北茨城市民カード(ICカード)システムについて

茨城県本部/北茨城市職員労働組合 


1. はじめに

 情報処理技術及び電気通信技術のめざましい発展に伴い、我が国の経済社会はあらゆる分野で情報化が急速に進行しています。
 地方公共団体においても、地域住民の福祉の向上と地域の活性化を図るうえで、積極的に地域の情報化を促進することが求められており、地方行政の分野における情報通信システムの整備と活用を進めることが重要な課題となっています。
 一方では、急激な高齢化に対応し、お年寄りがゆとりをもって、健康で安心して暮らせる社会を築くための条件整備が急務となっています。
 このような状況のなかで、北茨城市では、市民が日頃係わる度合いの多い機関で有効に利用できるシステムの構築を目指して、「北茨城市民カードシステム」をスタートしました。
 このシステムの開発にあたっては、平成3年8月に自治省の「地域情報ネットワーク構想」のひとつである「地域カードシステム事業」のモデル地域として指定を受け、自治省の指導と支援のもと調査、研究、開発を進め、平成6年10月、制度運用の第1段階として、65歳以上の高齢者及び平成6年10月1日以降の出生児を対象に運用を開始しました。

2. 目 的

 「北茨城市民カードシステム」には、65歳以上の高齢者を対象とした「ふれあいカード」と平成6年10月1日以降の出生児を対象とした「すこやかカード」の2種類のカードがあります。それぞれICカードに氏名、住所、生年月日等の基本情報をはじめ、基本健検診査や各種検診、救急情報、予防接種の状況等を記録して、効率的な健康管理、緊急時の対応強化、窓口サービスの向上等に役立てようとするものです。また、市民にとってもカードを持つことによって、自分の健康を自分で管理しているということが意識でき、万一の際の安心感にもつながり、健康に対する意識の高揚を図ることができます。

3. カードの種類について

 市民カードシステムにおけるカードの種類については、各種カードの機能や特性を十分理解したうえで、市民カードシステムを導入する分野とその利用方法に応じた最もふさわしい種類のカードを採用する必要があります。
 カードには様々な種類がありますが、代表的なカードとして、ICカード、磁気ストライプカード、光カードがあげられ、それぞれの特性に応じた利用がなされています。
 その中で、ICカードはそのセキュリティの高さや記憶容量、情報の書き換えといった特性があるため、市民生活に密着したあらゆる分野での活用が考えられます。
 個人が所有するICカードに必要事項を記録し、必要に応じてICカード内の情報にアクセスする、いわゆるポータブルデータベース(持ち歩ける、携帯できる情報)、トランザクションファイル機能(その場で情報の読み書きができる機能)といった特性を生かすことにより、通常のオンラインネットワークとは異なる、いわば「人によるネットワーク」を実現できます。具体的には、①互いに相互連絡の取り決めを行っているが、オンラインシステムを構築するほどではない場合、②ほとんど情報交流はないが、もし利用できれば当該業務のサービス向上になる場合等において、各機関の情報の架け橋となり得ます。
 上記理由により、北茨城市では、ICカードを利用したシステムの構築に取り組みました。

4. システムの概要

 「北茨城市民カードシステム」は、市民の生活を取り巻く環境を包括する形での実現を目指し、各分野で別々に所有している市民の情報を共有化することにより、本システムの特徴である多目的利用の有効性を高めていくとしています。そこで、ICカードを利用した次の各システムにおいて業務を行っています。なお、システム関連図は、別添図1のとおりです。

(1) 健康管理システム
  市民が健康な生活を送れるよう、行政側が提供する保健活動を身近なものにしていく必要があります。そのためには、健康診査と健康指導の充実を図り、市民自身が健康管理に気を配る姿勢を根付かせていくことが必要です。
 ① 健康データ管理
   市民の健康診断情報等を保健センターでデータベース化し、管理を行うとともにカードに記録し、市民に対する健康指導や健康増進対策に活用すると同時に、市民の健康増進意識の向上も図る。対象となる検診は、基本検診、各種ガン検診、乳幼児検診など。
 ② 検診受付管理
   検診会場に携帯型端末を持ち込み、受診受付管理を行うとともに、検診データをカードに記録し、受付管理や健康相談等に利用する。
 ③ 保健指導
   携帯型端末を利用して、保健婦が訪問先で最新の情報をカードから参照・登録する。それにより、指導内容をきめ細かなものにしていくとともに、次の訪問者への引継情報として役立てていく。

(2) 福祉システム
  数ある福祉施策のなかで、在宅ケアの充実を中心に据え、サービス提供者側の情報の相互連携を密にし、一人の要介護者を全員で見守る体制を整える。また、多目的利用を利点とするICカードで、各分野の情報を効果的に利用し、一人ひとりに適した介護を行い、どのような場合においてもカード所有者の普段の生活状況、健康状況等がわかる環境を作り、どこに行っても安心なサービスを受けられる機会を多く設ける。
 ① 福祉データ管理
   福祉事務所において福祉行政にかかわる情報を一括管理し、福祉サービス状況を把握するとともに、必要なサービスを提供していく。
 ② 訪問介護
   要介護者の介護に必要な最新情報をカードに記録することによって、保健婦、ホームヘルパー、介護者など様々な人からより適切な介護が受けられるように情報の連携を図る。

