2003年第5回青森アジア冬季競技大会経費膨張問題

青森県本部/青森県地方自治センター


はじめに

 平成9年6月、日本オリンピック評議会(JOC)からアジア冬季競技大会の開催要請を受けた青森県は、同年8月に臨時県議会を招集し、運営費8億円の経費見込み予算額を提案して大会招致の決定を行いました。そして、同年12月のアジアオリンピック評議会(OCA)総会で「2003年第5回青森アジア冬季競技大会」が正式承認になり、開催都市契約を締結しました。
 その後、平成11年5月までに県の大会経費の積算では、当初の経費見積りの7倍にあたる約56億円に膨張していたことが明らかになり、県財政の危機が叫ばれているなかにあって、このような県民不在の大会招致と経費膨張問題が大きく新聞紙上等で騒がれることになりました。
 自治労青森県本部・自治センターでは、冬季アジア大会招致決定と開催都市契約締結にいたるまでの民主的な手続きの欠落と経費膨張が県財政運営とりわけ教育費や社会保障費に与える影響が大であることから、前者の問題については市民運動として活動を展開し、後者の課題については、自治センターの独自課題として研究調査を行うことにしました。

1. 青森アジア冬季競技大会を考える会の設立と活動

 自治労青森県本部と社団法人青森県地方自治センターは、7倍に膨れ上がったアジア大会運営経費問題を自治労運動とりわけ自治研活動の一環としてとらえ、住民運動としてこの問題をひろく県民に働きかけていくこととしました。
 そして、平成11年11月17日にマスコミで56億円に膨張した「2003年第5回青森冬季競技大会経費膨張問題」が取り上げられ、県民の多くがこの問題に関心をもち注視することになりました。
 時あたかも、新潟県警問題など、警察内部構造のゆがみがマスコミ等で論議されている最中でもあり、県民の間では「経費膨張問題」が突然にもち上がるまでの経緯の事実関係と合わせ、不可解な悪しき話題として広がっていきました。
とてつもなく膨らんだ「経費膨張の経過を知りたい」という県民世論が巻き起こり、この間のアジア大会組織委員会と知事を始めとする県側の経費積算をめぐるやりとりや、新たに設置された県議会のアジア大会特別委員会における論議も行われました。
 しかし、県議会やアジア問題特別委員会での議論も県側や県政与党となった自民党県連の意向で、県民がもっとも知りたいと願っている経費膨張問題の真相究明よりも、組織委員会の人事問題や新たなアジア大会運営経費の積算提示要請にすりかえられ、「とにかく大会開催を」に進んでいく気配でした。
 こうした県民世論や常識からはとうてい考えられない行政側の一連の対応や、県議会の動向に対し、自治労県本部と地方自治センターは、経費膨張の経過の究明と56億円の経費積算について県民が納得できる説明を求めるために、新たな住民運動を組織することを確認し、その事務局を担うこととしました。
 こうして、「青森アジア冬季競技大会を考える会」(代表 吉川ちさ)が平成12年3月10日に発足しました。
 「考える会」では、平成12年3月10日以降、県知事(3月16日)や県議会議長(4月17日)に対する申し入れ、県民アンケートの実施(3月25日~4月5日) ― 3月25日は街頭でのアンケート調査 ― 、県議会議員全員に対するアンケート調査、などを取り組み、その集計結果の分析とコメントを「考える会」として公表してきました。
 このうち、県知事に対する申し入れ書に対しては、県知事より別紙(資料1)のとおり回答書が5月1日付けでなされ、県議会議長からは別紙(資料2)のとおり回答されました。
 知事の回答書では、当初経費の8億円が平成10年11月時点ですでに、おおむね30億円に膨らむという報告を当時の組織委員会事務総長から知事が受けていたという経緯を否定し、あくまで「担当者レベルの参考資料として雑で幼稚な方法で試算されたもの」として、平成11年の10月までに改めて大会経費を概算積算したところ56億円という数字になったと説明しています。
 新聞報道や公開された内部資料によれば、知事はじめ県当局は平成10年11月時点で30億円程度の経費膨張があり得ることを知りうる立場にあったことがうかがわれ、平成10年12月の開催都市契約書締結の際にも、十分に経費膨張の報告がなされていたと想定されています。
