岡山市の学校給食について

岡山県本部/岡山市現業労働組合

 

1. 学校給食はこれまでずっと「教育の一環」として岡山市が責任を持って行ってきました。1960年頃まで学校給食は各校でPTA会費の中から学区に人を雇用して行われていました。文部省が食中毒や赤痢、疫痢が発生したため「学校給食法」を制定し「教育の一環」として位置づけ、調理員も正規職員が市の職員として定数が決定し現在に至っています。調理員1人の児童・生徒の持数は160~220位で子どもたちの健康と成長を第一にして作っています。
 将来にわたって子ども達の心と体をはぐくみ育てる学校給食の推進に向けて努力することが保護者の方や地域住民の方への公共サービスの提供の1つだと考えています。調理員の90%以上が調理師免許を持った専門職であり、安心してあずけ食べさせて居られると思っています。施設の面でも下処理、調理室、洗浄室に区分けをしてあり学校給食全施設に冷凍・冷蔵庫を設置してO-157食中毒など発生しにくいように衛生に配慮した給食室になっています。
2. ところが1999年2月の市議会で保守議員から危機的な岡山市の財政を解消する方法として学校給食のコスト論が浮上し、その中心は人件費の削減におかれ、6月定例市議会に於いて「学校給食運営審議会」設置条例が可決されました。
 8月5日20名の審議委員を任命し、12月中旬報告を出すという日程で第1部会、第2部会、合同会議の場で協議をして12月24日市教委委に対して中間報告が出されました。
3. 中間報告を受けて市教委は食材や食器、自校炊飯の実施共同献立から自校献立への切りかえなど子どもたちのために提案された第1部会の内容には消極的に研究する、検討するにとどまり、第2部会の調理部門の民間委託、PTAを法人化して委託する2点を最優先に具体的に富山中学校、小学校、桑田中学校、大元小、鹿田小の地域の保護者や現場で働く調理員、栄養士には何も示さず、一部の校長や一部の保護者と協議をして名前のあがった学区の多くの保護者や市民に不安を与えてきました。
 なぜ、今40年前のPTA雇用にするのか、PTAを法人化して保険をかけるので中毒が出ても大丈夫と言っていますが出てはいけないことです。3年前の邑久小学校や大阪堺市で発生したO-157大腸菌による食中毒で可愛い子どもの生命が失われ、その心のケアが出来ないまま、保険をかけるからいいという発想は子どもの体のみならず心をはぐくむ学校給食を理解しない市教委と連携した考えではないでしょうか。
 PTA法人化は体の良い人材派遣でPTAの担う役割をもう一度考えて原点に戻ることが求められます。このPTAの法人化は全国初のやり方であり、PTA本来の位置づけから逸脱しています。献立作成や材料購入、授業のない日の新献立作りなど一緒に体験すること等もPTAの関わり方としてどこの学校でも出来ることです。
4. 学校という「教育の場」に民間企業の社員や法人化されたPTAの人材派遣の人が子どもたちに「食教育」をすることは出来ません。「学校給食法」は将来の子どもたちを見据えた法律ですが中間報告をうけた後の市教委は子どもたちから遠くに在り、子どもの「安全」も「安心」も「教育」も飛んで、学校給食の責任を放棄しようとするもので無責任としか言えません。
5. 保護者や教職員、栄養士、調理員が立場は違ってもめざす学校給食は、「食」を通じて心身共に健康で豊かな情操を育て、仲良く協力し合うことを念頭において進めることだと思います。
 私たちは、①地場産米使用の自校炊飯、②米飯給食の回数増、③地場産食材の使用、④地域の高齢者への給食・弁当づくり、⑤部活・学童保育などの給食提供をはじめ自校献立もやり抜きたいと考え、行政にも市民にも提言しています。
 1999年保護者の方や通行中の方にアンケートをしていただきましたが、学校給食は97.7%の人が必要と答え岡山市が責任を持って行っているから不安はないと答えた人は60.4%でした。①衛生、②安全性、③栄養が必要だと答えた人の要望ベスト3です。
 21世紀を担う子どもたちの声を保護者や市民の意見をしっかり学校や地域で論議していただきたいと思い自治研に参加することにしました。

