木津町リサイクル研修ステーション構想と事業の展開
~ノンリグレット戦略からの脱却を目指して~

京都府本部/木津町職員組合


 木津町リサイクル研修ステーション構想が打ち出されて4年、施設が開所して3年弱しか経過しておらず、特に開所初年度は施設の啓発事業に重点を置くなど、今後の施策展開に向けての礎を構築することに重点を置いたため、今後更に改善を要する事業も多々あると考えているところであるが、現在までの取り組みを中心に現在計画を進めている事業を紹介する。
 なお、リサイクル研修ステーション内の展示物などについては、インターネット上のホームページで紹介しています。URL:http// www1.mahoroba.ne.jp/~kizu-res/

1. リサイクル研修ステーション構想の経緯

 木津町は、関西文化学術研究都市プロジェクトの中核に位置しており、学研施設についても国際高等研究所・地球環境産業技術研究機構や光量子科学研究センターなど18研究所が立地し、それぞれ活発な研究活動を展開している。
 早いもので学研都市建設の提案がなされて
19年が経過し、学研都市促進法が制定されて8年以上が経過した平成8年4月、学研都市の開発は第1段階を終えセカンドステージプランが示されるなど、都市建設も新たな局面を迎えることとなった。
 学研都市のセカンドステージを迎えた木津町が、
21世紀初頭に向けての町づくりを検討した結果、従来のハード面での都市建設もさることながら、新旧住民と学研研究所との交流を中心としたソフト面での施策も積極的に展開することとなったのである。
 すなわち、木津町の住民は学研都市の住民であるという自覚と誇りをもって行動していただくための施策を推進することになり、その施策の一つとしてグローバルな環境問題から身近なごみ問題までの研修と実践という事業を展開していくこととなったのである。

2. ステーションの事業研修

 現在、リサイクル研修ステーションの事業は大きく次の3つに分類される。
 ① 廃棄物の減量化、再資源化推進事業
 ② 普及啓発事業
 ③ 環境学習推進事業

3. 廃棄物の減量化、再資源化推進事業

 廃棄物の減量化・再資源化を進めるためには、次の3方面からのアプローチが必要であると考えており、後に紹介する基本コンセプトに基づく事業も3方面からのアプローチによるものである。

() 意識啓発からのアプローチ
  環境問題やごみ問題の現状や問題点を把握することにより、廃棄物の減量化や再資源化など環境に配慮したライフスタイルの必要性を広く町民に認識していただくための方策。

() 分析に基づくアプローチ
  どのようなごみが発生しているのか分析し、個々に対策を講じる方策。

() 廃棄物の減量化に向けたシステムづくり
  廃棄物の減量化に向けては、住民・事業者・行政が個々に責任を明確にする等、パートナーシップ精神に基づく取り組みが必要不可欠となる。
  逆に言い換えれば、住民・事業者・行政がスクラムを組んで取り組むことは廃棄物の減量化に向けた、全町的な盛り上がりにつながるばかりでなく、環境保全型商品の市場形成も期待できるものと考えられることから、そのためのシステムを構築する方策。
  当該システムは、木津ガイア(母なる地球)アクションプログラムとして、商工会や木津町廃棄物減量等推進員らで協議し、平成11年3月から事業展開を開始しており、現在43店舗が「環境にやさしい店」として登録している。
  【木津ガイアアクションプログラムイメージ図】別添1

4. 基本コンセプト

 持続可能な社会実現に向けては、廃棄物の発生抑制が最重要課題となる。
 そこで、木津町では基本コンセプトを4R活動の実践とゼロエミッションとしており、次の事業を展開している。(現在、計画中も含む)

Reduce:適正購入、廃棄物の減量化(Refuse(断る)も含めている)
 木津ガイアアクションプログラムに基づき次の事業を展開する。
● マイバッグ運動の推進
  スタンプ制等によりキャッシュバックやエコグッズの交換など
● 簡易包装の推進
  簡易包装を前提とした取り組み
● 量り売りの推奨
  積極的な量り売りの活用
● 詰め替え商品の推奨
  積極的な詰め替え商品の活用
 ※住民が容易に利用できるように登録店制度や町内で一した値札や、マークの採用
  【参加登録店ステッカーなど】別添2