 そして、県はこうした経緯を受けて、8億円から一挙に7倍の56億円に及ぶ経費膨張を議会に報告したその責任は、すべて組織委員会の会長である知事ではなく事務総長にあり、そのため組織委員会の人事交代をして新たな経費積算をやり直し、経費節減に努めるとともにJOCの協力を得て、何がなんでも大会を成功させるとしています。しかし、9月14日に提示された新積算額は約39億円で、当初の8億円の約5倍にあたる、県が「雑で幼稚」な試算とした平成10年11月の30億円をも大幅に上回っています。
 「考える会」が平成12年3月25日から4月5日にかけて実施した県民アンケート調査(別紙・資料3)に、786人の県民から回答が寄せられました。
 アンケートの集計結果(別紙・資料4)によれば、「アジア大会経費膨張に納得がいかない」が85.1%、「アジア大会をやめて返上すべき」とするのが77.7%、「県と大会組織委員会のトップである知事は責任をとるべき」とする人は75.8%、そして「アジア大会の開催の是非を改めて県民に問うべき」とするのは83%にも達しています。
 また、アンケートに寄せられた県民の意見としては、青森県と県民が抱えている課題である県財政の立て直し、雇用対策、介護・福祉問題などを優先すべきであるとし、この間の経緯のなかで、知事や県議会の県民を軽視する姿勢を問う意見が多くみられました。
 さらに、4月18日から26日にかけて県議会議員51人全員に対して実施したアンケート調査の結果(別紙・資料5)によれば、回答者は7人であり(うち無回答者1名)、「アジア大会経費膨張に納得がいかない」議員は6人、「アジア大会をやめて返上すべき」とするのが4人、「アジア大会の開催の是非を改めて県民に問うべき」とするのが5人、「改めて問う必要がない」が1名、「議会での行政に対するチェック機能に甘さがあり、県民の信頼を損なった」とするのが6人という結果でありました。
 県知事や県議会議長への申し入れやアンケート調査の集約結果について、自治労県本部・自治センターと「考える会」は、以下の3点について総括しました。
 ① 行政に携わる側の「社会・生活感覚のズレ」を、この問題をとおして多くの県民が感じとり、県の各種事業に関心をはらうことの重要性を県民が認識できた。
 ② 納税者・有権者として、県財政を含め地方自治体の財政のあり方を考える県民意識の広がりができた。
 ③ 「考える会」をはじめ県民が私たちのくらしの重要な問題として「アジア大会問題」を考え、県当局に対して説明を求めてきたにもかかわらず、何ら解明されないままにある。
 その後、県は平成12年9月14日になって、総額約39億円の大会運営経費に係る新たな積算額を計上し、県議会へ報告しました。
 自治労県本部・自治センターは「考える会」と共催で、県が提示したこの積算額をもとに、平成12年10月4日に「アジア大会と青森県の暮らしを考える県民フォーラム」を開催し、県民の暮らしに直結する重要な問題として「アジア大会問題」を考え、県当局に対し情報開示と説明責任を求めていくことにしています。

2. 2003年青森アジア冬季競技大会の問題点

 2003年青森アジア冬季競技大会のこれまでの問題点とこれからの課題を整理すると以下のようになります。

(1) 当初の8億円の経費見込みが平成11年11月に56億円に膨張した理由とその責任の所在について
 ① 開催都市契約書を県民不在で締結した問題
 ② 知事と県が説明責任と県民参加を放棄した問題
 ③ 平成12年7月のアジアラグビー大会は1億3,000万円の経費で開催している
 ④ 知事・県当局が途中の経費膨張見込みの報告を否定している問題
 ⑤ 県が情報非公開をしている問題(内部文書の非開示)

(2) 知事と県議会の責任問題
 ① 8億円で開催を認めた県議会の責任
 ② 56億円積算の責任は組織委員会事務総長ではなく、会長である知事の責任
 ③ 事務総長の交代と積算のやり直しは責任のすり替え
 ④ この間の県政不信、停滞、経費増の責任は誰に