【地域住民と学校給食】

1. 岡山市の学校給食のあゆみ
  昭和22年 1月 ● 連合軍払い下げ物資により副食給食を開始(15校)
  昭和26年 1月 ● 鹿田小学校が全小学校にさきがけて完全給食を開始
  昭和29年 6月 ● 学校給食法を制定
  昭和31年10月 ● 全中学校にさきがけて旭中学校が完全給食を開始
  昭和32年 9月 ● 共同献立を採用
  昭和33年 9月 ● 岡山市学校給食会を設立し、給食用物資の共同購入を開始
  昭和46年 9月 ● 岡山市学校給食センターを開設
  昭和50年 2月 ● 岡山市学校給食会が財団法人化
  昭和56年 9月 ● ほとんどの小学校で米飯給食を週1回開始
  昭和58年 4月 ● 食器をアルマイトからステンレスに改善
  平成元年 9月 ● ランチルームの整備(テーブル、いす)を開始
  平成 5年 3月 ● 学校栄養職員を中心とした「学校給食指導の手引き」を作成し、給食指導を開始
  平成 5年 7月 ● 「スクールランチセミナー」として夏休みに親子で学校給食体験学習を開始
  平成 8年 4月 ● 初めての食堂(120人用)が完成(操明小学校)
 ① 1960年頃まではPTA雇用の人が居住学区の小学校の給食室で働いていた。
 ② 1959年(S34)清輝小学校で赤痢が発生、大騒ぎとなる。PTA雇用から調理委員を文部省通達の実施とあわせて市の職員とした。又、全小学校に栄養士を配置し栄養管理、衛生管理に万全を尽くし安心の給食を提供している。
 ③ 小学校も中学校も単独校方式が基本で調理員の93%は調理師免許を持っている。