(3) 医療システム
  市民の健康に直接関わりあいを保つ医療分野では、診療の際に一時的情報源としてカード内情報を利用する。カード内情報を参照することにより、患者に関する詳しい状況を知る手掛かりにもなる。

(4) 救急システム
  一刻を争う救急救命活動において、救助者が患者の普段の生活状況を即座に把握できるようにする。救急車に携帯型ICカードリーダライタを配備し、緊急事態発生の場合、カード保持者の救急情報を参照することで、より適切な救急活動の支援を行う。

(5) 情報照会システム
  市民が自由にカード内情報を参照できる機会を提供する。参照端末を市役所や出張所に設置し、カード内情報の参照・出力を行っている。端末操作は、誰もが簡単に使えるタッチパネル式となっている。また、検診結果情報等を入力し、カード内情報の更新を促進している。

(6) 申請書自動作成システム
  住民票、戸籍謄・抄本、所得証明、資産証明等の各種証明書の申請書を、カード内の基本情報等を参照して自動作成する。なお、出張所にも情報照会も兼ねた申請書自動作成システムを導入する。

(7) その他
 ① 図書館カード
   カードに図書館用バーコードを貼付することにより、図書館カードとして利用できる。
 ② 身分証明書
   カードの表面には、氏名、生年月日、顔写真(成人のみ)等が印刷されるので、身分証明書的な使用ができる。
 ③ キャッシュカード
   付加価値を高め、また携帯率の向上を図るため、金融機関と提携しており、キャッシュカードとしての利用も可能。
   現在は、常陽銀行及び茨城県労働金庫と提携している。

5. プライバシー保護・セキュリティ対策

 カードに記録されている内容は、記号化されており、偽造や改ざん、情報の不正入手ができない仕組みになっていますので、仮に第三者が中をのぞこうとしても内容を確認することはできません。
 また、カードの内容は、医師、保健婦、救急隊員など限られた人だけが、それぞれの権限のなかで限定された範囲しか見られない仕組みとなっています。
 なお、本システムで取り扱う情報は、「北茨城市電子計算組織に係る個人情報の保護に関する条例」に基づき、市民代表等で構成する「北茨城市個人情報保護対策審議会」に諮り、承認を得たものについて記録しています。

6. 組織体制

 カードシステムの開発については、企画課が担当していましたが、運用については、市民活動課市民情報係が担当しています。
 システムの方針を最終決定する機関として、「北茨城市地域カードシステム推進委員会」、医療分野の開発について調査、研究を行う「医療情報検討会」を設置しました。
 現在は、「北茨城市地域カードシステム検討委員会」を設置し、今後の方針を考察しています。

7. 今後の展望と課題

 生活に密着したよりよいカードシステムとするために、カードの発行対象範囲を段階的に拡大し、将来的には、全市民を対象にしたいとしています。
 行政窓口分野については、休日等における市民サービスに配慮し、住民票や印鑑登録証明書等の自動交付機との連動を検討しています。
 また、医療分野については、医療情報が入力されていないため、当初市が思い描いたものと違っているのが現状です。このような状況を改善するために、地区医師会との協議を継続し、市民の生活に直接係わりをもつ医療分野におけるシステムの充実を図るとともに、キャッシュカードとしての共用についても提携する金融機関を拡大し、市民の利便性を高めていくことが求められています。
 さらに、最近のように人々の行動範囲が拡大し、生活圏が広域化してくると、地方公共団体の区域を越えて広く利用できるカードシステムとすることが今後の課題であると考えられます。
 その一方では、住民基本台帳法の改正により、平成14年度には全国的に住民基本台帳ネットワークが整備され、その後ICカードを用いた住民基本台帳カードシステムを活用することで、広域的な住民サービスの向上が期待されます。以上のような状況において、当市の地域カードシステムと住民基本台帳ネットワークシステムの融和は不可能であり、地域カードシステム事業の存続自体が危ぶまれています。そのため、庁内に「北茨城市地域カードシステム検討委員会」を設立し、今後の事業運営の方針を定めようとしているところです。

(資料提供:北茨城市)

(参考資料)

北茨城市民カード交付状況

1. ふれあいカード(65歳以上の方が対象)

 

 

平成6年度
(H6.9末現在)

平成7年度
(H7.9末現在)

平成8年度
(H8.12末現在)

平成9年度
(H9.12末現在)

平成10年度
(H10.12末現在)

平成11年度
(H11.12末現在)

交付対象者数

8,800

9,051

9,501

9,819

10,069

10,396

交付者数

0

5,384

5,768

6,031

6,202

 6,299

交付率 (%)

 

59.49

60.71

61.42

61.59

60.59

注)平成6年9月末現在は、事業開始前なので交付者数は0人。申込数は5,200件で、対象者の59.1%。

2. すこやかカード(平成6年10月1日以降の出生児が対象)

 

 

平成6年度
(H6.9末現在)

平成7年度
(H7.9末現在)

平成8年度
(H8.12末現在)

平成9年度
(H9.12末現在)

平成10年度
(H10.12末現在)

平成11年度
(H11.12末現在)

交付対象者数

0

503

1,138

1,562

2,022

2,615

交付者数

0

424

980

1,359

1,781

2,166

交付率 (%)

 

84.29

86.11

87.00

88.08

82.83

注)平成6年9月末現在は、事業開始前なので交付者数は0人。