2 行政評価は市民自治のパートナーになるか

  大阪府本部 豊中市労連 江 川 真 人

 

 豊中市では、 98年1月の行財政活性化市民懇話会提言を受け、 99年10月に 「行財政改革大綱」 を定め、 大綱にもとづき 「実施計画」 をつくり行財政改革をすすめてきている。
 それに対して、 市労連は、 分権の時代に相応しい、 徹底した情報公開と市民の参加・参画によるまちづくりをすすめるため、 分権・行財政改革対策委員会を設置し、 その中に9つの作業部会 (ヒューマンコミニティ・市民参加・情報公開・環境・人権・医療・福祉・事務事業・組織人事) をつくり、 各課題毎の検討を行い市当局と分権推進に関わる協議を進めてきた。
 行革大綱にもとづき、 99年10月に、 当局から原案が示された事務事業評価システムについて、 市労連は、 要望書を提出した。 そこで、 充分な労使協議、 事務事業に留まらない総合的な行政評価の仕組みづくり、 外部評価の導入などを求めた。
 市労連は、 事務事業評価システムをスタートとする総合的行政評価システムの導入を、 人員削減や財政支出の削減、 市民サービス切り捨ての手段としてではなく、 分権時代にふさわしい行政のあり方を創り出す手段として位置付け、 積極的な関わりを持つ道を選び取り組んできた。
 以下に当局の取り組みについて記述する。

1. 豊中市における行政評価の現状と考え方
 行政の活動を総合的に評価するしくみ (行政評価) には明確な定義が存在していないことから、 理想とする評価システムを明確に規定し、 その実現に向けて継続的取り組みが求められる。
 行政評価の実施に向けては、 事務事業や政策・施策の評価を個々に実施するのではなく、 事務事業評価 (事後評価) の結果が事前評価に反映できるような一連の評価として実施する。
 そのため、 政策や施策を体系化する総合計画、 施策を具体的に実施する事務事業、 事務事業を実施するために必要となる予算、 人員計画 (人事) といった庁内の仕組みを有機的に連動させ、 計画→実施→評価のサイクルを構築していく必要がある。

図表 行政評価の概念

2. これまでの検討経過

図表 これまでの検討経過

3. 事務事業評価の方法
(1) 事務事業評価システムの定義
   事務事業評価システムとは、 豊中市が行っている活動を評価する行政評価の一部として、 事務事業を評価するための一連の流れとそれぞれの判断ポイントにおける検討を標準化したもので、 誰が行っても一定の成果を残すことができるような仕組み。
(2) 事務事業評価システム導入の目的
  ① 行政が実施する活動の適正化・効率化・高質化
  ② 市民への説明責任 (アカウンタビリティ) の実現
  ③ 組織の意識改革
(3) 評価の範囲及び対象
  ① 評価の範囲

   事業: ・公共事業
・施設運営・管理
・市民サービス事業
   事務: ・総務事務・企画・調整市民へのサービス事務・基礎執行
・施設管理
・対団体への事務 (一部事務事務組合への負担金、 外郭団体への補助金交付事務等)

  ② 評価の対象
    行政評価の対象としては、 政策や施策を対象とする政策評価と個々の事務事業を対象とする事務事業評価に分類される。
    評価を行う時点から見ると、 計画→実施→評価という事業サイクルにあわせ、 事前評価、 進行管理、 事後評価という評価が行われる。
    事前評価については、 十分とはいえないものの、 原課や予算査定などで実施されているが、 事後評価についてはこれまでほとんど取り組みがなされていないので、 当面事後評価システムの確立を目指し、 その後、 進行管理、 事前評価に着手していく。 (具体的に事業を行っているため一番評価になじみやすい)

参考 行政評価と事務事業評価の比較

分 類 内     容 メ リ ッ ト デ メ リ ッ ト
政策評価 ・総合計画に基づく政策や施策の目標を対象とした評価。
・市長の施政方針の内容を対象とした評価。
・成果や目標達成度による評価が行いやすい
・相対評価 (優先順位等) を議論しやすい
・指標の内容が市民に分かりやすい
・予測を前提とした評価であり将来への変化を評価しづらい
・効率性等の評価が困難
事業評価 ・政策や施策を実現するために行政が行う具体的な活動である事務事業を対象とした評価。 ・予算との連動が容易 (事業別予算の場合) -効率性等の具体的議論が行いやすい
・具体的に事業を行っているため職員がなじみやすい
・成果や目標が設定しづらい
・相対評価 (優先順位等) ができない
・評価対象が多大 (1000~3000程度)
・スクワップアンドビルドになじみにくい

