被爆二世運動の現状と課題

自治労長崎被爆二世の会

 

1. はじめに

 被爆55年、戦争体験・被爆体験の風化は深刻で、戦争体験者・被爆者の高齢化などもあって、被爆二世が原水禁運動や平和運動を担わなければならない状況になっている。
 被爆40年頃より、被爆二世に対する期待が高まってきた。それから15年、1998年に全国被爆二世団体連絡協議会(以下「全国二世協」)が結成され、被爆二世運動は着実に進展しているが、十分な成果を上げ、社会的にも市民権を得ているとはいいがたい。自治労長崎被爆二世の会は、被爆50年を過ぎた、98年に結成された。21世紀を迎えようとする今、被爆二世運動は、放射線影響研究所(以下「放影研」)の被爆二世健康影響調査(以下「二世調査」)計画ををめぐって重大な岐路を迎え、また、被爆二世が、「被爆体験の継承者」として、原水禁運動や平和運動を担っていけるかが問われている。

2. 被爆二世とは

(1) 被爆二世の定義
  被爆者を両親または父母どちらかにもち、両親または父母どちらかから被爆後に命を授かった者。胎内被爆者は含まないし、被爆以前に生まれた者も当然含まれない。

(2) 被爆二世の意味
 ① 直接の被爆者ではないが、原爆の影響を受けている点では被爆者であり、「第5の被爆者」と自らを定義している。(資料1)
 ② 反原爆運動の観点からは、「被爆体験の継承者」と位置づけている。
 ③ 核(兵器)を否定する存在であり、核(兵器)の残虐性を示す存在である。つまり、被爆二世は、人間を大量に殺戮するために使用された原爆(核兵器)によって傷つきながらも生き延びた被爆者から生まれた新しい生命である。また、被爆二世は、健康不安や原爆放射線の遺伝的影響の問題、それらからもたらされる社会的差別に苦しんでいる。

3. 被爆二世問題と被爆二世運動

(1) 被爆二世問題
  「第5の被爆者」としての問題が「被爆二世問題」である。それは、3つに集約される。
 ① 被爆二世の健康問題
   原爆被爆以降、生まれた被爆二世も生後18年目までには多くの命が失われたといわれている。そして、生き残った被爆二世は、18歳から50歳程度までは健康な状態が続くといわれているが、50歳を越えるとどうなるかは誰にもわからない。そういったことを含めて「健康不安」そのものが第一の「被爆二世問題」である。
 ② 原爆被爆の放射線による「遺伝的影響」
   厚生省は「現時点では原爆放射線の遺伝的影響は認められない」としているが、原水禁国民会議副議長でもある埼玉大学の市川定夫教授(遺伝学)は早くから「被爆二世(三世以後も含めて)への放射線の遺伝的影響について」の問題点を指摘している。被爆二世、被爆三世以後の原爆放射線の遺伝的影響については解明されなければならない重要な問題である。
 ③ ①、②からくる「被爆二世(三世以後も含めて)への社会的差別」の問題
   広島・長崎からの距離に比例して差別も偏見とあいまって拡大していくといわれている。差別の問題は、①、②にどう対応していくかを含めて、被爆二世問題の取り扱いをさらに複雑にしている。

(2) 被爆二世運動
  被爆二世運動は、被爆二世問題への被爆二世自身の取り組みから出発している。被爆者が被爆者援護を求めて「被爆者運動」を進めてきたように、被爆二世も被爆二世問題の解決を求めて運動しなければならない。被爆者が自らの援護をかちとり、さらに「国家補償」を求めて「被爆者援護法(以下「援護法」)」の制定を進めてきた経過に学ばなければならない。これまで、被爆二世団体では、被爆二世健康診断(以下「二世健診」)の法制化を当面の課題として「援護法」の改正を求めてきた。援護法の問題点は、①「立法の精神」に「国家補償」が明記されず、国家補償法ではなく、社会保障法にとどまった。弔慰金の支給が被爆者に限られ新たな差別を生んだ。②被爆二世問題の解決が欠落した(付帯決議、資料2)。③国籍条項はないが、通達により、在外被爆者に適用されないという大きな被爆者差別を残した。
  さて、被爆二世運動は、被爆二世問題の解決を求める運動だけにとどまらない。被爆者が援護法を求める運動にとどまらず、核兵器の廃絶という目標を定めて反核平和運動に取り組んだように、被爆二世運動は、被爆二世問題の解決に取り組むと同時に、再び戦争犠牲者や被爆者・二世をつくらない運動を進めなければならない。自らを生んだ核兵器の廃絶、そして原爆投下を招いた戦争そのものに反対する平和運動を進めることが「被爆二世運動」である。
  さらに、それに加えて核兵器の惨禍を経験した「被爆者の体験」を未来に伝える「継承」も被爆二世運動の1つである。

4. 被爆二世運動の歴史と被爆二世組織の現状

 1973年に初めて被爆二世組織が誕生し、被爆二世運動がスタートした。1988年全国二世協が発足し、全国的運動が始まった(資料3)。現在は全国で17の被爆二世団体が参加している。(資料4)

