【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第10分科会 みんなで支えあおう 地域包括ケアとコミュニティー

 急速な高齢化社会が到来するなか、地域包括支援センターにおいては、高齢者以外も含めた包括的な相談・支援体制の整備や強化などが求められている。しかし、現場で働く職員は限られた人員のため、地域の実態把握ができず、業務内容や業務量に応じた適切な職員配置が必要とされている。そこで、地域包括支援センターで働く職員を対象に行ったアンケート調査の結果から、直面する課題について述べる。



地域包括支援センター職員の働き方に関わる
アンケート調査からみえるもの

徳島県本部/公益社団法人徳島地方自治研究所 南  礼子

1. 調査の概要

(1) 調査の趣旨
 2006年4月の介護保険制度改正に伴い、各市町村に地域包括支援センターの設置が義務づけられ、地域包括ケアシステムの構築に向けた具体的な取り組みについては自治体が主体的に行うこととされている。地域包括支援センターの運営形態については自治体直営ではなく、社会福祉協議会や社会福祉法人もしくは医療法人などの外部委託が増えており、職員数や事業内容についても地域差が生じている。また、現場の職員は事務処理に追われ、地域で暮らしている住民の実態をつかみきれていない現状もみられる。
 そこで、地域包括ケアシステムがめざす「住み慣れた地域で生活し続けるための包括的支援を構築」するために、現場の最先端で支援を行っている職員に対し、働き方に関わるアンケート調査を行い、地域包括支援センターが直面する課題を明らかにすることを目的とした。

(2) 調査の時期と方法及び回収結果
 調査票は、2018年1月に松茂町を除いた県内の地域包括支援センターに配布した。対象人数は213人であり、そのうち156人から回答を得た(回収率73.2%)。


2. 集計結果

1)あなたの職種をお答えください。

職  種

回答者数

 

保健師

21

13.5%

主任介護支援専門員

33

21.2%

社会福祉士

30

19.2%

介護支援専門員

38

24.4%

看護師 

13

8.3%

社会福祉主事

3

1.9%

その他

10

6.4%

無回答

8

5.1%

合 計

156

100.0%


2)あなたの性別をお答えください。

職  種

回答者数

 

20

12.8%

136

87.2%

無回答

0

0.0%

合 計

156

100.0%


3)年齢をお答えください。

年  齢

回答者数

 

30歳未満

6

3.8%

30歳代

31

19.9%

40歳代

51

32.7%

50歳代

53

34.0%

60歳以上

15

9.6%

無回答

0

0.0%

合 計

156

100.0%


4)勤続年数をお答えください。

年  数

回答者数

 

1年未満

19

12.2%

1年以上~3年未満

22

14.1%

3年以上~5年未満

21

13.5%

5年以上~10年未満

24

15.4%

10年以上~15年未満

41

26.3%

15年以上~20年未満

10

6.4%

20年以上~25年未満

11

7.1%

25年以上~30年未満

3

1.9%

30年以上

3

1.9%

無回答

2

1.3%


5)この1年間(2016年12月~2017年11月)の時間外勤務(正規の勤務時間を超える勤務)についてお答えください。
① あなたの1ヶ月あたりの時間外労働時間はどれくらいですか。平均月と最高月の時間を選んでください。

a.平均月

時 間 数

回答者数

 

0時間

42

26.9%

10時間未満

87

55.8%

10時間以上~20時間未満

11

7.1%

20時間以上~30時間未満

7

4.5%

30時間以上~45時間未満

7

4.5%

45時間以上

0

0.0%

無回答

2

1.3%

合 計

156

100.0%


b.最高月

時 間 数

回答者数

 

0時間

32

20.5%

10時間未満

76

48.7%

10時間以上~20時間未満

24

15.4%

20時間以上~30時間未満

11

7.1%

30時間以上~45時間未満

5

3.2%

45時間以上

5

3.2%

無回答

3

1.9%

合 計

156

100.0%


c.時間外勤務手当は実際の時間外勤務時間に対して、どのくらい支給されていますか。

支給割合

回答者数

 

全額支給されている

76

48.7%

90%以下

11

7.1%

70%以下

6

3.8%

50%以下

4

2.6%

30%以下 

2

1.3%

10%以下

7

4.5%

支給されていない

38

24.4%

無回答

12

7.7%

合 計

156

100.0%


6)あなたの職場で配置されている人員数をお答えください。

職  種

回答者数

配置人数合計

平均(人)

保健師

21

51

2.429

主任介護支援専門員

32

105

3.281

介護支援専門員

36

77

2.139

社会福祉士

30

134

4.467

看護師

13

39

3.000

事務職

3

3

1.000

その他 

3

4

1.333

合 計

138

413

0.354


7)あなたは現在の職場の人員が十分たりていると思いますか。

 

回答者数

 

はい

46

29.5%

いいえ

109

69.9%

無回答

1

0.6%

合 計

155

99.4%


7)の質問で、いいえを選択された方は、どの職種に何人増員してほしいですか。

職  種

回答者数

増員希望合計

平均人)

保健師

5

5

1.000

主任介護支援専門員

9

10

1.111

介護支援専門員

15

32

2.133

社会福祉士

5

6

1.200

看護師

0

0

 

