地方財政分析レポート

北海道本部/大成町役場職員組合

 

1. あらまし

 本町の財政状況においては、歳入面で町税をはじめとする一般財源に大きな伸びを期待できないことや、歳出面では人件費、公債費などの義務的経費が増大する一方で、財政調整基金、減債基金などの取崩により収支の均衡を図ることが極めて困難な状況にあるなど、厳しい財政運営を余儀なくされてきている。
 このような厳しい財政状況のもとで、平成11年7月に起債制限比率が14%を超えるとして『公債費負担適正化計画』を策定、また8月には経常収支比率が85%を超えたため『財政健全化計画』を策定している。

2. 決算状況

 普通会計の決算は、第1表に示すとおり、歳入総額33億7,497万5千円に対し、歳出総額33億4,013万5千円で、歳入歳出差引額(形式収支)は3,484万円となり、このうち翌年度への繰越事業に充てる財源100万円を差し引いた実質収支は、3,384万円の黒字となった。これによる実質収支比率(市町村の場合で標準財政規模の3~5%程度が適当である)は、1.9%で前年度より0.1%減少している。
 なお、平成10年度決算の実質収支額は3,561万8千円でしたので、平成11年度の単年度収支額は177万8千円の赤字となり、これに財政調整基金への積立金と町債の繰上げ償還額を加え、基金取崩額を差し引いた実質単年度収支額は4,127万4千円の黒字となっている。

第1表 普通会計収支の状況

区   分

平成11年度

平成10年度

比   較

歳入総額

3,374,975

3,659,859

△284,884

歳出総額

3,340,135

3,586,226

△246,091

歳入歳出差引

34,840

73,633

△38,793

翌年度に繰越すべき財源

1,000

38,015

△37,015

実質収支

33,840

35,618

△1,778

単年度収支

△1,778

△3,906

2,128

積立金

836

17,262

△16,426

繰上償還金

60,787

 

60,787

積立金取崩額

18,571

5,350

13,221

実質単年度収支

41,274

8,006

33,268

3. 財務指標

(1) 財政力指数
  自治体の財政力を判断する指標であり、この指数が1以上であれば地方交付税の不交付団体となる。大成町の場合、第2表に示しているようにこの財政力指数が小さいため、標準的な行政を行うのに必要とされる一般財源に対して、町税など一般財源収入が不足していることになるので、その足りない財源を普通交付税で穴埋めしている。
  平成11年度における普通交付税の構成比は46%を占め、いかに自主財源が乏しいかがわかる。

第2表 財政力指数の推移

区   分

7年度

8年度

9年度

10年度

11年度

3ヵ年平均 

0.088

0.090

0.093

0.094

0.093

単年度 

0.091

0.093

0.096

0.092

0.090

(2) 経常収支比率
  経常的な支出(人件費、公債費、繰出金、経常的な物件費など)に充てられた経常一般財源の経常一般財源総額に対する比率で、普通、この比率が低いとその団体は財政力に弾力性があり、高いと財政が硬直しているとされている。
  平成10年度決算において、経常収支比率が87.5%となり85.0%を超えたため平成11年8月に『大成町財政健全化計画』(平成11年度~17年度の7ヵ年度)を策定している。
  率が上昇した理由には多くの要素があるが、歳入面においては、経済情勢が不況にあって町税、普通交付税が伸びず、基金の取崩を余儀なくされ、反面、歳出面では、人件費、物件費(施設の維持管理費など)、扶助費の増加があり、公債費ではふるさと林道緊急整備事業、町立高等学校の改築、南西沖地震災害復興事業、在宅老人施設整備事業、公営住宅建設事業などの起債の償還額が伸びてきているのが大きな原因となっている。
  このため、計画では学校給食費、町立高等学校の料金改定、使用料の見直しなど行い、僅かでも歳入の確保に努め、歳出では人件費(手当)の削減、物件費の抑制(旅費規定の改定等)、補助金の見直しを行い経費の節減に努めていく内容となっている。

第3表 経常収支比率の推移

区   分

7年度

8年度

9年度

10年度

11年度

大成町

76.8(76.2)

80.9(80.1)

83.2(82.4)

87.5(87.0)

90.3(90.2)

うち人件費 

35.3(35.0)

36.7(36.3)

36.3(35.9)

38.3(38.0)

38.7(38.7)

うち公債費 

17.9(17.8)

21.0(20.8)

21.9(21.7)

23.0(22.8)

23.9(23.8)

※( )内の数値は、減税補てん債を経常一般財源に含めて算出したものである。

(3) 公債費負担比率
  公債費負担比率は、借金の返済である公債費の一般財源に占める割合をみる指標であり、公債費は必ず支出しなければならない義務的経費で、平成11年度は23.3%となっており、前年度19.6%と比べると3.7%増加している。
  公債費適正化計画に基づいて11年度において60,787千円の繰上償還を行ったことが大幅に上昇した要因となっているが、年々公債費負担が増加傾向にあり、町税や交付税の一般財源が伸びないためであり、警戒ラインの20%を超えているので財政運営が非常に厳しい状況になっている。

第4表 公債費負担・公債費比率の推移

区   分

7年度

8年度

9年度

10年度

11年度

公債費負担比率

15.5

19.3

18.9

19.6

23.3

公債費比率

13.0

15.1

15.4

16.2

16.0

(4) 起債制限比率
  10年度決算において、起債制限比率(3ヵ年平均)が13.7%となり、前年度12.9%と比べると0.8%増加した。
  このため、今後2年度以内に14%以上となる見込の団体は、自主的に公債費負担適正化計画を策定するよう求められ、平成11年度~17年度の7ヵ年計画を自治省に提出した。(12月に確認団体となる)
  平成11年度においては、同計画に基づき、公債費の一部(60,787千円)の繰上償還を行い、あわせて減債基金への積立により比率が減少している。

第5表 起債制限比率の推移

区   分

7年度

8年度

9年度

10年度

11年度

3ヵ年平均

10.8

11.8

12.9

13.7

13.7

単年度 

11.5

13.5

13.8

13.8

13.4

4. 地方債現在高、積立金残高

 地方債現在高は、平成11年度末で41億2,990万8千円となっており地方債残高比率は2.3%となるため、公債費負担が重荷になり財政運営は厳しい状況にあるといってよい。
 積立金残高は、6億11万2千円で年々減少している。

5. 繰出金

 普通会計から他会計に繰出すもので、国保病院への赤字補てんや下水道事業特別会計への繰出金が増加し、一般財源が逼迫している状況にあり、財政硬直化の主要な要因となっている。

 以上、財政指標を用いて説明してきましたが、どの数値をみても警戒ラインを超えているため、本町の台所(財政)はまさに『火の車』というのが実情です。このまま推移すれば財政再建団体に転落する事態にもなりかねないということから、職員からなる『財政健全化検討委員会』を設置し、財政運営の健全化に向けて検討しています。
 こうした非常に厳しい財政状況においても、景気対策への取り組み、生活関連社会資本の整備、介護保険制度の実施をはじめとする少子・高齢化社会に向けた地域福祉施策など積極的に取り組みを進めるべき多くの課題に対応していくためには、既存の各種施策や事務事業に対するゼロベースの視点からの再点検が必要不可欠であり、行政の果たすべき役割、将来の財政負担、民間活力導入の可能性などを十分検討し、職員一人ひとりが常にコスト意識を持ち、効率的・かつ効果的な財政運営の推進に努める必要があります。