【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第9分科会 子どもと地域社会~子どもの居場所をつくるのは誰?~

 現在私が勤務するあまがせ保育園のこれまでの食育の取り組みについてと、今後の課題をレポートする。



あまがせ保育園の食育の取り組み


大分県本部/日田市職員労働組合 熊谷 香代

1. はじめに

 日田市の公立園は、現在5園あります。2015年度から3園が保育所型認定こども園、2園が小規模保育事業A型となりました。5園とも自園調理を行っており、アレルギーがある子どもへの対応や、クッキングなどの食育活動を、保育士と調理員の日常的連携のもとに円滑に進めていきやすい環境にあります。
 さて、今回は小規模保育事業A型である、あまがせ保育園での食育の取り組みについて、主に野菜の栽培やクッキングを取り上げ、季節ごとにご紹介します。

2. 現在の取り組み

 春、まずは畑の土作りからはじめます。この作業は職員総出で行います。前年の秋から冬にかけて集めた園庭の桜の落ち葉と肥料を畑の土とよく混ぜます。あまがせ保育園の畑は畳2畳分程度のとても小さい畑ですが、毎年立派な野菜がたくさん収穫できます。土づくりを経験したことがない職員(私も含めて)は、土作りがいかに大切かをこの体験を通じて知りました。
 5月になると、夏野菜の苗植えを行います。ここからが子どもたちの出番です。トマト、キュウリ、ナス、ピーマンなどの繊細な茎を折らないように、慎重にポットから出し、穴を掘った土に植えていきます。「ナスの葉っぱは、ナスの色しちょるね」や「トマトの匂いがするき、これがトマトの苗やろ?」とかわいらしいつぶやきが聞こえてきます。そして、園にあるもう一つの小さな畑には、サツマイモの苗を植えます。今年は、保育参観の日に、保護者も一緒に苗植え体験をして頂きました。「おかあさん サツマイモの茎がおいしいき、茎ができたら持って帰るきねっ」と、年長さんはすでにサツマイモのスペシャリストになっています。
 野菜が元気に育つように、野菜の水やりも子どもたちに協力してもらっています。特に、1歳児の子どもたちは、じょうろを手にすると、水道と畑を行ったりきたり。野菜に十分すぎるほどの愛情を注いでくれます。畑が園外ではなく、園庭の一角にあることで、子どもたちも畑の存在を忘れずにいてくれます。
 また、自然環境が豊かなあまがせでは、散歩コースにも素敵な食材が豊富です。よもぎを収穫して、よもぎだんごを作ったり、八重桜の葉っぱを収穫し、塩漬けにして桜餅をつくったり、春の香りを感じることができるクッキングができるのも魅力です。2年前に卒園した年長男児のひとこと……。散歩をしている時にユキノシタを見つけ、「これ天ぷらにすると美味しいっちゃんねー」とぽつり。異動して1年目の私は、あまがせっ子に驚かされるとともに、その年に生まれてはじめてユキノシタの天ぷらを食し、あまりの美味しさにまた驚かされるのでした。
 夏、春に植えた夏野菜の収穫の時期です。登園した子どもから園庭に出て、野菜の収穫を行います。キュウリを無理やり引っ張って収穫しようとする子どもには、「ツルがいたむと枯れていくから、優しくとろうね」と言葉がけをしたり、実体験を通じて学んでいくことも、日々の保育の中で大切にしているところです。収穫が終わると、子どもたち自身で調理室まで持っていき、"給食先生"に調理をお願いします。調理員も子どもたちが美味しく食べられるように、また、当日のメニューとのバランスも考え、なるべく当日の給食で提供してくれます。収穫→調理までがスムーズなのも、自園調理の利点です。子どもたちが行うクッキングでも、夏野菜が大活躍します。トマトが苦手な子どもでも、自分で収穫したミニトマトであれば食べられるということもあり、苦手を克服するよいきっかけにもなっています。
 また、野菜を栽培する上では切り離すことができない、害虫や害獣との戦い……。葉っぱを食い荒らす、謎のてんとう虫を、必死で虫かごに集めてくれる虫好きの年長男児に、キュウリが助けられることも……。しかし、スイカは収穫を控え、ハクビシンと思われる生き物にあっさり食べられてしまいました。そのような経験も畑作りを経験したからこそのエピソードだと思います。
 秋、次から次に落ちてくる煩わしい桜の落ち葉掃除も、畑の肥やしになると思えば不思議と頑張れます。子どもたちも気分次第で、掃き掃除を手伝ってくれます。
 春に植えたサツマイモの収穫を子どもたちと行います。芋ほりは子どもたちが大好きな行事です。さりげなく大きな芋を自分のものにしようとする、子どもたちの駆け引きも面白いところです。もちろん芋のツルは"給食先生"に炒め物にしてもらい、美味しく頂きます。
 夏野菜の収穫も終わりを告げようとしている中、あまがせ保育園のミニトマトは秋になってもしぶとく実をみのらせます。夏に比べ明らかに実の色は薄く、味もすっぱくなっていますが、給食を彩ってくれます。子どもたちも「ちょっとすっぱいけど美味しい」と味の違いを感じてくれています。去年のミニトマトはそのまま土に種を落としていたのか、今年の春にひょっこり芽を出し、立派な苗に成長してくれました。素敵な命のリレーにうれしくなりました。
 冬、芋を植えていた畑に玉ねぎを植えます。寒い時期を乗り越え、じっくりじっくり大きくなっていきます。園庭の外にあるその畑は、しばしの間子どもたちに(保育士にも……)存在を忘れられますが、強くたくましく育ってくれます。春になって子どもたちに抜かれるまで、じっと土の中で耐えています。
 以上のように、あまがせ保育園では食育に関して、特別な取り組みは行っていません。どの園でも行っているような取り組みではないかと思います。しかし、家庭の中でも、自分の目で見て、肌で触れる経験が減っている今だからこそ、保育園でこのような取り組みを行う意義は大きいのではないでしょうか。

3. 今後の課題と取り組み

 食育を行う上では保育士はもとより、調理員の協力が不可欠です。現在日田市では、5園とも調理員が全員臨時職員であるという現状です(栄養士1人のみ正規)。アレルギー対応や食育に関する業務など、調理員に求められることも増え、業務負担が大きく、正規職員化を求める声も挙がっています。
 現在日田市では、臨時・非常勤保育士・調理員の処遇改善を目的に、組織化に向けた取り組みを進めています。組織化に向けてはプロジェクトチームを設置し、これまで6回会議を開催してきました。7月頃を目途に随時加入を受け付けていく予定になっています。少しずつではありますが、処遇改善に向けて前に進もうとしている状況です。今後、食育に関してもさらなる保育の質の向上を行うためにも、組合員として、保育士、調理員の正規職員化の声を挙げていかなければと感じています。

4. おわりに

 あまがせ保育園では、現在廃園計画が持ち上がっています。施設は築39年を経過し、老朽化はしてはいるものの、施設環境・周辺環境は保育を行う上では、とてもよい環境だと言えます。しかし、年々園児数が減少し、ここ数年は園児数が一桁台という現状もあり、存続が厳しい状況です。保護者からも閉園を惜しむ声が挙がっています。小規模ではありますが、「あまがせ保育園に子どもを預けて本当によかった」と心から思って頂けるように、日々の保育の質の向上はもとより、子育て支援を積極的に行っていきたいです。