2. 学校給食と法律
  学校給食の実施根拠及び目的等
 (1) 学校給食法(昭和29年法律第160号=抄)
第1条(この法律の目的)
 この法律は、学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資し、かつ、国民の食生活の改善に寄与するものであることにかんがみ、学校給食の実施に関し必要な事項を定め、もって学校給食の普及充実を図ることを目的とする。
第2条(学校給食の目標)
 学校給食については、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
 1 日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと。
 2 学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと。
 3 食生活の合理化、栄養の改善及び健康増進を図ること。
 4 食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導くこと。
第3条(定義)
第4条(義務教育諸学校の設置者任務)
 義務教育諸学校の設置者は、当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならない。
第5条(国及び地方公共団体の任務)
  国及び地方公共団体は、学校給食の普及と健全な発達を図るように努めなければならない。
第5条の2(2以上の義務教育諸学校の学校教育の実施に必要な施設)
 義務教育諸学校の設置者は、その設置する義務教育諸学校の学校給食を実施するための施設として、2以上の義務教育諸学校の学校給食の実施に必要な施設(次条において「共同調理場」という。)を設けることができる。
第6条(経費の負担)
 学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第22条第1項に規定する保護者の負担とする。
 (2) 給食法施行令(昭和29年政令第212号=抄)
第2条(設置者の負担すべき学校給食の運営に要する経費)
  学校給食の運営に要する経費のうち、法律第6条第1項の規定に基づき義務教育諸学校の設置者が負担する経費は、次の各号に掲げる経費とする。
   1 義務教育諸学校において学校給食に従事する職員(学校教育法(昭和22年法律第26号)
  第28条(同法第40条及び第76条で準用する場合を含む。)の規定により義務教育諸学校に置かれる職員をいう。)に要する給与その他の人件費。ただし、市(特別区を含む。以下同じ。)町村(市町村の組合を含む。以下同じ。)立の学校にあっては、市町村立学校職員給与負担法(昭和23年法律第135号)第1条の規定より都道府県の負担とされる経費を除く。
   2 学校給食の実施に必要な施設及び設備の修繕費
 (3) 学校給食運営審議会設置
① 1999年8月5日岡山市教育委員会から委嘱された20名の委員が出席して第1回審議会が開催された。これは学校給食1食あたりのコストが710円は市役所地下食堂の定食430円に比べて高いのではないか。年間180食しか作らないのに調理員の年収は平均800万円で見直すべきであると言う保守系議員の大合唱によって自民党丸抱えの新市長の音頭で設置された審議会である。
② 月1回のペースで部会毎合同で審議して1999年内には中間報告を出し、2000年4月から試行又は実施する。
  等確認して、12月24日中間報告を出した。
  その内容は「初めにコスト削減有りき」の姿勢で中心であるべき子どもたちの状況が見えにくいものでした。
  主な内容として
   ● 5年以内を目標に1食あたり731円を200円、約3割削減する。
   ● 削減の柱として民間委託、PTA委託、第三セクター化など。
   ● 食器の改善をはじめ地場産の導入、自校献立、自校炊飯など今すぐ出来るものも盛りこまれた。
  私たちは給食の新しい役割として地域に入り住民と一緒に学校給食を語り創り出す事を提案した。
  まず保護者の中へ入っていく事とし各学区でアンケート調査、座談会、交流会を開催した。
 (4) 住民の中で見えたもの
① 小さな交流会・座談会
  保護者が学校給食に対してどう考えているのか聞くことから始めた。それは小学校区の中の一町内単位であったり、もっと小さな母親のグループが夕食後、公会堂やコミュニティハウス等に集まって本音の声を聞くことになった。
   ※今、岡山市が進めている民間委託とかPTA委託の学校給食改革を全く知らない。
   ※学校には体育館とか図工室があるように給食室があって市の人が作っているのが当たり前と思っている。
   ※民間て弁当屋さんのことか。
   ※PTAで給食を作るってとんでもない!
   ※私たちは市が、岡山市が責任もってして下さっているので安心して食べさせている。
  どの会場でも保護者は学校給食運営審議会の中間報告を知らされていなかった。
② 各座談会場に参加してきた保護者に何枚かのアンケートを渡して知人・町内の人へのアンケートをお願いし後日回収した。
③ 少し声かけを拡げて公民館を使って学校給食献立による給食作りを一緒にした。食材は有機や低農薬のもので試食を一緒にして交流をしていった。
  安全でおいしい学校給食は自校・単独校方式が一番で地場の米を使って電気釜を使って教室で炊飯している南国市(高知県)の教育長西森善郎氏の講演には岡山市のみならず県下各地から、行政の人も参加して聞き入った。

給食をいっしょに作ろう
  交流会(保護者に学校給食についてのご希望、意見等意見交換しながらの交流会)
  献 立 御飯、鮭のマヨネーズ焼き、呉汁(40食)、大根サラダ、牛乳、みかん

 (5) ワークサンプリングの実施
 1999年10月中小企業診断士による給食作業ワークサンプリングが学校給食運営審議会第二部会(コスト班)の要請で行われた。製造工場とか製縫工場とかで行われたりするが「公」「官」の職場に民間の企業診断士が調査項目をわざわざ作って入ってきたことは前代未聞である。
 (6) 地域生活圏のたたかいとの結合
  ① 民間委託の問題は単に労働者(調理員・栄養士)と自治体当局だけの問題ではなく、住民や世論を背景に促進されようとするものである。
   私たちは住民や保護者に対して、学校給食を委託することによって、教育行政の質そのものと、「食教育」そのものが変化し、住民にも子ども達にも働く労働者にも重大な影響を及ぼすことを各戸ビラ配布やアンケート、街頭署名、街頭活動、地域の公民館やコミュニティハウスでの交流会、シンポジウムの中で訴えてきました。
  ② 単に調理員が、栄養士が自分たちの職を守るために民間委託に反対しているのではないことを保護者や住民に理解してもらうために多少論議で食い違いがあっても、子どもたちを視点に共通課題として目的学校給食の「民間委託反対」に取り組んできました。
  ③ 誰でも会員になれる「岡山市学校給食を考える会」を前面に小さな学区単位で調理員と地域の人との学校給食献立の調理交流を行い、学校給食が食材購入から調理、喫食に至るまでどのような流れで行っているのか、又粉石けんを使って洗浄することが脱環境汚染の社会を作ることにつなげるもう一つの教育になることも話題としました。