労働組合も参加した企業誘致
~住民参加の地域福祉をめざして~

大分県本部/日田市職員労働組合


 日田市は、北部九州のほぼ中央、大分県の西部に位置し、市の総面積は269.2㎞
2、人口約64,000人の都市である。
 周囲を1,000m級の山々で囲まれた盆地であり、市の中心部を九州最大の河川、筑後川の上流である三隈川が流れ、古くから「水郷日田」「小京都日田」の名で知られている。
 気候は、盆地であることから昼夜の気温差がはなはだしく、夏は暑く、冬は寒いという土地柄で、特に秋から冬にかけて濃霧が生じ、独特の「日田の底霧」をつくりだし、全体的に杉の木立ちに囲まれた自然環境が美しい「森林田園都市」である。
 一方、歴史的には、江戸時代に幕府直轄地として西国地域の金融経済の中心となり、独特の商人文化が発展し、今でも当時の町並みや建物、文化財等が数多く残っている歴史のまちでもあり、日田市の中央を流れる三隈川が鮎、ヤマメの宝庫でもあることから春から秋にかけて「鵜飼い」が行われ、「遊船」による船遊びも楽しめ観光地「日田温泉」としても知られている。
 また、盆地特有の内陸的気候が、肥沃な土壌と相俟って周囲の山林地帯の杉(日田杉)、ヒノキの成長を盛んにし、日本有数の林業産地を形成し、木材関連産業を市の基幹産業として発展してきた。
 しかし、これまで日本三大林業地帯として九州域圏のリーダー的役割を果たしてきたところであるが、①林業従事者の高齢化と後継者不足、②住宅施工の変化による国産材利用の減少、③台風災害による森林倒木被害後の林業経営者の意欲の減退、④長引く木材需要の減少と価格低迷などにより、市の基幹産業である木材産業の不振から景気は冷え込んでいた。さらに、1996年に九州横断自動車道が全線開通されたことにより、九州すべての高速道が連結され、人・モノ・情報の交流が益々活発化される事となったが、反面、近隣大都市へのストロー現象や観光客の減少が危惧され、「地域活力の停滞」が懸念されている。
 このため、「潤いのあるまちづくり」の情勢とともに、地域経済の核となり若年者の定住促進や経済波及効果が期待できる企業立地の実現が求められていた。
 こうした中で、国内を代表する優良企業を日田市に立地し、観光工場として整備することにより交流人口の増大や関連産業の起業、新規需要の開拓といった経済効果や新規就業機会の創設が、地域活力の増大として期待された。

1. はじめに

(1) 組合としての春闘と地域生活運動
 ① この間、自治労は春闘における政策・制度闘争をより具体化するため「豊かで安心できる社会システムと体制」の確立をめざし、福祉制度の抜本的充実を求める地域福祉春闘を開始しており、春闘によるたたかいとしてこの運動の定着と、より一層の拡大をはかるため積極的な取り組みをすることが提起されていました。
 ② 日田市職労においても、「高齢者、子ども、障害者が共にいきいきと暮らせる地域社会の創造」に積極的に取り組み、社会保障制度の総体的な改革をめざしており、今こそ自治体労働者と地域の労働者・市民がともに取り組みのできる具体的な活動が必要と考え、日田市職労として、春闘の時期に組合主導の何らかの具体的な取り組みが実施できないか、をこの間考えていました。

(2) 企業誘致にあたっての日田市の情勢
 ① この間、日田市は「日田杉」の産地として、林業を中心に栄えてきましたが、外材の普及に伴う国産材の不振により、地場の関連産業全体も不振に陥り、景気も冷え込んでいました。
 ② また、観光都市としての発展をめざしていますが、今一つ決定的な観光資源がなく、バブル崩壊直前に「明治維新村」というテーマパークの計画が持ち上がり誘致が決定し、用地買収まで進みましたがバブル崩壊によって結局頓挫してしまいました。
 ③ こうした中で、「サッポロビール九州工場」の移転に伴う新たな移転先候補の選定が行われることになり、九州各地より多くの都市が誘致の名乗りを上げました。
 ④ 日田市もいち早く候補地としての名乗りを上げましたが、すでに誘致に名乗りを上げた都市による行政・地場の商工会などでつくる誘致委員会で「サッポロ九州工場」へのラブコールを行う誘致合戦が行われており、日田市でも地元で2度、福岡市内で1度の「決起集会」と称した誘致のアピールを行っていました。
 ⑤ しかし、各候補地とも決定打がなく、官民一体となった誘致としながらも決起集会に集まる顔ぶれは各商工会の役員・会員などに限られ、企業からの動員者などにより100~200人程度の集会にとどまっており、行政主導の偏った感じは否めませんでした。

