中期財政計画の取り組みについて
― 「緊急財政健全化計画書策定指針(提言)」の作成経緯と課題 ―

広島県本部/大野町職員労働組合

 

はじめに

 大野町職労では、1998年の自治研をきっかけとして財政分析に取り組み、1999年9月、町当局に対して中期財政健全化計画策定を促すため「緊急財政健全化計画書策定指針(提言)」(以下、「提言書」と言う。)を提示しました。この「提言書」は過去の普通会計ベースの推移から財政状況を分析し、この分析結果を基に将来的な財政シミュレーションを行い、対応策の方向性を検討した内容になっていますが、具体・詳細な財政再建の内容は含まれていません。これは財政再建自体が政策であり、単組全体の問題として考察されるべきものであるという観点から単組組合員全体の論議によって検討する方法を採用したためです。しかし、この取り組みによって現在、私たちの置かれている財政的状況は把握できていると考えています。結果としては非常に深刻な状況であることが判明しましたが、対応・対策によっては自主再建が可能であると言う結論も得ています。

Ⅰ 経 緯

 取り組みの経緯を単純化して説明すると、財政についての疑問が不安に変わり、この疑問と不安を解消するために財政情報の収集・分析を行い、これによって発見した事象をまとめた結果が「提言書」と言う形で現れたというもので、結局は自分たちの置かれた状況を明確化するために取り組んだものです。

(1) 疑 問
 ① 計画性
   普通、自治体財政の歳入には限りがありますが、しなければならない行政サービスには限りが無いため、計画の策定や事業に優先順位をつけてこれらに対応していると思います。大野町の場合は公営企業収入(競艇収入)が多くあったために、歳入に限りがあると言う感覚が非常にうすい状態であったと言えます。このため綿密な計画策定や事業の優先順位づけがおろそかにされて来ました。大野町も自治体ですから計画の策定や事業の優先順位づけは当然行っていましたが、余剰の財源が多かったために、これらがあって無い状態になっていたと考えられます。経済状況が良好な場合は計画策定を行わなくてもそれなりの行政サービスの提供は可能であり、計画策定しないことや計画に過大な誤差が生じることに疑問を感じることもないのですが、現在のような行政事務の高度・多様化、地域経営の必要性など、社会情勢・経済状況の変化とともに疑問は増大して来たのでした。
 ② 当事者責任
   「しようがない」、一番嫌いな言葉です。財政的に窮屈になると。労使間交渉では「財源が無いからしようがない」と必ず当局は言います。また、「住民の理解が得られないからしようがない」といいながら、人件費の削減を提案して来ます。十分な計画と対策を立てていれば、住民に対して十分な説明が出来ていれば「しようがない」と言うこと自体出てこない言葉ではないかと考えます。地域経営において「しようがない」は、それを言う者が責任の所在について自分以外のところにあるということを表わす言葉であり、つまり、その責任において自分が当事者ではないと言っているのです。また、「しようがない」と言っている間は、何も処置をしていないことを表わします。そのような状況で時間だけが過ぎ、状況は悪化して行きます。財政に関する疑問や指摘は、1992年頃から諸所で起きていましたが、この「しようがない」の一言で現在まで至っています。
 ③ 公営企業(競艇)収入
   1992年以降、バブル経済の崩壊とともに、消費者の消費に対する意識が変わって来たと考えられます。消費が押さえられたため、金銭の流通が停滞し今日言われている「平成の大不況」と言う状態になっているのでしょう。このあおりを直接的に受けたのが公営ギャンブルだといわれています。(大きな要因であるとは思うが、それがすべてだとは思えない。)行政サービスにおいて、また、労使間の交渉において当局が出来ない理由として、公営ギャンブルの収入落ち込みを理由としていました。「出来ないのは財源が無いから」「枠が無い」ことあるごとに「競艇収入の減収」が当局の言い分です。繰り返し同じことを聞かされるとそれがあたかも本当のことであるように考えてしまうのが人の心理ですが、ふとそのことに疑問を持ち始めると疑問を解決したくなるのも人の心理と言えます。「公営企業収入」の無い自治体がほとんどで、それらの自治体も地域経営を行い、中には良好な状態のところもあると言うことを考えたときに、「競艇収入」の落ち込みだけが、現在の深刻な状況を引き起こした原因なのか、非常に疑問が起きて来たのです。