5. 被爆二世運動の現状と課題

(1) 被爆二・三世への援護施策と放影研の二世調査
 ① 被爆二世の基本的要求は、「第5の被爆者」への援護法の適用である。被爆二世団体は、長年にわたって国(厚生省)に対して被爆二世対策を要求してきた(資料5)。しかし、現在、被爆二世に対する国の対応は、1979年から実施している単年度措置の二世健診だけである。調査研究を名目に、被爆二世の不安を解消するために行っていると説明している。被爆二世は、全国におよそ50万人いるといわれるが、その数さえはっきりしない。国が、被爆55年経つ現在に至っても被爆二世の実態調査さえ行っていないからである。国は、「(放影研の調査研究の結果)現時点では原爆放射線の遺伝的影響は認められない(原爆放射線の遺伝的影響がないとはいえない)」との見解にたち、被爆二世に対する施策を何も行わず、被爆二世を放置してきた。
 ② そのような中で、97年8月、放影研が、二世調査を計画(資料6)し、そのために戸籍付票を取り寄せていたことが明らかになった。ABCC時代からの放影研に対する不信感もあって、人権侵害ではないかなどと被爆二世団体の反発を招いた。被爆二世団体では、この調査計画に対して、(ア)調査の目的が、単に学術的研究のためではなく被爆二世の立場に立ったもので、被爆二世に対する国の施策につながるのかどうか、(イ)戸籍付票の問題を始め放影研に対する信頼関係が築けるか、(ウ)調査の方法が妥当なものかどうか(対照群の取り方や入市被爆に対する見解など)、(エ)今後の進め方について意見がどのように反映されるのか、(オ)調査結果の公表のやり方如何では被爆二世のプライバシーの侵害や差別の助長につながるのではないか、などの課題を指摘し、広島・長崎各県被爆二世の会や全国二世協を窓口に、厚生省や放影研との交渉を積み重ねた。その結果、「厚生省としては、上記5点について全国二世協の望むような方向で考えている。調査の結果について(結果次第だが)、当然、対策に結びつかなければならないと考えている。」という主旨の回答を得るに至り、99年5月19日、放影研の長瀧理事長と全国二世協の平野会長の間で「この調査が被爆二世問題の解決に役立つ調査であることを念頭に置き、……適宜、全国二世協との話し合いを行い、……指摘、要望を最大限配慮する」などとした「『被爆二世健康影響調査計画』についての確認書」に調印した(資料7)。その後、放影研は全国二世協と協議しながら、被爆二世健康影響調査科学委員会、被爆二世健康影響調査倫理委員会と2つの第三者委員会を設置し、全国二世協からも両委員会に委員を推薦している。各々第1回の委員会が開催され、全国二世協では、今年4月の総会で、郵便調査の予備調査の実施にゴーサインを出した。現在、予備調査が終わり、その結果を基に本格的な郵便調査へ向けて9月に第2回科学委員会が予定されている。
   一方、厚生省への対応は、担当者の異動もあったが、2年半の問に9回の交渉を積み重ね、ようやく保健医療局企画課長が広島に出向き、全国二世協に対して、「(放影研の二世調査に対して)重大な関心をもっている」との見解を表明することになっている。郵便調査の本格的実施前には実現させなければならない。
   今後は、放影研に対して、この調査によって、原爆放射線の遺伝的影響の有無や被爆二世の健康実体が科学的に解明され、被爆二世問題の解決につながるような取り組みをしていくと同時に、国に対して、この調査の結果や過程で生じた問題に対して責任をもった対応を求める取り組みが必要である。
   この調査を契機に、被爆二世問題を全国に広げ、国民的課題とし、被爆二世問題の解決と国の被爆二世に対する援護施策へとつなげていくことが被爆二世運動の今後の大きな課題である。また、この調査を通して、放影研が被爆者・二世から信頼され、被爆者・二世のための機関になっていくことを期待したい。
 ③ 長崎では、長崎県被爆二世の会(以下「県二世の会」)を窓口に、長崎県や長崎市に対して、被爆二世に対する自治体独自の施策を要求し毎年交渉を重ねている。とくに、当面の課題は、(ア)二世検診を1年を通していつでも受けられるようにすること(通年化)と内容の充実、被爆三世への拡大、(イ)親の被爆記録や健診結果を記録し継続的な健康管理に役立てられる「被爆二世健康手帳(仮称、以下「二世手帳」)」の発行である。たとえば、東京都、神奈川県、埼玉県では、被爆二世に健康管理手帳を発行し、東京都、神奈川県では、医療費助成も行っている。また、今年から山口県でも「被爆二世健康診断記録表」の発行を始めた。(資料8)
   長崎県・長崎市では、被爆二世対策は「国の責任でやること」として、これまで国が実施している二世健診以外は何もしてこなかった。しかし、今年は、「二世手帳」の発行はできないが、県二世の会で発行するのであれば、県・市が配布に協力する方向で現在協議中である。名称も「手帳」とはならないが、県・市が配布に協力することは大きな前進である。
   また、今年は二世検診の受診期間が「12月~2月」から「10月~2月」までに2ヵ月間延長され、通年化に一歩近づいた。
   いま長崎では、被爆地域是正拡大が大きな課題である。これが解決すれば、次は被爆二世問題である。二世健診の受診者も増加し始め、被爆二世の関心も高まりつつある。「二世手帳」の発行をはじめ、被爆二世の実態調査や独自の被爆二世対策を県・市に実施させること、これも国の施策へつなげる一歩として今後の大きな課題の1つである。