(3) 労働組合としての企業誘致に対する考え方
 ① 地域経済の核となり若年者の定住促進や経済波及効果が期待できる企業立地の実現は重要であり、観光にも活用できる企業誘致となれば確かに地場の労働者にとって好ましき話であり、交流人口の増大や関連産業の起業、新規需要の開拓といった経済効果や新規就業機会の創設が図れれば、増大する失業率と低迷する地場経済に対して確実に良い影響を与えます。
 ② しかし、地域における雇用の創出・拡大、観光資源の確保としての優良企業誘致は、市としての立場ならば当然の事ではありますが、それだけでは労働組合としての立場を考えると、企業誘致に対して日田市職労で独自に、また、積極的に協力するという考えはありませんでした。
 ③ そこで、日田市の企業誘致の目的にいろんな意義を盛り込むこととし
  ア 自治労・公務員労働者としての労組の基本方針に立ち、組合員の組織強化と福利厚生を図る。
  イ 地域の様々な労働組合との連携を取る中で、地域春闘の活性化と実践を通しての市民との連携を図り、今後の様々な運動につなげていく。
  ウ 福祉春闘という運動方針の中で、様々な福祉団体と協力・連携することにより春闘を市民に定着させていく。
  エ こうした取り組みの中で、市民に対して自治労という労働組合の存在をアピールし公務員労働者の制度・政策運動を初めとした様々な運動を意識づける。
  オ 今だに決定打のない誘致合戦の中に、労働組合として企画・参入し、広範な市民を集めて市民総挙げの誘致イベントとして成功させ、日田市当局に対しても労働組合の潜在能力を認めさせ使用者側に労働組合の存在意義を認めさせる。
  カ 市庁舎が新築されてこの間、敷地内に市民の憩いの場としているイベント広場がありながら広く市民に開放されておらず、このイベントを契機に開放・活用していく。
   などという目的意識を持つことにより、自治労日田市職労が主体となったサッポロビール九州工場の誘致イベントを実施することとしました。
 ④ しかし、誘致イベント実施に当たってはあくまでも『福祉春闘』『福祉運動』にこだわり、行政には一切の協力を受けずに実施することとし、また、住民と福祉団体と労組との連携にもこだわり、福祉団体と市民団体、学生(中高生)など、今まで協力することのなかった関係を1つに束ね、『福祉チャリティーイベント』として実施することとしました。
 ⑤ また、地域の労組などへも広範に参加を呼び掛けて協力してもらい、連携をとっていくこととし、更に近隣の自治労傘下の労働組合にも協力を求めました。
 ⑥ 日田市職労は1946年3月6日に組合を結成して以来50周年を迎えており、組合結成50周年の記念事業の一環としても丁度いい時期でもありました。

