【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 住んでいても「知らない」ことがいっぱい。働いているだけでは「知らない」ことがもっといっぱい。私たちが働く「まち」にはそんな「知らない」がいっぱい隠れています。仕事から離れた目線で、「まち」の「知らない」に触れ、「知らない」を「知っている」に変えていきましょう。



自分が働く「まち」を知ろう
―― 歩く目線で知る働く「まち」の再発見 ――

石川県本部/野々市市職員労働組合 池上 直樹

1. はじめに

 私たちが働く石川県野々市市(ののいちし)は、隣接する金沢市のベッドタウンとして栄え、全国的な平成の大合併の雰囲気の中、2011年11月11日に単独市制で町から市となりました。
 市の概要は、面積は約14km2、人口は約5万5千人、平均年齢は約40歳、女性の平均寿命は88.6歳で全国5位、男性の平均寿命は81.8歳で県内1位、東洋経済新報社が毎年公表している「住みよさランキング」では市制後の2012年から2017年までは毎年10位以内を獲得(2018年は18位)と若い世代から高齢の方まで幅広く快適に生活が出来、山、海、大きな川といった自然資源がなく、自然災害の発生もとても少ない市です。
 2018年度の野々市市役所の職員数は342人(臨時・非常勤職員は含まず)で、野々市市職員労働組合員は290人(組織率100%)となっています。

2. 企 画

(1) 「環境美化活動」
 野々市市職員労働組合では1990年より継続的に毎年1回、世界的に環境保全統一行動を行う4月22日のアースデーの時期に、組合員の働きの場である野々市市(当時は町)という「まち」の環境美化を行い環境問題についても学ぼうと組合主体のボランティア活動を行っています。
 自分が入庁し勤務し始めた1990年代には職員の殆どが野々市町民(市制前)で役場に来られる方も職員と顔馴染みの方が多いという雰囲気でした。
 しかし近年の人口の急激な増加に伴い野々市は町から市へと変わり、その間に職員の構成も大きく変わり地元の野々市市在住の職員の割合が年々小さくなり現在では職員数全体の60%となっています。
 この事により、多くの組合員が働きの場である野々市市という「まち」の歴史や文化といった魅力、そして地理を理解せぬまま市民に対し行政サービス業務を行っているという現状があり、若い職員が市内の公共施設に向かう際、インターネットや地図で場所を調べるという光景をよく見るようになりました。市民に対し町名の呼び方を間違う職員までいるのが現状です。
 いくら市になったとはいえ約14km2の小さな面積の市です。そういう光景を見ると市役所で働いていても働きの場である野々市市という「まち」が判っていないのではないかと思ってしまいます。
 開始当初は地域貢献として始められた「美化清掃活動」ですが現在はその思いはもちろん企画の中心におきつつ、歩く目線で自分が働く「まち」を知るというテーマも重要視し、「環境美化活動」の企画を毎年行っています。

3. 実 施

 2018年度の「環境美化活動」は目的を「野々市市職員労働組合員、野々市市役所特別職・管理職が野々市市内の幹線道路を主として、ごみ収集行い、市内の環境美化に寄与するとともに環境問題について考える。また、活動中は歩きの目線、速度で私たちの働きの場である野々市市を見ること、知ることにより、野々市市内の『地域』の魅力に触れる」を目的として2018年4月21日早朝6時45分から行いました。
 毎年ですが組合側から市の管理職、特別職(市長・副市長・教育長)の皆さんにも声掛けを行い参加していただいています。
 2018年度は267人(全職員数342人 参加率78%)の参加で7つのグループに分かれて(事前に職場ごとにグループ分け済み)、沿線のごみ収集を行いました。
 2018年度の実施に際し、冒頭の案内で私は集まった組合員に新たなお願いをしましたそれは「美化清掃中にすれ違う市民の方に大きな声で挨拶を交わして欲しい」ということでした。
 挨拶は人と人のコミュニケーションの入り口作りに欠かすことは出来ないツールです。近年は職場内のほか、来庁者に対しても積極的に挨拶を行う風景を見る機会が減ってきているような気がします。
 「環境美化活動」はボランティア活動なので市民の皆さんにお褒め頂くために行っているものではありません。
 しかし市役所職員である組合員だからこそ庁社外であっても市民への積極的な声かけを行い、いつも笑顔で元気な市役所職員であって欲しいし、市民から親しみも持っていただきたいのです。

