Ⅱ シ ン ポ ジ ウ ム

多文化共生の自治の姿を描く ─ 地方分権による地域の再創造 ─

 

●コーディネーター

武藤 博己(むとう・ひろみ)
 1950年群馬県生まれ、法政大学法学部卒、国際基督教大学大学院行政学研究科行政学専攻博士課程修了。行政管理研究センター研究員、法政大学法学部助教授を経て、現在、同大学教授。

 

●シンポジスト

辛  淑玉(しん・すご)
 東京生まれ。在日コリアン三世。
 1985年に人材育成会社 香科舎設立、96年「辛淑玉人材育成技術研究所」開講。人材能力育成プログラム開発、育成環境開発を行う傍ら、大学・専門学校・ビジネススクールなどにおいて公開講座を担当。「女性」「人権」に関わる研修のほか、雑誌・新聞へのコラムなども執筆。『在日コリアン胸のうち』(2000年6月光文社)『こんな日本大嫌い』(1999年11月青谷舎)ほか、著者多数。

安達三千代(あだち・みちよ)
 59年生まれ、徳島県出身。同志社大学文学部新聞学専攻卒業。広告会社勤務を経て、85年に結婚して山形へ移住。
 地元で社会人セミナーの企画委員などを務める傍ら、外国人留学生や国際結婚して来日した女性などに日本語を教えるボランティアとして活動。94年からIVYカンボジア部門責任者となって現在に至る。 IVY理事、事務局長兼務。

小野寺喜一郎(おのでら・きいちろう)
 1946年生まれ。山形県立農業講習所卒業後、遊佐町青年団連絡協議会会長、県連合青年団団長、県社会教育委員、日本青年団協議会会長、遊佐町議会議員などを経て、1993年から遊佐町長。現在二期目。

 

●シンポジウムテーマ

コーディネーター

武 藤 博 己(法政大学)

 

 1980年代後半から国際化、高齢化、情報化などの大きな動きが日本社会を包み込んでいった。とりわけ国際化は、閉鎖的な日本社会に対して、大きなインパクトを与えた。
 国際化の一つである「内なる国際化」という動きは、人権意識や差別意識などについての日本社会の遅れた側面を痛烈に指摘してくれた。たとえば、外国人の目からみると、日本社会がいかに不可解な社会であるかを教えてくれた。障害者の視線でみると、日本社会がいかにバリアの多い社会であるかを理解できるように。
 また、地球環境やエネルギーの問題は、「地球市民」の視点から見ることの必要性を教えてくれた。日本の面積の約7分の1に相当する5万平方キロの森林が毎年失われていくといわれる状況を前にして、国境を越え、国籍を超えたところに本当の市民がいることを我々は学んだ。
 こうした国際化の動きは、日本でもようやく新しい時代に入りつつある。分権化によって地域の自立が求められ、個性豊かな地域づくりが始まりつつあるが、そこでの重要な視点の一つとして、「多文化共生」という考え方が提起されつつある。
 ここでの多文化とは、国境・国籍を超えた多様な文化を意味するのみならず、地域のなかに存在する多様な文化を含まなくてはならない。すなわち、それぞれの仕事・職業にそれぞれの文化があり、それぞれの世代にそれぞれの文化があり、さらにそれぞれの文化の中にそれぞれの個性がある。
 すなわち、多文化共生社会とは、こうした個性と文化が多様にそして複雑に絡み、それが共生することによってさらに発展していくことを目指す社会である。ここにおいて、国際化と分権化が出会い、「多文化共生の自治」という新しい方向性を共有することになる。
 では、この「多文化共生の自治」において、自治体は何ができるのであろうか。自治体職員は職員として、あるいは市民として何をすべきなのであろうか。

 

 資 料   首都東京で二つの防災訓練(辛 淑玉さん)

 

 資 料   国際結婚定住者の現状(安達三千代さん)

 

 資 料   新たな時代の基礎自治体をめぐって(小野寺喜一郎さん)