生ごみの資源化について

千葉県本部/現業評議会・清掃部会


1. はじめに

 ダイオキシン削減等の環境負荷削減施策として、ごみの減量が唱えられている。自治体が実施できる手法としては、市民への排出抑制の啓蒙や、リサイクルの推進によりごみとして処理する量の削減があり、それでも排出されるごみについては適正処理として、各手法については前回述べている。今年度は、可燃ごみ減量についての自治体の施策を探ることとした。

【表-1 可燃ごみの組成】

項   目 備     考
 紙、布類 32%   資源とならない紙類が主
 ビニール・ゴム類 19%   容器包装リサイクル法で対応可
 木・竹・わら類 20%   堆肥化で対応可能
 厨 芥 類 23%   堆肥化等で対応可能
 不燃物類 2%   
 そ の 他 4%   5mmのふるいを通過したもの

          (我孫子市平成11年度清掃事業概要より)
           注:事業系、破砕処理後の可燃物を含む可燃ごみ

 表-1は、木・竹・わら類と厨芥(台所ごみ)類の排出抑制と資源化の対応により、約4割の可燃ごみの減量の可能性があることを示している。
 また、ビニール類については、平成12年度から実施する自治体が少ないとはいえ、容器包装リサイクル法のその他プラスチック製容器包装の分別実施により対応可能なこと。ただし、実施によりごみのカロリーが下がり、焼却に支障をきたすことも予想され、ダイオキシンの発生しやすい状況となる可能性があるが、水分の多い台所ごみの減量により適正な焼却管理が可能となる。つまり、プラスチック製容器包装の資源化は生ごみの資源化を条件としていると言っても過言ではない。
 以上より、可燃ごみのなかでも、生ごみの資源化について探ることとした。

2. 全国の生ごみをめぐる状況

【図】

 厨芥類の合計は14,600,000tで内、0.3%の50,000tしか再資源化されていない。(農林水産省食品流通局調ベ1998)
 産業廃棄物のうち、動植物性残渣は48%再資源化されていることと比較すると極端に低い数字である。農水省は2002年の施行を目指し「食品廃棄物再商品化法案」(仮称)の提案を予定しており、大手のスーパー、外食産業などの生ごみを対象に堆肥化、飼料化を義務づける。
 残る家庭の生ごみと小規模店舗の生ごみは、国民の責務、事業所の責務として排出抑制はうたわれているが、規制の網掛けはない。

3. 自治体の施策

(1) 市民の生ごみ処理器、機器購入助成制度
【概要】
  排出元である家庭において台所ごみをコンポスト容器や生ごみ処理器により堆肥化などで処理してもらい、ごみの減量を図ることを目的にして、容器や機械の購入を促進するため、購入費の一部を自治体が助成する制度。従来はコンポスト容器やぼかし容器が主流であったが、最近では機械式処理機が普及と共に価格が下がり、導入世帯が増加している。

【機械式生ごみ処理機の概要】

【表-2 各市の10年度実績及び機械式処理機購入助成金制度】

自治体名 交付基数 (基) うち機械式基数 補 助 率 補助限度額 1世帯交付基準 (基) 補助金交付総額 (円)
千 葉 市 649 440 1/2 5万円  1  
松 戸 市 447 248 1/3 2万円  1(1年毎)  4,776,300
柏   市 901 558 1/2 3万円  1(3年毎) 15,063,000
流 山 市 380 154 1/3 2万円  1(3年毎)  3,099,500
我孫子市 611 45 2/3 1万円  1(1年毎)  1,323,680