(2) 再び戦争犠牲者、被爆者・二世をつくらないための反核・反戦・平和運動
 ① 韓国・朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)の被爆者・二世との交流・連帯
   最も近い国であり、形成過程は違うが同じ被爆者・二世である韓国・共和国の被爆者・二世との交流連帯を深め、共通の運動をつくることが大きな課題の1つである。そのためには、共通の歴史認識と共通の原爆認識、そして韓国や共和国の被爆者問題の解決が不可欠である。
  ア 日本の被爆二世と韓国の被爆者・二世との交流は、1987年に始まる。87年8月、韓国で被爆二世の会(ピドルギ団)結成。同年8月、日本被爆二世訪韓団が韓国各地で被爆二世と交流。89年8月、韓国の被爆二世7名が訪日長崎・広島でシンポジウムに参加。その後、被爆二世教職員の会が市民の会とともに韓国の被爆者の実態調査や支援に尽力、二世同士の交流は中断。98年7月、日本の被爆二世が韓国の釜山、大邸、ハプチョン、ソウルを訪問し、二世同士の交流を再開。99年7月、4名の韓国の被爆二世を招聘、長崎・広島で日韓被爆二世シンポジウム。2000年2月、韓国の被爆二世が在外被爆二世として初めて長崎で二世健診を受診。
    そして、今年7月、日本の被爆二世らが韓国を訪れ、7月29日、韓国被爆二世の会と日本の全国被爆二世団体連絡協議会の主催で「共に築こう、平和な未来を」をメインテーマに、共通の運動をつくろうと、「日韓被爆二世シンポジウム in ソウル」を開催し、併せて「原爆展」も行った。共同宣言では、(a)韓国の被爆者問題解決のため韓国内での認識を深めるために活動すること、(b)被爆体験の継承を通じ平和運動への取り組みを推進すること、(c)被爆二世の問題解決のために健康診断および医療保障要求などの活動につなげることを共同の課題として取り組むことを約束し、共和国の被爆者、被爆二世に交流と共同の目的のために語り合う日がくることを呼びかけた。(資料9)
  イ 1999年8月、共和国の「反核平和のための朝鮮被爆者協会(以下「被爆者協会」)」主催のピョンヤン原爆写真展訪朝協力団の一員として長崎から被爆二世3人が参加した。ピョンヤン原爆写真展に参加するとともに、共和国の被爆者や初めて被爆二世と交流した。被爆者協会も今後日本の被爆二世と連携を深めていきたいとの意向を示し、被爆者対策とともに二世問題の解決も一致協力して取り組むことを確認した。
    今後、日本、韓国、共和国の被爆二世が友好信頼関係を築き、共通の運動を作り出すためには、まず、韓国の被爆者の問題解決とともに、共和国の被爆者の問題解決が不可欠であり、高齢化している共和国被爆者の支援が急務である。
 ② 戦争と原爆展の開催
   日教組被爆二世教職員の会や「戦争と原爆展」実行委員会などが、被爆50年以降、アジアでの原爆展の開催に協力し、これまで韓国、マレーシア、共和国で開催されている。
   原爆被爆の実相を世界の人々に伝えようとするとき、原爆のことだけを語っても、その非人道性を理解してもらうことは困難である。日本が侵略したアジア諸国には、原爆によって解放されたと考えている人が数多くいる。原爆投下に至った、日本の侵略と戦争、加害の実態を語った上でしか、原爆の悲惨さには共鳴してもらえない。韓国や共和国、アジアの人々と友好信頼関係を築き、共通の運動をつくりだしていくには、共通の歴史認識と共通の原爆認識が必要である。
   自治労長崎では、県下各地域での「戦争と原爆展」の開催を目指している。全国各地でも開催してほしい。写真パネルの貸し出しは自治労長崎県本部へ問い合わせを。

(3) 被爆体験の継承
  戦争犠牲者や原爆の犠牲者は、自らの体験を語ることで死んでいった人たちの声なき声を伝えている。数多くの証言を聞き、犠牲者の痛みを心に刻み非戦の決意と運動へつなげていかなければならない。被爆者が高齢化していく中で、被爆二世が被爆者の体験を聞き「継承」していかなければならない。

6. おわりに

 被爆二世にとって一番大切なのは「被爆二世としての自覚」ではないか。被爆二世であることを黙っていても差別はなくならないし、「遺伝的影響はない」と言い続けるだけでは差別は克服できない。被爆者が自らをさらけだして、国の援護施策を勝ち取ってきた「被爆者運動」に学ばなければならない。原爆放射線の「遺伝的影響」を科学的に解明し、国が「影響がない」と責任をもって言えない限り、国に施策を求めなければならない。被爆二世は、被爆者と同じように過去の戦争の犠牲者であり、責任は国にあるからである。そのことによって、いまの「援護なき差別」の状況から「差別なき援護」の状況をつくりだし、差別を克服していかなければならない。そして、被爆二世が、世界の被爆者・二世と連帯し、再び戦争犠牲者や被爆者・二世ををつらないために、反核・反戦・平和運動の先頭に立たなければならない。