(3) これからの課題
 ① 8億円以上は56億円も39億円も「県民不在」では同様の問題(8億円でできない理由は何か)
 ② 新しい39億円の積算の根拠を検証する(56億円積算との比較において)
 ③ 新しい39億円積算に表れない経費を検証する
 ④ 歳入不足の場合の県費負担の検証
 ⑤ 知事及び県行政の信頼性を問う
 ⑥ 開かれた、わかりやすい、県民参加の県政か否かを問う
 ⑦ 県政の基本的なあり方を問う

3. アジア大会経費膨張が自治労や県職労に与える影響と対応

 これまでみてきたようにアジア大会の招致にあたっては、大会運営経費見込みの十分な説明が県民や県議会にないまま、まさに県民不在のトップダウン方式で開催都市契約を締結したことが今回の問題の発端であり、その後の顛末の不透明さ・不可解さにつながっています。そのことの行政責任の所在が事務総長の交代と新たな積算のやり直しというかたちですりかえられ、ことの本質が隠蔽されようとしています。
 8億円の経費で招致した大会が39億円の新積算経費で開催されるとしたら、別途の県費負担も含め、30億円以上の県財政が充当されることになる。それでなくとも財政危機の県財政ゆえに、そのしわ寄せが教育費や社会保障費に向けられるのは当然であります。
 それだけではなく、県民の県財政への関心が県職員の賃金等に向けられ、議会と一体となった県職員の賃金労働条件の切り下げ攻撃となって表面化することも十分に想定されます。同時に、競技開催地自治体の競技運営協力に係っての自治体の経費持ち出しも人件費相当の持ち出しと合わせ、当該自治体へのしわ寄せがでることが予想されます。それが、地方財政の危機に一層拍車をかけることにつながることも想定して、具体的なそれぞれの経費についての検証を組合レベルで実施し、当局交渉を県職労や当該自治体単組では展開しなくてはなりません。
 もう一度、アジア大会の開催地の負担問題を国体民主化の活動とあわせ、スポーツを県民が主体となって楽しめるようにするためにも、スポーツ競技大会のあり方とともに自治労の自治研活動の一環として研究実践する必要があります。

まとめ

 今回の「2003年青森アジア冬季競技大会経費膨張問題」は、単に大会運営経費の膨張問題にとどまらず、県の行政運営のあり方、県議会のあり方と責任、県行財政に県民の民意をどのように反映させるか、県民と議会が県行政をどのようにチェックできるか、県民に情報をどのように公開・開示できるか、県行政の透明性をどのように保つか、重要な政策の意志決定には県民投票が必要か、などの重要な問題を提起しています。
これからの課題も多く、今回のこの問題を契機に、自治労県本部・自治センターは多様な住民運動組織の結節点となって、真の地方自治の確立のためこれまで以上に調査・研究・実践が求められています。

 

(資料1)


青企調 第 67 号
平成12年5月1日

 青森アジア冬季競技大会を考える会
    代表 吉 川 ち さ 殿

青森県知事 木 村 守 男

再度・2003年第5回青森アジア冬季競技大会について(回答)

