利用者にとってよりよい介護保険制度となるために

京都県本部/自治労網野町職員組合

 

 介護保険では、質の高いサービスの提供が重要であり、それが、制度の評価を大きく左右すると考えられる。いいかえれば、利用者にとってよりよい介護保険制度となるためには、まず、質の高いサービスを提供していく必要があるといえる。
 介護サービスは、人が生み出すサービスであるが、その質を管理するシステムがないのも大きな課題のひとつである。
 ただ、良質なサービスを提供するためのひとつの方法として、まずしなければならないことは、不服申立てなどをはじめとする苦情の対応をしっかり行うことだといえる。
 保険者である網野町では、保険医療課が介護保険に関する苦情や相談を広く受けつける窓口になって、どんな苦情や相談にも誠心誠意対応にあたっている。それが住民との信頼を築くことにつながる。
 また、網野町指定居宅介護支援事業所のケアマネジャーや、在宅介護支援センターの職員が、タイムリーなかかわりによってトラブルを未然に防いだり、そこで得られた問題点を早急に担当課に伝えるという機能も発揮している。
 苦情・相談の内容は大きく、介護保険制度、要介護認定の結果、居宅介護サービス計画居宅介護サービスに分けられるが、その問題点や苦情をしっかりと整理して、ただ解決するだけではなく、それを参考に再び同じ苦情が生じないように、居宅介護支援の質の向上につなげる意識を持ちつづけて業務にあたっていく必要があると考えられる。
 また、介護保険制度がスタートし、介護サービスの利用が、これまでの行政による措置から利用者の選択による利用制度に切り替わり、利用者自身の自立、自我管理部分が重要になってきた。良いサービスを選び分けることができるようになった反面、「どのサービスを選択したら良いのかわからない」など、利用者の戸惑いの声も正直なところ存在していることも事実だ。そこで、サービスが適切に効果的に利用されるようケアマネジャーの果す役割も大きいにもかかわらず、日々の実務に追われ、自己研鑚をつむ時間がもてないのも課題のひとつと考えられる。
 さて、介護保険が施行されて、はや3か月が過ぎたわけだが、介護保険の動向もたびたび変化してきた。訪問介護に身体介護と家事援助の「複合型」が導入され、訪問通所系の支給限度額が一部短期入所に振り替え可能となった、区分支給限度額が1週間あたりの限度額を目安にケアプランを作成することになったなどケアプランの作成や支給限度額管理が複雑になった。また、介護報酬請求についても当初戸惑いも正直なところあった。
 しかし、全体としては、大きな混乱もなく施行されているように感じる。ただ、居宅介護支援サービスにおいての課題は、
 ① 訪問介護に身体介護と家事援助の「複合型」が導入されたことは、訪問介護の提供において、身体介護と家事援助のいずれが中心になるか、判断がつきにくくなる問題がある。
 ② 訪問通所系の支給限度額が一部短期入所に振り替え可能となったが、短期入所の利用限度日数を拡大しなければ在宅介護の継続が困難と市町村が判断した場合と考えられるというように基準がある。
などがあげられるのではないかと考えられる。
 これらの問題点については、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが判断に困った時は、保険者である、網野町の担当課に相談してもらい、ケースごとに協議を行い、適切なサービス提供が行えるようにつとめている。
 また、短期入所については、「4月以前から今まで利用していた日数がとれずに困っている」という意見が多い中、短期入所の日数が増えたことは利用者にとっては喜ばしいことである。
 ただ誰もかれも該当にならないという課題はあるものの、ある一定の基準を設けることで、保険料がむやみに高額になることをさけながら、本当に必要な対象者が短期入所を使っていただけるように担当課でケースごとに協議を行っており、利用者にとってよりよいサービスの提供につながるようにつとめているのが現状である。
 また、事業所のケアマネジャーからうけた相談については、決定したことをタイムリーに事業所のケアマネジャーに返していくようにしている。これも保険者と事業所の信頼関係を保ち、利用者にとって、よりよいサービスを提供していくためにも必要なことであると考えられる。
 一方で、介護の問題は、介護保険だけでは完結しないため、地域における高齢者の保健福祉対策を充実させることがもうひとつの柱である。高齢者ができる限り寝たきりなど要介護状態に陥ったり、状態がさらに悪化することがないように、また自立した生活を確保するために必要な支援を行うことを目的に、網野町でも、介護予防事業に取り組んでいる。たとえば、配食サービス、外出支援サービス、寝具洗濯乾燥消毒サービス、軽度生活援助事業、住宅改修指導事業、訪問理美容サービスなど介護保険の対象となっていないサービスが該当する。
 また、介護保険非該当者についても、生きがい活動支援通所事業により、生活指導・給食サービス、入浴サービス、日常動作訓練などを実施して、介護状態に陥ったり、状態がさらに悪化することがないようにつとめている。
 何はともあれ、介護保険はスタートした。介護を受ける側と支える側が一緒になり、制度が利用者にとってより良いものになるように、今後の動向に意識して目を向けていきたい。