4. 効 果

 2018年度の開催では初めて参加組合員へ事後アンケートを行い、企画の内容が実際にどう組合員に思われているのか情報の収集を行いました。

(1) 環境美化活動について
・早朝から大変とか、偽善的などの批判があるのかもしれないが、組合活動として長く継続している事業であり、かつ、地域に対する活動周知、地域貢献に少なからず寄与している事業であることから、今後も継続していくことが大事。
・市民の方からあいさつ等の声かけをもらい、交流の機会となった
・市民や市のために、清掃活動をすることはとても良いことだと思う
・市もきれいになり気持ちがいい
・早朝から集団で清掃活動をすることで地域に貢献でき、素晴らしいと思う
・活動を通して地域の美化はもちろんのこと、普段歩かない場所を歩くきっかけになった
・職場のメンバーが普段着で普段話をしながら良いコミュニケーションが取れていました
・清掃活動が職員の潤滑油となり良い職場環境になればと思いました
・市民の皆様の心がけによって、野々市市の道路はそこまで大量にごみが落ちていないようである
・通勤時に通った際に、日々企業などが清掃活動をされているところもあり、目につく大きなごみはほとんどなかった。やはり日々の心掛けが大切だと思った
・少しずつ道がきれいになっていく様子が、見ていてとても気持ち良かった
・自分たちの働く地域を率先して清掃することは良いことだと思う
・職員で協力して清掃活動をすることで、親睦も深まり良いと思う
・課内での親睦を深めつつ、市内美化に貢献でき野々市市への愛着を深めることができる素晴らしい活動だと思う
・良い活動だと思う。早朝から社会貢献をしたことで、街の美化につながり、自分自身の気分も爽快な気持ちになれた。また、普段会うことのない、職員のお子さんなどとも交流できるので、自分の子どもが大きくなったら一緒に参加しようと思う
・ボランティア活動なので、背伸びする必要はないが、年1回でなくても良いし、道路に限らず、公園清掃とかでも良い。
・もう少し清掃範囲が広くても良いのではと感じた。
・環境について考えるきっかけとしての実施であれば、今のようなイベント型でよいが、実質的な清掃活動を主とするならば、路線の見直しや人の割り振りも再考すべき

