バリアフリー・チェック活動の報告

東京都本部/自治労特別区職員労働組合連絡会

 

1. 春闘方針で取り組む

 自治労都庁職建設支部の取り組みとして始まったバリアフリーチェック活動は、自治労都職労の「地域福祉春闘」活動の中心的課題として、1998年3月に都庁・練馬周辺で実施された。これらの取り組みを通して、バリアフリー化をめざす活動の重要性が認識されるようになった。
 自治労特区連は1999年度行動方針に取り上げ、去る4月8日、荒川区職労の全面的協力の下、荒川区役所の庁舎施設にバリアフリーチェック活動を70名近くの参加で実施した。
 この取り組みは、公共施設のバリアフリー化をめざすとともに、障害労働者にとって働きやすい職場環境を整備するという目的も合わせ持っていた。まさに自治労特区連の行動方針を具体化する取り組みであった。

2. 地域と職場に存在感のある労働組合となるために

 すべての人にとって暮らしやすい、働きやすい地域と職場にする活動を労働組合が積極的に取り組む意義が一連の行動を通して明らかになった。さらに、これらの改善・整備を実現させるために、障害者や高齢者のグループと交流・連帯し、自治体議員と連携することが大切だ。
 一方、職場内では毎年取り組んでいる職場改善要求運動にバリアフリーの観点を盛り込むことである。そのためにも、障害労働者の組織化、そして当事者自身の自立した活動へと発展させることが求められている。

3. どのようにバリアフリー活動に取り組むのか

 まずは組合役員の「やる気」である。「やる気」とは当人の「心のバリア」をとっぱらうことそのものである。お付き合い的活動、やってみました的活動でなく、すべての人が快適に暮らし、働く環境を創ることの重要性をどの程度認識するのかということだ。
 次は、バリアフリーチェックに必ず当事者を入れること、主役となってもらうことである。障害者といっても、さまざまな障害を持っており、可能なかぎり多様な人の参加が望ましく、さらには高齢者や子連れの方なども含めるとよい。
 ここまで来れば、あとは前例を参考とし、具体的に行動すればいい。事例については、建設支部の一連の都立公園チェック、自治労都職労報告書(98.5)、石毛えい子とわくわくバリアチェック隊報告書(00.5)、さらには各障害者団体の報告書、東京都の『施設整備マニュアル』(福祉のまちづくり条例)など多種多様にある。

4. 各単組、構成組織で具体的に取り組んでほしい

 まず実施計画を立ててほしい。行動ありきをモットーとし、足りないところがあれば、都本部なり自治労特区連に問い合わせていただければ、具体的にお手伝いできる。
 2000年度中に少なくとも数区での実現を期待する。

【報告書】 (Aグループ)練馬区職労(堀江 治男)
 私たちのグループは、バス停から、区役所入口~1階のフロア、階段、区民部・福祉事務所カウンター、現金自動支払機等を港・中野・新宿・北・練馬区職員労働組合の仲間と、視覚障害者の森さん、弱視の瀬田さん、障労連の方たちと点検活動に入りました。荒川区職労のみなさんも当然沢山参加されています。
バス停ふきん
 ● 横断歩道の近くに車が止まっていると、非常に見づらい。特に車椅子では通行が困難。役所側のバス停付近は道幅も狭く危険である。
 ● 視線が低いので、木や建造物があるのでバスが来るのが見づらい。
 ● バス停の点字ブロックが途中で切れている。
 ● バス停に降りてから、「区役所前」という表示がない。
 ● 点字ブロックが2列あるが、1列でよい。車椅子には危険。
 ● 歩道に誘導ブロックがない。(区役所入口等)
 ● リフトバスの本数が少ない。
 ● 支柱と街灯との間が狭く危険。
歩道~公園~役所
 ● 公園から横断歩道に止まれの点字ブロックに「止まれ」の表示がない。
歩道から区役所入口ヘ
 ● 点字ブロックがあるが判読しづらい。凹凸が少なく、歩道から区役所の中の誘導ブロックにつながらない。
 ● 誘導ブロックは4本が良い。5本のうち2・4が切れているのは判読しづらい。
 ● 表示板が薄く、見づらい。
 ● 聴覚障害者にとって、公衆電話はサポートなしでは使えない。
 ● 誘導ブロックと敷きブロックの判断がしづらい。(弱視者)
 ● インターロッキングの為入口に段差があり、視覚障害者には危険。
 ● 土、日に地下受付を利用しようとしても行けない。
スロープ
 ● 誘導ブロックでは1階正面玄関にいかない。誘導ブロックは車椅子が通るため、磨耗して判読しづらい。
 ● 坂の最初が急になっていて危険。
 ● 入口の歩道から、まっすぐ行ってしまい危険、スロープの手すりにぶつかりやすい。
 ● 東側スロープを降りたところに渡るところがほしい。
 ● カーブ入口の手すりに点字案内表示を入れてほしい。
正面玄関
 ● 段差につまずく、グレーチングに白杖が挟まり易く危険。
 ● 視覚障害者の誘導チャイムが右入口にしかない、左側に気付かない。
 ● 玄関に入ってから誘導ブロックがない。
窓口・カウンター
 ● 机から27cmしかなく、足が入りづらいし、書きづらい。
 ● 戸籍、住民票記載台に車椅子が入らない。
 ● 1階案内表示に点字案内がない。
 ● 総合案内所で手話通訳者を呼んで貰えると助かる。(聴覚障害者)
 ● 1階廊下は滑りやすい。(視覚障害者には危険)
 ● 障害者福祉課への入口が狭い。障害者には危険。
 ● 保護課記載台が高すぎる。(車椅子)
 ● 鉄角がむき出しになっていて危険。
公衆電話
 ● 表示がない、車椅子でかけようと思っても低すぎる。
 ● 電話設置場所にファックスが1台あると文字で判読できるので、助かる。(聴覚障害者)
 ● 車椅子が入るためには80cmは必要。
階 段
 ● 階段の手前で点字ブロックが突然切れて危険。
 ● 手すりは二重に必要、1段ではカが入らない。