事務職 

2

2

1.000

その他

0

0

 

合 計

36

55

1.528


8)あなたが担当している業務をすべてお答えください。

 

介護予防マネジメント

総合相談・支援

権利擁護

包括的・継続的
ケアマネジメント

回答者数

保健師

17

20

6

10

21

主任介護支援専門員

29

31

19

28

33

社会福祉士

27

29

28

20

30

介護支援専門員

37

12

3

10

37

その他

16

19

8

11

21

合 計

126

111

64

79

142


 

介護予防マネジメント

総合相談・支援

権利擁護

包括的・継続的
ケアマネジメント

 

保健師

81.0%

95.2%

28.6%

47.6%

100.0%

主任介護支援専門員

87.9%

93.9%

57.6%

84.8%

100.0%

社会福祉士

90.0%

96.7%

93.3%

66.7%

100.0%

介護支援専門員

100.0%

32.4%

8.1%

27.0%

100.0%

その他

76.2%

90.5%

38.1%

52.4%

100.0%

合 計

88.7%

78.2%

45.1%

55.6%

100.0%


9)あなたが担当しているケアプランは何件ですか。

 

件  数

回答者数

平均(件)

保健師

244

14

17.43

主任介護支援専門員

827

22

37.59

社会福祉士

771

26

29.65

介護支援専門員

1680

37

45.41

その他

520

15

34.67

合 計

4,042

114

35.46


10)業務に関わる研修は出張扱いになっていますか。

 

回答者数

 

はい

140

89.7%

いいえ

12

7.7%

無回答

4

2.6%

合 計

156

100.0%


11)あなたは次の事柄について満足(安心)していますか、不満(不安)ですか。それぞれについて、お答えください。

 

かなり満足

まあまあだ

どちらともいえない

やや不満

大いに不満

回答者数

a.賃金水準

10

66

35

33

12

156

b.労働時間・休暇の水準

39

71

18

17

11

156

c.仕事のやりがい

37

72

32

11

3

155

d.職場の福利厚生

36

68

32

13

7

156

e.職場の人間関係

46

68

26

10

5

155

f.自分の健康状況

30

70

25

23

8

156


a.賃金水準

6.4%

42.3%

22.4%

21.2%

7.7%

100.0%

b.労働時間・休暇の水準

25.0%

45.5%

11.5%

10.9%

7.1%

100.0%

c.仕事のやりがい

23.9%

46.5%

20.6%

7.1%

1.9%

100.0%

d.職場の福利厚生

23.1%

43.6%

20.5%

8.3%

4.5%

100.0%

e.職場の人間関係

29.7%

43.9%

16.8%

6.5%

3.2%

100.0%

f.自分の健康状況

19.2%

44.9%

16.0%

14.7%

5.1%

100.0%


12)あなたの職場は5年前と比べて、どのようになっていますか。それぞれについて、お答えください。

 

そう思う

どちらかといえばそう思う

かわらない

どちらかといえばそう思わない

そう思わない

回答者数

a.1人あたりの仕事量が増えている

58

38

21

6

18

141

b.業務遂行に必要な人材が不足して
いる

60

37

15

12

18

142

c.職場でのコミュニケーションや助
け合いが減っている

15

30

38

33

26

142

d.業務についての研修の機会や場が
少なくなっている

6

23

48

31

34

142

e.過労気味の職員が増えている

27

52

30

9

23

141

f.サービスの量や質が落ちている

8

27

55

22

28

140


a.1人あたりの仕事量が増えている

41.1%

27.0%

14.9%

4.3%

12.8%

100.0%

b.業務遂行に必要な人材が不足して
いる

42.3%

26.1%

10.6%

8.5%

12.7%

100.0%

c.職場でのコミュニケーションや助
け合いが減っている

10.6%

21.1%

26.8%

23.2%

18.3%

100.0%

d.業務についての研修の機会や場が
少なくなっている

4.2%

16.2%

33.8%

21.8%

23.9%

100.0%

e.過労気味の職員が増えている

19.1%

36.9%

21.3%

6.4%

16.3%

100.0%

f.サービスの量や質が落ちている

5.7%

19.3%

39.3%

15.7%

20.0%

100.0%


13)あなたは、仕事に関する不安、悩み、ストレスを感じたときに、相談できる人はいますか。次のなかから3つ以内でお答えください。

相談できる人

回答者数

 

同僚

122

83.0%

上司

69

46.9%

人事担当

1

0.7%

労働組合

7

4.8%

家族

83

56.5%

職場外の友人・知人

46

31.3%

地域やボランティアなどの仲間

2

1.4%

医師・カウンセラー

4

2.7%

その他

3

2.0%

相談できる人はいない

5

 


14)メンタルヘルス(心の健康)についてうかがいます。職場のメンタルヘルスを低下させないためには、どのような対策が有効と思いますか。有効と考える対策を次のなかから3つ以内でお答えください。

内  容

回答者数

 