(2) 不 安
 ① 退職手当
   自治体に限らず、日本の労働者が勤勉であった要因の1つは、退職金制度であったと考えられます。この最終補償制度は、良くも悪くも現実として労働者の精神的ささえになっていることは否定できないでしょう。
   大野町は、退職手当積立の組合に加入していません。基金で対応しています。ただし、現在の状態で言うと、すべての職員の退職金支払いが出来ると言う可能性を含んだ計画にはなっていません。退職金の支払いが当然と言うことにはなっていないのです。
   財政的に窮屈な状態では、退職金を基金で対応している場合新たな積立が削減されて来ます。当然、将来的な補償は無くなります。このような中で最悪な場合、退職手当基金が聖域であるかどうかわからない状態になっています。また、退職金が義務的経費であるために基金が無くても単年度会計の中から支払われることになる訳ですからその年度の財政を窮屈なものにすることになります。
 ② 財政調整基金
   財政的に窮屈な状態になると当然基金の取り崩しで対応すること(本来の基金運用の意義はまったく違います。)になりますが、92年以降大野町の基金の取り崩しかたは異常とも言えます。89年度決算額で44億円あったものが99年度決算では6億円弱になっています。職員の間では92年以降基金の取り崩しに関して不安の声が上がって来ていますが、対応はなされていません。現在も歳出型予算編成を行っている現状を考えると基金運用の限界が極めて近い将来到来することが予測されます。
 ③ 職員構成
   職員の構成は、年齢的構成と配分的構成に大分されると考えます。
   年齢的構成については、どこの自治体でも団魂になっている年齢層はあると思いますが大野町の場合は、その団塊が非常に大きく、単年度の最大退職者数が19名と想定される年度が2ヵ年あります。1人当たり2,500万円の退職手当支払いとして4億7,000万円の支払いが発生する計算になります。退職手当基金の運用が不可能な状態であるならば、当然一般会計からの支払いとなります。退職手当の支払いは当然のことですが、感情的な部分で弊害が発生する可能性は非常に大であると考えられます。最悪なのは、減税補填債償還の2004年から団塊年齢の退職が始まることです。この頃、財政の硬直化がピークに達している(現状では起債制限を受ける可能性大)ことから職員の労働条件が非常に不安定になって来ていると言えます。
   また、住民1人当たりの人件費額は類団比較と2万円高くなっている要因の1つは配分的構成だと考えています。部分的な検討(セクション人員等)をした場合、絶対的に人員不足の状態なのですが、全体的な検討(類団比較等)をした場合、人員の状態は適正であると言いきれないと考えられます。(どのような状態が適正であるかは議論が分かれると考えるが)このことは、職員数が多いと言うことを示しているのではなく、大野町の行政能力以上の行政運営を行っていたために発生した問題点だと考えていますが、これについても職員の労働条件を不安定にさせる要因であることは否定できません。

(3) 把 握
 ① 具体的状況把握
   1997年労使交渉の結果確認した賃金の是正が開始されました。この賃金是正が確認されるまでの交渉で、財政的に苦しいと言う当局の対抗要件を打破するために、当時約300名いた職員の賃金是正案を作成し、それに賃金表と年間支払い月数を計算して、是正に伴う年間の増額分を算出したことがあります。そのとき執行委員の中で議論になったのは、当局が正確な金額をなぜ出せないのかでした。しかし、組合もそれまでは金額など出したことはなかったのですから、結局労使ともに職員の賃金に関して具体的な状況やシミュレーションをしてなかったと言うことになります。このとき、方向性の検討や決定には必ず、現状の把握や過去の情報に基づいた将来予測が必要であることを痛感させられたのでした。
 ② 漠然とした感覚
   財政的な問題での労使交渉について、具体的な情報・数値の把握に基づいた内容となる以前は、「だと思う」や「じゃないか」といった感覚の中で行われたため、お互いが都合の良い様に解釈することが多く、接点を見つけることが非常に困難だったように思えます。賃金是正の問題や退職金の問題、行政サービスのこれからのあり方についてなど無駄に時間を費やしていたようです。このことは、地域経営についても当てはまるのではないでしょうか。漠然とした感覚で地域経営を行った場合、当然のことながら何らかの形で弊害は発生すると考えられます。議論は一定の共有する認識に基づいてはじめて成立するものですから、自分にとって都合が良い悪いで事象を解釈した場合、共有する認識は生まれてこないのではないでしょうか。

