【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
地元企画分科会 「ふるさと」を次の世代へ~「犠牲者ゼロ」の防災まちづくり~

 東日本大震災及び熊本地震においては、多くの自治労組合員が行政支援や自治労支援行動などで復旧・復興支援に参加した。また、鹿屋市職労においても、自治研活動の一環として独自支援を実施した。このような経験の中で、自ら被災しながらも休み無く奮闘する自治労組合員の仲間に対する支援は十分だったのか、もどかしい想いもあった。「支援できる」「支援される」ために今後、何が重要か、考察した。



被災地支援・組合員支援のあり方
―― 東日本大震災と熊本地震の支援活動を受けて ――

鹿児島県本部/鹿屋市職員労働組合 吉見 浩一

1. はじめに

 2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震においては、全国の自治体から職員として、また、連合や自治労の労働組合支援として、多くの自治労組合員が復旧・復興支援に従事・参加している。鹿屋市職労においても、それぞれの立場で支援に参加し、貴重な経験を得るとともに、実際に「我が身」となったときの課題等について、考えさせられるきっかけとなった。一方で、被災地で被災者でありながら身を粉にして奮闘する仲間の自治労組合員を「助ける(=休ませる)」ことができたのか、自問自答させられた。さらに、2016年9月に九州南部を直撃した台風16号災害においては、鹿屋市自らが被災自治体となり、災害復旧業務はもとより、被災者支援の取り組みまで、鹿屋市・鹿屋市職労が当事者として対応しなければならない場面を迎えた。
 本レポートでは、鹿屋市職労が経験した、これらの活動等を振り返り、考察をすることを通じて「被災地支援」と「組合員支援」のあり方を考えていきたい。

2. 「東日本大震災」での支援活動

(1) 行政支援
① 大隅半島4市5町復興支援チーム(岩手県大船渡市)
 2011年3月~7月に1週間交替で派遣(鹿屋市からは一般職員・保健師を延べ32人)
 【支援内容】支援物資管理、廃車置場管理、避難者健康管理など
② 長期派遣
 土木技師を年度単位で派遣(2012年4月~2017年3月延べ2人)

(2) 独自ボランティア支援
 自治研活動の一環として、有志の組合員(5人)によるボランティア派遣を実施
○日程 :2011年6月26日(日)~7月2日(土)
○支援先:宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市(各災害ボランティアセンター)
○滞在先:岩手県一関市(千厩町小梨公民館)
○活動内容
 ・災害ボランティアの経験(ボランティアセンターの運営と役割)
 ・広域災害における後方支援のあり方・手法
 ・気仙沼市職労書記局訪問(意見交換)
  ⇒この時点(7月)で、ようやく週1日休めるようになったと役員より話があった
 ・一関市協働推進課との意見交換
   ↑
※一関市が、気仙沼市・陸前高田市を支援する団体に、市施設を宿泊用に無償提供
 ⇒被災地の宿泊施設が不足した中、ボランティアや支援団体の確保に効果を発揮

3. 「2016年熊本地震」での支援活動

(1) 行政支援
① 大隅半島4市5町復興支援チーム(熊本県宇城市・罹災証明受付等)
 4月下旬~6月に、1週間交替で派遣(鹿屋市からは常時2人派遣)
② 住宅被害調査支援(応急危険度判定、罹災証明用被害認定調査ほか)
 4月下旬~6月に、建築技師を常時2人派遣(数日交替):熊本県甲佐町など
③ その他専門職派遣(短期)
 上水道・下水道職員、保健師などを派遣
④ 中期派遣
 7月から土木技師を1人派遣(9月まで)

(2) 独自ボランティア支援(日帰り)
 自治研活動の一環として、東日本大震災での独自支援経験を活かし、大型連休後の週末に日帰り支援を実施
・5月28日(土)熊本県宇城市災害ボランティアセンター、4人参加
・6月4日(土)※雨天予報のため、前日に中止決定(4人予定)

(3) 自治労本部支援
○西日本の各地連から、阿蘇市・山都町を拠点に、熊本地区の被災自治体(単組)に派遣
 【支援内容】避難所運営補助、罹災証明事務補助、がれき搬入作業など
○鹿屋市職労から6月15日~19日(5日間・熊本市内の避難所運営補助)
 ※基本は8日間のところ、総支部内他単組と分担して参加
  長期間になればなるほど、日程によっては要員確保が困難

