【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第10分科会 みんなで支えあおう 地域包括ケアとコミュニティー

 2018年4月より、全市町村で介護予防・日常生活支援総合事業が完全実施される事となり、次のステップとして、訪問・通所ともに既存の介護保険サービス事業所に頼らない、住民主体サービス(Bサービス)の拡充が求められている。当町では、一足早く2017年4月から、Bサービスを導入しており、当町においても、既存の支え合いの芽を生かし育てながら、高齢者への生活支援体制の整備を進めている所である。



地域住民と行政が一体となった、
町内における生活支援サービスの取り組みについて
―― 介護予防・日常生活支援総合事業
(介護予防・生活支援サービス事業「訪問型・通所型
サービスB事業」)の取り組みを中心に ――

北海道本部/自治労せたな町役場職員組合 平田慎太郎

1. はじめに~今回のテーマを選んだきっかけ~

 近年、当町においても過疎化・高齢化が一層進んでおり、介護・福祉の分野ではスタッフの人材確保や財源の確保が大きな課題となってきている。このような厳しい状況の中、当町のような小規模な自治体でも、地域の中で住民同士での「支え合いの力」を生かし、安心して暮らせる環境を整えていかなければならない。当町でも、ここ数年で地域住民と行政が連携した動きが出てきており、普段福祉の相談業務に携わるものとして、いま一度、現在の生活支援サービスの取り組み状況や今後の課題等を考察する事により、今後の業務に生かしていきたいと思い、今回のレポートテーマを選んだ。

2. 生活支援サービスの現在までの経緯

 当町では、2013年度に道の補助事業を利用し、「住民参加型高齢者生活支援等推進事業」を実施。

(1) 住民参加型高齢者生活支援等推進事業について
・地域住民と生活支援・福祉サービス・介護予防・保健等について、生活で困っている事、必要としている事などについて意見交換を行い、個人・地域・行政で連携する事により取り組み可能な事を整理して意見交換会を実施。安心して暮らせる地域づくりを進めるようとする事業。
・2013年度中に、町内5か所、計25回開催。
・せたな町内の5地区(若松地区、丹羽地区、北檜山地区、瀬棚地区、大成地区)に分けて実施
・意見交換会では、4つのテーマ(①介護予防・居場所について②生活支援・在宅サービスの確保について③住まいの確保について④相談体制の確保について)内容で、活発な意見交換を行っている。
※ 参考
・せたな町は、旧瀬棚町(現 瀬棚区)、旧北檜山町(現 北檜山区)、旧大成町(現 大成区)の3町が、2005年9月1日に合併してできた町である。
・若松地区・丹羽地区・北檜山地区→現 北檜山区、瀬棚地区→現 瀬棚区、大成地区→現 大成区

(2) 住民参加型高齢者生活支援等推進事業以降の取り組みについて
 住民参加型高齢者生活支援等推進事業がきっかけとなり、各地区単位で住民主体となった活動も見られるようになってきているが(例 丹羽地区→サロン活動、北檜山地区→お弁当配達サービス、大成地区→たいせい救急カードを作成し配布)、地区によっては活動を休止している地区もあり、活動の周知と継続が今後の課題となっている。

3. 現在の生活支援サービスの取り組み状況

 2017年4月の介護保険法の改正を受け、「介護予防・日常生活支援総合事業(いわゆる総合事業)」の見直しがあり、総合事業のうち予防給付部分の訪問介護・通所介護の事業が地域支援事業に移行される事となった。この国の動きを受け、当町では、2017年4月より、町の保健福祉課・地域包括支援センター内に「せたな町生活サポートセンター」を開設。地域での生活支援サービスの充実・拡充を図り、各関係団体と連携しながら様々な取り組みをスタートした所である。

(1) 介護予防・生活支援サービス事業(総合事業)について~サービスの概要~
① 訪問型サービス
 ア (民間事業所等による)訪問介護の部分(予防給付が基本)
 イ 多様なサービス
  訪問型サービスA(緩和した基準による支援)
  訪問型サービスB(ボランティア等の住民主体による支援。掃除、買い物代行等の生活援助が中心。※現在の当町での取り組みはここにあたる。)
  訪問型サービスC(短期集中予防の支援)
  訪問型サービスD(移動支援等)
② 通所型サービス
  通所型サービスA(緩和した基準による支援)
  通所型サービスB(ボランティア等の住民主体による支援。※現在の当町での取り組みはここにあたる。)
  通所型サービスC(短期集中予防の支援)
③ その他の生活支援サービス
④ 介護予防ケアマネジメント