(Bグループ) 荒川区職労(彦坂 雅男)
1F正面玄関
 ● グレーチングの蓋の目が粗すぎる。
  白杖の先が入ってしまって危険を感じる。
  手動の車椅子の車輪は落ちないがギリギリ。電動は車輪が大きいので問題がない。
  細いハイヒールの人も危ないのでは?
 ● 正面に障害者用駐車場所が有るのは親切なのですが、障害者にとって屋根が無いのは雨天の時は大変つらい。
  庁舎裏の駐車場など一般のアプローチにこの場所の位置表示が無い。
   →知らない人には使いづらい。
 ● 一般車がよく停まっている。トラックなど明らかに異なる車は移動させてほしい。
明治通り側スロープ
 ● スロープが長すぎる。途中に休める平坦部分がほしい。
 ● スロープの最下部が急に曲がっていて正面に手摺りがあるのでぶつかるのではという不安がある。カーブ部分は平坦部分か、もっと緩やかにしてほしい。
 ● 明治通り側から入ってきた場合、夜間受付に行く誘導ブロックが無い。
 ● 地下夜間受付、入口へのスロープは距離が長く上部から勾配が9°5°3°と下部に行くほど緩やかで、上部が急なため勢いがつきやすく不安。(地下裏側出入りロの勾配も同じ9°だが距離が短いため問題を感じない。)また最下部にバリケードが2個置いてあり衝突の危険がある。(平日はバイクが並んでいることが多くそのためのバリケードと思われるが車椅子の動線上にバイクが駐車していることが問題。)
B1F夜間受付・B1F正面入口
 ● 夜間受付のカウンターは高すぎて車椅子では使えない。
 ● くぐり戸は車椅子では通れない。脇に車椅子が通れるシャッターが有るが(車椅子用の通路として作られたかどうかは不明)、開けてもらうのには守衛さんを呼ばなくてはならず、インターホンの位置が高すぎて届かない。またシャッターをくぐるときにカウンターが顔の位置に来て出っ張っているため不安。
 ● 地下正面入口は3cm~5cmの段差が有り、すぐ後ろ側に17cmもある段差がありこの間のスペースが無いため不安でもありこの段差を越えられない人もいる。
地下食堂(自販機・食堂セルフカウンター)
 ● 入れなかったが、売店の入口は狭い。
 ● セルフサービスの食堂だが利用出来ない人は係員を呼ぶように表示もあり営業時間に利用した人の話では親切に応対してくれたとのこと。
 ● 点字誘導ブロックとか視覚障害者にたいする案内は無い。
 ● 水もセルフサービスになっているがコップ置き場のカウンターが高すぎてコップがとれない。2つ有るのだから高さの違うカウンターにしてくれれば利用できる。
 ● 食券販売機は使用出来る。自販機は1台は大変使い勝手がよい。残りも使えないことはない。
 ● 自販機などの硬貨の入れ口は受け皿式で一度に硬貨を入れられるタイプのものが望ましい。
エレベ一夕ー
 ● ドアの開閉が速すぎる。センサーは光電管式の方がよい。
 ● 閉まるカが強すぎてぶつかるとイタイ。
 ● 障害者用のパネルと一般の繰作パネルを押した場合とで扉が開閉するスピードに差がない。アクロスのエレベーターのスピードが適当。
 ● タッチパネル方式の操作盤は視覚障害者には不便。
 ● 点字の表示が分かりにくい。
階 段
 ● 現在の階数の表示が無く現在いる階が分かりづらい。
 ● 下りの点字ブロックが間際まではってあり、いきなり下がるので危ない。
 ● 途中の踊場が狭いためか壁を伝わっていくようになっているがもう少し工夫はないか。
 ● 手摺りがあるのは良いのだが二段にしてほしい。
6Fの身障者用トイレ
 ● とても使い勝手の良いトイレ
  手洗器のサイズ・位置も適当で良い。大きなサイズの手洗器はかえって使い勝手が悪い。鏡の位置・向きは適当。
 ● 庁舎内に障害者用トイレがどこにあるのかの表示がない。
  ex.)1Fと6Fに障害者用トイレがあります。
     1(6)Fにも障害者用トイレがあります。
6Fの通常トイレ
 ● 手摺りがついていれば一般用トイレを使用できる障害者も多い。
 ● 入り口が狭く(81cm)曲がっているので車椅子では曲がれない。
  (間口は90cmある)
住宅課事務室と廊下
 ● 廊下にものが多すぎる。
 ● コピー機が大きすぎて通路を圧迫している。
 ● 椅子を普通の位置に入れてあれば通路は確保されている。
  椅子を引いて座られると通れない。
  一応まわり巡って通行路は確保されているが分かりづらく常時利用している人以外には理解できない。
 ● ハイカウンター(90cm)は高すぎて寄り付けない。カウンターの上の表示ぶつは見えない。
  ローカウンター(74cm下部の奥行35cm)は寄り付けるので使い易い。
  下部奥行はもっととれればなお良い。