(4) 熊本県本部の取り組みから(ヒント)
・4月下旬~5月上旬の土日を中心に、県北部や芦北・球磨地区などの単組が、避難所運営補助などの日帰り支援を実施
・5月以降も、自治労本部の支援活動休止日(引継ぎ日)となる日曜日は、熊本県本部の各単組が日帰りでカバー
 ↑
※隣県(鹿児島県本土、福岡県、佐賀県など)からも対応可能ではなかったか?

4. 支援活動の種類と自治労組合員の役割

(1) 支援活動の分類
 2.の東日本大震災、3.の熊本地震における被災地支援について、ニーズ面から次の3パターンを分類してみた。
① 行政業務支援 :公共的 行政(自治体)職員でなければできない
         【支援内容】応急支援(給水等)、避難所運営、罹災証明・調査、復旧復興計画など
② 被災者への支援:個人的 被災者に対する直接的な支援(行政「官」が関与困難)
         【支援内容】被災者宅の後片付け、仮設住宅引越など
③ 組合(員)支援:①②の中間的役割⇒組織的かつ専門的な支援も可能
          ※行政支援では賄えない、被災地職員の補助=被災地組合員の肩代わり
 なお、③の中間的支援については、様々な分野が考えられるが、本レポートでは被災地の組合員をサポートする支援活動を位置付けてみた。

(2) 支援活動と担い手~自治労組合員はいかなる立場でも対応できる
 (1)を踏まえて、支援の種類をニーズ・担い手などから整理するとともに、鹿屋市・鹿屋市職労が実施した支援活動を分類してみた。

役割支援の種類ニーズ調整役担い手鹿屋市職活動実績
行政支援
行政業務従事
行政機関
(行政事務)
行政当局行政職員
(=組合員)
東:初期短期派遣(一般職ほか)
  長期派遣(土木技師)
熊:初期短期派遣(一般職ほか)
  中期派遣(土木技師)
組合(員)支援
行政業務補助
行政職員
(組合員)
自治労
行政
自治労組合員
(=行政職員)
熊:自治労本部支援活動
  (5日間・2人)
被災者支援
ボランティア
被災者災害VC
社協、NPO
市民、NPO
(=組合員も)
東:ボランティア(1週間)
熊:ボランティア(日帰り)
※東:東日本大震災、熊:熊本地震

 このように、自治労組合員は、支援活動のあらゆるモードにも対応できる「オールマイティ」であることが分かる。

5. 支援活動における課題と対応

(1) 支援活動において検討すべき課題
 支援活動(当然、救助や応急復旧後など受け入れ体制が整ってからであるが)に当たっては、当然準備・検討が必要となるが、次の4段階の課題をまとめてみた。
・第1段階:支援活動の調整(応急復旧後、受け入れ体制が整ってから)
・第2段階:交通手段の確保
・第3段階:宿泊手段の確保 ※現地手配は当面困難
      ①周辺地での施設確保(例)自治労本部支援のベースキャンプ
      ②周辺自治体の後方支援(例)岩手県一関市の公共施設提供など
・第4段階:支援要員の確保
      大規模・広域・長期になるほど、要員確保が困難(現地、支援側双方とも)