<資料1>

「被爆者援護法」による被爆者の分類

第1号 直接被爆者
第2号 入市被爆者(2週間以内)
第3号 死体の処理及び救護に当たった者等(原爆が投下された際、又はその後身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者)
第4号 胎内被爆者(被爆者の胎児)

 


<資料2>

原子爆弾被害者に対する援護に関する法律案に対する附帯決議

 政府は、保健、医療及び福祉にわたる総合的な被爆者援護対策を講じるとの本法案の趣旨を踏まえ、次の諸点について特にその実現に努めるべきである。
 5. 被爆者とその子及び孫に対する影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮し、二世の健康診断については、継続して行うとともに、その置かれている立場を理解して一層の充実を図ること。

 


<資料3>

被爆二世運動の主な歴史

1973.7 広島で初めての被爆二世組織として「全電通広島被爆二世協」が発足。
74.7 「広島国労被爆二世の会」発足。「大阪被爆二世の会」準備会発足。
10 「長崎全電通被爆二世の会」発足。
75.6 「全逓広島被爆二世協議会」発足。
「長崎国労被爆二世の会」発足。
77.8 総評(被爆連)・原水禁の呼びかけで広島で会合。
① 被爆二世の統一要求書作成を急ぐこと、
② 全国各地の被爆二世組織と意見交換を行うことを確認。
10 第1回全国被爆二世懇談会。4回開催。
78.3 全国被爆二世連絡会議準備会結成集会。
8 原水禁大会で初めて「二世運動分科会」を開催。
9 厚生省が「79年度から二世健診を実施する」と発表。
二世団体は「二世健診反対」を表明し、厚生省と交渉。
10 二世団体と厚生省との間で二世健診に関わる5項目確認。
79.7 「自治労広島県本部被爆二世協」発足。
「長崎県被爆二世の会」結成。
厚生省が、79年度二世健診を発表。第1回目実施。
80.10 「愛知県原水禁被爆二世の会」発足。
11 「二世健診実施要綱」の内容について厚生省交渉。
「ヒロシマ被爆二世の会」発足。
12 原爆被爆者対策基本問題懇話会答申。
81.7 「公明党・ヒロシマ二世協議会」発足。
9 「被爆二世健診に関する調査・研究」報告書の取り扱い及び今後の二世健診について厚生省交渉。
82.3 厚生省へ「被爆二世の統一要求書」提出。
5 「長崎全逓被爆二世の会」発足。
6 「広島高教組被爆二世の会」発足。
「被爆二世の統一要求書」に対する厚生省見解発表。
84.6 放影研が「被爆者の両親とその間に生まれた子供(被爆二世)」を対象に「DNAレベルでの分子遺伝学的調査」の実施を発表。
調査の即時中止を求める抗議行動。
10 大阪・広島・長崎の被爆二世の会が合同で「分子遺伝学的調査」に「質問書」を提出。
86.7 「長崎県被爆二世教職員の会」結成。
8 「長崎県被爆者手帳友の会二・三世部会」結成。
88.3 「全国被爆二世教職員の会」結成。
12 全国被爆二世団体連絡協議会発足。
89.8 「長崎県職被爆二世協」発足。
8 ~12 全国二世協「被爆二世健康実態調査」実施。
93.6 「被爆二世健康実態調査」の検討会開催。
94.12 「被爆者援護法」成立。
97.8 放影研が被爆二世健康影響調査計画を発表。
98.5 「部落解放同盟長崎県連二・三世の会」結成。
7 自治労長崎被爆二世の会結成。
99.5 「被爆二世健康影響調査計画」についての確認書締結。
2000.4 全国被爆二世協総会。二世調査の郵便調査・予備調査にゴーサイン。

 


<資料4>

全国被爆二世団体連絡協議会参加団体(2000年8月現在)

(広 島 県) 部落解放同盟広島県連合会被爆二世の会
広島県被爆二世教職員の会
NTT労組広島被爆二世協議会
広島県高等学校被爆二世教職員の会
自治労広島県本部被爆者連絡協議会
(山 口 県) 山口被爆二世の会
(福 岡 県) 福岡県被爆二世教職員の会
(神奈川県) 神奈川県被爆二世教職員の会
(大 阪 府) 大阪被爆二世の会
(長 崎 県) NTT労組長崎被爆者・二世協議会
国労被爆者対策協議会長崎県被爆二世の会
長崎県職被爆二世連絡協議会
長崎県被爆二世教職員の会
長崎県被爆者手帳友の会
部落解放同盟長崎県連被爆二・三世の会
自治労長崎被爆二世の会
(全  国) 日教組全国被爆二世教職員の会

 