仕事の仕方の見直し

75

61.0%

時間外勤務の縮減

29

23.6%

職場における人間関係の円滑化

97

78.9%

セクハラ・パワハラの防止の徹底

19

15.4%

セルフチェックなど職員向け講習

16

13.0%

専門医などによる相談体制を拡充

14

11.4%

管理者研修による指導力強化 

15

12.2%

職場復帰支援、再発防止策

6

4.9%

職場外の専門機関とカウンセリング契約の締結 

21

17.1%

メンタルヘルスに関する職員への理解の促進

41

33.3%

その他

4

3.3%

合 計

337

274.0%

回答者数

123

100.0%



3. 自由記入

・業務量は5年前に比べると倍に増えているが、人材は増えておらず、過重労働になっている。また委託型包括のため、法人内の業務も担う必要性があり、必ずしも包括事業にだけ終わらないことも負担感の増大に影響している。他の包括も同様と思われるが、事業内容が見直され、包括支援センターの第三者評価も始まることが決まり、果たしてやっていけるのかと不安を感じている。
・事務量が増え、必須研修が増え、それによって実務の時間が減り、時間内の勤務が困難となり、残業が増えている。入職当時に比べ、担当件数も増えている現状もある。レベルアップの研修のはずが、その研修の為に時間をとられてしまい、本末転倒の様相を呈しているのではと疑問に感じる。同僚や上司も多忙のため、やすやすと時間を持てず、日々仕事に追われる現状となっている。
・仕事量は増えているが、給料は上がらない。嘱託職員なので仕方ないと思っているが、不安定な身分のままでよいか迷っている。
・嘱託職員で勤務する者が3分の1以上おり、身分、雇用条件等が悪い。嘱託が多いことで正規職員の業務も負担が大きくなっている。包括として専門職が必要とされているにもかかわらず、職員採用時に必要性が認識されていない。介護支援専門員、主任介護支援専門員として雇用するのであれば報酬の見直しは必要。
・職場の物理的環境、職員の給与も、メンタルヘルスに影響があるように思います。
・ケアマネ等の資格保有者を募集しても、臨時職員なので集まらない。
・認知症初期集中支援チームなどの業務が増えるのに、職員の数は増えない。包括支援センターが市の直営になり事業内容も増えて業務が増えている。
・職員数は恵まれていますが、臨時職員が大半を占めている。臨時職員は毎年、職員採用試験を受ける必要がある。しかし、地域包括支援センターの職員は他の臨時職員と異なり、経年的に地域を知り、実務を積み上げていかなければならなのに、1年後の雇用保障がない。人口減少や高齢社会から地域包括支援センターに対する期待が高まっているが、現状ではその期待に応じることが極めて困難だ。
・新しい人材が雇用されても5年以内に辞めてしまう。賃金だけでもよくなれば……と思う。
・委託で地域包括センターを運営している。委託料は包括が始まってから全く変わっていないのに、業務量は年々増えている。そのうえ、地域づくりという地域の住民主体の事業が始まる。自分だけでは、どうにもならない業務を次々に仕様書に盛り込まれている。かなり仕事がしんどくなってきている。
・地域包括支援センター設置当初から3職種はプランを持たず、地域でのネットワーク構築に力を入れるよう、市から委託されていた。おかげで総合事業、生活体制整備事業への取り組みがスムーズだった。


4. 調査からの提言

 2006年の介護保険制度改正によって「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉増進を包括的に支援することを目的とする施設」として地域包括支援センターが設置され、高齢者の相談をワンストップで受け、必要なサービスにつなぐだけでなく、介護予防マネジメント、権利擁護事業、総合相談・支援、包括的・継続的マネジメントなど、多彩な役割を果たすことを目的として創設されており、徳島県内では直営が14自治体、委託が10自治体となっている。
 地域包括支援センターは、自治体が設定した担当圏域ごとに直営または委託により開設され、保健師または経験のある看護師、社会福祉士または高齢者保健福祉に関する相談業務に3年以上従事した社会福祉主事、主任ケアマネジャーなどを配置しなければならない。
 また、2015年の介護保険制度改正では、地域包括支援センターの機能強化を図ることを目的に、人員の増員、運営方針の明確化、地域包括支援センター運営協議会による業務の評価・点検、情報公表などが定められた。さらに、新しく地域支援事業となった「在宅医療・介護連携の推進」「認知症施策の推進」「地域ケア会議の推進」「生活支援サービスの体制整備」などにも関わることとなっている。
 高齢者や家族の介護負担の増加だけでなく、地域のつながりの希薄化が進むなか、地域包括支援センターには地域包括ケアシステム実現への中心的役割が期待されている。
 しかし、今回の調査結果によれば、時間外手当の全額支給が半数を下回る一方、7割の職員が「人員不足であり、1人あたりの仕事量も増加している」と答えた。とくに、「人員が足りていない」と答えた職員のうち、9割が「業務遂行に必要な人材が不足している」と答えている。すなわち、地域包括支援センターの機能強化を求められているにも関わらず、増加する業務に不安に感じていることがわかる。しかも、嘱託など不安定雇用の職員も多く、賃金水準への不満もあるため、事業者に対しては正規職員の雇用促進や介護職員処遇改善加算の積極的な活用を呼びかけていく必要がある。