平成12年4月17日付けで申し入れのあった標記について、別添のとおり回答します。

1. 2003年第5回青森アジア冬季競技大会経費膨張の経過とその理由について、青森県民が納得できる説明を行うこと

答 アジア冬季競技大会は、平成9年6月に日本オリンピック委員会(JOC)八木専務理事(当時)が来県、開催要請があり、県議会、関係市町、関係競技団体等の御意見を伺いながら、平成9年8月に大会の招致を決定しました。
  当時は、限られた大会経費に関する情報の中で過去のアジア冬季競技大会である第1回札幌大会(昭和61年開催)、第2回札幌大会(平成2年)を参考として8億円という大会経費を見込み、県議会に説明し招致予算案を承認いただきました。
  その後、大会の運営基準として前回・第4回カンウォン大会(韓国)から導入された開催都市契約を主催者であるOCA等との間で平成10年12月に締結したこと、第4回カンウォン大会(平成11年1月~2月)の調査結果、OCAの冬季大会の位置づけに対する認識の変化などを踏まえて、組織委員会事務局において、平成11年5月から10月にかけて改めて大会経費を積算したところ、概算ですが約56億円となり、それを県議会に御説明し公表したところです。
  それ以降、県議会や青森アジア冬季競技大会特別委員会の場で、大会経費をはじめ各般にわたり御審議をいただきました。
これらの審議の中で、56億円の積算前の経過として、平成10年7月から8月にかけ、25億円から30億円の大会経費が積算されているのではないかとの御指摘がありましたが、これは、平成10年9月補正の予算編成の過程で担当者レベルの参考資料として雑で幼稚な方法で試算されたものであり、作業はそれで終わり、対外的に公表できる性格のものではなかったものです。
  また、平成10年11月4日に組織委員会事務総長が知事室を訪れ、大会経費が概ね30億円に膨らむという報告を受けたのではないかとの御指摘がありました。秘書課の記録によれば、当日事務総長はアポイントなしで訪れていますが、当日の日程は、弘前市での用務を終え、14時30分頃、弘前のホテルニューキャッスルを出発し、15時30分には第二応接室で中国昌平県訪問団の表敬を受け、15時45分には倉石村の方々とお会いし、それ以降もスケジュールがすき間なく入っている状況でした。したがって、15時30分から30分間アポイントを取ったとする事務総長の話は事実と異なり、会った時間は極めて短い時間で、その際に大会経費が膨らむという説明はありませんでした。また、重要な案件はきちんと時間を取って事務責任者を同席させて聞くことが通例であり、そのような対応はあり得ないものです。
  さらに、平成10年12月4日夜、開催都市契約の締結のためバンコクに訪れた際に、組織委員会関係者から大会経費の膨張について報告があったのではないかとの御指摘もありましたが、旅行復命書の記録や同席した関係者から、そのような話はなかったことを確認しています。
  アジア冬季競技大会の大会経費に係る経過と増嵩した理由は以上のとおりです。

2. 2003年第5回青森アジア冬季競技大会経費膨張問題を踏まえて開催の是非をあらためて県民に問うこと

答 先般、県議会の特別委員会委員長から県議会に報告がなされ、56億円の大会経費は根拠が乏しく新たな大会経費を積算することや関係機関の連携強化等について御指摘、御提言をいただきました。
  県では、これらの御指摘を踏まえ、新たな大会経費については、安全性の確保、国際大会としての水準に配慮しつつ、基本的な大会の基準や県財政の厳しい状況を踏まえながら、できるだけ早い機会にお示ししたいと考えています。
  なお、大会経費については、県財政の厳しい状況を踏まえながら経費節減に努めたいと考えています。
  また、組織体制については、4月に組織委員会事務局及び県の充実・強化を図ったところです。また、連携強化については、JOC会長からJOCが全面的に協力する旨の表明をいただいたところであり、今後とも万全を期して参りたいと考えています。
  県としては、県民を代表する県議会の御指摘を率直に受け止め、まず、県議会に御説明をし、御審議をいただきたいと考えています。

 

(資料2)

青 議 第 42 号 
平成12年5月1日 


 青森アジア冬季競技大会を考える会
    代表 吉 川 ち さ 殿

青森県議会議長 太 田 定 昭  

要 望 書 に 対 す る 回 答

 平成12年4月17日付けで本県議会に提出された要望書についてお答えします。
 2003年第5回青森アジア冬季競技大会の諸対策に関しては、県議会としても平成11年12月17日特別委員会を設置し、これまで10回の委員会を開催していろいろ審議してきたところです。
 これまでの審議の結果として、経費膨張経過の解明等について去る2月23日及び3月22日に特別委員会の委員長報告として本会議において報告し、県民に公表しているところであり、今後も特別委員会において諸対策について審議をすることとしております。
 なお、特別委員会における各委員の質問内容等については、委員会記録に明らかにされております。

 

(資料4)

青森アジア冬季競技大会アンケート総集計

● 実施期間 2000年3月25日~4月5日
● 配布枚数 街頭及び地域配布 1,200枚
● 回 収 率 65.5%
● 回答者数 786人(男性 396人、女性 372人、不明 18人)
● 回答方法 街頭(3月25日)94、郵送 173、FAX 167、その他 352
● アンケートに意見・提言を寄せてくれた人数 270人
● アンケート以外の意見書 15(3月16日~4月5日)
● 電 話 61(3月16日~4月5日)
● 回答内容
 (1) 大会経費の試算が当初の8億円から56億円に膨張した経過とその内容について、県側の説明と県議会の対応に納得がいきましたか。
  ① 納得がいった
  ② 納得がいかない
  ③ わからない

