【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第12分科会 新しい公共のあり方「住民協働」理想と現実

 福井市職員労働組合設立70周年記念事業としての位置づけを受け、福井市民自治研究センターが設立されました。「市民がいなくては、福井市も職員組合も70周年を迎えられなかった」という市民への感謝を基礎にして、①住民とともに考え、住民に寄り添う住民協働システムの構築、②先進的な行政施策の立案、③人と人とが支えあう共生社会の実現を趣旨として、よりよい未来へ向けて歩み始めました。



福井市民自治研究センターの設立と求められる役割
―― 福井市職労70周年と市民感謝祭 ――

福井県本部/福井市公営企業労働組合・執行委員長
福井県地方自治研究センター・理事 出蔵 健至


市民、組合員および関係者でにぎわいを見せる「縁日ビアガーデン」

1. 福井市民自治研究センター設立の契機

 福井県は、自治研究活動が盛んな県と認識されているのではないでしょうか。自治労福井県本部内には、福井県地方自治研究センターと自治研推進委員会が設置されているほか、丹南市民自治研究センターと坂井あわら市民自治研究センターの2つの地域ローカル自治研センターがそれぞれ活動しています。また、純粋な自治研活動としての活動でなくとも、各単組では職場の課題解決に向けた職場自治研が自然と活動の中で行われています。
 一方で、それらの活動がしばしば「自治研活動」として認知されていないこと。また、そのような活動は職場内で完結するものが多く取り上げられており、市民をまきこんだものや地域への貢献といった視点の活動が減少傾向であること。さらに、地域によって活動への意識や密度に差があることなどが課題であるように思われました。
 このような状況の中、自治労福井県本部と福井県地方自治研究センターは、職場外での自治研活動の推進と地域間格差を埋めるための拠点作り、そして福井県北部一体での自治研活動の発展をめざして、福井と奥越、ふたつのローカル支援センターの設立を活動方針に位置付けて取り組むこととしました。
 そして2016年度の総会では、福井市職員労働組合を中心とした福井市民自治研究センターの設立に向けて、当時県本部専従を終え、単組に戻ることとなっていた私が担当理事として就任することになりました。

2. 設立に向けた取り組み

 福井市職員労働組合は、3人の単組専従と100%の組合加入率を維持し活発に活動している組合です。親組合の中に、本庁、公営企業、ネットワーク(旧現業)、保育、ユース、女性などの単組や部会を持ち、それぞれが定期的な学習会を開催しているなど、組合員間の交流・学習活動も盛んです。
 近年では、全職場の組合員からの意見を吸い上げ、要求・交渉に反映していく「職場懇談会」の活動に力を入れて取り組んでいます。しかし、その活動の活発さ故か、過去にも自治研センターの設立が試みられましたが、自治研センターは未設立で、自治研活動をもっぱら行う組織は無い状態でした。
 そのような中ではありましたが、当時福井市役所には職員の自主的な研究グループがあり、自治体当局側も自己啓発や職員の地域活動を推奨しているなど、自治研センター設立に向けた状況は決して悪くはありませんでした。市職労執行委員会でもセンター設立の意思決定を受け、後は総会の開催と設立をするのみとなりました。
 ところが、地域活動への関心の高まりを感じる環境下にあって、活動そのものへの賛同者は集まるものの、それぞれが活動を行っているプレイヤーばかりでもあったため、組織のあり方の詳細は決まらないままに時間だけが過ぎていきました。
 自治研センターが立ち上がらないまま迎えた2017年は福井市職労が結成70年となる節目の年でした。自治研センターの組織や理事体制を決めるのに思いの外労力が必要であったため、ここで思い切って方針を転換して、先に自治研センターそのものを設立してしまおうということになりました。
 自治研センター設立は、70周年の記念事業としての位置づけを受け、記念レセプションの中で設立総会を行うこととなりました。

3. 福井市職労70周年記念事業と自治研


記念レセプションであいさつする野田執行委員長

記念演奏会やトークショー、ゆるキャラも盛り上げ

給食調理員さんによる揚げパン・ラスク販売
 福井市職労の70周年記念事業には、多くの自治研的要素が盛り込まれ、自治研センターの設立にふさわしいものとなりました。提供サブテーマに「市民感謝祭」を設定し、「市民がいなくては、福井市も職員組合も70年を迎えられなかった。」とあらゆるイベントに市民への感謝や市民の参加への配慮が行われました。
 記念レセプションの後段では、地元出身のバレーボール選手を招いての講演イベントや、地元ブラスバンドのコンサートが行われました。また、子ども連れの方も参加しやすいようにと、屋外のテラスで開催された福井市主催の国体関連イベント「ハピリンピック」に、これまでの活動でつながりのあった各種団体への参加協力を呼びかけ、福井市本庁職員組合ネットワーク支部の給食調理員さんは、揚げパンとラスクの販売などで参加しました。
 福井駅前の道路の一角を専有して開催された「縁日ビアガーデン」は、近隣の多くの飲食店に出店を依頼し、組合員も市民も参加できるイベントとして開催されました。当日は、多くの組合員やその家族、近くを通りがかった市民でたいへんな盛況ぶりでした。
 そして、記念レセプションの中で開催された設立総会では、センターの設立趣意を提案した後、参加者の承認多数を受けて、福井市民自治研究センターはついに設立を果たしました。

4. 福井市民自治研究センターの設立趣旨と今後の取り組み


設立後にあいさつする村田福井市議会議員(組織内)
 福井市民自治研究センターは、設立に当たり、①住民とともに考え、住民に寄り添う住民協働のシステムの構築、②先進的な行政施策の立案、③人と人が支えあう共生社会の実現、の3つの趣意を掲げました。
 そして、それぞれの柱の中では、それらの理想を実現するための手段としては、人や地域の多様性や特徴を尊重し、そこに関わるすべての人や機関が当事者意識を持ってトライ&エラーを繰り返しながらより良い社会をめざしていく姿を設定しました。福井市民自治研究センターには、そういった挑戦を支援する組織として機能していくこと、とりわけこれまでの活動の中では取り組まれることの少なかった地域課題解決のための職場外の活動支援を期待しています。
 なんとか設立が承認された福井市民自治研究センターですが、現状はきちんとした組織体制を持たないままです。今後は、準備担当理事で協議を重ねながら、2018年7月までの第一回総会の開催と、組織体制の確立に向けて取り組みます。
 そして、その趣意に従い、自治労組合員だけでなく、私たちのまちに関わり、挑戦している人たちに繋がりと協働をもたらしていけるよう人の助け合いを支援し、人と人、活動と活動につながりを作り出すための取り組みを進めていきます。自治研センターの活動が、挑戦を繰り返しながら発展・拡大し、住民の方が、「なんだか福井市って良くなっている気がするよね。」と、微笑みながら安心して生きがいを求めていけるような未来を期待し、その未来へ向けて一歩でも半歩でも進めていけるような役割を果たせるよう取り組みを進めていきたいと思います。