【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第10分科会 みんなで支えあおう 地域包括ケアとコミュニティー

 北海道には6つの三次医療圏が設置され、三次医療圏にある公立病院(地方センター病院)を中心に地域医療連携推進法人を設置することが、公立病院の生き残り戦略の一つとして重要なポイントと判断できる。その議論を中心的に担うのが北海道庁の役割であるが、そこを担い切れていない。このため、医師確保や医療従事者を確保するためにも、衛生医療評議会として積極的に議論するための提言とする。



北海道内における公立病院の役割と地域医療の確保
―― 地域医療連携推進法人の設立による
医師確保・医療従事者確保の提言 ――

北海道本部/衛生医療評議会

1. はじめに

 「地域医療は崩壊する」。その危機的状況は、既に地方から始まっています。
 その中にあって、地域医療の担い手である公立病院は、その責務として民間病院ではなかなか確保できない不採算医療を受け持たなくてはならず、一段と厳しい危機的な環境に置かれています。
 また、北海道はその地勢から広域分散型で小規模な自治体が多く、必要な医療を確保することが難しい地域でもあることから、これまで地域医療確保について多くの議論が行われてきました。
 とりわけ、この間、地域医療を支えてきた公立病院の経営は大変厳しく、これまで多額の累積赤字を抱え、単年度においても一般会計からの繰り出しを行ってきましたが、多くの公立病院では抜本的な経営見直しが求められています。
 さらに、国は地方交付税の見直しや新公立病院改革ガイドラインを示し、公立病院設置自治体に対して病院の再編やネットワーク化を推し進めると共に、経営改革プランを策定し、地域医療構想との整合性を求めており、併せて、医師不足や、来年度からの診療報酬改定などの不安材料も抱え、公立病院として将来にわたって地域医療を守るためには、どのような打開策を講じていかなければならないかが問われてきています。
 このことから、2017年に北海道議会民進党・道民連合議員会(現・民主・道民連合)と連携し、提言を取りまとめ道議会の中でも議論してきました。今回、その提言をさらに補強しました。


2. 地域医療構想の実現に向けて

(1) 北海道の地域医療と連携に向けた動き
 2025年に向けて札幌圏域以外の二次医療圏では、人口減少が加速しつつも高齢者の割合が増えてくる中、病院では医師不足・看護師不足にあえぐ地域が急増してきます。さらに、コ・メディカルの配置が単数にとどまる病院も多いことから、医師や医療スタッフ自らのキャリアアップのための学会参加が難しいだけでなく、平日や休日の自宅待機など労働条件の厳しさもあり、欠員補充もできない実態にあります。
 このように困難な課題を抱えた地域においては、限られた医療資源を有効に活用しなければ医療提供体制を確保できないとの懸念が強まり、北海道は2008年1月、「道から市町村、住民への提案」として「自治体病院等広域化・連携構想」を策定し、各地域で議論するよう求めました。
 2011年度からは、道が地域医療の実情やこれまでの取り組みを点検し、地域分析(「地域医療提供体制分析シート」の作成)を行ったうえで、その具体化に向けた地域行動指針(アクションプラン)を作成する取り組みを進めていましたが、実際に進行しているのは「中空知地域行動計画」など一部の地域にとどまり、地域医療構想の中に取り込まれている状況となり、議論が進んでいません。

(2) 地域医療構想と「地域医療連携推進法人制度」の創設
 2025年を展望した社会保障・税一体改革の一環として、在宅医療の充実や地域包括ケアシステムの構築が謳われ、2014年の「医療介護総合確保推進法」により「地域医療構想」の策定が都道府県に義務付けられました。
 それを受け2016年12月には「北海道地域医療構想」が策定され、これに基づき今後、構想圏域(二次医療圏)ごとに地域医療構想調整会議が設置され、病院の医療機能や病床数に関する具体的議論が行われています。
 加えて各自治体は、地域包括ケアシステムの構築に向けて「在宅医療介護連携推進事業」や「認知症総合支援事業」など介護保険制度に基づく地域支援事業に取り組むとともに、増加する在宅医療・介護の需要に対応していくという重要な役割を担うことになります。それに関連して公立病院の役割も見直しが求められ、必要な医療機能を強化し地域医療を維持することができるのかがカギとなります。
 他方、2015年の医療法の一部改正により規定された「地域医療連携推進法人」制度が、2017年4月2日から施行されました。推進法人は「地域医療構想」「地域包括ケアシステム構築」の実現に向けた「選択肢の一つ」であり、必ずしも設立・参加しなければならないものではありませんが、条件を整えることができれば地域に密着した医療提供体制を確保するためのツールとなる可能性があります。
 地域医療連携推進法人の議論では、基本的な課題として、病院間の連携パターンや運営主体と費用、医師や看護師の確保、医療機関相互の人的支援などが検討事項となります。
 これらの課題を三次医療圏毎に検討することで、推進法人設立に発展させる可能性が生まれてくると考えられます。

