【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 2017年10月27~28日に大分県杵築市にて開催された「UNDER35inきつき」へ参加した際のレポート。初日は各組合青年部の取り組みを聞き、グループワークにて各自治体のまちについて紹介しあった。2日目は杵築市職員などの取り組みを聞いたあと、実際に杵築市の武家屋敷界隈を観察し、グループで写真を撮り発表した。2日間を通じて、特に印象に残った3つの点に重点を置いて報告する。



UNDER35 in きつき参加報告書


熊本県本部/熊本市役所職員組合・保護管理援護課 守山 愛美

1. はじめに

 2017年10月27~28日に大分県杵築市にて開催された「UNDER35inきつき」へ参加した。本来であれば3日間の日程であったが台風がきていたため、3日目の内容は中止となり残念であった。しかし、2日間の内容でも十分盛りだくさんであった。企画の概要として、初日は各組合青年部の取り組みを聞き、グループワークにて各自治体のまちについて紹介しあった。2日目は杵築市職員や杵築市まちづくり協議会の下村会長の取り組みを聞き、路上観察家の前田先生のレクを受けて実際に杵築市の武家屋敷界隈を観察し、グループで写真を撮り、発表した。特に印象に残った内容として、3つの点に重点を置いて報告したい。

2. 各組合青年部の取り組みについて

 ひとつめの印象に残った点として各組合青年部の取り組みがある。大分県竹田市職で15年以上取り組んでいる「竹楽」という祭りについてである。竹田市ではその市名のとおり、竹林に大変恵まれているとのこと。ただし、竹林の荒廃が進んでいるので、里山の保全活動において竹を間伐する必要があり、その竹材を使用した竹灯篭を作り、イベントを行っているそうだ。竹田市職は「竹楽八景」を飾る化粧師として認められ、市民とともに活動を続けているとのことであった。


 また、大分県玖珠町では、日本童話祭が開催されている。その祭りではじゃんぼこいのぼりを設置しており、子どもたちにこいのぼりのお腹の中をくぐってもらうイベントに同町青年部ではボランティアとして参加し、親子連れの写真撮影のリクエストに応えたとのことであった。


 これらの活発な取り組み報告を受けて、会場からは「地元以外の組合員をどうやって地域の活動に巻き込むのか」「地域の行事をよく知らない職員やそもそも組合の活動に積極的でない職員との温度差、地元の職員と地元以外の職員の温度差についてどう対応するのか」といった質問が出た。
 発表者は地元の職員であったため、会場では結論は出なかった。私個人の意見としては、最初からハードルを高くしすぎないことが重要ではないかと思った。たとえば、市職としていきなり行事の企画側で活動するのではなく、いったんはその行事に「参加者」として行って体験し、地域を知ることから始めてもいいのではないか。そこで「楽しい」と感じたり、「ここ、もうちょっとこうだったらいいのに」と思ったり、「あれ、先輩がボランティアとして走り回っているな」と気づいたり、そういうところから始めてみてもいいのではないか。一度参加してみて「自分も企画してみたいな」と思うのであれば企画側にくわえてもらってもよいと思う。「そこはハードルが高い、自信がない」というのであれば、行事参加を続けてみて、参加者側としての感想を市職へ伝えてもいいと思う。市職ががんばっても、参加者がいないことには結局は地域活動は続いていかないのだから、無理に企画側でコミットすることを求める必要はないのではないかと思った。
 2日目の杵築市職員の話でもあったが「地域のことが好きでも嫌いでも、そこで働いているかぎり無関心ではいられない」ので、まずは地元民であろうがなかろうが地域に対して関心をもつことが大切であり、組合としては地域に関心をもってもらうような取り組みを行うことが必要ではないかと感じた。特に2日目に行ったまちあるきは大変楽しく、発見もあり、ユース部でも企画できる内容であるし、自治体業務にも還元できると思った。
 また、「組合の活動のうち、これについてはとても興味がある、他の組合活動はちょっと難しいけどこれだけは絶対に参加したい」という組合員に対しても柔軟に受け入れていくことが効果的なのではないかと思った。「あの子はこれだけしか参加しないよね」というよりは、「このイベントにはあの子がかかせないよね」という受け止め方で、すべての活動にフル参加できる職員をはじめから求め、そのような職員のみを歓迎するのではなく、活動ごとの固定メンバーを増やしていくのもいいのではないか。私は今回のような研修、研究会は興味があるので、できれば引き続き参加していきたいと思っている。


 初日の親睦会では、参加職員による生演奏が披露され、かぼすハイボールがふるまわれた。

3. 杵築市まちづくり協議会会長のお話について

 ふたつめに印象に残った点は、杵築市まちづくり協議会会長によるお話である。協議会の発足のきっかけは、商店街にある空き地利用を行政から一方的に決められたことであったとのことで、行政に対して商店街の意見を集約して伝え、ともにまちを創っていく組織体として、30~40代の若手事業者を中心に協議会をつくったとのことであった。

 

