【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 「恵まれた自然を豊かに保ち、その恵みをうまく引き出すこと」ができる社会は、今後われわれがめざすべき、一つの未来像だ。大分県はそういった部分で、多くの魅力あるパーツを持っている。
 当WGでは、「森里川海」と魅力ある地域づくりの検討に資する活動として、臼杵市のハマボウについての調査と、県内各地で「森里川海」を生かしたNPO活動を行う団体への取材及び活動への派遣を行った。
 「一人一人が、森里川海の恵みを支える社会的文化」がこの大分で根付くことを期待したい。



「森里川海」と魅力ある地域づくりについて


大分県本部/大分県職員連合労働組合・森里川海のつながりを考えるワーキンググループ 加﨑 史啓

1. 「森・里・川・海」

 大分県の強みは恵まれた自然環境。
 「森里川海」は自然とそこに住む人々の生活圏を象徴した言葉だ。
 「森里川海」は互いにつながり、影響し合って恵みを生み出している。
 大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした現代社会が行き詰まっていく中で、「恵まれた自然を豊かに保ち、その恵みをうまく引き出し、生かすことができる社会」は、今後めざすべき、魅力あふれるひとつの未来像だ。
 本ワーキンググループでは、「森里川海」と魅力ある地域づくりの検討に資する活動として、臼杵市のハマボウについての調査と、県内各地で「森里川海」を生かしたNPO活動を行う団体への取材及び活動への派遣を行った。


2. 臼杵市のハマボウ調査

写真-1 ハマボウ  絶滅危惧種Ⅱ類(大分県)
 
表-1「ハマボウの地域別個体数と生育状況」
(2001、中西弘樹)

(1) 地域に愛される黄色い花の群落
 臼杵市諏訪に住民から愛されている黄色い花を咲かせる植物の群生地がある。
 当グループ構成員の所属先である臼杵土木事務所がこの群生地のとなりで河川工事を行ったことが、この植物と出会うきっかけである。
 地元の方や愛護団体などから、「この花を切ったら、所属長の首が飛ぶよ」とまで言わせしめるこの植物は「ハマボウ」。
 絶滅危惧種である。
 少し調べてみると、大分県レッドデータブックでは「生育地の減少や消滅が懸念される」と記載されており、その他の文献でも個体数や育成地について表-1のような紹介がされていることがわかった。
 かなり稀少である。
 しかも、どうやらこれ以上詳細に調べた文献が存在しないことがわかった。
 地域に愛され、全国的にも稀少なこの植物が、実はこの地域には相当数存在するのではないか?この植物について非常に興味が沸き、本ワーキングの一環としてこの黄色い花を咲かせる植物に関する調査を行うこととした。

(2) 調 査
 ハマボウは7月~8月に花が咲くため、その時期は確認がしやすいが、それ以外の時期は素人には確認がむずかしい。そのため調査は2016年と2017年の初夏に行った。
 臼杵市・津久見市内の沿岸部および河岸を調査したところ、ハマボウの育成地の分布は「別図-1」のとおりであった。
 これは、既存の文献を補完する貴重な成果となったのではないかと思われる。
 特に熊崎川河口部付近にある群落は先の文献でも最も大きな群落と記載されているが、現地では、はるかにそれを超える規模の群落となっている。
 この調査結果をうけ、ハマボウの生態環境などについて、大分県内の稀少植物に詳しい有識者を訪ね、下記のような解説をいただいた。

 臼杵川・末広川・熊崎川が合流する河口部にハマボウの分布がみられるのは、ハマボウの生育・発芽に適した環境となる「干潮時に陸、満潮時は潮水に浸かるような流れの少ない砂礫地(湿性地)」が存在するからである。
 ハマボウ自体も貴重種であるが、このような自然環境自体が貴重になっており、ハマボウを大切にするのではなく、それを育んでいる周辺環境ごと大切にしていく姿勢が大切である。
       別府大学文学部非常勤講師
       環境カウンセラー
       自然保護協会 自然観察指導員  小田 毅

 再度現地を調査すると、ハマボウ以外にも多くの稀少種の存在が確認され、この地域が育む生物多様性のポテンシャルの高さを覗い知ることができた。

 
写真-2 ハマサジ 絶滅危惧Ⅱ類(大分県)   写真-3 フクド 準絶滅危惧(大分県)

(3) ハマボウ調査まとめとそこから見えてくる展望
① 臼杵市のハマボウ群落は、全国的にも稀少なものである。 
② しかもその規模はおそらく県内最大規模。
③ ハマボウだけでなくそれを育んでいる環境自体が貴重。その他の稀少種も多数存在
④ 河口部の州などの浅瀬、湿性地が維持されるメカニズムを研究し、上流域での過度な土砂流出抑制対策や、安易な河川の掘削に走らず、土砂流出を適正にコントロールする必要がある。
⑤ 現在はただ単に「地域から愛されている」にとどまるハマボウであるが、ハマボウを含む州などの浅瀬、湿性地の重要性が、多くの市民の注目を集め、保全活動などがムーブメントとなれば、地域の大きな魅力の一つとなりえる可能性を秘めている。


