Ⅴ 2010年をつくるキーワード

 

田村 静子

 市民参加の市民は、自治体に暮らす居住者 (住民)、働く在勤者、学ぶ在学者を指している。 市区町村別 (市民・区民・町民・村民) ではなくこれらを市民と総称し、その参加のあり方と実践が、実証される時代として21世紀を受け止める必要があろう。 自治体は、肩書きに囚われない市民の声や態度に五感を研ぎ澄まし、感度のよいアクションによって、市民とのパートナーシップを発揮していくことが求められる。
 市民は、市民を互いに尊重し、自らが担う公人性に気づき、尊厳をもって責任を果たすアクティブな市民となることが求められている。 この自治体と市民が共に歩むとき市民社会は自らの手にあるのではないだろうか。

 

星  寛治

 小さな共生社会を描く
 21世紀のキーワードは、「環境と生命」・「自立と共生」・「持つことから在ることへ」 である。 グローバルスタンダードの対抗軸として生命地域主義を据えていく。
 いま、産業社会のあがきに似た企業のリストラと大型合併が進行しているが、その内実は経営主義が先行し、弱者に冷たい不公正な社会を再現している。 地方自治体や農協など、公共性の高い組織機構においては、「大は力なり」 という大型信仰は疑問が残る。 住民が顔の見える関係を維持しながら、夫々に足らない所は補い合い、共に生きるソフトな社会をめざしたい。

 

丸岡 一直

 「みどりのフロンティア」 めざして~環境重視の政策展開
・合併浄化槽の全町展開 ― 「土建型公共事業」 という単語を私たちは持っていません (そういう表現をする人たちがいるということは認めます)。 必要なものは必要であり、いらないものはいらない。 必要かつ求められる社会資本は整備していくべきと思います。 そのことを基本として、この場合は、求められているのは生活排水を浄化して水環境をよくする、トイレの水洗化を進める、その方法ということですから、下水道、集落排水、合併浄化槽、選択しうる手法の中から実行可能な、財政的負担が少ない、効果が早い、住民負担も少ないものとして浄化槽を選んだ、という経緯です。 「土建型」 だからやめたということではありません。
 以下、同じ趣旨ですが、
・自転車の町づくり
・ISO14001認証取得
・新エネルギーへの取り組み
・白神ふたつい郷土の森完成~総合環境学習ゾーン、森の学校
・環境保全型農業の実験 (荷上場・奥岱)
といったものがあります。

 

河村  孝

 パートナーシップ協定
 三鷹市で1999年10月に発足した、みたか市民プラン21会議は、市の基本構想・基本計画の見直しに関して提言を行う市民の自主組織である。 現在、この21会議には約400人の市民が参加し、10のテーマ別に分科会を設置し、提言づくりを行っている。 この21会議の発足に際して、三鷹市と同会議とは 「パートナーシップ協定」 を締結した。 協定では、市と同会議の協働に関する原則や相互の役割分担や責務などを明確にしている。
 新しい21世紀の市民社会は、地方自治体と市民、企業、大学・研究機関等が相互に連携し、協働して形作っていくものである。 その意味で、対等性の保障、自主性の尊重、相互の協力の精神に基づくこの 「パートナーシップ協定」 のあり方は、従来の市民参加方式でない協働型の市民参画方式を具現化するための新しい手法のひとつとして注目されていいと思う。
 今年の7月、三鷹市と武蔵野市をエリアとするCATV会社と両市の市民によって構成される自主組織 「市民テレビ局」 が、今回の21会議と同様、この 「パートナーシップ協定」 を締結し、地域の自主番組づくりに着手することになった。 「パートナーシップ協定」 方式の有用性は徐々に浸透していくものと思われる。

 

大宮  登

 自己決定支援システム
 アクティブな市民社会をつくるためには、その基礎として成熟社会を支える自己決定支援システムを構築していくことが重要である。 自己決定支援システムとは、市民自らが自分で考えて積極的に地域社会を創造していくことを可能な限り支援する社会システムのことを指す。 成熟社会は、みんなで対等に参画し、それぞれが自己責任を共有することで成り立っていく社会である。 行政に携わる人は、市民参画システムづくりのコーディネーターとしてその公人性を意欲的に引き受け、市民の意欲と生活実感を汲み上げ、地域社会の実情に応じた 「生きた」 施策をマネジメント (運営・調整) する力が求められている。

 

西田  穣

 地域マネー、地域財源
 地域の多様な価値観を尊重し、多文化が共生できるまちづくり、多彩なニーズに応じた社会サービスの実現などにより、市民が生き生きと暮らせる地域づくりが求められている。 そのためには、多様な市民の参画を受け、市民の知恵を活用するとともに、まちづくりや地域管理の主体となる市民を育成することが課題となる。
 ソフトな社会サービスを含め、地域主体の 「自立的なまちづくり」 を支援する仕組みとして、自治体内部においても集権的なシステムを改革し、地域で経済が循環する仕組み (地域マネー)、地域が自主的に活用できる 「まちづくり財源」 の設置が望まれる。

 

広岡 立美

 女性も男性も自分の可能性を見つけ出す機会が持てること。 そして社会にそれを育てる仕組みがあること。 その先は努力次第。 女だから、男だからではない社会をつくる。 努力したものが報われる社会。 そこまで社会を育てなければいけないけれど、方法はいくつも考えられる。 これまでこうだからという前例主義とはさようなら。 ともかく、いきいきと自分育てのできる社会を作らなければ。

 

江川 真人

 「地方分権の推進」、職員の企画立案・政策能力による 「意識改革」 の実現、「行政の透明性と説明責任」、および 「効率的・効果的な行政運営」 等をすすめる手法として事務事業評価システムをスタートとする総合的行政評価システムを導入する。
 事務事業評価システムを人員削減や財政支出の削減、市民サービス切り捨ての手段として活用するのではなく、事業の実施にあたって市民が参加・参画できる仕組み等、分権時代にふさわしい行政のあり方を創り出す手段として位置付け、事務事業評価システムを単独で実施するのではなく、総合計画や財政査定等と連動させた総合的なシステムの構築が望まれる。

 

三好  薫

 地方分権がまさに実践の段階に入った現在、高度化・多様化している市民ニーズを自治体の政策・施策・事業に的確に反映させ、自主的に展開し、行政サービスの質の向上を図るためにはこれまで以上に企画立案能力、政策形成能力を高める必要がある。
 21世紀に向けた自治体がいかにあるべきかとの視点、市民自治を確立していく観点から主体的な検討と政策提起を行うため、職場からの点検・検証を行うことはもとより、自治体改革は市民とのパートナーシップをたもちながら実現されるべきであり、その主要な担い手であるのは現業労働者であるとの認識と強い決意のもと、現業職場活性化の理念に基づき 「自治・分権・参加」 を基本とした政策実現のために、市民のためのコミュニティサービスの実践にむけた、職場づくりをめざさなければならない。