(4) 発 見
 ① 自治研
   1998年、宮島町で広島自治研が行われました。そのときに財政分析に関する研究集会が行われました。当時、競艇収入の落ち込み、過大な公共投資などから財政に関して非常に疑問や不安を持っていましたが、それに関してどのようにしたら現状が把握できるのかまったくわからない状況でした。それよりもまず、財政の分析などと言うことは当局のすることであって組合として取り組むことなどと考えてもいなかったのです。その後、米子で全国自治研が開催されましたがその中で自治体財政分析と改革についてのワークショップが行われました。これらの自治研集会に参加することによって徐々にその必要性、方向性、方法がぼんやりとではありますが見え出したような気がしています。しかし、取り組み始めた頃は、数値の情報だけを把握して取り組んだような錯覚をしていました。今考えると非常に恥ずかしい話だと思っています。
 ② 知り得たこと
   「自治体財政診断基本表」や「財政チェックリスト」を活用して大野町の財政分析をやってみようと言うことになりました。財政基本診断表に数字を入れてみました。県本部からFDを取り寄せてチェックリストも改良してみました。しかし、用語や数字の意味がよく理解できません。だいたい、職員数が300人くらいの自治体ですから、自分の分掌業務のことは知っていても、財政用語などわかるわけはないし、数字の加工の仕方や利用の仕方など論外の話です。いままで、役場に働いておきながら、最も大事なことを知らなかったと痛感させられました。それでも何とか過去の決算額からそれぞれの表が出来上がりましたが、過去においては現在では考えられないとんでもないことをしている時代があったことを発見したのです。また、大野町は「競艇収入」と言う特殊要因があったため、類以団体数値の計算除外団体となっているのですが、そのためか類似団体との比較をあまりしていませんでした。類似団体比較は、ややもすると賃金労働条件の引き下げに利用されるため、方法論として採用することに躊躇はありましたが、金額の大小と言う観点を取らず、性質比較の観点で行った場合、非常に有効であることを知ることが出来ました。結局、私たちは何も知らなかったことを知ることになったのです。

Ⅱ 課 題

 財政分析が進むにつれて、財政についての問題点は明らかになっては来ます。しかし、問題点の明確化は、同時に課題の発生を意味します。現在、大野町職ではこれら発生した課題を解決するため、新たな取り組みを展開しようと努力していますが、停滞している状況となっています。

(1) 情 報
 ① 情報は宝
   自治体の各セクションには、それぞれ業務を行うためにいろいろな資料・台帳を作成保存していると思いますが、作っただけで実際に利用していないものがけっこうあるのではないでしょうか。財政セクションのそれは、膨大なものがあります。しかし、財政の担当者だって遊んでいるわけではないし、財政の状況を把握して、是正するために努力をしているはずです。しかし、その方法論が一般的であったり、従来的であったりしてはいないかと言うことを検討しなければならないと考えます。情報としての数字だって、加工・表現・解釈の仕方で違う意味や新しい意味を持ってくるはずです。財政セクションにはその情報が大変豊富に存在していると思います。情報と言う宝をどうやって生かすのかが問題ではないでしょうか。財政のみでなくすべてにおいて言えることですが、問題解決に当たっては、基本的な知識を学習し、色々な観点や発想で議論する必要があると考えています。しかし、まだそのような議論が出来る状態にはなっていない現実があります。
 ② 得られない情報
   交渉によって資料の提供については確認していますが、一つだけ条件がついています。実施計画については組合に提供できないと言うことです。(計画が組めないと言う意味?)もしかしたらその他にも当局が収集をしていない情報、得ていない情報があるのではないかと心配になることがあります。情報を加工するとき、複数以上の情報における関連性を考慮しなければならない場合があるため、既に加工している情報であっても、得ていない情報を得たがために再度エネルギーを使って加工・検討しなおす必要が生じるのです。
   また、情報を加工することによって新たな情報を得るわけですが、これをすると今まで公表されて来た情報以外に、つまりは、得ることの出来なかった情報を得ることになります。この得ることが出来なかった情報を如何に作って行くかが大変難しいことなのです。この作業には大変な時間と労力を要します。

