からの紹介により、「こども食堂」の参加につながったこどもたちもいました。
 毎回参加したこども、保護者の方に感想を聞くと、次回の「こども食堂」開催を楽しみにしているという感想も聞かれました。(図7)(図8)
 「こども食堂」実施にはボランティアは延べ60人、見学者は延べ34人でした。内訳としては地域住民の他、行政機関、マスコミ等幅広い参画があり、こども食堂への関心の高さが窺えました。

図3 チラシ 図4 実施にあたり掲げたのぼり旗
 

図5 提供した食事の一例
 

図6 購入した調理器具の一部
 

図7 参加者ヒアリングアンケート



(参加したきっかけ)
○お母さんがたまたま見つけた。 ○お母さんが「行かないと?」と言ったので、お母さんが誰から聞いたかは知りません。 ○お母さんの友達が誘ってくれた。 ○友達に誘われて。 ○お母さんに言われて。
(感想)
○ほかの人とも仲良くなるのでいいと思います。 ○大人の人とも仲良くなるからいいなと思います。 ○自由に遊べるし勉強もいいと思った。 ○こども食堂に毎日行きたいです。 ○ごはんがおいしい。 ○楽しいし友だちがいるし、家にいるより得しているような気がする。 ○楽しいし、他の人と仲良くなれるし、料理がおいしい。


(感想)
○知人に誘ってもらい12月に初めて参加させて頂きました。 ○12月には私も食事させていただきましたが、とても美味しく皆楽しそうな雰囲気がとても良かったです。 ○普段は働いており学童保育ももう利用していないので、このような場があると本当に助かります。 ○こども達も楽しかったようで、ぜひまた行きたいとの事でまた参加させていただきたいと思います。 ○アットホームな感じで、みなさんこどもをかわいがって下さり助かっています。 ○月に一度ゆっくりと話をしながらご飯を食べれるひとときです。
(今後の参加について)
○主人の帰りがいつも遅く、いつも2人で晩御飯を食べています。こども食堂では、たくさんの人達とご飯を食べれて楽しいです。 ○こどもも月1回のこども食堂をとても楽しみにしています。

図8 参加者したこどもたちの様子
 

4. 課 題

 本会が約1年間に渡り実施した「こども食堂」の取り組みから見えてきた今後の課題として、「こども食堂」を「住民主体の活動とすること」が挙げられます。
 今回、「こども食堂」を実施するにあたり、あくまでも「こどもの居場所」を確保することを目的に、職員が中心となり企画し、運営を行ってきました。あくまでも本会中心となって「こども食堂」を実施してきたため、住民主体の活動へ移行することができませんでした。
 今後は住民に運営の主体を徐々に移行し、今後は地域住民主体の活動としていくことで地域に密着した運営をめざし、支援をしていきたいと考えています。
 また一方で、本会が県内でも先駆的に実施した「こども食堂」の経験から得たエビデンスを、他団体への運営指針としての波及も新たな役割として期待されると考えています。

5. 組合としての取り組み

 こどもたちの孤食を減らし、こどもたちの「居場所」を作ろうと始まった「こども食堂」ですが、この大切な「居場所」を維持していくためには、この事業を支える担い手、場所、資金が必要です。
 「こども食堂」は食事をするスペースがあれば比較的簡単に始めることができるというハードルの低さがあり、熱い思いを持った方々が事業を始められる利点はあります。
 「こども食堂」は多くのボランティアが担い手となり実施されていますが、事業を継続して続けるには、安定した財源が必要不可欠です。
 本会では、職員として事業に携わると同時に、組合員としてこの事業の安定的な事業実施をするためにどう関わっていけるかを考えてきました。
 今、全国で注目されているこの「こども食堂」について、母体となる松江市職員ユニオンも松江市での実施に着目し、この度実施した「こども食堂」の安定した事業実施のため、労働組合からご寄付をいただき、地域活動の下支えをしていただきました。
 また、執行部役員の方にも「こども食堂」にボランティアとして参加いただき、直接参加しているこどもたちの表情を見て、話を聞いて頂くことにより、「こども食堂」の必要性を直接感じてもらいました。
 社会情勢の変化により、親も日々仕事に追われ、こどもたちが帰りの遅い親を待っている状況があります。それは、我々組合員も同じ状況であると感じています。
 組合員も家に帰れば地域の一員です。この問題を自分事としてとらえ、多くの組合員が何らかの関わりを持っていくことが事業を支える大きな力となります。
 こどもの「居場所」をなくさないように、そして一つでも多くの「居場所」ができるよう、多くの組合員がこの活動を理解し、運営の面、担い手として協力していくことが、この事業の維持には必要だと考えています。

6. 提 案

 「まつえこども食堂さいか店」の取り組みは、経済的な問題や孤食の問題の解消だけではなく、家族以外の地域の人との交流や「食事の場面」を通じてこどもの人格形成に必要な知識や体験を学ぶ場、気軽に安心して立ち寄れる居場所として開催し、「こどもの居場所づくり」の地域展開を検討しました。全国的にも「こども食堂」の支援が各地において拡大していますが、貧困家庭のこどものみを明確に区分して受け入れている拠点は少なく、経済的な貧困課題以外のさまざまな生活における課題を抱えるこどもの参加や、特段の生活課題等はなく参加者で食事を楽しみながら交流することを期待して参加するこどもの存在が多く見受けられるようです。このことから「こども食堂」は、その名称にあるこどもに対する食事の提供や栄養の補給の場という単純な目的ではなく、実際にはこどもを支える場として多くの機能を有しているといえるでしょう。
 今年度は、「まつえこども食堂さいか店」を住民主体で運営し、こどもの居場所づくり、地域のつながりの場としていくことをひとつの大きな目標にしています。この様な地域での取り組みに対して市職ユニオンを中心に支援をしていただき(組織として)、組合員1人ひとりが地域住民として、活動の担い手となり、関与していくことが第一歩だと考えています。
 以上の観点から、今後の労働組合活動は、組合員1人ひとりのライフワークが変容する中で、職場のみならず、地域・ローカル活動が中心となるべきだと考えます。地域の人々が各々の活動の場で、高いパフォーマンスが出せるよう、我々は様々な活動を通じて資源(人、物、金、知識)を提供すべきだと思います。
 また、地域活動の積極的関与は、個として活動するボランティアだけではありません。松江市行政や社協、NPO、地域団体などとつながりを持つ枠組みの中に労働組合も入っていくべきです。すなわち、各地域でのあり方に労働組合も積極的に関与することが、もう一つの主である活動の「政治」にも関与していくことだと考えます。
 私たち松江市職員ユニオン社協支部は、地域という小さな単位を通じて、グローバルな展開につなげていきたいと思います。