  我孫子市では1世帯当たり平均2.8人、1日の生ごみ排出量550gとの調査結果を発表。この数字からは、1世帯が1年間では200kg、5年間で1tの生ごみを排出することになる。我孫子市のごみ処理原価が1t当たり約47,000円から、5年間の使用を条件に4万円程度の補助金の交付で全世帯に普及が図れるなら採算ベースに合うという考え方が成立する。勿論、可燃ごみが無くなるわけではなく、収集業務も焼却業務も作業量が減るだけで業務自体は必要であるから単純計算では比較できないが、将来、処理施設建設の際に、焼却施設で1t当たり7千万円。次世代型と言われるガス化溶融施設でも同額程度といわれている建設費が、ごみを減量すればするほど、削減できるメリットがある。
【課題】
  普及率の低いことの第一の理由は堆肥などを必要としない世帯では購入する理由がないことにある。消滅型とよばれる分解型家庭用処理機は2社が販売しているだけで大多数が堆肥型である。今後、分解型家庭用処理機を多くのメーカーが手がけ市民の選択肢が増えたら普及率も上昇すると思われる。
  堆肥型であっても、営農者などと市民とのパイプ役として自治体が係わり、受け皿を確保することで、普及が図れると考えている。手法については後述する。
  第二の理由として価格が高いことにある。表-3によれば、購入者の40%は4~5万円の機器を購入している。機器自体はシンプルな構造で量産品となれば、現在の価格の半額程度まで下がると思われる。自治体がまとめて発注するなどの対策が対応可能と思われる。

【表-3 我孫子市における補助対象機器購入価格調査】

本体価格 基  数 率(%) 本体価格 基  数 率(%)
3万以上~4万円未満  9 20 6万以上~7万円未満 5 11
4万以上~5万円未満 18 40 7万以上~8万円未満 3  7
5万以上~6万円未満  9 20 8万円以上        1  2

  県内でも、各家庭でごみ減量の意識を高めることを目的に、家庭ごみであっても、一定量以上の排出者については有料化とする自治体が増えている。自治労では有料化に反対の立場をとっている。また、一定量についても各論があるが、検討に値する。

(2) 公共施設の業務用生ごみ処理機の設置
  学校給食の残り物を処理するため県内の学校では設置が進んでいる。業務用の堆肥型か消滅型がほとんどで、概要は家庭用と変わりはない。清掃部会としては環境学習の面などから堆肥型が望ましく、地域特性を考慮し消滅型と堆肥型処理機とのバランスよい設置が望ましいと考えている。学校の花壇などでは堆肥は主に春・秋に利用し、年間通して使用しないが、地域と連携するための手段となる。
【清掃部会の提案】
  ① 給食の残り、協力可能な家庭の生ごみを生徒が登校時持参。堆肥型処理機で処理。
  ② 自治体は肥料メーカーや農協とタイアップし堆肥を二次処理する。成分の一定した完熟堆肥となる。
  ③ 校庭の花壇の他、地元の農家に二次処理堆肥を配布し野菜を栽培してもらう。
  ④ 収穫した野菜は学校給食で食材として利用する。
  給食室の生ごみ処理機の堆肥を二次処理する必要性は、農家が堆肥を利用する条件として、成分が一定であること、化学肥料より安価か同等であること。異物の混入がないこと等があげられる。これらの条件を満たす必要があることによる。

【図-1 生ごみ循環フロー(案)】


(3) その他の自治体の施策
  集合住宅への事業用生ごみ処理機の設置・プラントの設置事例は残念ながら千葉県内にはない。各県の自治研は県内を研究するという前提から今回はこの項目に関し見送らざるを得ない。
  ただ、技術革新が進み、県外各地で高速堆肥プラント、肥料化プラント、バイオガスプラントが成果を上げている。しかし、成功している事例は市民と自治体、事業者が連携している場合がほとんどであることだけは報告しておきたい。

4. まとめ

 今回は主として堆肥化での減量を報告したが、堆肥化では炭素は腐植として土壌中に固定され、COはゆっくり環境に放出され、植物の成長過程で吸収される。ダイオキシン削減対策だけではなく、CO削減でも寄与している。自然循環の中では様々な生物が関与し無理なく無駄なく循環している。しかし、有機物の土壌への還元は地域により片寄りが多く、過剰な投与は地下水汚染の原因となる。窒素分を微生物が分解し硝酸性窒素となるが、平成12年2月5日付け毎日新聞では、千葉市の市内413ヵ所のうち208ヵ所で水質汚濁防止法の10mg/1の基準値を超えて検出された。と報道している。厩堆肥由来ともいわれているが、投与のバランスが大切で、農政との連携が必要である。
 また、事業系一般廃棄物の生ごみについても、資源化施策の展開が必要であり、今後は市民、事業者と連携し、政策提言を行っていきたい。