2. 地域福祉としての取り組み

 日田市職労は、これまで地域福祉の拡充として、「健康で安心して安全に暮らせる社会システム」の確立をめざして取り組んできましたが、日田市当局との労使交渉や組合組織内だけの取り組みにとどまり、広く市民にまでは運動の輪を広げることがなかなかできませんでした。
 そこで、これから深刻化する高齢・少子といわれる社会を前提として、福祉の充実を最大のメインテーマに、この間の「自治労運動、地域生活闘争をふれあいを通して市民に知ってもらい理解してもらう」こと、さらに「福祉事業への関心やボランティア活動の精神や意義を理解してもらう」ためとし、「福祉チャリティ-イベント」として計画しました。
 イベント参加した出店舗よりでる益金の一部(5パーセント)を事務局にチャリティ-してもらい、福祉関係に寄付し、福祉関係の出店舗の益金はそれぞれの活動費にしてもらうため徴収はしませんでした。
 今回の「福祉チャリティ-イベント」の具体的な目的・意義としては、
 まず第1に、少子・高齢社会の中で、私たち「自治労日田市職労運動の日常的な取り組みを通して制度・政策闘争をより具体化する」ことであり、日田市職労の地域に根差した春闘要求内容を市民(住民)にアピールすることにより、『制度・政策要求や日常的な運動を理解してもらう』ことにありました。
 第2には地方自治体『職員』として、市民の先頭・前面にたって地域の発展や社会福祉充実の運動等を促進していき、地方自治体『労働者』としては地場の民間労働者とともに協力して、地域労働者の様々な課題や問題の解決・改善に向け取り組むなど、「地域に根差した運動を進めていく事」が求められており、今回のイベントを通して市民や各団体との共闘・協力体制を確立し、『地域福祉運動』の取り組みを少しでも確固なものへとしていくための第1歩を踏み出すことにありました。
 そして第3には、サッポロビール九州工場の日田市への進出を実現し、関連企業を含めた地場における雇用の拡大と、その活力を基に地場の景気を活性化し、中小企業を含めた商工産業に働く労働者の賃金引上げにつなげていくことも1つの狙いでした。
 なお、この「福祉チャリティ-イベント」の実施時期を決定するにあたっては、企業誘致のためのアピールを行うこともイベント実施の目的の1つである事から、サッポロビールの誘致先の選考決定時期といわれていた5月上旬を視野にいれ、春闘の時期との兼ね合いも考慮にいれて3月10日(日)に決定しました。

3. イベントの柱

メインタイトル 「あなたの善意[こころ]が私たちの日田[まち]をつくる」
サブ・タイトル 「サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり」
日    時  1996年3月10日(日)11時から
場    所  日田市役所前イベント広場
主    催  自治労日田市職員労働組合
協    賛 自治労大分県本部、日田市職員共済会、日田市社会福祉協議会、日田地区平和センター、連合日田地協、自治会連合会、日田市老人クラブ連合会、日田市連合青年団、総合生協日田小売酒販組合、すぎの子村、はぎの園、日田市民生協、大分県労働金庫日田支店、全日空、日本航空

 

 ① 地域福祉春闘の一環として取り組んだため、チャリティ-イベントとして開催することとし、タイトルについては「あなたの善意[こころ]が私たちの日田[まち]をつくる」をメインタイトルにし、「サッポロ[ゆき](行[ゆ]き)まつり」をサブタイトルにして開催しました。
 ② メインタイトルの『あなたの
善意[こころ]が私たちの日田[まち]をつくる』のネーミングについては、自治労の福祉春闘を市民の皆さんに知ってもらい、労働組合として市民の皆さんと一緒に何かができないだろうかと考え抜いた末につけられたものです。
 ③ また、サブタイトルの『
サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり』については、誘致企業がサッポロビールであることから、北海道の大イベントであるお祭り「札幌の雪まつり」に引っ掛け、福祉の充実で市民の皆さんに幸福になっていただきたいとして、幸福の『幸』をもじって[ゆき]まつりとし、更にイベントのメイン賞品としてサッポロビールの故郷である札幌ビール工場への「札幌旅行(ペアで4組)」が当る札幌[ゆ]きを掛けて「サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり」としました。
 ④ イベント会場は、市庁舎が新築されて6年が経過していましたが、市役所前のイベント広場が市民に活用されたことがなく、庁舎管理上の問題として現実的には開放していない現状があったことから、市庁舎と駐車場を活用することとしました。市庁舎の広場を「中央広場」「若者と福祉の広場」「サッポロ広場」という特色ある3コーナーに分け、それぞれ独立した独自の催し物を行いました。

 

4. 中央広場での催し

 中央広場でのメインは、大型トレーラーを無償で借り、荷台を使っての特設ステージでの催しです。サブタイトルともなった札幌行きの旅行がペアで4組の方に当る「チャリティー抽選会」をはじめ、「スター発掘と題した高校生の素人バンドのコンサート」や、「小中高生を対象としたジャンケン大会」「手品等」が行われ、終日賑わいをみせていました。
 チャリティー抽選会は、午後1時と2時の2回に分けて行いました。抽選の景品については、多くの団体や自治体、労組に賞品の提供を含む協賛をお願いし、旅行代理店からは札幌旅行(ペア4組8名)の提供を受け、他に連合日田地協協賛、日田地区平和センター賞、酒販組合賞などを設け多くの景品、賞品を準備しました。
 抽選は、ボールを使っての宝くじ方式で、抽選会には一際多くの市民が特設ステージの前に集まり、各賞の当選番号が決まるたびに一喜一憂していました。
 また、ステージ前広場の後方にはテーブルと椅子をビアガーデン風に開放し、チャリティー品の缶ビールを自由に楽しめる空間を設けましたが、まだ少し肌寒い時期にもかかわらず、多くの市民がテーブルで飲食をしながらステージ上の催しを楽しんでいました。