(2) 分 析
 ① 画一的方法・独自的方法
   自治研に参加することやアドバイザーの助言によって、分析については一定の方法論を見出すことが出来ましたが、地方自治の本質的な意義から考えたときに疑問が起きて来ました。人と同じように似ている自治体は存在しても、まったく同じ自治体は存在しないはずです。それまでに学習して来たことは、すべての自治体で採用できる方法、つまり、画一的な方法でした。画一的な方法が悪いと言うわけではなく、大野町には大野町の独自的な方法が存在するのでは無いだろうかと考え始めたのです。地勢・人口・住民性・公営企業収入の存在等、特色があるわけですから大野町の独持の方法があるはずです。これは、どこの自治体でもある程度、画一的な方法で分析が行われた後に、次の段階で検討すべき問題だと考えています。
 ② PC(パーソナルコンピューター)
   そろばんから電卓へ、そしてコンピューターヘ、計算1つ取っても時代の流れとともに変遷しています。財政分析をする上で有効な道具としてコンピューターは必要不可欠なものだと考えていますが、ある程度の知識と経験的ななれが必要になって来ます。単組で何人がそのような人材になっているでしょうか。大野町の場合、たまたま執行委員の人員から執行委員長が調査部長を兼任していて、趣味でパソコンをいじっていたために財政分析をすることになってしまいました。しかし、1人では財政分析を行うのに限界があるように思えます。前述したように、問題解決に当たっては、基本的な知識を学習し、色々な観点や発想で議論する必要があると考えていますので、少なくとも3人以上がコンピューターを使って数値分析を行い、議論しないとその内容が主観的な偏りを持つ恐れが残ります。また、少々時間を要しますから、ひとりで分析をすると継続した取り組み・運動にはならないと考えます。
 ③ 数字だけなら誰でも出せる
   過去の決算から分析を行い、それを基に大まかなシミュレーションをしてみる。自治研に参加し、コンピューターを使い、少しばかりの忍耐力と時間があればこれは出来ると考えます。因果関係において、現在の財政硬直化を「果(結果)」とすれば、分析することによって発見できた事象が「因(原因)」となります。問題解決においてこの因果関係を明確にすることは非常に重要なことではありますが、それだけでは財政硬直化は少しも直りはしないのです。

(3) 政 策
 ① 政策のサイクル
   財政再建計画、健全化計画は自治体が行う1つの政策です。政策は、立案、実施、評価、修正と言う1つのサイクルを持っていると考えますが、分析よりもこれが本当に難しいのです。組合が政策を立案してはいけないと言うわけではないし、今からは政策を積極的に立案して行くべきだとは思いますし、実施、評価、修正は現実的に私たちが行うべきことです。問題なのは自治体の組織上、決定にどこまで関与できるかではないでしょうか。政策の最終決定は首長にあると言う事実は動かせないことでしょう。だからこそ、政策のサイクルに積極的に関与するために、これからの自治体労働運動の展開・強化は必要不可欠であり、周囲から評価を受けるのではないかと考えています。
 ② 当局の説得
   分析はしました、健全化計画の骨子は出来ました、首長がこれに同意しません。では何のために財政分析を行うのかわからなくなって来ます。十分な理論的議論を経て当局を説得し、政策立案、実施しなければなりません。今までにかなりの時間をかけてこの議論をして来ました。一定の成果は得ていると思っていますが、十分とは言えない状態です。