(2) 歩行者の目線で野々市市をあるいて気づいた点
・ごみは意外と少ない
・御園小学校北側、十人川の擁壁に芝桜がきれいに咲いていたのが印象的でした。地域の人たちが花でまちを美しくしようとしている様子が窺えました
・ふだん歩く機会のあまりない道を歩くことは、市職員としてとても意義のあることだと感じます。次年度以降も同様の内容で継続していくべきであると考えます(無理に変える必要はありません)
・街路樹や花がきれいに整備されていると感じた
・実際に歩いてみることで、野々市市の一部だが建物や様子を知る機会となった
・普段忙しくてなかなか職員同士で話せない会話をかわし、コミュニケーションをとることが出来て良かった
・市役所の周りは歩行者用の歩道が広く、すれ違うこともスムーズにでき、良いと思った。歩行者の安全が確保してあると思った
・まちを歩くと閉まったお店、オープンしたお店、わき道、水路、危ない側溝、一気に視覚から情報が入ります
・まちも日々変化し、生き物のように変わっているのだなということが自然と感じることができました
・ここで知ったまちの変化はきっと何かの時に業務でも役に立つと思いました
・野々市駅周辺はとてもきれいに整備されている
・運転している目線では気づけなかったお店や公園の場所を知ることが出来た
・親子で一緒に散歩をしたり、運動する姿がよく見られた
・市民とあいさつをかわすことでいろんな人とつながれると思った
・それなりに大きい道路沿いにはたばこの吸殻などが落ちていたが、全体的にごみの量は少ないように感じた
・野々市はごみも少なく散歩に適した良い街だなあと思った
・歩道に花が植えられていたり、街路樹の世話も行きとどいていたりときれいで気持ち良く歩くことができた
・知らない店や建物を発見できた
・歩道も広く歩きやすい場所が多かった
・布水中からバローにかけての道路沿いの八重桜がとても美しかった
・水中校門前に新たに花壇が整えられていてきれいだった
・昔に比べると落ちているごみの量が非常に少なくなっている
・道路・歩道・街路樹周りで傷んだ箇所が多いように思われた
・普段歩いて市内を回ることがない(車を使うことが多い)のであまり意識しないが、改めて清掃活動と併せて行うことで、ポイ捨てによるごみが意外とあることに気づいた
・市役所付近よりも、国道沿いのほうがごみ、特に吸いガラが多いなーと感じます。市道かどうかわからないが、街路樹で標識や人が見えにくそうな場所があると思った。
・御園小学校付近はごみが多く、マナーが悪いなぁと思った
・駅周辺にタバコやコンビニのごみがたくさん落ちていて残念だった
・保育園の周りにもタバコがたくさん落ちていて残念だった
・本町新庄線の歩道敷設ブロックのガタつきが何箇所か目についた
・田んぼにごみが捨てられていた
・一見きれいに見え、目立つところにはごみは少ないが、草木、茂みの下に隠すように捨てられてあるものが多数あった
・ショッピングモールや飲食店の路肩に、たばこの吸殻が多かった
・たばこや飲みかけの缶など、道路わきの街路樹の下に落ちていた。幼児が触ってしまう可能性も考えられ危険
・車の部品が落ちていて、歩行者だけでなく、車にとっても危ない
・コミュニティ道路はきれいでしたが、アパート周辺の側溝には空き缶やペットボトルが多く捨てられていた。人の目に触れる場所と触れにくい場所で人の意識はだいぶ異なると思った
・禁煙派が世間の超勢を占める中で、いまだにたばこのフィルターがあらゆるところに落ちている。喫煙者のマナーが悪い
・コンビニ近くの植木周りにビニール袋やペットボトルのごみが多い
・道路沿いにたばこの吸殻が多く、喫煙する人のマナーが大切だと感じた
・公共交通機関の整備が不十分だと思った。市内での移動は車がメイン、又は徒歩、自転車。のってぃについても利用料金は安価であると思うが、周遊するため目的地に行くのに遠回りすることもあると思う
・歩道にたばこの吸殻がよく落ちているので、ある一定距離で灰皿を設置すればポイ捨ては減るのではないかと思った
・普段ほとんど歩くことのない道だったが、歩いてみると、今年の大雪で被害にあったと思われる街路樹が何本か切られているものがあった。改めて大雪の被害の大きさを知った

 上記の回答内容から組合が長きに渡り行ってきた「環境美化活動」の企画に意味があり、また、歩きの目線で働きの場の「まち」を見ることで多くの発見がある事が伝わっていることがわかりました。
 この企画の魅力は美化清掃時に知りえた「まち」の情報は働きの場への愛着、そして自分だけではなく他の業務への提言にしっかりと繋がるということです。また、職員間、職員と市民の潤滑剤となり普段の業務に大きな効力を持ち、そして組合では組織強化にしっかりと繋がっていることです。
 たかが「ごみ拾い」、いえいえ、それだけではなくとてつもなく大きな産物を組合員だけでなく管理職、特別職の皆さん、いわゆる野々市市役所の職員全員に与えてくれるのです。
 業務だと活動に緊張感があり、きっとこのような明るく自由な意見は出なかったと思います。
 このように「組合」だから出来る活動に「自治研」の大きな意味があるのではと感じました。
 野々市市職員労働組合は今後もこの「美化清掃活動」、そして、この「まち」に働く者がこの「まち」を知る企画を継続していきます。

5. 影 響

 2018年度に青年部が独自の企画として地元の観光ボランティアに協力を依頼し、新入組合委員に野々市市を知ってもらいその他の組合員も改めて野々市市を知ろうという企画が通年の企画に加わり開催されました。
 市役所の若年層にも組合活動の中で働きの場である野々市市という「まち」を知ることの大切さがしっかりと伝わってきています。