(3) 地域医療連携推進法人とは
① 「地域医療連携推進法人」制度の概要
第1 制度趣旨
 高齢化の進展に伴い、患者の疾病構造は多様化しており、患者一人一人がその状態に応じた良質かつ適切な医療を安心して受けることができる体制を地域で構築することが求められている。このため、平成26年に改正された医療法に基づき、平成27年度から、各都道府県において、地域医療構想の策定を進め、医療提供体制の整備を図ることとされているが、その達成のための一つの選択肢として、地域の医療機関相互間の機能の分担・連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するための新たな制度を創設した。当該制度は医療機関の機能の分担及び業務の連携を推進するための方針を定め、当該方針に沿って、参加する法人の医療機関の機能の分担及び業務の連携を推進することを目的とする一般社団法人を、都道府県知事が地域医療連携推進法人として認定する仕組みである。地域医療連携推進法人には介護事業等を実施する非営利法人も参加することができることとし、介護との連携も図りながら、地域医療構想の達成及び地域包括ケアシステムの構築に資する役割を果たすものと考えている。

② 2018年4月1日現在、以下の6法人が地域医療連携推進法人として認定されています(厚労省HPから)。
【山形県】地域医療連携推進法人  日本海ヘルスケアネット(認定年月日:2018年4月1日)
【福島県】地域医療連携推進法人  医療戦略研究所(認定年月日:2018年4月1日)
【愛知県】地域医療連携推進法人  尾三会(認定年月日:2017年4月2日)
【兵庫県】地域医療連携推進法人  はりま姫路総合医療センター整備推進機構(認定年月日:2017年4月3日)
【広島県】地域医療連携推進法人  備北メディカルネットワーク(認定年月日:2017年4月2日)
【鹿児島県】地域医療連携推進法人 アンマ(認定年月日:2017年4月2日)

③ 「地域医療連携推進法人」による効果として挙げられるものは、
 ア 共同物品購入など価格交渉力の向上。
 イ 人事を一元化することによる、医師、看護師、コ・メディカルの人事異動の円滑化。
 ウ 医師、看護師、コ・メディカルだけではなく、事務職員のキャリアアップの促進。
 エ 庶務業務を統一させることによる経費の節減。それによるコスト削減、診療科(病床)の再編成。
 オ 医療機器等の共同利用。
 カ 公立病院の経営形態変更に依らない連携。 


3. 地域医療連携推進法人に対する評価

 この間、多くの公立病院では経営形態の変更を余儀なくされ、特に地方独立行政法人(独法)に対する取り組みでは、衛生医療評議会として、単に経営形態変更反対の取り組みを進めるだけでなく、独法化後の組織作りや雇用確保・地域医療確保に対する具体的な取り組みを進めてきました。
 また、地域医療連携推進法人に対する考え方については、現状として病院統合ありきや労働条件の変更・雇用不安となっていないことから、導入に対する明確な方針を示していません。
 しかし、経営形態を一方的に変更することや病院統合ありき・民間移譲を推し進めること、雇用不安となる場合については毅然として反対するものです。


4. 地域医療連携推進法人への参加は

 地域医療連携推進法人に参加できる法人(社員)は、医療機関等を開設する医療法人など複数の非営利法人(医療法人、公益法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、独立行政法人、自治体など)のほか、地域包括ケア推進に資する介護事業等を行う非営利法人も可能とされているが、医療系法人が二つ以上あることが最低条件とされています。
 医療連携を行う区域(医療連携推進区域)は「原則として、地域医療構想区域と整合的になる」よう定めるほか、「参加法人の機能分担や業務、その目標」を明確にする必要があります。さらに、地域医療構想の実現に資すると認められる場合には、「2以上の構想区域にわたる連携推進区域」を定めることが可能となっており、その必要を都道府県が認めることができます。

