地域との関わりを求めて

北海道本部/自治労七飯町労働組合連合会


1. はじめに

 自治労七飯町労働組合連合会(以下「町労連」という)では、3年前より積極的に地域住民との関わりを求めて、各種の取り組みを展開してきている。
 とりわけ、障害者に対する各種の取り組みは障害者団体を始め多くの住民の支持を得てきており、地域住民の町労連に対する意識は、少しずつではあるものの変化の兆しが見えてきている。

2. 自治労と人的ネットワーク

 町労連として、この様な取り組みを行うようになったのは、1993年10月~96年9月までの3年間、自治労道本部の専従執行委員として1人の組合員が派遣されたことにともない、そこで得た人的なネットワークがあったことによる。具体的には、専従執行委員として派遣されていた組合員が単組に戻り、自治労連本部で得た人的なネットワークで、引き続き交流を深めていた中で、たまたまデンマークの知的障害者だけで構成するロックバンド「ポップコーン」のコンサートを七飯でも開催できないか、という打診があり、執行委員会で議論をし、受け入れたのが始まりである。

3. 最初の取り組み

 このコンサートは実行委員会形式として行ったものの、主体的な取り組みは町労連が担い、参加した500人近い聴衆を沸かせ成功裡に終了した。この取り組みを通して得たものは、準備を手伝った町労連の組合員自身が、障害者に対する意識に多少の変化が出てきたことはもちろんのこと、地域住民や障害者団体の町労連に対する見方が変わったことも大きな成果であった。このことは、実行委員の一員として準備に関わってきた組合員が、後日苦情処理で関係者宅を訪問したところ、たまたまその関係者も実行委員の1人として準備に関わっていたことから、激昂している状態から冷静さを取り戻したという話もあり、行政を推進していくうえでも成果が出てきている。
 しかし、この段階では単年度のみの開催であり、このような取り組みを継続して実施する考えは、町労連としても持ち合わせていなかった。

4. 自治研集会への関わり

 「ポップコーン」コンサートの翌年度に渡島地方本部の自治研集会が七飯町で開催することとなり、前年度の町労連の取り組み成果も踏まえて、自治労の枠を乗り越え地域住民に解放した自治研集会を取り組むこととなった。
 具体的な企画立案は、自治労渡島地方本部の中に設置している自治研推進委員会が中心となり、障害者福祉問題を地域と共に考える集会(テーマ「一緒に考えよう障害者福祉」)を開催することとした。内容は、基調講演を受けた後に施設関係者、障害者本人・家族、ボランティアなとでパネルディスカッション形式で行い、会場からも意見が出されるなど、成功裡に終了した。

5. 広がりを持ってきた取り組み

 町労連としてのこの取り組みに対する関わりは、前年度のコンサートで得た障害者団体との人的なネットワークによりパネリストの要請を行うなど、主体的に担ってきたことである。
 また昨年は、フィンランドから知的障害者だけで構成するコーラスグループ「カーリシルタ」を招聘するなど、町労連としての地域に対する取り組みは定着しつつある。
 町労連としての取り組みは、このような年に1回の取り組みだけではなく、障害者施設で行う餅つき、運営資金の調達のためのカレンダーの回収・販売の手伝い、町内保育所に対するクリスマスプレゼントの配布、老人ホーム入園者に対する人形劇団の招聘、車椅子利用者とともに山登り等々、多くの取り組みを実施してきている。

6. 地域から頼られる存在に

 このような取り組みを行ってきた結果、昨年秋に地域の町づくりを考えるグループから町労連に対して、グループとしての取り組みに対する支援要請があった。内容は、グループの1人が群馬県の障害者施設「せいらん」の職員と親交があったことから、グループとして、そこの通所者で構成するオーケストラを七飯町に招聘したい、しかし、このような取り組みを行ったことがなく、どの様にして準備をしてよいか分からない……ということで町労連に対して支援要請があった。
 町労連としては、この要請を受け執行委員会で議論をし、定期大会で積極的に取り組む方針を確立し、1月31日に町労連が主体的な役割を担いながら、9月16日のコンサートの成功に向け実行委員会を立ち上げた。
 今までの取り組みは、町労連としてイニシアティブを取りながら地域を巻き込んで各種の取り組みを行ってきたが、その結果として本年予定しているコンサートでは、地域から町労連が期待をされ、それを受けて今までのノウハウを生かして、下支えとして参画することとなった。このことは、我々の最も望んでいたことであり、組織として取り組んできたことの成果である。