 会長の話の中で特に印象に残った部分としては、「なぜ行政は建築と観光で一緒に仕事をしないのか。絶対に一緒にしたほうがいいのに、これは建築、これは観光と言われる」という言葉である。私は市職員なので、一緒に仕事をしない理由がすぐにいくつか思い浮かんだ。「業務の根拠法が違う」「建築は技師さん、観光は事務屋」「主管省庁が違うから予算の補助メニューも違う」「局をまたぐから局主管課を通さないといけないのかな?」などなどの行政の中でのロジックである。ただ、これらの理由は単にわれわれ行政サイドが「一緒に働かないほうが都合がいい」理由に過ぎず、市民にとっては何の関係もない話である。
 私は現在福祉関係の課に在籍しているが、たとえば住宅確保要配慮者(高齢者やひとり親家庭等で民間住宅がなかなか借りにくい人)向けに空き家を登録する制度として、国土交通省と厚生労働省から連名での通知がくるなど、もはや市民の生活をサポートする上では縦割りしている場合ではない状態となっている。しかしながら、実際の業務は縦割りのままであり、現実の社会についていけていないように感じている。では、どうしたらいいのかといわれると、日ごろからの風通しはもちろんのこと、ある業務単位での横断的なプロジェクトチームを組むのがいいのではないかとも思った。そうやって単に仕事を増やすだけではなく、類似事業を一本化してその分の業務負担は減らすかわりに、複数課で分担して業務を行うなど、工夫の余地はあると思う。
 組合の強みとして、さまざまな課、さまざまな職種の職員の集合体であるため、それぞれのロジックを理解し、うまくやっていく方法を模索する場として勉強会や交流会は有用ではないかと感じた。

4. 杵築市商店街のまちあるきについて

  最後に印象に残った点は、ボランティアガイドによる杵築市商店街のまちあるきである。路上観察家の前田先生に事前にレクを受け、グループごとでゆっくりと散策した。前田先生によると、ただのマンホールであっても地域の特産品が描いてあるなど、地域力が出るとのこと。普段は気にもとめない、当たり前と感じているものが、実は地元以外の人から見ると非常に珍しいこともあるとのことであった。

 杵築市では、教育委員会や学校と協力して、子どもガイドの育成を行っているとのこと。杵築市歴史探検隊での活動を通じてまちの歴史を学んだ生徒が、歴史検定を受けて3つ星博士になると初めてボランティアガイドとして活動できるとのことであった。実際に案内をしてくれたガイドの子へたずねたところ、自分の住んでいる地域以外の、市域全体について出題されるため、非常に難しい試験であるとのこと。この日は雨であったので私服での案内であったが、晴れた日は着物を着て案内しているとのことであった。

 

 子どもガイドさんにぞろぞろとついてまわりながら、杵築市の武家屋敷を歩いた。藩校の門をくぐると杵築小学校であったり、武家屋敷のすぐ近くに幼稚園があったりと、非常に歴史深いまちであり、小さいころから日常的に文化財と触れ合っている杵築市の子たちは恵まれているなと感じた。
 私が前田先生のレクを受けて撮った写真をいくつか紹介する。
 これは、老舗の味噌屋さんで撮った写真である。

 商品の中に麦味噌と米味噌が入っており、自分の好みで混ぜて使う味噌(合わせ味噌)であるとのこと。まさに「合わせるのが味噌」である。おもしろいネーミングだと思った。
 これも同じ味噌屋さんで撮った写真である。

 最初ポスターに書いてある言葉の意味がよくわからなかったが、おそらく「タバコのかわりにお味噌汁を吸ったらいいよ(禁煙できるね)」ということであろう。これもひねりがきいていて面白いと思った。


 また、武家屋敷であるため、景観にも配慮された自販機があり、こちらも写真におさめた。この模様は屋敷前の床でも見ることができた。同じグループに建築職の方がいたため、説明を聞くことができたが、このように45度に線をひくとのっぺりとならず、奥行きが出ていいとのことであった。


 この商店街は道の拡張をしたとのことで、不自然な建物がちらほらと見受けられた。上記の写真は右側の建物の横幅が非常に狭いことがよくわかると思う。建築職の方によると、無理に後ろに下げたのだろうとのことであった。行政がよかれと思ってしたことでも、かえってまちなみがおかしくなってしまうこともあると思った。

 最後に同じグループメンバー&子どもガイドさんと一緒に記念撮影をした。

 このまちあるきでは、1~2時間かけてゆっくりと散策し、写真を撮り、みんなの前で発表した。同じところを回ったのに、着眼点は全然違うグループもあり、他のグループの気づきも共有できて楽しかった。正直このまちあるきをもう少し長くしてみたいと思ったくらい楽しかった。この商店街で食事をとらなかったので、次回はランチやカフェも利用しながら半日程度かけてまわってみたい。
 熊本市も新町古町界隈、上乃裏界隈、水前寺界隈など、いろいろと歴史や文化を感じる地域が多いと思う。ただここまでゆっくり時間をかけて歩いたことはなく、いつも飲み会や買い物のときに通り抜けるくらいであった。可能であれば、他の市町村の職員と一緒に本市のまちなみをともに散策し、新たな熊本の魅力を発見したいと思った。そのときにはきちんと説明できるよう、やはり「地域を知ること」が大切であろう。組合として、このようなまちあるきを企画し、ユース部目線・市職目線でのまちの魅力をフェイスブックなどで広報していってもいいのではないだろうか。

5. 最後に

 このレポートでは書ききれないほど、非常に充実した研修であった。業務にどう還元していくのか、まだ直接的にはつながりを見出せないでいるが、地域の中での自治体職員像や地域とのかかわり方などを職場から離れて広く考える機会は大事だと思う。他の組合員もぜひ参加してほしいと思う企画であった。