5. 『若者と福祉の広場』での催し

(1) ストリートバスケット大会
  市役所正面の広場では、小中学生に人気のあるストリートバスケット大会が行われました。これは、企業の誘致イベントとなると対象は大人に限られがちですが、あくまでも「市民全体の福祉まつり」という考え方にたち、「幼児」から「少年」「青年」「壮年」「お年寄り」と幅広い年齢層を対象としようと考えたからで、少年もイベントに参加できるようにし、景品も参加賞、優秀賞などを用意しました。
  当日は、小学生8チーム、中学生8チームが参加し、熱戦を繰り広げました。大会への参加については、締切後もイベントの前日まで申し込みが殺到するほど大変な人気となりました。

(2) 福祉機器移動展示車
  「若者と福祉の広場」の一角には大分県社会福祉介護研修センターの協力により、福祉機器移動展示車を借り受け展示しました。これからの介護のための知識や意識を高めるために実演展示を行ったものです。この展示車は、5トントラックを改造したもので、介護支援ベッドや入浴用具等の福祉機器を搭載したものです。

(3) 年金相談コーナー
  福祉のコーナーでは、年金相談を実施しました。午前11時から午後3時までという短時間での相談コーナーの設置でしたが、20数名の方が相談にみえ、熱心に職員の説明に耳を傾けていました。相談に見えられた方は、やはり50歳以上の方がほとんどで、女性が7割を占めていました。相談内容としては、厚生年金と国民年金との関係や、現在の自分の状況で年金受給ができるかなど、切実な内容のものが多く見受けられました。
  このような祭を利用しての年金相談は、日頃聞きたくてもなかなか聞く機会のない方々にとって、気軽に相談できる場を提供し大変好評を得ました。
  以下に当日の相談内容の一部を紹介します。
 ○ 「厚生年金10年、カラ期間20年程度あるが、60歳にて年金受給はできるか」(59歳、女)
 ○ 「厚生年金受給中にパートで働きに出る場合は、年金が減額されるのか。また、年金と税金の関係を知りたい」(63歳、男)
 ○ 「遺族年金と老齢年金の選択方法について知りたい」(63歳、女)
 ○ 「厚生年金受給中で国民年金がある。65歳か66歳どちらで受給しようか迷っている」(64歳、女)
 ○ 「国民年金から厚生年金への切替えはどうすればよいのか」(22歳、女)

(4) 血圧測定コーナー
  健康相談コーナーの一角で行われた血圧測定は、「ピタリ当てよう血圧測定」と題し、来場者に自分の血圧を予想、申告していただき、当れば粗品を差し上げるというゲーム感覚で気軽に血圧測定ができるコーナーです。」
  日頃、自分の健康状態に無関心な方々もこの日ばかりは粗品が貰えることもあって、一生懸命自分の血圧の予想をしていました。

(5) その他の出店
  その他「若者と福祉の広場」では、フリーマーケットコーナー(市民に対して出店を呼び掛け)、環境コーナー(ごみ問題を考える)などを設け、更に、障害児施設「すぎの子ショップ」「はぎの園」等からは『あしながおじさんコーナー』として自作商品が出店されましたが、多くの市民の方々で賑わいをみせていました。
  特に、環境コーナーでは、お祭ということでたくさんのごみがでることを予想し、ごみの持ち帰りを呼び掛けるチラシや、ごみ袋の配布が行われました。また、コーナー内ではリサイクルに関するパネルやコンポストの展示を行い、環境美化・保全に対する意識向上の必要性を市民の方々に訴えていました。
  さらに、市民生協が出店した青空市場では、新鮮野菜が飛ぶように売れましたし、県産品促進としての県産ジュース販売コーナーも盛況でした。
  その他、障害児支援団体の手作りパンの店や、中高生ボランティアと日田市職女性部との合同店舗による「わた菓子コーナー・ポップコーンコーナー」も長蛇の列ができる賑わいぶりでした。
  また、自治労日田玖珠広域消防協議会も「救急実演コーナー」を設け、救急救命士による人命救助の実演・指導を行いました。