<資料5> 厚生省への「要請書」

厚生大臣
  丹羽雄哉 様

全国被爆二世団体連絡協議会
会長 平野伸人

要   請   書

 わたしたち被爆二世の基本的要求は「わたしたちを被爆者と認め被爆者援護法を適用させる」ことにあります。
 これまでも被爆二世検診の充実を当面の課題としながら「被爆者援護法を被爆二世にも適用させる」ために被爆者援護法の改正を求めてきました。被爆者援護法の立法の精神は「国が起こした戦争の結果生じた、原爆被爆について国家補償する」ことにあります。このような被爆者援護法の立法の精神から考えて、被爆二世や在外被爆者に被爆者援護法が適用されていないことは重大な問題です。
 わたしたちは「被爆者」としての扱いと援護を求めて被爆二世運動を続け、このような要請活動を20年間以上続けています。その運動の結果、被爆二世に対する唯一の施策として「被爆二世検診」が単年度処置ながら、行われるようになって現在に至っています。
 わたしたちはこの「被爆二世検診」については検診内容の充実と法制化などの制度の充実を求めてきました。地方自治体にたいしても同様の考えから「被爆二世検診」の充実や、「被爆二世手帳」の交付などをその柱とした要求を行ってきているところです。
 また、今年は、外国人被爆二世として、戦後初めて「被爆二世検診」を韓国の被爆二世が受診しましたが、日本に来るためには、多額の旅費と休みを必要とし日常的に受診することは大変困難です。
 国の内外を問わず、被爆二世もいわゆる成人病世代にはいって高齢化している現状を考えると、これらの懸案事項の早急な解決が必要です。
 また、放射線影響研究所による「被爆二世健康影響調査」については科学的委員会・倫理委員会委員の第1回会合が終了し、予備調査の具体化へ向けた取り組みがなされております。
 以上の状況をふまえて、放射線影響研究所と全国被爆二世協の合意とともに、行政としての厚生省の立場について、一定の見解表明をいただきますよう、全国被爆二世団体連絡協議会としての要請を行うものであります。ご検討いただければ幸いです。

1. 現在の「被爆者援護法」を「国家補償」の条文と被爆二世および在外被爆者への適用を明記した「被爆者援護法」に改正すること。
1. 単年度処置で行われている被爆二世健康診断について通年化等を図ること。また、検診の法制化を行い制度の充実を図ること。
1. 被爆二世健康診断に基づき、医療措置を行うこと。また、在外被爆二世についても同様の措置を講じること。
1. 被爆二世に対して「被爆二世健康手帳」を発行すること。
1. 放射線影響研究所による「被爆二世健康影響調査」について国としての責任ある対応を行い、被爆二世の援護施策に生かすこと。
1. 「外国人被爆二世等の在外被爆二世に対する「被爆二世検診」については、居住国の医療機関で受診出来るような措置を講ずること。
1. 韓国・北朝鮮等の在外被爆者被爆医療の充実のため、医療技術者の来日研修等の支援を行うこと。
   2000年3月10日

 


<資料6>

放影研
1999年12月

被爆二世健康影響調査計画

はじめに
 1996年、ブルーリボン委員会は放射線影響研究所(以下、放影研という)に対して、「特に新しい分子遺伝学的技法を用いた研究と併せて実施すれば、遺伝的影響に関する価値ある情報が得られるかもしれないので、被爆二世の健康について、調査を検討すべき」と勧告しました。また、同年の放影研専門評議員会はこの勧告に応えて、「被爆二世に対して総合的定期検診を継続的に行うプログラムを実施することが必要であろう」と提案しました。これらの勧告および提案を受けて、放影研は、被爆二世の方に対する健康影響調査を計画していました。その内容は放影研が調査対象としている被爆者および非被爆者の子供から成る集団(以下、被爆二世調査集団という)の方々に対して、将来健康に影響を与えると予想される喫煙・飲酒などの生活習慣や現在の健康状態について質問する「郵便調査」を実施するとともに、医師による問診、血液・尿検査などを行う「健康診断調査」も合わせて行うというものです。
 以下に、このような調査を計画するに至った経緯、理由を述べ、具体的な方法についてご説明します。

Ⅰ 背景および理由
  原爆放射線被曝による遺伝的健康障害の有無を明らかにするため、放射線影響研究所(放影研)とその前身である原爆傷害調査委員会(Atomic Bomb Casualty Commission: ABCC)は今までに数多くの調査を実施してきました。最も早期に、かつ広範に実施された遺伝調査は、広島・長崎両市の新生児約77,000人を対象とした先天性異常や死産などについての調査で、その後、16,000人の子供の染色体調査、23,000人に対する一次元電気泳動法によるタンパク質変化のスクリーニング、ならびに10,000人を対象とした酵素活性測定などが実施されました。最近では、将来のDNA研究のために、約1,500家族(親・子供のトリオ)について不死化したリンパ系細胞が樹立され、予備的研究が進められています。さらに、原爆被爆二世集団77,000人の死亡調査も長期継続中です。
  これらの調査から遺伝的影響を有意に示すデータはこれまで得られていませんが、これまでの調査が新生児期や小児期にのみ行われたものであるため、被爆二世の大多数の方々が壮年期に達した現在、成人病(高血圧症、糖尿病、心臓病、がんなどのいわゆる生活習慣病)の調査を充実させることが重要となってきました。成人病(生活習慣病)には、遺伝的要因が一部関与しているということが最近明らかになっており、その頻度も高いことから今回の疫学・臨床両面からの健康影響調査が企画されました。