(Bグループ)港区職労(嵯峨)
 4月8日のバリアフリーチェックは、自分の視野がいかに狭いかを実感するものでした。様々な人たちの、様々な立場に基づく利用実感の相違を知るということが、第一歩であり、行動へのステップになるものだと実感いたしました。身体状態に基づくバリアだけではなく、言葉のバリアや制度のバリアなどについても、同じように考えさせられるものでした。
 港区職でも実施できれば意義深いものになるのではと思っています。
 私自身はCグループで視覚障害者と同行させていただいておりましたので、その報告をいたします。(視覚障害者からすでに報告がとどいているとは思いますが。)
1. アプローチ・通用口2ヵ所を点検
 ● ガイドブロックがなく1人で区役所に入ることは不可能。
  → 地下の入り口には郵便局ATMの点字ブロック(しかもたった3つの)がありかえって迷ってしまう。
 ● グレイチングの幅が広いために白杖が入り「落ちて行くような、恐怖を感じる!」と視覚障害者の感想。
  以上、役所に入るためのアプローチに何の配慮も感じられなかった。
2. エレベ-ター
 ● 3基のうち1基だけが点字案内付となっていることに、配慮の無さを実感する。全部に点字表示をして欲しい。また、点字表示は、ボタンの右側か左側につけるように統一して欲しい。
 ● ボタンをタッチセンサーではなく、押しボタン式にして欲しい。点字表示を触っているうちに、すべての階を押してしまう。
 ● エレベーターへのガイドブロックが必要である。
3. トイレ
 ● 点字での入り口表示が無く、ここが何なのか分からない。男女別の表示もない。できれば音声案内が欲しい。
 ● 視覚障害者にはフラッシュバルブの位置が分かりにくいので、非常用のボタンを押してしまうことがある。トイレットペーパーのカバーにでもその位置が分かると良い。
4. リサイクルポスト・ごみ箱
 ● 点字表示が無いために、箱が4箱並んでいるだけと思える。箱の上に点字表示をして欲しい。
5. 電 話
 ● 位置が全くわからない。存在自体を知りようがない。
6. カウンター
 ● カウンターの上などに点字表示があると、ここがなに課かということが分かるので工夫して欲しい。