無回答 合  計
21 669 92 4 786

(2) 経費が8億円から大幅に膨張しても(県民負担が増えても)大会は開催すべきと思いますか。
  ① 開催すべきだ
  ② やめて返上すべきだ
  ③ わからない

無回答 合  計
65 611 105 4 786

(3) アジア冬季競技大会をめぐる一連の問題で、県と大会組織委員会の両トップを努める木村知事は、責任を取る必要がありますか。
  ① これまでの対応を明確にし責任を取るべき
  ② 「陳謝」でけじめがついたから責任を取る必要がない
  ③ わからない

無回答 合  計
596 72 111 7 786

(4) これまでの経過と一連の対応を考えるとき、大会開催の是非についてあらためて県民に信を問う必要があると思いますが、これについてどう思いますか。
① 今後、開催の是非を県民に問うべきである
② 問う必要がない
③ わからない

無回答 合  計
653 66 58 9 786

 ● 回答者年齢

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 不 明 合 計
52 86 87 151 213 118 63 16 786

 ● 地域別

青森市 弘前市 八戸市 五所川原市 十和田市 黒石市 むつ市 野辺地町 東北町
641 59  4 19  4  3  9  1  1
三戸町 浪岡町 平賀町 板柳町 金木町 中里町 鰺ヶ沢町 平内町 蟹田町
 1  2  2  2  4  2  3  2  3
小泊村 平館村 三厩村 市浦村   不 明     合 計
 1  1  1  1   20     786

 

● 回答内容の特徴点
 ・回答者のほとんどは
   設問1-②(納得がいかない) 669人(85.1%)
   設問2-②(やめて返上すべき) 611人(77.7%)
   設問3-①(知事は責任を取るべき) 596人(75.8%)
   設問4-①(開催の是非を県民に問うべき)653人(83%)
 ・大会開催は返上すべき(設問2-②)と回答した611人中、38人が県民に信を問う必要がない(設問4-②)と回答している。
  これは、県民の借金財政を憂い、県民に赤字の負担をこれ以上すべきでないと意見、提言を寄せている。
 ・大会は開催すべき(設問2-①)と回答した66人中、39人が開催の是非について県民に信を問うべき(設問4-①)、また35人が県側の説明と県議会の対応に納得がいかない(設問1-②)と回答している。
  これは、大会経費が8億円から56億円に膨張し、これまでの県側と県議会の対応に納得いかないが、国際信義上開催すべきである。そのためには、県と大会組織委員会の責任者として、これまでの対応を明確にし責任をとるべきだ(設問3-①)と回答している。
 ・意見、提言者270人。全体を通して言えることは、青森県民の抱えている課題(借金財政、雇用対策、介護・福祉など)を優先すること。そして県知事及び県議会議員の県民を軽視する姿勢を問う意見、提言が余りに多かったことを付したい。

 

(資料5)