(2) 「せたな町生活サポートセンター」についての概要説明
① 開設の目的
 ア 生活支援を必要とする高齢者の日常生活を支援することで、自立生活を持続させ、社会参加を促す。
 イ 住民主体のサービスを実施しようとするボランティア団体及びサポーター(ささえ合い支援員)への必要な支援を行う。
 ウ せたな町に沿った高齢者の生活支援・介護予防の基盤整備を行う。
② 開設場所
 ・せたな町地域包括支援センター(せたな町健康センター内)
③ 受付窓口    【町保健福祉課】          【社協】
 ・北檜山区→せたな町地域包括支援センター  せたな町社会福祉協議会本所
 ・瀬棚区 →瀬棚総合支所(地域支援係)   せたな町社会福祉協議会瀬棚支所
 ・大成区 →大成総合支所(地域支援係)   せたな町社会福祉協議会大成支所
④ 事業対象者
 ・せたな町に在住されており、介護保険認定にて要支援者に該当する者
 ・基本チェックリストで事業対象者基準に該当する者
 ※ 基本チェックリストとは、厚生労働省で定めた、介護予防が必要な高齢者を早期に発見するために作成された質問紙を指す。日常生活の様子、身体機能の状態、栄養状態、外出頻度を確認するなどの、全部で25項目の質問で構成されている。(質問の例として、「バスや電車を利用し、一人で外出できますか?」「階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか?」「口の渇きが気になりますか?」などがあり、すべての質問に対し、「はい」か「いいえ」のどちらかで答える形。)
⑤ 役割・業務内容
 ・生活支援を必要とする高齢者に対する支援
 ・住民主体のサービスを実施するボランティア団体等に対する支援
 ・サポーターの相互の連携及び資質向上のために支援
 ・ささえ合い推進員連絡会議・研修会の開催
 ・サポートセンター運営協議会の設置(サポートセンターの適性な運営、高齢者の生活支援・介護予防に係る基盤整備を検討するために設置。)

(3) 訪問型サービスB、通所型サービスBについて
・当町では、訪問型サービスB、通所型サービスBの2つを実施。「せたな町生活サポートセンター」が窓口となっており、各団体に対し、補助金の助成を行ったり、支援するサポーター(「ささえあい推進員」として従事)に対し、養成研修等を行うなどの活動支援を行う。
訪問型サービスBでは、買い物・調理・掃除・ごみ出し等の生活支援サービスの利用が可能。当町では現在、3団体が実施。
通所型サービスBでは、サロン事業を実施。地域でのボランティア団体等が運営する「通いの場」として役割が期待されている。サロンでは、体操やレク、趣味活動などの活動が行われる。当町では現在、1団体が実施。
※ サービス単価・利用者自己負担額
【訪問型サービスB】
サービス提供時間 サービス単価 利用者自己負担額(2割)
30分未満 500円 100円
30分以上~1時間未満 1,000円 200円
1時間を超える場合 30分未満を1単位と
して500円を追加
サービス単価の2割
【通所型サービスB】
サービス提供時間 サービス単価 利用者自己負担額(1割)
1時間以上3時間未満 1,000円 100円
3時間以上~5時間未満 2,000円 200円
5時間以上~7時間未満 3,000円 300円

(4) 訪問型Bサービス、通所型Bサービスを利用する時の流れについて
 ① 相談受付(サポートセンター各窓口で行う。) 
・支援が必要な高齢者から、生活支援の必要性を確認する。
・介護保険サービス必要な方は、介護保険認定申請を勧める。
        ↓
 ② 事業対象者の基準該当確認 
・(基本チェックリスト等で)事業対象者の基準に該当するかどうか確認。
・事業対象者が居住する地区を担当する介護支援専門員に報告。
        ↓
 ③ 事業対象者の決定 
・事業対象者は「介護予防・生活支援サービス利用申請書」等の必要書類を提出。
・町は介護保険被保険証を発行。
        ↓
 ④ 介護予防サービス計画を作成 
・事業対象者の自立支援のために、日常生活の中に生活支援を組み込み、介護予防サービス計画を本人と共に、介護支援専門員が作成。
        ↓
 ⑤ サービスのマッチング作業 
・生活支援コーディネーター(町包括支援センターで勤務する職員。各区に配置されている。)は登録団体に指定様式を送付し、サービス利用調整を図る。
・サポーターの登録団体は、指定様式に記録する。
        ↓
 ⑥ サポーター(ささえ合い推進員)によるサービス提供 
・サポーターは事業対象者へサービス提供する。
・サポーターの登録団体は、指定様式に記録する。
・サービス提供後は、事業対象者より自己負担額を受領し、領収証を交付し、指定様式に確認印をもらう。
        ↓
 ⑦ 補助金交付申請 
・指定様式に自己負担額受領時の領収書を控えを貼付し、サービス提供月の翌日末までに、補助金申請を行う。(毎月申請)
・町は補助金交付申請の翌月に、補助金を交付する。

(5) ささえ合い推進員(サポーター)の活動の流れについて
 ① サポーターにサービス提供依頼がくる 
 生活サポートセンター担当窓口から、登録団体にサービス依頼の連絡が入る。
※ サービスのマッチング作業
ア 生活サポートセンターからの指定様式を基に、利用者、サービス依頼内容、サービス希望日時等の連絡がくる。
イ 登録団体は、当日担当する事ができるサポーターについて調整し、生活サポートセンターについて調整。サポートセンターは利用者へ調整内容を伝える。
ウ 登録団体は指定様式に記録する。
        ↓
 ② サポーターへのサービス提供 
※ ささえ合い推進員からのサービス提供
ア サポーターは利用者へサービス提供する。
イ サポーターは指定様式に提供内容を記入する。
ウ サービス提供後は、利用者より自己負担額を受領し、領収証を発行し、指定様式に利用者から確認印をもらう。(指定様式は、提供月ごとに記入してもらう。)