6. 『サッポロ広場』での催し

 「サッポロ広場」は飲食店の出典コーナーで、酒販組合のサッポロビール販売コーナーや、うどん店、焼き鳥店、焼きそば店等の販売コーナーを設けました。
 サッポロビールの販売コーナーでは、日田小売酒販組合の協力を得て、350mlの缶ビール2缶(チャリティを含め価格500円)を買った方に札幌旅行他、いろんな景品(テレビ、CDラジカセ、自転車、CDウォークマン等)が当るという、チャリティ-抽選会の抽選券が1枚渡される事になっており、札幌の缶ビールが飛ぶように売れていました。
 日田小売酒販組合の当初販売予想8,000缶を中盤ではるかに超えるサッポロ缶ビールを売り上げ、追加注文した配送が間に合わない状況でした。
 その缶ビール販売コーナーの前では、1時と2時の2回にわたるチャリティ抽選会が始まる直前まで、ビールを買い求める市民で埋めつくされ、関係者はうれしい悲鳴をあげていました。
 また、社会福祉協議会(ヘルパー組合)がヘルパー職員を中心にうどんコーナーを設けましたが、このコーナーもテーブルが常に満席状態で、開店後2時間もたっていない12時より前に準備予定数を売り尽くし、急遽追加注文して対応するほど好評でした。

7. イベントの効果

 ① 当日のチャリティーイベントには、延べ7,000人の市民が来場し、大変な盛り上がりをみせました。チャリティ-イベントの益金としては、115,500円を社会福祉協議会に寄付することができました。また、各出店コーナーからも益金の一部を社会福祉協議会へ寄付していただきました。(福祉関係団体を除く)
 ② 今回の「サッポロ幸まつり」では、私たち日田市職労の趣旨を説明しながら、各種団体へ協力の要請をお願いしてきました。おかげで、社会福祉施設団体や青年団、中高生のボランティァ等多くの市民の方々に参加、協力していただきましたし、多くの協賛団体より多額の寄付や賞品をいただき、成功裡に終了することができました。このイベントを通して日田市職労が取り組んでいる地域福祉に関する運動を、市民の方々に少しでも理解していただけたと思います。
   また、ボランティアとして協力してもらった中学生が、後日感想文を市職労宛に送ってくれましたので別に掲載します。
 ③ サッポロビールの日田市進出については、雇用の拡大と地場産業の発展及び観光資源の開発に役立つという理由で、日田市職労としてもサッポロ誘致に全面的に協力をしてきました。そこで、来賓としてサッポロビール本社、日田市長を招き、市民総挙げての誘致歓迎イベントとして紹介しました。
   そして、その結果、「サッポロ幸まつり」開催の1ヵ月後にサッポロビールが日田市に進出することが正式に決定しました。
   後に、サッポロビール本社の関係者から話がありましたが、今回の「チャリティ-イベント」の参加が行政だけではなく多くの市民、更には市の労使が一体となって市民総挙げでのイベントとして広範にわたっていることからも、市民挙げての誘致アピールとしてとらえられたとの事で、誘致決定の判断に大きく作用したとのことでした。
   「特に『サッポロ幸
[ゆき](行[ゆ]き)まつり』のタイトルの『幸[ゆき]』というサッポロによる幸[ゆき]という好イメージや、福祉に対する市民の意識の高さ(日田市・日田市民の好印象)等がサッポロ本社に伝わり、日田市誘致への大きなきっかけとなった。」との事でした。
 ④ こうした事からも、今回の日田市職労主催の「サッポロ幸
[ゆき]まつり」が誘致決定に当たって大きな効果を上げたとは大きく評価できますし、市民と連携した「地域福祉運動」を実践・実現したものとしても評価できました。
 ⑤ 結果として、サッポロ効果といわれるように関連企業を含めて多くの雇用の創出が計られましたし、地場の業者が入れる『一村一品販売コーナー』が設けられましたが、当初1年間の販売目標を夏を待たずにわずか3ヵ月で売り上げ、更に伸びています。
 ⑥ また、年間50万人の工場見学、ビール園への観光客が見込まれており、市内の観光地と工場とを「観光専用バス」でアクセスし、日田市の観光にも一翼を担っています。
 ⑦ さらには日田市庁舎は新築されて間がなく、完成後に庁舎敷地内での事業実施に多くの制限があり、なかなか庁舎敷地の活用が出来なかった現状がありましたが、今回、広く市民に開放される中で、初めて市役所前広場で全市民的なイベントが開催されたことも、大きな意義があるものとなり、その後様々な市民によるイベントや、フリーマーケットなどにも利用されるようになりました。