2003年青森アジア冬季競技大会県議会議員アンケート総集計

2000年4月28日 

 ● 実施期間 2000年4月18日発送、4月26日締め切り
 ● 配布方法 51人の各県議会議員自宅へ郵送
 ● 回 収 率 13.7%
 ● 回答者数 7人(連名回答者あり)
 ● 氏名公表してよい5人、氏名公表出来ない1人、無回答1人
 ● 当会としての総括会議 4月27日
● 回答内容
1. 大会経費の試算が当初の8億円から56億円に膨張した経過とその内容について県側の説明と県議会の対応について、県民アンケート調査結果からは「納得がいかない」と回答してきた方が85.1%に及びましたが、このことについてあなたはどう思いますか。
 ① 自分自身納得している  0人
 ② 納得してない  6人
 ③ 無回答  1人
◆ その理由についてお聞かせください
  ・私も議会の特別委に参加しているが、知事が99年11月10日の説明以外は一切認めていない。信憑性の資料が5回ほど出ているのに、予測の数字だと頑迷にしている。しかしそれらの説明資料で予算がつき執行されているのだから、知らないという知事の態度は常識では考えられない。
  ・都市間契約がある以上経費はもっと膨張すると思います。但し競技のグレードにもよる。
  ・いまだに経過についてはキチンとした説明がされていません。矛盾点が資料、会見という形で様々出されたのに調査もせずまともに答えていません。
  ・25億~30億円積算資料や知事へのレク資料及び事務総長の証言、想定問答資料等から県及び知事の説明には納得出来ない。
  ・説明が二転三転して、誰の何時の説明が正しいのか判断しかねる、三者の参考人としての場をもつのも否決では、多数の無謀としか言いようがない。
2. 経費が8億円から大幅に膨張しても(県民負担が増えても)大会は開催すべきと思いますか。
 ① 開催すべきだ  0人
 ② やめて返上すべきだ  4人
 ③ 無回答  2人
◆ その理由についてお聞かせください
  ・膨張予算のまま経過解明されずに提案されるなら反対します。「経費がいくらならいいか」という議論は今は出来ません。
  ・県議会が開催を決定したのは8億円である。説明責任と結果責任を果たせない県には大会を開催する資格は無い。県民の理解、支持、協力、参加を得られない大会は返上すべき。費用対効果が期待出来ない(1週間のイベントで役員、選手1,200名に何十億円、県職員約延200名)。
  ・金額の問題より政治的信義の問題化した今、真実を明確にしてあらためて積算の上で決すべきである。
  ・グレードの高い大会にはならないと思われる。マーケティングがうまくいくわけがないと考えられる。現在の状況では一番大事なボランティアが集まらない。
  ・アジアの人々の国際交流を主として始まった大会であったし、競技レベルを上げる大会を目指しているが魅力はない。本県が開催すべき財政力はない。知事のイベント好きに付き合う余裕は無い。国際交流の前にスポーツ立県を宣言した“地力をつけるべき競技団体の強化に助成”すべきだし底辺拡大にこそ力を注ぐべきである。
3. これまでの経過と一連の対応を考えるとき、県民アンケート調査結果からは、大会開催の是非について改めて県民に問う必要があると回答してきた人が83%に達しましたが、このことについてどのように考えますか。
 ① 改めて問う必要がない  1人
 ② 今後、開催の是非を何らかの方法で県民に問うべきである  5人
 ③ 無回答  1人
◆ その理由についてもお聞かせください
  ・県民の意向を問うことは21世紀の行政展開に最も基本的な作業と思う。
   地方分権は主権在民を柱にして地方自治の発展にすべきである。
  ・県民の不信は当然だと思うし真実を明らかにした上で新しい積算額を示して県民に意志を問うべき。
  ・県議会が全会一致で大会招致を決定したのは、8億円で開催出来るとした県の議会答弁があったからで、この条件が大幅に変わった以上是非を問うのは当然だ。
  ・県民に問うべきですが、十分な判断材料を与えていないことも重大です。
   新聞報道を信用しない、というなら自ら説明すべきです。議会は県民の代表といいますが、選挙の争点になったわけでもなく議会の機能が十分働いていないのに「議会の声を聞いた」と言っているのは間違いです。
  ・貴会のアンケート結果をこの紙上にのせるべきでは無い。
  (吉川・注釈……県民アンケート786人の集計表を添付したことだと思うが……)
4. 9月議会最終日に木村知事は「陳謝」しましたが経費膨張問題の徹底解明がなされないまま「新たな積算」を示す考えを表明し、大会開催に向けた“仕切り直し”が行われようとしていますが、議会での行政に対するチェック機能が働いていると思いますか。
 ① チェック機能が働いており、県民の信頼を得てると思う  0
