ダイオキシン削減のために
~次世代型焼却炉をめぐって~

千葉県本部/自治研集会「廃棄物処理と環境」分科会実行委員会

 

1. これまでの活動経過

 自治労千葉県本部自治研集会「廃棄物処理と環境」分科会では、1998年5月に埼玉県の所沢で行われた「NO!ダイオキシン埼玉行動」の集会を起点に、関東甲地連の「ダイオキシン削減統一行動」を主体に活動を行ってきました。
 まず、関東甲地連のNO! ダイオキシン環境自治体推進探検行動「関東・山梨のごみはどこへ」ということで、自治労福島県本部の協力のもと、福島県小野町といわき市の最終処分場・廃プラ発電所建設予定地・産業廃棄物の不法投棄現場を視察しました。
 この視察で強く感じたのは、自分たちのおごりでした。私たち清掃職場で働く自治体の職員は、市民の生活や安全を第一に考え、自分たちの仕事に誇りとプライドを持ってやっているつもりでした。しかし、それは目先の事でしかなかったのです。自分たちの目の前にあるごみを安全に処理するそれだけでしかなかったのだと痛感しました。この小野町といわき市には、関東圏のほとんどから焼却灰や廃プラ、産業廃棄物が運ばれ処理されています。自分たちの県から出たものならまだしも、なぜ、他県のごみを自分たちの地区で処理しなければならないのか。地区住民の方々の怒りは当然です。自分たちの周りからごみがなくなるというのは、どこかでこのような問題が起きている。現状ではそれが事実なのです。自分たちのごみが最終的に何処で、どのように処分されているのか、又、その場所でどのような問題が起こっているのかを把握している人はほとんどいないでしょう。しかしながら、出されたごみは最後まで責任を持つことが私たちの責務であり、これからの課題であると痛感させられました。そして、事実を把握するには現場へ出向き話を聞くことが一番だと思いました。
 この行動をもとに、私たち分科会では県現評清掃部会のメンバーを中心に、まず、自分たちが処理したごみが何処へ行っているのかを把握するため、「ごみ探検行動」ということで、昨年の9月に最終処分場を持つ柏市と最終処分場を持っていない市川市について現場視察を行いました。この視察でわかったことは、最終処分場を持つ柏市でも、最終処分場の延命化の為、他県へ焼却灰の処分をお願いしているということ。そして、ほとんどの市は自区内処理ができず他市又は、他県へ何らかの形でごみの処分をお願いしているということです。
 それでは、はたして全ての自治体が完全な自区内処理ができるのか。又、最終処分場を持つことが出来るのか。そういった視点から、私たち自治研分科会ではこれからの課題として考え、提起していきたいと思います。

2. 第2回千葉県地方自治研究集会 「廃棄物処理と環境」分科会

 2000年3月11日(土)に第2回自治研集会が行われ、「廃棄物処理と環境」分科会は45名の参加で行われました。テーマは、「ダイオキシン削減のために」。
 まず、分科会実行委員会から活動報告と提起を行い、次に、県現評清掃部会から「生ごみの資源化について」の発表がありました。また、講演として「サーモセレクト方式ガス化溶融技術について」を、川崎製鉄環境事業部の向後久さんにお願いしました。この講演を受け、「次世代型焼却炉」について、はたしてダイオキシン削減のための決定的な手段となるのか、また、ごみ問題にどのような影響があるのかを、講師をしてくれた向後さん、ジャーナリストの内田誠さんをパネラーに迎えパネルディスカッションを行いました。参加した方からの質問等もふまえ活発に討論が行われ、次世代型焼却炉のダイオキシン削減とその他の可能性。また、何でも燃やせる次世代型焼却炉は、現在のリサイクル・リユーズ社会に逆行するのでは? など、さまざまな意見が出されました。

(1) 講演「サーモセレクト方式ガス化溶融技術について」
  講師:川崎製鉄環境事業部 向後 久さん
 *ガス化溶融炉とは?
   廃棄物からガス化によってエネルギーを取り出すという目的に加え、ダイオキシンをはじめとした焼却に伴い発生する様々な有害物質の排出抑制や、鉄やアルミニウムなどの有価物の回収などが可能となる。ガス化溶融では、まず低空気比のもと500度以下で廃棄物を熱し、熱分解ガスと固形分(固定炭素と無機物の混合物)に分解する。残った固形分は、金属類を取り除き、酸素や燃料を投入して燃焼させることで1,500度以上の温度を作り出し、固形分を溶融・スラグ化させる。なお熱分解ガスは、固形分加熱の燃料として用いたり、可燃ガスとして別途燃料として用いたりする。
 *ガス化溶融炉の利点と問題点
 <利点>
  ① 金属類が効果的に回収できる
  ② 排ガス処理装置が小型化できる
  ③ 構造的にダイオキシン類の生成を抑制することができる
  ④ 減容化率を高くすることができる
  ⑤ 重金属を安定化することができる
  ⑥ 追加的なエネルギー投入が少ない
 <問題点>
  ① 新しい技術であるためリスクが大きい
  ② システムの複雑さ
  ③ 価格が高価
  ④ ごみの低質化への対応  等がある。
  「廃棄物行政の広域化と資源循環型に向けた動き - 廃棄物処理の現状と課題 - 廃棄物問題研究委員会」(財)廃棄物研究財団大阪研究センター 内一部引用
 *ダイオキシンの再合成抑制:排ガス中0.01ng-TEQ/N 以下
 *保証値:ばいじん0.01g-/N  HCl 10ppm SOx 10ppm NOx 30ppm

