「人間の安全保障」実現へ

分科会座長 瑞慶山 浩
(沖縄県本部)


 世界は今、国家による「軍事の安全保障」から市民による「人間の安全保障」へと転換が図られようとしています。冷戦後の世界は、民族・宗教に関する内戦や対立が続いていますが、南北朝鮮の対話の始まりに見られるように、対話と融和の時代に向かっていることも事実です。日本は、その流れに逆行し、アジア諸国を敵視する、新ガイドライン関連三法案等諸反動法を矢継ぎ早に成立させました。沖縄県では、米軍基地の県内移設問題が振興策と引き換えに押し付けられようとしています。海外侵略、加害責任を黙殺し、自由主義史観に基づき悲惨な戦争体験を風化させようとする動きも活発化しています。私たちは、日本国憲法の崇高な理念を基に、世界平和に貢献できる運動を展開しなければなりません。
 世界人口の増加、貧困と飢餓、最貧国の債務問題、環境汚染問題等、60億人が生活する地球号は病んでいます。これらを解決するには、その国・地域の人々が自立・連帯することが大事です。私たちは、これらの課題を解決するために、国家や国境の枠を越えたNGO活動と連携し、世界的規模で「軍事から人間の安全保障へ」の課題に取り組まなければならないと考えます。
1. 冷戦崩壊後10年を迎えた今日、世界規模の戦争の脅威は少なくなったと言われていますが、世界各地で、民族・宗教に関する内戦や対立が続いています。その一方で、本年6月15日の南北朝鮮首脳会談に見られるように「南北朝鮮の自主的・平和的解決」に向けた対話等、世界は、21世紀を目前にして、対話と融和に向かって着実に進みつつあります。朝鮮半島等の緊張緩和が進めば、在日米軍の存在についての論議は必然であり、国内で争点となっている沖縄の米軍基地の県内移設問題や、在沖米海兵隊による北海道矢臼別を始め、本土5ヵ所に移転分散されている実弾砲撃演習に対する国民的論議が起こってくるものと考えます。
2. 「自・自・公」連立政権は、「新ガイドライン関連三法」「国旗・国歌法」「盗聴法」等諸反動法案を矢継ぎ早に強行採決しました。また、2000年1月の通常国会で衆参両院に「憲法調査会」を設置するなど憲法改悪、戦前への道を突き進んでいます。今後、周辺有事を想定した軍事訓練に自治体職員、地域住民が動員されることは明らかであり、周辺事態法の発動を許さない取り組みの強化が求められています。一方、自由主義史観に基づく平和資料館の展示内容に対する攻撃が数多く行われています。これらの悲惨な戦争体験を風化させようとする動きは、一連の諸反動立法の動きと決して無縁なものでなく、これらにどう歯止めをかけていくか大きな課題です。日本は、唯一の被爆国としてヒロシマ、ナガサキの痛切な体験を通じて、「核と人類は共存しえない」ことを認識することができました。私たちは、世界から全ての核兵器を無くす運動を展開すると同時に、非核港湾条例制定運動等をとおして米原子力艦船の入港を阻止する運動をさらに強化しなければなりません。
3. 日本は、海外侵略、加害責任等の反省の上に日本国憲法を制定してきました。平和憲法の戦争の放棄という崇高な理念を基にして、核と戦争による恐怖に明け暮れた20世紀から核も戦争もない21世紀に向けた世界づくりに貢献しなければなりません。1999年5月のハーグ市民会議で確認された「軍事から人間の安全保障」への課題は世界の大きな潮流となりつつあります。市民社会を基盤とし、国家や国境の枠を越えたNGOの活動も全世界的に広がっています。7月の九州・沖縄サミットに参加した世界各国のNGOが「平和・環境・健康・福祉・人権を最優先すべき」として沖縄の新基地建設反対を盛り込んだ共同宣言を採択しました。同宣言では、ジュビリー2000が提唱する最貧国の債務帳消しを盛り込むなど、多くの問題提起がなされました。
4. 世界の総人口は、99年10月12日に60億人を突破し、2025年には89億人に達するとする試算もなされており、このままでは貧困層の増加と飢餓がこれまで以上に発生することが懸念されます。また、豊かな国と貧しい国を分け隔てる較差は年々広がっています。1996年には世界人口57億人の80%が1人当たりGNP年1,000ドル以下の国で生活しています。すなわち、40億人以上が一日にわずか1~2ドル(100~200円)の稼ぎで辛うじて日々の生活を営んでいる状況にあります。戦争の根源にある貧困と飢餓を解消するためには、その国・地域の人々の自立・連帯が必要です。自治労の「アジア子どもの家」は、政府による資金援助やハコモノ援助にとどまらず「一般組合員の直接参加」による、子どもを取り巻く「課題」に対する「継続的」な協力活動の展開を目指しています。また、各地連、県本部レベルでも国際連帯の活動が始まっています。