(4) 評価の単位
   評価単位については、 予算編成との連動を確保するため、 事務事業データベースと 予算の事業細目との対比によって新しい評価対象項目を作成する。
   また、 これに合わせて、 総合計画の進行管理に利用できるような体系化も検討していく。

図表 他のシステムとの関連イメージ

事務事業評価の評価単位

4. 行政評価の具体化への考え方
 目標像の具体化については、 全ての取り組みを一度に実施することは不可能であり、 段階的導入を図る。
 また、 事務事業評価については、 完成されたものではないことから、 今後毎年の継続実施により充実を図っていく。

平成12年度
評価の導入と職員の意識改革

●評価の対象及び時点:事務事業の事後評価を先行的に導入。 (既に先進的自治体において導入が行われ一定の手法が定着しつつあるとともに、 職員にとってもなじみやすい)
●内部評価:原局評価と機関評価を並行して実施。
●外部評価:間接評価を先行的に導入。 (直接評価の導入に向けては体制の検討と整備に時間が必要であり検討を継続する)
●平成13年度以降に実施する取り組みについても検討に着手。

平成13年度以降
実施範囲の拡大と充実

●平成12年度に導入した事務事業評価を基礎として制度の完成度を高めるとともに、 庁内諸制度 (予算や総合計画) との連動を確保し、 最終的には政策評価の導入に向けた取り組み・検討を行う。
●取り組み・検討内容
 ①政策評価と施策評価・事務事業評価の連動を担保するため、 政策・施策、 事務事業、 予算とのすりあわせ。
 ②評価を恒常的に行っていくための組織設置
 ③外部評価からの直接評価を行うための仕組みづくり


5. 評価の方法
 評価については、 目的の妥当性 (事務事業の根拠)、 緊急・需要性、 公民の役割分担、 成果・効果、 効率性という5つの視点からの評価を総合的に勘案した後、 業務を中止した場合の影響を確認し、 総合評価を行う。
 業務中止の影響を検討する際には、 業務を中止することによる著しい不都合の発生、 社会的弱者や少数者への影響について、 特に注意を払うものとする。
 総合判断の結果は、 継続、 業務内容の見直し、 休止・廃止の3方向とし、 内容の見直しについては拡大の概念を含んだものとする。

評価の視点・ポイント

6. 調書およびマニュアル
 評価を実施するための調書については、 一般の事務事業を対象としたものと施設を対象としたものの2種類を用意する。

7. 実施期間等
 実施期間については、 手法や実施方法等に関する完成度が高まるまでは毎年実施するものとする。
 制度の定着後については、 数年毎のローリング等について検討を行う。

8. 外部評価の実施
 外部評価については、 当面は公開をもって評価と見なす間接評価を導入する。
 公開された評価結果についての市民からの意見等については、 所管部局に通知し予算に反映、 次年度以降の事務事業評価、 行財政改革第2期実施を反映していく。
 事務事業評価から施策評価へのシステム拡大時に市民からの意見を採り入れる方策を考える必要がある。

9. 公開方法
 内容については調書の内容を全て公開する。
 公開については、 市民が利用しやすいように、 市政情報コーナー等での調書の公開に加え、 インターネットでの公開を行う。
 インターネットでの公開に当たっては、 自由な検索が可能なシステムを使用する。

公開の方法

 以上が市当局の取り組み状況であり、 労働組合としては職場における業務改革の取り組みを強化しつつ、 「行政評価システム」 との適切な関わりと運用を図るなかで、 業務の正当な評価と位置づけを明確にさせることを展望し、 その結果として自治体改革の実現に向かって積極的に関与すべきである。
 本格化の当初は業務量が増大し、 職場での不満や不平が充満することは否定できない。
 しかし、 そこにとどまる限り、 仕事における自己点検と自己開発を通じた新たな発展はあり得ない。
 地方分権一括法の趣旨でもある、 行政による積極的な情報公開、 政策形成過程もふくめた行政への市民の参加・参画、 行政による市民への説明責任など、 多くの変革を図らなければならない。
 従来の発想から脱して仕事のとらえ方、 進め方を転換させる機会として 「総合的行政評価システム」 の導入を求めて連動を構築するべきである。