 *煙突は無いに等しい(高さは建築高と同じ)

(2) パネルディスカッション
〔パネリストのプロフィールと意見〕

向後 久さん 内田 誠さん
 川崎製鉄環境事業部
 千葉リサイクルセンター所長

 

 1985年にテレビ朝日「ニュースステーション」の公募リポーターとなり、以後、報道系・情報系の番組で企画・取材・出演・構成などに携わる。現在は、主に「サンデープロジェクト」特集コーナーを場として、廃棄物問題や社会問題の取材に取り組んでいる。

 

向後さんの意見 内田さんの意見
* 質疑応答
Q PFIで自治体と川崎製鉄がなにかやられるときどういう条件を考えているか?
A 国の政策とか多くの委員会等で、今いろいろ議論されておる問題であり答えは差し控えたい。
Q スラグの安全性と有効利用について
A 溶質基準は全てクリアーしている。しかし、酸とかアルカリという過酷な条件でどうかという問題は別である。
  有効利用については、家の壁の間の断熱材、路盤とかインターロッキングとか色々使える。少なくとも現在問題となっている焼却灰は、ダイオキシンも含んでおりスラグ以上に使い道がない。
Q 炉の稼動のためにごみがいるという逆説的な現象が起きるのでは?
A サーモセレクトは紙とプラが混ざっていても両方ともCOとガスとして有効利用が出来る技術である。この新しい技術を、分別するという最も尊敬すべき社会システムの中にうまく組み込んで利用していけばいい。
 向後さんの説明を聞いてサーモセレクト方式は、すばらしい技術だと思います。しかしながら、何でも燃やせるガス化溶融技術は、現在のリサイクル社会に逆行するのではないか。また、スラグの問題や、燃やすためにごみを確保しなければならないなどの問題があるのではないか。ガス化溶融技術は、大量生産、大量消費に慣れきってしまった我々の駄目さ加減が作り出してしまった巨大技術ではないかと思う。のど元に処分場の逼迫と、ダイオキシンの規制というものを突きつけられ、本来の自治体の廃棄物処理はどうあるべきかという考え方が麻痺しているのではないか。やはり、最終的に市民の意識を高め最終的にごみを減らしていくことができたとき、失礼ながらガス化溶融炉は、博物館行きの技術になるでしょう。

 

3. 自治研分科会及び県現評清掃部会の考え方

 私たち自治研分科会及び県現評清掃部会は、現段階では、ダイオキシン削減もふまえこのように考えています。ごみの焼却に関しては、現状をふまえ、今できる最善の方法を選ぶべきだ。しかしながら、将来は焼却0を目指していきたい。又、そうしなければならないと考えています。今現在それはとうてい無理でしょう。しかし、限りなく0に近づける事は、出来ると思っています。リサイクル、そしてリユーズ。出来る限りのことを行い、それでも焼却処分、埋め立て処分しなければならないものについては、最善の方法を選択していく。そうすることが、自治体の自区内処理又は、最終処分場の問題を解決していき、また、ダイオキシンの削減にもつながっていくと考えています。又、分別には、市民の方々の協力が不可欠になりますが、収集時にも分別の正確さが求められるため、清掃行政に意識の高い直営の職員が収集するべきであると考えています。私たち自治体の現場職員は、市民の生活や安全を第一に考え、日頃から努力しています。しかし、人件費削減を理由に現場の職員は徐々に委託されています。でも、人件費が委託費に変わっただけで削減でもなんでもないのです。それならば、意識の高い直営の職員で清掃行政を確実に行っていくことが必要ではないかと考えています。
 私たち廃棄物処理と環境分科会と県現評清掃部会は、清掃行政の向上と市民の安全のため、知識とより高い意識の向上のために努力していきたいと思っています。また、理想の清掃行政を今後研究し、提起していきたいと思います。