Reuse:有効利用
● 有効利用コーナーの設置
  子供服・婦人服・廃家電を中心にまだまだ利用できるにも関わらずいらなくなったものを、何時でも持ってきていただき、必要な人は何時でも持って帰っていただく有効利用コーナーを研修ステーション内に設置している。(全て無料)
● 広報誌による啓発
  「ゆずります。ゆずってください。」コーナーによる普及
● さき織り工房の開設
  昔、京都西陣で活躍していた「はた織り機」を2台購入し、古布を裂いて横糸とし、織り込んで布として再生させる工房を開設し、古布でさえ有効活用できるという意識啓発事業を展開している。

Recycle:再資源化
● 古紙・古布類(焼却ごみに占める割合54%:重量比)
  集団回収に対する奨励補助制度は、平成3年に要綱を整備し、再資源化を進めてきたが、国民の環境問題に対する意識の高揚や平成不況により古紙価格が暴落し、逆有償化が進んでいる。木津町では、次の理由により平成10年9月から全町的に古紙類の再資源化を進めるなど対策を講じることとした。
 ① 集団回収団体の中には逆有償となる雑誌類の回収を断念する団体も出てきており、焼却ごみ量の増加が懸念された。
 ② 集団回収実施新規登録団体も鈍化傾向にあり、町内全域の約1/2程度しかフォローできていなかった。
 ③ 集団回収実施地域においても、紙箱に代表される板紙や包装紙、ダイレクトメール等の雑紙のほとんどが焼却ごみとして排出されていた。
 ④ 焼却ごみに占める割合が54%と最も多く、大きな減量効果が見込めた。
  本来、古紙類の再資源化は市場原理に基づき収集、再資源化されるべきものである。しかし、現在の古紙市場の低迷を鑑み、古紙問屋、収集業者と行政との連携により、逆有償化の事態を回避している。
  【集団回収実施後の可燃ごみ減量効果】別添3
● 生ごみ(焼却ごみに占める割合14%:重量比)
  生ごみは、分別することにより唯一排出者の目に見える範囲でリサイクルを完結させることのできる資源である。
  住民の目に見えないところで、処分や再資源化してきた従来のシステムが、分別の不徹底や無責任なごみの排出を生んだ原因の一つでもあるのではないかと考え、地域の特性や住民のニーズに対応できる多彩なメニューで住民の目に見える小さなリサイクルシステムを組む必要があると考えている。
 ① EM菌・コンポスト活用推進事業
   エネルギーを使用しない従来からの当該システムは極めて環境にやさしいものである。しかし、普及がいまいち進んでいない状況を鑑み、問題点を解決する方策の検討を進める必要がある。
 ② 家庭用生ごみ処理機モニター制度
   大手家電メーカー等から販売されている家庭用生ごみ処理機を、5メーカー10機種36台購入し、4ヵ月間一般住民にモニターいただく制度である。
   モニター会議などを通じて住民からは、「生ごみの再資源化を通じて広く環境問題やごみ問題について考えるきっかけ作りになった」という意見が多く寄せられており、生ごみの減量のみならず意識啓発事業としても大きな効果があるものと考えている。また、現在までのアンケートを集計した結果、延べ
200人のモニター中95%が、家庭用生ごみ処理機は廃棄物の減量化に有効であると答えている。
 ③ 地域内完結型リサイクルシステム
   業務用生ごみ処理機を活用し、排出者の身近な範囲でリサイクルが完結するシステムも一つの方策と位置づけている。現在、学研木津川台地域及び学研木津南地区の2ヵ所においてシステム稼動させている。
   集合住宅からの堆肥を活用して、発生した集合住宅で朝市としてリサイクルを完結させるシステムで、生ごみの減量化のみならず、新旧住民の交流や、有機農業へのプロセス、そして何より分別することで資源として活用され再び戻ってくるという意識啓発としても有効な手段であると考えている。
  【システム図】別添4
● リサイクル実践事業
  身近に体験できる再資源化実践事業として、廃食油からの石けんづくりや、飲料用紙パックを利用した紙すき実践事業などを展開している。

Regeneration:再製品の購入
  木津ガイアアクションプログラムに基づき次の事業を展開する。
● グリーン購入キャンペーン
 環境に配慮した商品を住民が購入しやすくするために、共通した値札の採用などを進める。
● 木の津ロールの開発
  資源循環型社会を目指して、古紙類として集団回収した資源によるトイレットペーパー(独自ブランド)を開発し、再製品購入促進に向けた啓発事業を展開する。