(4) 組 織
 ① 組織体質
   日本人には、特別な功績もなければ失敗もないのが良いと言う性質があるように思えます。また、ある程度経歴をつんでそれ相当の地位につくとどうもすなおに謝罪することが出来ないようです。そのため、誤りを誤りとして取り扱わなくなる傾向があるように思えます。また、平均的が良いと言う考えから大きな変革を嫌うのでしょうか。今必要に迫られているのは、大胆で斬新な抜本的体質改善による情勢適応であると考えていますが、それにたどり着くまでには、まだまだ時間が必要なようです。
 ② 予算執行体質
   自治体での主な仕事は税等として集めた公金を資本にし消費して福祉の向上や秩序の維持を行うことです。しかし、公金を消費して行った仕事に対してまた、行おうとしている仕事に対して住民に十分な説明が出来る状態になっているでしょうか。国や県が言っていることだから、疑問は残るが仕事をする状態になっていないでしょうか。近年起こった事例で地域振興券の業務に関する時間外手当の支払いがあります。良いか悪いかはわかりませんが大野では代休振替で時間外手当の縮小に努めて来ました。しかし、振興券の業務は全額補助で他団体もそのようにするから手当で対応すると言うことになってしまったのです。結局はすべて公金であると言う議論なしにそれが行われました。このような公金に対する体質を改革しなければ財政再建はあり得ないのです。
 ③ あきらめ・縄張り意識
   「財改的に苦しいのはなんとなくわかるが自分がどうしたら良いのかわからないし、分掌担当が違うから考えてもしようが無い。あれは財政担当の仕事で自分の仕事では無い。あの人がつまらないからこうなるのだ。」このような話をよく聞きます。そして、そういうことを言う人自身が不利益な状態になると真っ先に「なんで自分」がと言うのです。あきらめるのは誰でも出来るし何時でも出来ます。人を批判したところで、状況は何も変わりはしません。セクション割があったって、そこだけ特別で財政的な不利益がこないと言うことはあり得ないのです。
 ④ 本 気
   結局は、その組織と組織を構成している人間が、財政の健全化と言うことに対して本気になれるか、また、本気にさせるか、どららかでないと絶対出来ないことでしょう。体質は意識が形成しています。本気になると言う意識改革が必要不可欠です。

(5) 組 合
 ① 執行部、組合員の意識
   随分と当局や組織体質の批判を前述していますが、単組の状況はどうでしょうか。財政分析については、執行委員会や色々な場で時間をかけて議論しましたが、「財政分析なんてものは当局がやることで組合のやることではない。」当初はこのような議論から出発しました。また議論の中には「どうせ取り組んでも無駄ではないか。」と言うような意見が出たこともありますが、議論が進むにつれ「現実問題として財政分析の取り組みをしなかったときに生じるのは住民や私たちの不利益だ。」と言う方向性が出て来たのです。しかし、これからが執行委員や組合員の財政についての危機感を確立し、特定の人間が請負型で取り組むのではなく、組合として全体で取り組まなければならないと言う意識を形成する重要な時期になっています。そのため、現在は毎月財政に関する学習会を開催していますが、なかなか参加者は増えていない状況です。財政問題を共有化する方法として再度検討すべきではないかと考えています。
 ② 権利主張の方法論
   従来、権利主張をするときに、権利主張のみを行っていたような状況が存在しました。この方法論が悪いとは考えていませんが、状況の変化、時に当局資質の変化に伴って従来の方法では権利獲得できないようになって来ています。法や事象の解釈論義に頼りすぎると、当局も同じような方法で労働条件の改悪をするようになっています。その意味で、これからは情報の収集や確立を行いこれらを基に交渉や議論を進めないとすぐにひっくりかえされてしまう恐れを感じています。そのためにも、全体による学習を深めることや組合執行部の情報収集分析能力を向上させる必要性を認識しています。

おわりに

 行財政に弾力性や余裕が無くなるのが怖いのでは無く、これによって地域住民や職員の心に弾力性や余裕が無くなり、あきらめ、絶望、偽善が蔓延ることが怖いのです。これを未然に阻止するため、労働組合として何が出来得るのか、新たな運動展開を迎えるときが既に到来していると考えています。


<参考・当面の闘争方針より抜粋>

1. 若干の経過と情勢および闘争の組み立て

【闘争の組み立て】
8. 臨時国会対策などを中心に、次の課題を重点として、自治大臣に要求書を提出し交渉を行うとともに、今後の自治省交渉の出発点とします。
 ① 臨時国会・2001年通常国会に向けた法案対策
 ② 自治体の税財政制度確立と人員の確保
 ③ 介護保険制度実施後の諸課題に対する方策
 ④ 公務員給与法案の早期閣議決定と成立および自治体労使交渉の尊重
 ⑤ 臨時・非常勤職員の法的位置付けの明確化と労働条件の改善
 ⑥ 廃棄物行政における自治体の役割の追求
 ⑦ 男女共同参画の推進と自治体の女性施策の拡充