【要請レポート】

第37回土佐自治研集会
第12分科会 新しい公共のあり方「住民協働」理想と現実

 清掃職場において、職場を守るために運営体制の見直しを行い、職場改革から意識改革、意識改革から自主的な取り組み・住民協働へつながってきた取り組みの成果と課題の報告。



清掃現場から取り組む住民協働


広島県本部/呉市職員労働組合 延岡 直則

1. 収集体制見直しによる職場改革

(1) これまでの収集体制
 これまで清掃職場では、旧呉市内を約30のコースに分け、4t車・2t車・軽車両を用いてコース収集を行ってきました。
 コース収集においては、運転手、作業員が3ヶ月周期でコースを替わって行く事で、全職員が旧呉市全域を把握するといった利点はあったと思います。
 しかし、3ヶ月という短い周期の中で、収集を行う地域の実情や住民の思い等を考えるといった意識は無く、さらに自らのコースさえ収集すれば日々の業務が終わるといった意識しか持っていませんでした。

(2) 抜本的な体制見直しへの取り組み
 地方財政が厳しい中で、賃金構造改革等、国からの圧力が強まる中において、このままの体制を続けていては自らの賃金はもとより職場すら守れないと判断し、抜本的な運営体制の見直しを行うことを組合員へ提起してきました。
 見直しを行う際には、私たちが現場で得た知識や経験を企画・立案の部門で活用すること、さらには自らの働き方を変えていくことを基本方針として取り組みを進めました。
 収集体制については、これまでのコース収集からグループ収集へ切り替え、各グループに担当地域を割り振り地域に責任を持った収集を行う体制としました。
 また、各グループに連絡員、連絡補助員といったリーダー、サブリーダーを配置し、グループの運営や担当地域の自治会折衝等を主体的に行っています。
 また、これまで非現業職員で対応してきた事務的業務についても現業職員が中心となり行う体制として、2人を事務所に配置してきました。現在では現場から課長補佐1人、専門員3人を配置しています。

2. 職場改革から拡がる意識改革

(1) グループ収集における職員の意識の変化
 これまでは3ヶ月周期であったため地域を見ようとも、知ろうともしなかったものが、グループ収集により担当地域が振り分けられたことで、地域に目を向けるようになり、この地域では住民が早くからステーションの掃除に出てきているとか、ここでは熱心にステーション管理を行っている方が居る等、様々な地域における特徴が見えてきました。
 そういった部分を知る中で、できるだけ綺麗なステーションを維持しようといった意識を持つ職員が増え、収集後の飛散ごみの清掃やステーション周辺のごみを拾う等、担当地域への思い入れが強くなってきました。
 特に飛散防止ネットについては、丁寧に取り扱うようになり、綺麗にたたみ片づけるといった、自分たちがごみステーションを管理する立場であったらどうしてもらいたいかを考えて収集を行う職員が少しずつ増えてきました。

(2) 意識改革による自主的な取り組み
 各グループ内で、担当地域への思い入れが強くなる中で、綺麗で清潔な地域としていきたいといった意識から、ごみステーションは家庭ごみの排出場所であり、収集後は地域の景観を損ねるものであってはならないといった共通認識が生まれました。
 地域の景観を損ねないステーションとしていくために、どうすれば清潔に見えるのかを考える中で、飛散防止ネットにロープや金具を取り付ける事で綺麗に片づける事ができるのではないかといった意見がでるようになり、自分たちで創意工夫しながら行うようになりました。
 あわせて、枠組みが崩れているステーションの囲いや、穴が開いているネットの修繕等、自分たちができることを積極的に行うようになりました。

(3) 自らが変わることで生まれる地域との関わり
 ごみステーションの修繕作業を行っていると、興味を持った地域の方が「何をしているのですか?」「どうしてこんな事をしているの?」といった言葉をかけてくれるようになりました。その会話の中で、自分たちのステーションに対する思い等を伝えることができたり、住民の思いを聞くことができました。
 また、作業を見ている住民から別の地域のステーションの修繕依頼を受けることもあり、打ち合わせを現地で行うための日程調整や打ち合わせの際に用いる設計図の作成、必要な材料の購入依頼等、自分たちが今までに経験がないことを行うこととなりました。
 地域住民との約束を守るといった責任感から、どういった方法で行うのが良いのかを考えることで、行政の仕組み等、多くのことを知ろうとした結果、個々のスキルアップへと繋がっていきました。修繕後には感謝の言葉をかけてもらえたことで、自分たちのモチベーションが向上するとともに、業務に対する誇りと責任感が強くなりました。
 さらには、作業と会話を繰り返す中で、その地域で困っていることを相談されたりと、結果として様々なニーズを聞き取ることができました。