5. 地域医療連携推進法人導入のメリット

 北海道には6つの三次医療圏が設置され、三次医療圏ごとに公立病院を中心とした地域医療連携推進法人を設置することが、公立病院の生き残り戦略の一つとして重要なポイントとして、以下のように判断できます。
① 医師の偏在については、三次医療圏ごとに病院をまとめることで、人事異動(推進法人内の公立病院間)をスムーズに行うことができます。人事異動では、キャリアアップと昇任(職階、ポスト)を組み合わせることでモチベーションを高くすることができ、三次医療圏の大きなエリアにすることで、参加する病院が多くなりより実施しやすくなります。
② 看護師の配置についても、自らの意向を尊重し、身分を変えることなく、家族構成や健康面・体力面などを勘案し、年齢階層(身体的負荷の許容度)ごとにあらゆる医療機能の病院を選択することが可能となります。
③ 職員採用においても、多くの看護師採用を一括で行い、配置先についても欠員の多い病院を中心に行うことも可能です。その後、キャリアアップのために都市病院への異動もこれまでと違い可能となり、研修などに送り出したあとの業務対応も可能となります。
④ コ・メディカルについても、地域センター病院の定数に上積みして配置し、学会への派遣や休暇の対応も可能となります。
⑤ 退院や転院となる患者をどのように見守るのか、社会福祉施設等との連携も想定しながら、地域包括ケアシステムや地域医療の確保となるよう取り組むことができます。
⑥ 在宅医療を担う医師は看護スタッフと一体となった24時間体制での運営となることから、医師不足の中で医師の負担軽減が可能となります。


6. 地域医療連携推進法人導入に向けた今後の議論に向けて

 実現に向けては、解決しなければならない課題も多くあります。
① 北海道は「6つの三次医療圏」「21の二次医療圏」に区分けされ、それぞれに地方センター病院(道央は指定なし)、地域センター病院(札幌圏域・上川中部は指定なし)が指定されています。
 地域をみると、公立病院及び公的病院がその医療機能を担っているため、地域医療連携推進法人の議論は進めやすいと考えます。
 公的病院については、それぞれの経営方針もあることから、公立病院が三次医療圏を担っている道南・道北・釧根における議論を先行して進めることが可能と判断します。
② 議論の進み具合によっては、二次医療圏ごとに地域医療連携推進法人の設立を先行させることは可能です。
③ 北海道には3つの医育大学と自治医科大学から医師派遣されている病院が多く、医師の配置はこのバランスの上に成り立っています。このため、各医育大学間の連携や理解を得られることが最も大きな課題となりますが、これまでの大学からの医師派遣では限られた病院への異動となっていましたが、三次医療圏における病院をまとめることで対象となる病院数が多くなり、昇任も含めて異動の選択肢がより広がることになります。
④ 三次医療圏ごとに法人を設置し、その中心的な役割を担う地方センター病院の理解を得るには困難が予想されるものの、北海道が中心となって取り組むことで理解が得られやすくなります。
⑤ 看護師の一括採用ができたとしてもその配置先での賃金や労働条件の違い、都市部への配属希望など、公平性を担保する上で克服すべき課題もあります。しかし、看護師のワークライフバランスに合わせて、病院の勤務先を選択することも可能となります。
⑥ 最も重要なのは、北海道が自らの役割を再認識することです。道内には89の公立病院がありますが公立病院が無い自治体も多くあります。今後、二次医療圏における地域医療構想調整会議は保健所が議論を進めますが、地域によっては、民間病院しかない地域や公立病院が中心となる地域もあります。どの二次医療圏においても、道が主導権を持って議論を進めることができるよう、自治体や病院からの信頼を得ること、本気になって議論することが肝要となります。また、公立病院のあり方を自治体での政争の具としない議論が重要であり、ここでも道が主導権を持って進めることが大切です。


7. まとめ

 北海道の地域医療を確保し、地域住民が安心して住むことができるよう、公立病院・公的病院が地域に必要な医療(インフラ)を担っていくためには、早急に「地域医療連携推進法人」の設立も視野に入れて地域医療構想の具体化に向けた議論を進める必要があります。
 議論にあたって地域の実情を判断し、住民の声を受けつつも、民間・公立病院・公的病院が有する医療資源を俯瞰しながら議論の集約を誘導できるのは、北海道しかありません。
 そのためには、公立病院間の医師の連携が重要であり、地域センター病院と一次医療を担っている病院の意思疎通をしっかり行い、信頼関係を築くことで大きな議論が可能となります。
 公正な北海道の関与は、道民すべてが納得できる基礎となることを前提に取り組みを進めなければなりません。