7. 自治労に対する評価

 平成不況から脱し切れない社会・経済状況の中で、安定しているといわれていた公務員も生首が飛ばされる状況も出てきており、賃金においても、財政危機を理由として多くの自治体で一時金一部カット、定昇延伸、特昇制度の廃止もしくは一時停止等々の提案が次々と出されてきている。
 このことは、地域住民と密着している町村においては一層厳しく、国に準じているといわれている賃金・労働条件でさえも、積極的か消極的かは別として批判の対象となっており、このこと(住民の意識)を理由として国を下回る賃金・労働条件の改正が行われている状況にもなっている。
 この厳しい環境の中で自治労の立場は、より良い行政をしていく上で、それに見合った賃金・労働条件を要求し、そして獲得することを目的として職場の中で取り組みをしてきた。しかし、長引く不況により相対的に賃金水準が低下する中で、自治体の賃金・労働条件は結果として地域のトップとなり、労使合意により当局の使用者としての責任で行ってきた賃金・労働条件にもかかわらず、その批判の対象は自治労に向けられているのが実態でありイコール「悪」という状況にもなっている。取り分け、賃金・労働条件の引き下げに対する反対闘争を行う場合は顕著である。

8. 自治労のステータスを高めよう!

 このように自治労の置かれている環境は決して良い状況にはないが、このことは自治労が今まで歩んできた経過がそうさせるものでもあり、1つ1つの単組が「地域住民とともに」を地域の中で実践していれば、また結果も変わっていたかもしれない。
 自治労という日本最大の労働組合としては、組合員の権利の拡充はもちろんのこと、国民生活に直結する各種制度・政策に対して、国の機関と直接交渉し実現したり、災害時におけるカンパやボランティアの動員など組織的に対応してきている。
 しかし、住民と密着している基礎自治体の単組が、住民と関わりを持っていなければ、この成果すらも自治労の取り組みの結果として地域に下ろせない状況にあり、地域にとって自治労は全く必要のないものとなることは当然のことである。
 このような状況下にあって、町労連としては自治労の取り組みを受け売りするのではなく、自らが労働組合という組織として、地域と関わりを持ち、そのことを通して地域といかに結び付くか…地域住民とともに…を実践することによって、地域から頼られる存在(役場職員としてではなく労働組合として)になることが、地域にとっても、そして我々労働組合(自治労)にとっても必要であると考え実践し続けている。
 今年取り組むコンサートの町労連としての関わりかたは、まさしくこのことが具体化した事例である。

9. 厳しいからこそ積極的に

 人勧が低額で推移し、さらには既得権すら剥奪されかねない状況にあって、これらの取り組みに対して、批判的な思いをもっている組合員がいることも承知している。しかし、この厳しい今だからこそ地域住民が何を考え、何を求めているのか、必要があればそれらを集約して労働組合として、首長に対して意見反映をすることも自治労に加盟している町労連の責任であり、そのためにも積極的に地域と関わりを持ちたいと考えている。
 一方で労働組合の原点である組合員の賃金・労働条件を労使交渉の中で前進させることは当然のことであるが、今までの取り組みを通して、地域の中で多少なりとも労働組合の理解者が増えていることは、当局に対して大きな力になっている。

10. おわりに

 各種の取り組みをするということは、非常に大きなエネルギーが必要である。しかし、取り組みを通して得られる有形・無形の財産は、それに変え難いものがある。
 1つ例を挙げれば、今年5月に山女の稚魚を入手し、川に隣接する小学校の子どもたちに放流してもらったが、その時の子どもたちの喜ぶ姿は、その典型であり素直にやって良かったという感動を味わっている。
 環境問題や障害者の問題等々、地域にはいろいろな問題が山積しているが、とにかくやってみよう、声を聞こう、そして考えようをモットーに、これからも著についたばかりのこれらの取り組みを、今後も引き続き地域のためにも組合員のためにもやり続けたいと考えている。

新聞記事(1999.12.23  2000.2.2  2000.2.16)