Ⅱ 郵便調査
 1) 目 的
   郵便調査の主な目的は、(1)被爆二世調査集団一人ひとりに対して、おそらく初めてとなる放影研からの連絡を取ることにより、将来の被爆二世調査への協力意志の確認をし、(2)「健康診断調査」実施に向けての基本情報(住所や健康診断への参加意志の確認)を把握することです。また、(3)喫煙、飲酒、食事内容などの情報を解析するとともに、現在継続中の二世集団死亡率調査解析にも利用させていただく予定です。
 2) 対 象

88,500人(放影研で把達している被爆・非被爆の二世集団)
1) どちらかの親の被曝線量が0.005sv以上の17,450人
2) 1)と性、市、生年月日をマッチさせた親の被曝線量が0.005sv未満の17,450人
3) Unmatched Control(0.005sv未満)3,800人
38,700人    (調査対象基本集団Ⅰ)

広島・長崎市に本籍を有する者

20,000-25,000人 (調査対象基本集団Ⅱ)

広島・長崎市に本籍を有する者

15,000-18,000人 (今回の調査対象集団)

 3) 質問項目及び方法
   食事・喫煙・飲酒、職業、ストレスなどの生活様式や、女性の妊娠、出産、生理歴等、多因子疾患のリスク要因と簡単な健康状態(身長・体重、既往歴など)についての自記式質問票を上記対象者に郵送します。回答率を高めるため、無回答者に対して催促状と質問票を2~3回発送する予定です。
   質問票は科学委員会および倫理委員会、放影研専門評議員会での承認を受けた後に発送を開始します。発送から回収まで約6ヵ月、回収データのコンピューターへの入力およびそのチェックに約6ヵ月、データ解析に約6ヵ月を見込んでいます。
 4) 解 析
   基本情報は、次段階の臨床的調査の基礎データとします。生活様式等のリスク要因について、当集団での頻度を推定することにより集団の特性を知るとともに疾病データは将来の臨床調査への参考として用います。集計結果の統計的解析結果は、理解しやすい説明、解釈をつけて対象者へお知らせします。
 5) 予備的郵便調査
   科学委員会、倫理委員会の第三者による両諮問委員会の審議を経た後、本格郵便調査に先立ち、被爆二世集団のうちの100~300人を無作為に抽出し、質問票を郵送して予備的郵便調査を行います。質問方法の適否、郵便調査全体に対する反応や、挙げらた問題点を検討して、本格郵便調査に反映させる予定です。
 6) 個人情報保護
   回収された質問票は鍵のかかるキャビネットに保管され、この質問票と質問票から得られたデータに対しては、限られた放影研職員だけしかアクセスできないような体制をとります。また、解析データには番号のみを用い、個人の名前やその他の同定情報がもれるようなことはありません。結果の発表については、集計の結果だけを公表し、個人同定項目や個人の固定し得るデータなどは外部へ提供しません。