3. 県内各地で取り組まれている「森里川海」

 県内各地で地域やNPO等で取り組まれている「森川里海」に関連する活動のうち、次の取り組みに当グループ構成員を派遣し、取材や活動への参加や活動協力を行った。

(1) ベッコウトンボの生息地保全活動(中津市)
写真-4 中津市 野依新池
 中津市の郊外にある野依新池。ここには希少種である「ベッコウトンボ」が生息している。
 戦前はどこの池でも見られたが、数が激減して国内希少野生動植物種に指定された。
 現在、生息地は11カ所にまで減ってしまっている。
 地域やNPOが、一般市民や学生から参加者を募り、ヨシ刈など池の陸地化を防ぎ、トンボが産卵できる空間を保全する活動を行っている。
 ヨシ刈りなどの作業は、重労働ではあるが、トンボの育成環境はとてもデリケートであるため、重機を用いず手作業で行われている。この努力が報われ、近年その個体数は増加傾向にあるとのこと。
 春には、冬の保全活動の成果が、トンボの乱舞として楽しむことができた。
 ※ 2016冬の生息域保護活動と2017春の観察会に当グループ構成員を派遣
                        (NPO水辺に遊ぶ会)

(2) 両子の森プロジェクト(国東市)

 
写真-5 両子寺  
 
写真-6 走水観音  
 「両子の森プロジェクト」は、1300年の歴史を持つ両子寺の境内の山に自然に近い森を復活させ、水の循環や土壌の回復をめざす取り組み。
 大分県の名水100選にも指定されている走水観音の周辺の山の伐採跡に、2011年に約2,000本の常緑樹・落葉樹を植樹。
 この植樹により植えられた木は、数百年にわたり世代交代をしながら両子の山に残っていくものをめざして行こうという実験。
 それ以降、毎年地域内外から意識の高いボランティアが集まり、下刈り作業が続けられている。
 下刈り作業後にお寺からふるまわれる、走水観音の名水で流す「流しそうめん」と地域の人たちとの交流は格別である。


 ※ 植林地の下刈り作業に当グループ構成員を派遣
         (両子寺 両子の森プロジェクト)  



(3) きらめ樹(国東市・由布市)
写真-7 荒廃した人工林
 国内には、林業の衰退により、手入れのされていない人工林(要間伐林)が1,400万haもあると言われている。
 ヒノキやスギの要間伐林では、木が育つ隙間なく植えられ、地面に光も届かないため、草や低い木がほとんど生えていない。枝は張れず、根も張れずしっかり大地に踏ん張れないために、森が土をつかむ力も弱く、台風や大雨のたびに倒壊する。土壌の流出や浸食も進み、ますます壊れやすい山になってきている。
 このように山の荒廃は現実のものとなっているが、林業業界における既存の取り組みでは、遅々として対策は進んでいない。
 そこで、市民の手による間伐活動によりこの問題に挑戦しようというのがこの「きらめ樹」という取り組みである。
写真-8 きらめ樹 市民の手でおこなう間伐
 「きらめ樹」とは、皮むき間伐の愛称。
 皮むき間伐とは、手鎌と竹ベラを使ってヒノキやスギの皮をむき、立ったまま木を枯らすことで森に光を入れる間伐方法。重機を使わず、林道もいらない。
 立ち枯れさせた木は、1年後に伐採すれば自然乾燥により人力で運び出せるほど軽くもなるため、市民の森林体験の場として間伐をイベント的に行うことも可能になる。
 山主にとって不要な間伐材の提供を受ければ、簡単な加工材をつくるなど、活動の資金を調達することもできる。
 もちろん間伐の効果で、残った木は将来高く売れるようになるのは言うまでもない。
 こういった取り組みは、既に東京圏で採算ラインに乗った持続可能な活動として「NPO森の蘇り(静岡県)」により実践されている。
 大分でも同じ取り組みにチャレンジしたいと、県内の有志の活動家が2016年から活動を開始した。
 近年九州では土砂災害が頻発しているため、災害予防の観点もありメンバーの士気は高い。
当自治研グループは、この活動の初期より関わり、
 2016年 ・皮むき間伐の試験地の紹介
     ・お話会(活動内容の説明会)
     ・皮むき間伐の試験実施
 2017年 ・国東市小原で大分県初の市民参加によるイベントとしての「きらめ樹」の実施
 2018年 ・由布市での「きらめ樹」の実施
などで、当グループ構成員を派遣。共に活動を行った。
 2017年には活動家グループは県内3箇所で拠点を作り、その活動を広げつつある。
 このムーブメントは今後も注目である。


4. まとめ

 近年ビジネスの世界では、非財務情報として「自然資本」が注目されてきている。まさに豊かな自然が財産となる~そんな時代になろうとしている。
 自然資本のポテンシャルこそ大分県の強みのはず。
 そして、それを生かすためには「一人一人が、森里川海の恵みを支える社会的文化」を築くことが必要だ。
 本自治研で取り組ませていただいた、調査や県内活動への参加活動は、それ自体は断片的な知見や経験を得るものに過ぎなかったかもしれないが、今後の来たるべき時代に、必ずや役立つものになるのではないかと大いに期待している。