3. 取り組みの成果と課題

 これまで現業職場は住民に一番近い所と言われながらも、どうしても形にこだわった接し方を模索し、なかなか住民と接することができなかった私たちにとって、この取り組みにおいて、地域への関わりの持ち方を学ぶことができたのは非常に大きな成果であったと感じています。
 また、地域住民との約束を守ることへの責任感を持つので、地域への責任感が強くなり、ステーションだけではなく様々な視点から地域を見るといった意識を持つ職員も増えています。
 現場で働く私たち現業労働者は、職人気質の職員が多く、何かを取り組む際に自分たちだけで取り組むといった性格の職員が多くいます。しかしながら、私たちは自治体職員としてのルールを守る必要があり、自らの意思だけで物事を進めることが必ずしも良いとは限りません。そういった中で、住民との約束を絶対に守るといった思いから、行政の仕組みや組織としての対応等を学び、その中に現場の想いをぶつけていくことができたことは、現場での知識や経験を行政内部で活用していく一歩を踏み出せたと感じています。
 この取り組みは、一部の取り組みであり、まだまだ全体での取り組みとなっていません。全員が地域との関わりを持ち、地域への責任を認識することで、住民が何を望んでいるのか、自分たちは何ができるのかを考え、自治体職員として行動に移すことで、結果として地域にとって必要な職場、必要な職員となっていくのだと思います。そういった意識を持った職員を少しでも増やしていくためにも、多くの職員に地域との関わりを体験させていくために引き続き、取り組みを進め、住民と共に安全で清潔な地域づくりを展開していきます。

ステーション修繕例
① 広地区
 ネットが破損しており、ネットを固定しているバーも傾いている状態であったため、ネットを取り外した。
 傾いたバーを固定しなおし、新たに自治会で購入してもらったネットを取り付け、収集後にはネットを巻き上げて固定するためのフックを取り付けた。

② 東畑地区
 国道から一段上にあるステーションで、カラスや猫がごみ袋をつつき、下段にごみを落としたり、地域の老人が腰かけた際に落下したこともある危険な場所であったため、自治会を通じて関係課へ柵を設置することを要請してもらい設置された柵にネットを取り付けた。

③ 宮原地区(1)
 ネットを固定している物干し台が歩道側に向いており、高さについても歩行者が当たる程度の高さであったため、現状の危険性や修繕方法を住民に説明を行った。

④ 宮原地区(2)
 小学生の通学路となっており、信号機の無い横断歩道であったため、児童の安全のため、注意書きを入れたもの。

⑤ 吉浦地区
 通学路であるが、歩道が狭いため、ネットをガードパイプいっぱいに取り付けることで、ごみを出すスペースを拡げた。
 作業中には近くを通る住民から、車椅子で通る住民が助かるといった会話も聞くことができた。

宮原10丁目ステーション改善計画
環境業務課Cグループ 地域班
幅約5mの道路のガードレールに設置しているステーションで、ガードレールに物干し台を2ヵ所で固定し、台に物干し竿を固定して、竿を中心に前面と背面に飛散防止ネット取り付けてあり、収集後の前面ネットの収納は、ネットの裾を物干し竿に折り畳んでの収納になっている。
改善後イメージ
上の写真でも分かるように、物干し台の向きがガードレールに対し直角に固定されている為、台の竿を置くL字の先が道路側に向き、ちょうど人の頭から顔の高さにあるので、安全性を考え、物干し台をガードレールに対し水平に固定し、道路に台のL字の先が出ないようにする。
ごみ排出時にネットを出しやすい様に、竿の位置を低くして台に固定する。
ごみ排出時のイメージ
収集後の収納イメージ
収集後は左の写真のように、前面の飛散防止ネットを巻き上げ、物干し竿に取り付けてある収納ロープで巻き上げたネットを包み、物干し竿にフックを掛けて収納する。