【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 1997年度から採用が開始された事務(福祉)職員の勉強会から始まった、福祉専門職による専門性を活かした「自治研社会福祉部会」の取り組み報告。



福祉職が行政で働く意味とは?


大分県本部/大分市職員労働組合・自治研・社会福祉部会

1. 福祉職勉強会立ち上げの経緯

 1997年度から事務職(福祉)の採用が始まり、当初は少ない職員間で集まり、情報交換などが行われていました。その後、毎年1~4人程度が採用されていく中で、職員が増えるに従い、全体として情報交換を行うといった意識が希薄になっていきました。福祉職場においては、各分野における連携がとても重要であるため、今一度、福祉職が集まる場が必要となり、会を発足させることとなりました。
 2018年度現在においては、生活福祉課11人、子育て支援課(子ども家庭支援センター)8人、長寿福祉課8人、障害福祉課8人、指導監査課5人、健康課1人、保健予防課1人、教育センター1人で、計42人となっています。福祉職が配属される課は広がりつつあり、勉強会の意義がより重要になってきています。
 活動内容としては、年に3回、定例会を開催しています。春には新採用の部会員に対し、それぞれの職場と担当する業務の紹介をし、お互いに相談しやすい環境が作られるよう努めています。その後、会で取り組むテーマを定め、内容について話し合っています。そのほか、フリートークの時間も設け、それぞれが仕事の中で感じたことなどを話し合い、情報交換と関係の強化を図っています。
 なお、自治研組織としての社会福祉部会は、その活動内容がそのまま福祉職勉強会となっています。


2. 直面する課題

 福祉職は、福祉関係の職場に勤務することが前提となってはいますが、専門職でありながら、独占された業務といったものはなく、そこに配属された一般の事務職と同等の勤務内容となっています。したがって、福祉職の専門性は、どのように発揮されるべきであるかが、当会における大きな議題として挙げられることとなりました。
 そもそも福祉職は、その多くが社会福祉士の資格を持っていることを前提に採用された職員ですので、社会福祉士の仕事である、助言、指導、援助等について、専門性を有していることとなります。
 しかし、大分市役所で勤務する実態としては、そういったこととは無縁の事務仕事のみを担当する職員もおり、「市役所側が、私たちの専門性を把握していないのではないか?」といった疑問や、逆に、「行政において私たちが発揮できる専門性とは何か?」といったことが話し合われました。
 そこで、福祉職にはやはり専門性があると広く認識してもらうために、裏付けされた知識の獲得、福祉職をハブとした福祉職場におけるネットワークの構築が必要であると考えました。
 また、福祉職は限定された職場で勤務することを前提としているため、今後、どのようなキャリアを積むことになるのかが不透明ということも議題として挙がり、安定した労働環境を背景に自己研さんが積めるよう、検討していく必要があると考えました。


3. 頼りになる福祉職をめざして

 まず、大分市役所内の福祉職間で連携が取れるように配慮をしたのは、勉強会立ち上げの時点からの目的でもあることは先ほど述べたとおりです。勉強会立ち上げ前から実施していた年一回の懇親会も交え、より、お互いに連絡しやすい関係となれるよう配慮しました。
 それに加え、他市の福祉職との関係性も獲得すべく、別府市の福祉職を勉強会に招き、情報交換するといった場も設けました。そこでは、お互いの市の採用・配属状況を比較し、その違いや共通点などを検討していきました。また、各市における事例を話し合い、互いの考えなどを話し合うことで、共通の価値観を確認することができ、連携の裾野を広げることができました。
 フリートークの中では、生活保護の困難事例が話し合われることが多くなっています。無気力、暴力的対応、能力不足などの諸問題に対して、自立につながる支援はどのようなものがあるかなどを話し合っています。ここでは、生活福祉課の職員が問題提起しつつも、それぞれが現在担当している業務や、これまでの経験から、多角的な検討がなされています。
 ともすれば経験則のみで行われがちなケースワークですが、社会福祉援助技術の視点を用いることにより、援助者としての自分を冷静に見つめなおして援助していけるなど、効果が表れていると思います。
 フリートークから発展した話題として、児童相談所の件があります。現在、児童相談所は、県及び政令指定市に設置されていますが、中核市も設置することができます。子ども家庭支援センターには一時保護や親子分離といった権限がなく、児童の福祉を守ることへの手詰まり感が否めません。とはいえ、児童相談所の設置には、費用や運用の面などで、簡単ではない問題が多くあります。国としては今後、中核市にも設置を促していく考えであるため、どのようなことを注意すれば、円滑に設置し運営していけるのかを進言するため、その設置に関する調査を独自に行う計画があります。


4. 私たちがめざす姿

 このような取り組み、調査・研究を通し、私たちは、市の福祉におけるシンクタンクとして機能できることをめざしています。
 福祉の職場内でただぐるぐると異動する人ではなく、福祉のプロとして認識していただけるよう、今後も活動を続けていきたいと考えています。