 ② チェック機能に甘さがあり、県民の信頼を損なったと思う  6人
 ③ 無回答  1人
◆ その理由についてお聞かせください
  ・経費膨張の経緯と知事及び県の認識、説明に関して不透明、疑問、不信な点が多いにもかかわらずこれを解明していない。知事、前企画部長、事務総長、前事務局長の参考人招致を否決した。
  ・調査特別委員会の一部が途中から与党に変わったこと、野党の皆さんは、次にも書きますが、スポーツに対する知識をもつべきである。国際大会のありようは大変なものです。
  ・県議会の大部分が与党化した途端に、チェックよりも矛盾を正当化しようとしている。
  ・自民党29人、政風公明15人は、知事与党として賛成で、社民2人、共産2人、無所属1人の5人は反対となると思う。他の無所属の2人は解らない。少数の主張が通らないのが残念至極。
  ・矛盾点が噴き出し県民の関心が高まっている時の“幕引き”は許しません。「けじめ」を求めたり、経費をゼロにするやり方は、経費膨張を不問にし責任を免罪するやり方です。
5. その他、全般的に冬季アジア競技大会に関するご意見、ご提言をお寄せください。
  ・冬季アジア大会は、まだ歴史の浅い規模の小さな大会です。簡素で手づくりの大会(8億水準)こそがアジア大会の意義であり、オリンピック水準を名目にした華美な大会は全く必要のないことです。(民主主義が問われている問題です)
  ・県民フォーラムを実施して欲しいと思います。県民投票が実現出来れば最高ですが、制度を踏まなければならず、しかも県議会で賛成多数の実現とはならないでしょう。県民パワーで選挙区毎に議員に対して、県民投票に賛成させるよう運動が出来れば国民をアッと言わせ、住民パワーの先進県になるのだが夢でしょうか。
  ・今更言うまでもない。県民の大多数は開催に反対だと思います。野党の特別委員会の皆さんももっと勉強し国際大会に対する認識を深める必要がある。
  ・この問題は、経費の問題と同時に県政が真に県民に開かれたうそをつかない県政か、という県政の信頼という政治の基本、根幹に関する問題でもある。それだけに経緯、手順、結果をあいまいにせず、県民本位を貫かなければならない。
  ・当初は、出来れば開催し成功させたかったが、今となっては県民の理解と信頼を得るために相当な努力が必要であるし、それがないと成功もしない。
6. 最後に、氏名公表の有無についてお尋ねします。
 ① 氏名公表はご遠慮ください  1人
 ② 氏名公表して差し支えない  5人
   鹿内博県議、渡辺英彦県議、三上隆雄県議、高橋千鶴子県議、三上和子県議
 ③ 無回答  1人
● 県議会議員へのアンケート調査を実施して
  (当会の総括会議で出された意見…重複する部分もあると思うが……)
  ・回答者が51人中7人だけという結果になったが、寄せてくれた各県議の「声」は、そのまま県民に届けることが大切だし、回答結果について県民が判断してくれるのではないか。
  ・少数回答者ではあるが、議員としての所信を明らかにし、県民の代表として自らを認識し、その「声」を寄せてくれたことは、当会として実施した意義が十分県民に伝わるのではないか。
  ・白紙回答で、コメントを付して返信してくれた議員の誠意は認めるが、それだけに、県民にキチンと向き合って議員としての「声」を発して欲しかった。
  ・政党会派として、「当会が“政党色が強いから回答しない(新聞報道)”と決め」、会派所属議員の回答拒否した対応は、負託した一人ひとりの県民に、今後どのような方法で、議員個々人の考え方・意見・提言を明らかにしていくのだろうか。
  ・どういう政党、会派に所属していても、県民の立場から言えば、県民課題に応える姿勢を貫いて欲しいと思うし、回答を拒否した議員も、選挙民によって県民の代表としての資格と義務をもつと思うが、これだけの問題に対してその義務を果たしているとは思えない。
  ・青森アジア競技大会問題を通して、全県民が県行政に対して関心を寄せている。青森県政を自分たちの問題として受けとめ「青森県政を憂慮」していることではないか。
  ・このことは県内外に、青森県民性の意識の在り方として注目もされているが、県行政(知事、県議、県職員)の意識の在り方も問われ注目されているのではないか。
  ・当会の代表の経歴云々の政党色は、当会の運動のどこの内容にそれが当てはまるのだろうか。一方的な決めつけ方に対して何らかの抗議をすべきでないか。
  ・抗議するほどのことではない。当会の運動の中味で県民に理解してもらうべきだ。
● 上記のほかにもたくさん意見が交わされました。
 今後、いろんな団体、個人が、この問題で行動することが出て来たとしても、当会は、「納得出来ない、県政って何なのだろう!」と申し入れした初心で、これからも、青森アジア冬季競技大会を注視していくことを話し合いました。
 ご協力有り難うございました。