Ⅲ 健康診断調査
  被爆二世健康診断調査は、郵便調査に応じ、健康診断調査に参加を希望した人を対象にして、健康診断を行います。
  被爆二世健康診断調査の目的は、
 (1) 標準化された方法を用い、疾患、潜在的な前駆病変を把握、あるいは各種検査値を求め、親の放射線被曝との関係を検討する
 (2) 将来の分子生物学的研究のための生物試料を得て、保存する
 (3) 被爆二世対象者に健康に対する関心を喚起することです。
  健康診断調査は、まず、予備的調査を行い、引き続いて本格調査を行う計画です。
1. 予備調査
 1) 目 的
 (1) 調査方法の有用性、妥当性の評価
  ● 被爆二世の疾患の頻度の把握
  ● 健診内容の検討
  ● 健診の時期や場所(往診、夜間診察、休日診察など)
 (2) 対象者と連絡するにあたっての問題点の把握
  ● 対象者の反応
  ● 受診率(受診率の季節変動も検討)
 (3) 健診体制、費用の検討
  ● スタッフ数、診断機器、健診の流れ
 2) 対 象
   郵便調査に応じ、健康診断調査に参加を希望した人のうちから広島、長崎で合計約500~600人を抽出し予備調査を実施します。
   対象者の抽出方法については、郵便調査結果をもとに検討します。
 3) 健診内容
 (1) 問診、診察、血圧、体重、身長、体脂肪測定、尿検査、血液検査(赤血球数、白血球数、血小板数など)、血液生化学検査(肝機能、腎機能、コレステロール、中性脂肪、血糖、尿酸など)、便潜血反応、心電図、腹部超音波検査、胸部Ⅹ線検査、胃内視鏡検査など。
 (2) 本人の希望や医師が必要と判断した場合、婦人科検査あるいは特殊な検査などを行います。
 (3) 検査結果は本人に知らせます。もし、なんらかの異常が見つかった場合は、精密検査や適切な治療を受けていただくために専門の病院を紹介します。
 4) インフォームド・コンセント
   将来の分子生物学的研究のための生物資料の保存については、文書でインフォームド・コンセントを取り、対象者ご本人の了解を得てすすめます。
 5) 個人情報保護
   健診で得られたすべてのデータは、チャートあるいは保管庫に保管されます。データに対しては限られた放影研職員だけが取り扱う体制をとります。結果の発表については集計結果のみ発表し、個人を同定する項目は一切明らかにしません。
 6) 期 間
   予備調査としての健診は1年間の予定です。
   なお、調査は第1回郵送調査終了後できるだけ早めに開始します。
 7) 調査結果の集計
   予備調査終了後、6ヵ月以内にデータを集計し、本格調査の調査方法を決めるとともに、受診率向上のための対策を検討し、本格調査に向けて健診体制を整えます。
2. 本格調査
 1) 目 的
   調査目的は、文頭で述べた健康診断調査と同じです。
 2) 対象・期間
   本格調査は、広島、長崎に住む人で郵便調査に応じ、健康診断調査に参加を希望した人を対象にしますが、正確な対象者数は郵便調査結果で把握された参加希望者の人数、年齢分布によって最終的に決定されます。
   以下は、回答率、参加希望率を仮定した場合の参考例です。
   ― 郵便調査対象者15,000から18,000人、そのうち、郵便調査の回答率が75%で、回答者の80%が調査への参加に同意すると仮定すると9,000~10,800人が対象となる。―
   (15,000~18,000×75%(郵便調査回答率)×80%(受診率)=9,000~10,800)
 3) 健診内容、インフォームド・コンセント個人情報保護
   基本的には予備調査と同じであり、健診内容については、予備調査で新たに必要と認められた検査があれば追加する予定です。
 4) 調査結果の解析
   全調査終了後、6ヵ月以内にデータを入力し、1年で解析する予定です。
   結果の公表は、学会及び医学雑誌で公表します。

 


<資料7>

「被爆二世健康影響調査計画」についての確認書

 放射線影響研究所(以下放影研という)により計画されている「被爆二世健康実態調査」(以下二世調査という)について、放影研は全国被爆二世団体連絡協議会(以下全国二世協という)は、これまで二世調査実施にあたっての諸問題についての検討を重ねてきました。この二世調査の実施により原爆放射線の遺伝的影響の有無や被爆二世の健康実態の科学的解明がなされることを期待しています。そして、この二世調査が被爆二世問題の解決に寄与する重要な契機となることを願って止みません。
 そこで、放影研と全国二世協は計画の実施に際して以下のことを確認します。

1. この調査が被爆二世問題の解決に役立つ調査であることを念頭に置き、調査計画の立案にあたること。
2. 被爆二世の人権を守る配慮や調査にあたってのプライバシーの保護などについての対策について明確な処置を取ること。
3. 調査方法、調査事項については、問題点について双方の十分な話し合いの結果に基づいて放影研が具体的な調査計画を立案していくこと。
4. 適宜、全国二世協との話し合いを行い、計画を進めるにあたっては、「被爆二世団体」の指摘、要望を最大限配慮すること。
5. 以上を文書として双方確認すること。
   1999年5月19日

財団法人 放射線影響研究所
 理事長 長瀧重信 印
全国被爆二世団体連絡協議会
 会長 平野伸人 印

 


<資料8>

[自治体の被爆二世対策]

*[愛知県津島市]
 津島市内に居住する被爆者二世は申請に基づき、54,000円を限度で医療費助成金を支払う。[支払い対象者、特別措置法第20条に定める障害を伴う疾病による医療費を言う。]また、二世の健康、福祉増進のため、保健婦による家庭訪問その他必要な措置を講ずるようにしている。
 この施策は昭和55年4月1日より施行されている。
[医療費の支給]
          :予算額:      :実績額:
   昭和61年 1人 50,000円    1人 60,822円
   昭和62年 1人 60,000円    1人 69,613円
   昭和63年 1人 72,000円
*[神奈川県]
 被爆者のこども健康診断証の交付を受ければ、被爆者方と同様に定期健康診断2回と希望の健康診断2回を無料で受けることができる。
         受診者数     要精検者数 精検受診者数 要治療者数
昭和59年   382人[肝機能]・・ 259人  :  252人    : 48人
昭和60年   356人〔肝機能]・・ 259人  :  247人    : 38人
昭和61年   386人[肝機能]・・ 268人  :  261人    : 45人
[前 期]    199人[肝機能]・・ 137人  :  133人    : 22人
[後 期]    187人[肝機能]・・ 131人  :  128人    :23人
 横浜市と川崎市を除く県内に住んでいる被爆者のこどもは、健康管理手当の対象の病気と同じ病気にかかった場合、保健適用される医療費の自己負担分が支給される。
*[東京都]
 「健康診断受診表」の交付を受けることによって、年2回の健康診断が無料で受けられる、被爆者の子で健康診断受診表の交付を受けている人が、健康管理手当対象の病気にかかった場合、6ヵ月以上の医療を必要とするときは、医療費の助成が受けられます。(尚、毎年25人程度が助成の対象となっている。)