(2) 課題への対応
 課題を検討するに当たり、行政支援については基本的に行政当局が行うため、ここでは、被災組合員の支援(負担軽減)を主眼に、組合支援について考察してみる。
 この場合、被災当初の被災地組合員の負担軽減を図る観点から、被災後、数日後から数週間内の支援活動で考えてみると、(1)の第2段階までは現地の体制確保が必要最低条件だが、第3段階以降については、支援側の工夫が求められる。特に第3段階「宿泊手配」・第4段階「要員確保」については「日帰り支援」も重要なツールと考える。以下、メリット・デメリットと対応を考察する。
【メリット】 宿泊手配が不要
       日帰り圏に限られるが、人員確保が容易⇒特に土日は人海戦術を打てる
【デメリット】単日での支援となり、継続性が薄れる
       ⇒支援拠点(担当県本部・単組)を置き、事前・事後研修(引継ぎ)でカバーできる
 熊本地震の場合は、鹿児島県などからの行政支援でも日帰り支援があったことから、組合支援でも十分可能と考える。土日だけでも被災地組合員を「休ませる」支援も、組合運動(組合員の助け合い)として重要な視点ではないだろうか。特に、近隣(日帰り圏)県本部間での連携が重要である。また、熊本地震や西日本豪雨などでも見られたように、担当都道府県・政令市が被災自治体との直接的な調整機能を担う「対口(たいこう)支援」についても、自治労として検討すべきではないか。
 また、要員確保については、行政当局側も組合側も、職員の確保が大前提となる。しかしながら、平時でも足りない現状では、災害時に到底対応できない。特に土木技師・建築技師など技術職員の不足は、被災地はもちろん、支援・派遣する側にとっても深刻である。いざというとき、「役に立てる」か「役に立てない」かは雲泥の差であり、行政として、自治労として、その存在意義を問われる。
 いずれにしても、「平時」から想定していなければ、いざ必要になった時の対応(スピード)の差となる。

6. 2016年台風16号災害~被災自治体となって

(1) 台風16号災害
 このような中、2016年9月20日に非常に強い台風16号が鹿児島県大隅半島に上陸した。台風は暴風と局地的な豪雨をもたらし、直撃を受けた鹿屋市は、市内北部の輝北・高隈地区を中心に、幸いにも人的被害は免れたものの、道路網や、田畑・畜舎などの農業関係に甚大な被害を受けた。
 また、隣接する垂水市も、平野部の住宅地に浸水被害が多く発生した。

(2) 対応と課題
 垂水市は、住宅の浸水被害が多かったことから、早期に災害ボランティアセンター(災害VC)が開設され、県内を中心に多くのボランティアが復旧作業に参加し、垂水市職労からも数多く参加した。
 一方、鹿屋市においては、住宅の浸水被害は数軒であったことから、災害VCの開設は見送られた。しかしながら、農業施設の被害は大きく、住宅でないからといって、自助努力に委ねるのは酷であった。実際に、泥の入った施設や田畑の作業は人海戦術に頼らざるを得ず、その復旧作業に際しては、鹿屋市当局(防災担当課)と鹿屋市職労が協働して行い、鹿屋市と大隅肝属消防組合の職員を中心に参加を募り(平日はボランティア休暇対応)、鹿屋市職労は作業物資の提供や保険加入など側面的支援を実施した。住宅被害も、実際は風水害のニーズが少なからずあったと思われ、災害VCが開設されなかったことによる「支援する側」「支援される側」のノウハウの蓄積ができなかったことは、残念に思う。
 加えて、土木職場を中心に膨大な復旧業務が発生し、今なお、その影響が残っている(また、結果的に岩手や熊本への土木職員の派遣も期間満了の形で引き揚げとなった)。
 この台風災害は、東日本大震災や熊本地震と比較すべきものではないが、いざ被災したとき、どう対応できるのか、様々な課題を突き付けるものとなった。

7. 最後に~我が身として、「支援できる=支援される」ために~

 大規模災害時に、十分な支援ができていないこと
 ⇒いざ、自分たちが被災したときに、十分な支援が受けられないということ
 東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨など、大規模災害が頻発
   ↓
 支援体制は十分だったのか?
 ⇒組合員が休めていない=十分な支援だったとは言えない
   ↓
 自治労・組合として、これまでの支援体制の検証と、「平時」から備えることが必要
 被災地支援のみならず、「被災地の仲間を支援する」という視点にも重きを置いていいのではないか


○熊本地震被災単組の委員長の言葉
 「直接的支援(行政支援など)に限らず、一般ボランティアなどの間接支援であっても、それで避難所から自宅に早く帰れる住民が少しでもいれば、それだけ避難所の職員の負担が軽減されるので、どんな支援でもありがたい」

○自治労組合員:オールマイティ(行政支援・公的支援から民間支援まで)
 ⇒だからこそ、「支援しやすい」=「支援されやすい」体制づくりが必要