(6) 生活サポートセンターに登録している各ボランティア団体について
① 訪問型サービスB(3団体)
 ア やるべ屋ネット(瀬棚区)
 イ スイセン(北檜山区)
 ウ OMK6(北檜山区)
② 通所型サービスB(1団体)
 ア シニア福祉サポートせたネット(なごやかサロンすまいる)(北檜山区) 計4団体

(7) 各ボランティア団体の具体的な取り組み状況について
 ここでは、訪問型サービスB、通所型サービスBについて、各1団体ずつ取り組み状況を紹介する。
① やるべ屋ネット(訪問型サービスB)
 ・せたな町瀬棚区にて2017年8月設立。会員は18人所属。会員は元役場職員、農業従事者、福祉団体関係者、一般主婦等、多岐に渡ったメンバー構成となっている。年齢でいうと、60代の方が中心である。
 ・事業内容は、買い物代行、ごみ出し、調理、掃除、洗濯、裁縫、日曜大工、お話し相手、お出かけ(徒歩圏内での散歩や買い物の同行支援)、見守り(定期的な訪問等)等の多種にわたる。
 ・活動実績をみると、掃除、買い物代行のサービスを利用する方が多い状況。月に数回などの定期利用をする方も数人見られている。サービス利用している方からは、「(サービス利用でき)大変助かっている。」との声も出ている。
 ・今後の課題として、買い物支援の際の移動手段が挙げられる。買い物支援を行う際に、車移動が主となるが、サポーターのマイカーでの移動となり、利用者に同乗させる事が出来ないため、「買い物代行」という形が基本となる。
  →本来であれば、「寄り添った支援」の観点からいくと、食材を買うにしても、自分の目で品物を見て、自分で選んで買って欲しい部分がある。また買い物かごが重くて困っているならば、持つのを手伝い支援するなどの関わりこそが自立支援の基本となる。今度の支援策を現在模索している所。
  →「買い物代行」については、他の訪問型Bサービスを実施する2団体も、やるべ屋ネット同様の形をとっており、サポーターのマイカーを利用しての実施となるため、同様に共通の課題を持っているといえる。
② シニア福祉サポートせたネット(なごやかサロンすまいる)(通所型サービスB)
 ・せたな町北檜山区(町の中心部・市街地に立地)にある、町内唯一の通所型サービスBの実施機関となる。
 ・設立者(代表者)は、「行政に頼らず、シニア世代同士で支え合う仕組みが必要」との考えから、2015年6月設立。2017年4月からは、町と連携し、既存のサロンを活用するという形で、通所型サービスB事業の登録を行っている。
 ・第2、4木曜に開かれるサロンでは、1回平均12~13人程度利用している。利用登録40人のうち、17人が基本チェックリストに該当する事業対象者となっている。事業対象者以外の方でも、サロン等の活動に多く参加している。
 ・活動内容として、ミニ講話、ふまねっと運動(介護予防の運動の1つ)、脳トレ、懐メロカラオケ教室など様々。
 ・利用料については、町で設定した通所型サービスB事業の利用単価によって決まる。すまいるは主に、1回5~7時間でサービス提供される事が多いため、事業対象者は1回300円程度の利用料となっている。
 ・サービス対象者からは、「いつもサロン開催日が待ち遠しい。楽しみが増えた」との声が出ていたりするなど、集いの場としてすっかり地域の中で定着してきている。その一方でまだ足の向かない人を呼び寄せるアプローチや、ボランティアする人自体が高齢化しているため、持続性確保の観点から将来のNPO法人化を検討する、などの今後に向けての課題も出てきている。

4. さいごに

 ここまで、当町における生活支援サービスの経緯、現在の生活支援サービス利用内容・取り組み状況及び今後の課題等を挙げてきた。今後も高齢化は進み、介護・福祉分野での人材不足及び財源不足の問題は、当町のような小規模な自治体では待ったなしの状況にあると言える。しかしそんな中でも、今回のレポートで挙げたような、町と地域(ボランティア団体等の住民が主体となった動き)が連携した取り組みが新たに出てきていたりするなど、明るい動きも事実としてある。
 このような今回挙げた、生活支援サービス(訪問型・通所型Bサービス事業)であるような、地域での「支え合いの力」を生かしながら、安心して暮らせる環境・安心して暮らせるまちづくりを整えていく事が、今後はより一層求められる。また、サービス提供する側からサービス利用する側への、一方通行の関わりではなく、サポーターと利用者が対等な立場・スタンスに立ち、お互いに関わっていくといった視点も大事であろう。
 今後も福祉行政に身を置く身として、国の福祉施策の動向を注視しながら、町(行政)と地域が上手く連携し、よりよいまちづくりを考えていく事が出来るよう、日々の仕事に取り組んでいきたいと思う。