[被爆二世対策自治体の実情]

[自 治 体] [内       容] [対 象]
北  海  道:~・  特別検診時に検診。 * 希望者全員。
神奈川県:~・ 健康管理手当対象疾病の治療費支給。  
横 浜 市:~・ 入院者の全疾病治療費支給。
東 京 都:~・ 健康診断受診者票を交付し、被爆者手帳所持者と同様の検診を実施し、被爆管理手当該当で治療期間6ヵ月以上の場合は医療費を助成する。 * 健康診断受診者票所持者に限る。
埼 玉 県:~・ 二世手帳を発行し、年2回検診を実施する。
長 野 県:~・ 手帳か受診者票を所持する者の子に対し、年1回専門医の検診。
愛 知 県:~・
[津島市]
医療機関に支払った金額で54,000円。(88年4月1日現在)を限度額として、医療費助成。(健康管理手当対象疾病)
兵 庫 県:~・ 疾病者と同様の検診。
京 都 府:~・ 一般および精密検査(被爆者並み)自治体として最初に取り組む。 * 希望者。
広 島 市:~・ 一般および精密検査を年1回実施。(73年から) * 希望者。
山 口 県:~・ 健康診断を年4回。(定期2回、希望2回)医師が必要と認めれば精密検査も実施。 * 希望者。
愛 媛 県:~・ 健康診断。 * 希望者。
政   府:~・
[厚生省]
1979年度から年1回、財団法人、日本公衆衛生協会。(民間団体)に委託して一般・精密検査。(精密は医師が必要と認める場合のみ)健康診断は調査・研究であり医療費の助成はなし。 * 希望者。

 


<資料9>

「韓日被爆二世シンポジウム」共同宣言

 1945年8月6日広島へ、そして8月9日長崎へ人類史上初の核兵器・原子爆弾が投下された。強烈な爆風と熱線と恐ろしい放射線が人々をおそった。まさに、地獄のようなありさまだった。
 原爆によって一瞬のうちに広島で11万8,661人、長崎で7万3,884人の人が命を失い、多数の人が傷つき倒れた。また、辛うじて生き残った人々も原爆放射線にさらされて被爆者となった。
 原爆による被害者は日本人ばかりではなかった。日本のアジアへの侵略の結果、植民地にさせられていた韓国から強制連行などにより日本に連られて来られていた多くの人々がいたことを忘れてはならない。
 韓国人の被爆者は日本から韓国に帰ってからも原爆でうけた傷や放射能による後遺症に苦しみ続けた。そして、これらの韓国人被爆者は55年間にわたって放置されてきた。
 被爆者を親にもつ韓国の被爆二世は、このような被爆者の苦しみをみて育った。そして、わたしたちはこのような韓国人被爆者の問題を解決することを決意する至った。
 わたしたちは韓日の被爆二世交流の歴史は1987年にはじまった。それから日本の被爆二世は二世同志の交流だけでなく韓国の被爆者問題に真剣に取り組んだ。そういった日本の被爆二世の活動にわたしたち韓国の被爆二世は深い感動と信頼をもつに至った。そして日本の活動に学びながら、韓国での被爆二世の活動を続けてきた。途中の一時的中断はあったが、韓日の被爆二世同士の信頼と友情は変わることはなかった。
 そして、今日わたしたちはソウルにおいてシンポジウムを開催し、日韓の被爆者、被爆二世問題、被爆体験や戦争体験の継承問題、世界の平和の問題などについて話し合った。
 その結果、韓日両国の被爆二世の交流を深め、被爆者、被爆二世問題の解決のための共通の運動をつくることを確認することができた。わたしたちは、今日のシンポジウムを新しい歴史を築く第一歩と考えたい。そして、次のことを共同の課題として取り組むことを約束したい。(1)韓国の被爆者問題解決のため韓国内での認識を深めるために活動すること。(2)被爆体験の継承を通じ平和運動への取り組みを推進すること。(3)被爆二世の問題解決のために健康診断および医療保障要求などの活動につなげること。
 また、わたしたちは今日の成果をさらに広げるために新しい提案を行いたいと考える。それは北朝鮮の被爆者、被爆二世への呼びかけである。韓日被爆二世が信頼と友情をもって交流と活動の歴史を切り開いたように、北朝鮮の被爆者、被爆二世と韓国や日本の被爆者、被爆二世がいつの日にか交流と目的のために語り合う時がくることを願っている。そういった時期が、それほど遠くない時であることを信じたい。
 今日のシンポジウムで語り合ったことを実現させるために、わたしたちは明日から活動を始めることを誓いたい。わたしたち韓国の全ての被爆二世を代表し、また、日本の全ての被爆二世を代表して、わたしたちは韓日被爆二世の友情と交流の新しい歴史がはじまったことをここに宣言する。
   2000年7月29日

韓国被爆二世の会 会長 李承徳
日本被爆二世の会 会長 平野伸人