8. 次のサッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり

 ① 日田市職労という組合の立場で、様々な角度から検討し実施したチャリティーイベントとしての『サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり』でしたが、実施の翌年に日田市より「そのネーミングをそのまま拝借したい」との申し入れがあり、その後日田市主催の『サッポロ幸[ゆき]まつり』が実施されました。
   しかし、行政主体となると、多くの制限があるせいかお祭りとして盛り上がらず、市民全体の「イベント」とはかけ離れたものとなっていました。
 ② 日田市職労としても、自治労運動の位置づけを活かした『サッポロ幸
[ゆき](行[ゆ]き)まつり』のようなイベントを定期的に実施できればいいのですが、財政的な問題や計画・準備を含めた人的な問題などで、なかなか実施することができずにいましたが、今年2000年の3月にサッポロ九州日田工場として操業を開始したことから、これを記念し新たな発想と位置づけを行いながら、今回もう一度日田市職労の主催による『サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり』を企画、実施しようと計画を始めました。
 ③ そこで、今回の意義と目的を
  ア 前回の意義はそのまま大切にする。
    ことに加えて
  イ 景気が低迷して久しく、基幹産業である林業関連にも明るい話題がなく、商工関連にもまだまた活気がない。「観光都市ひた」としてのイメージも今一つ県外に定着していないことから、県外への日田市(産業・観光など)の観光宣伝を兼ねられないか。
   などを検討することとしました。
 ④ 具体的な計画には至っていませんが、前回の協力団体の他に、商工会や産業振興センター、サッポロ企業などから資金協力を得て、まずは、九州各県への宣伝から行うこととし、インターネットや九州版の新聞広告などに『サッポロ幸
[ゆき](行[ゆ]き)まつり』と日田市観光の宣伝・広告を出し、更に日田市をイメージさせる回答を求めるような『懸賞クイズ』などを行い、当選者には『日田市に招待』するなど、九州各県の皆さんに『サッポロ幸[ゆき](行[ゆ]き)まつり』に参加してもらいます。
   当然、もう一つの商品として日田市で開催される『サッポロ幸
[ゆき](行[ゆ]き)まつり』に参加し、チャリティーに参加してもらった方の中から札幌旅行を始め、いろんな景品が当たるチャンスを紹介して、イベント当日への市外・県外の参加者を募ります。
 ⑤ など、これからいろんな知恵を出していきながら、日田市内・市民だけのイベントではなく、市外、県外の、より広範な「福祉イベント」へと発展させ、観光業界や各方面への経済波及効果のあるイベントへと発展させて開催したいと考えています。


サッポロ幸まつりに参加して

 私はこのまつりで、友達といっしょにわたがしをつくりました。このまつりには、いろいろなイベントがありました。ステージではバンドの演奏があり、広場ではストリートバスケットがあってたくさんの中高生が集まりました。また、いろんな賞品が当たるゲームがあったり、ポップコーンやわたがしなどを売っていたので、小学生や幼児が来ていました。大人の人々は、子供をつれてきていたり、フリーマーケット、野菜売り場などにきていて、幅広くみんなが楽しんでいました。
 私たちが売っていたわたがしは、50円というやすさと私たちの友達のおかげで、とてもよくうれました。でも、忙しかったので、他のところはみてまわれなかったし、服はベトベトになりました。それでも、みんなで呼び込みをしたり、わたがしをつくったりしたのは、すごく楽しかったです。
 また、私たちが働いたお金が日田市の障害者の人々の役に立つと思うと、なんだかうれしいです。私たちは働くことの喜びのような感動を得ました。
 これからも、積極的にいろいろな活動に参加して学んでいきたいと思います。よりよい日田市を築くために、私たちがこれからがんばらなくてはなりません。

日田市立北部中学校 藤 原 麻 衣