5. 普及啓発事業

● 廃棄物減量等推進員制度
  研修ステーションの開所に併せ、「ごみのリーダー」として広報誌にて公募し、現在26名が活動を展開している。広報誌「グリーンだより」の隔月発行や、毎月第3木曜日に住民を対象として実施する廃食油石けんづくり、ごみ焼却施設や地球環境産業技術研究機構などへのエコツアーの開催など、多彩な事業を展開している。
● その他普及啓発事業
  木津町で毎秋開催する最大イベント“木の津まつり”に併せ、環境まつりを開催している。また、地球温暖化の大きな原因となっている二酸化炭素も資源として有効利用するゼロエミッション型温室をリサイクル研修ステーション敷地内に設置し、啓発資材として活用している。
  【ゼロエミッション型温室システム図】別添5

6. 環境学習推進事業

● 環境庁のこどもエコクラブ事業に参画する町内のクラブ活動に対し、積極的な活動支援を実施している。特に夏期休暇期間中は環境学習強化月間と位置づけ、町内の小中学生をRITE一日研究員として地球環境産業技術研究機構に派遣したり、紙すき教室、紙の再資源化を探検するジュニアエコツアーなども開催している。平成12年度からは、アメリカのゴア副大統領によって提案されたGLOBEプログラムへの参画を予定している。
● グローバルな環境問題や、ダイオキシン問題、リサイクル法の解説など大学教授や職員を講師とした学習会も開催している。また、町内での蛍観察会など、自然体験学習会も開催している。

7. その他関連事業

● エコオフィスガイドラインの策定
  各種事業を展開するに先立ち、まず木津町が事業所として環境に配慮した実践活動を展開する必要があることから、「もったいない精神のもと、4R活動と1A(4RReduceReuseRecycleRegeneration1A:Audit(内部監査))」をコンセプトにエコオフィスガイドラインを策定している。
● 次世代GISモデル事業への参画 ~ごみ行政も人工衛星活用の時代~
  平成
10年度、通産省情報関係経済プロジェクトに住友金属工業等とコンソーシアムを形成して公募したものである。
  従来のごみ行政は、詳細なデータ解析に基づく施策や対策を講ずることは不可能であった。ごみ情報を空間属性データとして取り込み、
GISを用いることで、従来は画一的な方策でしかできなかった削減化施策が、地域の特性に応じた対策が講じられるばかりでなく、その効果がミクロに解析できるシステムである。町づくり情報や、住民情報を取り込むことにより、ごみ量の将来予測や焼却施設への負荷、効率的な収集ルートの策定なども可能とするものである。
  現在プログラムやシステムを開発中であり、今後評価していくことになるが、今後のごみ行政における情報処理のスタンダードとしての確立を目指しているものである。
  【システム構成図・車載システム図・出力イメージ図】別添6

8. おわりに

 地球温暖化も本当に予測されているとおりになるとは限らないし、ごみ問題にしてもまだ先で取り組んでも間に合うのではないか。科学の進歩は日進月歩であり、ごみ問題・環境問題に一部の地域が積極的な取り組みを展開しても問題の解決につながるとは考えられず、逆に積極的に取り組んでも無駄になるのではないか。それなら、住民のニーズもあり、環境問題に取り組まないわけにはならないので、本当に予測されているようにならなくとも、省エネルギー化が進んだので、化石燃料の使用が5年伸びるなどのメリットが残る程度の範囲で取り組むのでよいのではないか。
 これが、ノンリグレット(後悔しない)戦略である。
 かつてない異常気象が世界各地で頻発し、大きな被害をもたらしている。一方、大きく社会問題化しているダイオキシンや環境ホルモンの問題。環境にやさしい資源循環型社会の形成は、そこに住む住民にもやさしいことにつながる。自分の町が好きで、そこに住む人が好きならば、ノンリグレット戦略から脱却した施策の展開も必要になると考えている。
 木津町リサイクル研修ステーションでの取り組みも始まったばかりであり、課題も山積しているが、問題解決を目標に様々な取り組みを総合的に展開したいと考えているところである。

新聞記事(読売新聞 1999.7.1  朝日新聞 4.8)

ごみ削減戦略情報GIS(自治体ごみ問題対策支援システム)