【自主レポート】

第37回土佐自治研集会
第11分科会 自治研で探る「街中八策」

 本レポートは、2019年春の統一自治体選挙における道議会議員選挙旭川選挙区へ組織内議員候補を推薦決定した際に確認された方針に基づき、「職場対話集会」の討論素材として集約した「職場紹介アンケート」及び「自治研レポートフォーム(職場レポート用)」について分析し、職場の現状と課題を浮き彫りにし、北海道の職場の「未来」を展望しようというものです。



序章・『高橋道政16年』の検証
―― 職場の現状と未来への展望 ――

北海道本部/全北海道庁労働組合連合会・上川総支部 渡部 功次

 本レポートは、第58回上川総支部臨時大会(5月10日開催)において2019年春の統一自治体選挙における道議会議員選挙旭川選挙区へ組織内議員候補として「松本将門」氏を推薦決定した際に確認された「候補者が政策立案にむけて職場を訪問し、対話する中から職場の課題を把握していく」方針に基づき「職場対話集会」の討論素材として集約した「職場紹介アンケート」及び「自治研レポートフォーム(職場レポート用)」について分析し、職場の現状と課題を浮き彫りにし、北海道の職場の「未来」を展望しようというものです。なお、集約したアンケートは取り急ぎ取り組んだため、設問や選択肢の設定において細部に検討が出来ず、集約した職場数も総支部内49のうち20余りであることから、今回は「序章」としました。

1. 「自治研レポートフォーム」の活用と「職場紹介アンケート」について

 対話集会の開催を準備するにあたって、上川総支部では「提起だけ」の状態にならないよう、意見交換が成立する開催を工夫することが求められていると考えました。そのため、職場の現状と課題を支部や分会としてどのように把握しているのかをあらかじめ整理し、総支部へ寄せてもらう必要があると考え、「自治研レポートフォーム」を活用し、取り分け「事務事業とその目的」「その事務・事業をめぐる問題点」については必修記入を求めました。しかし、職場に赴き事前に説明をしたところ「自治研レポートフォーム」への記載は「ハードルが高い」との声もあり、職場対話集会での意見交換が円滑に行えることを優先するなら、更に簡易な形でも職場の現状と課題を総支部へ寄せてもらう必要があると判断し「職場紹介アンケート」を取り組むこととしました。
 アンケートの趣旨としては、「本来職場で行うこととされているはずの事務・事業に対して、現実的には『見合った体制』になっているのか?」や「いまの状態であれば、起こりうる問題はどのようなことか?」といった、言わば「(行政)需要との格差(ギャップ)」を浮き彫りにしようという視点で作成しました。

2. 職場アンケートの設問について

 上記の趣旨を念頭において、各職場が
① どのような法令(条例)により事務事業を行っているか(Q1)
② 職場の繁忙や超勤に見られる業務状況はどうか(Q2)
③ その職場業務体制を客観的にどのように評価しているか(Q3)
④ その業務体制が(需要側の)道行政に照らしてもたらしている影響は何か(Q4)
⑤ それらの問題点や課題等を解決するための方策は何か(Q5・記述)
と設問を用意しました。

3. アンケート結果の分析

(1) 「Q1 あなたの職場がしている業務に~」について
 この設問は、職場紹介の「入口」でしかないので、職場実態を裏付けるものではありません。しかし、
・専門的で柔軟な現場対応が求められる普及職場など
・道民から見て「普通」に作品の展示を業務としていても関係法令の多い美術館
・建設行政とは言え、係わる法令の多さが際立つ建設指導課
・法的に厳しい扱いが定められている家畜保健衛生所や食肉検査所
など、様々あり、時間をかけて法令と業務の密接な関係について理解を深める必要があると考えさせられました。

(2) 「Q2 あなたの職場の業務状況は~」について
 回答された選択肢をグラフに示しました。選択肢が大まかですが、「繁忙期以外は定時退庁」が57%を占めており、「恒常的に超勤」を上回っています。
 「恒常的な繁忙」職場は業務過重になっていると考えられますが、「繁忙期以外は定時退庁」の職場に「問題が無い」わけでないのは言うまでもありません。

(3) 「Q3 あなたの職場の現状について当てはまると思われるもの~」について
 選択肢で最も多く回答を得られたのは①「業務量に職員数が見合っていない」と⑥「ベテランと若年層職員の年齢差……『伝承』に支障が」(共に26%)となりました。
 3番目に③「ギリギリの体制だ」(24%)となりました。
 (「複数回答・可」と設定しているので)①と⑥、①と③、③と⑥、①と③と⑥の重複回答している職場数を数えてみると、「①と⑥」は5、「①と③」は3、「③と⑥」は2となり、また、「①と③と⑥」の重複回答職場は4件となりました。
 この回答を意味するものは、とても大きいと言えると思われます。

(4) 「Q4 あなたの職場の現状と北海道行政(業務)について~」について
 同様に回答された選択肢を円グラフに表示してみました。
 最も多いのは①「職員数が不足……行政サービスに影響している」(35%)。二番目に多いのが③「きめ細やかな対応……手が回らない」(26%)でした。以下、②「トラブルが発生……不安」(16%)と④「甚大な事件……対応が困難」(14%)となりました。
 多くの職場で「職員数が不足しているため行政に影響している」ことは自覚されていると考えられますし、さらに、「道民へのきめ細やかな対応が必要と思いつつ、出来ない」ジレンマを感じているのでは、と考えさせられました。

(5) 「Q5 あなたの職場の現状や問題点、課題等を解決していくためにはどのような方策が必要か……」の記述回答について
 寄せられた記述回答を拾い出してみると
・職員数の不足を解消するため、賃金UPや職場環境の向上が必要
・一定数の人員確保と年度による増減の少ない採用枠の確保
・安定的な職員(採用)の確保
・職員数を定員どおり埋めること
・道職員のイメージアップを図り、新卒者(採用)を確保する
・早急な人員の補充と施設の改修
・長期的な視野での人材育成
・職場それぞれに見合った人員配置を望む
・一般職を係2人、再任用短時間職員の1~2人が必要
 ほかに、人員増を求める(採用を促進させるための処遇改善も含めた)記述が多い一方、
・業務の精査・見直し、関連機関との連携・役割分担の検討
・事務の簡素化
・一般業務について民間委託も検討すべき
・提供する行政サービスの取捨選択、各種作業のシステム化による業務量減
というような「人が増えない中での対応策」も記されていました。
 さらには、
・年齢ではなく、能力による昇給・昇任の導入
・現場に責任と権限を与えられる風土の形成
といった「違う視点」での提案もされています。

4. 「自治研レポートフォーム(職場レポート用)」の記載について

 「自治研レポートフォーム」は10余りの職場から寄せられました。
 様々な職場から業務内容と現状が記述されて、改めて「北海道は様々な職域で、様々な職種(職能)の職員が担っている」と気がつかされる読み応えのある内容でした。
 「分析」というほどのことは担えませんが、「つかみ」として、
① 「対人業務職場」と「対自然業務職場」、若しくはその両方を担っている職場があり、「業務量に職員数が見合っていない」「事務・技術の『伝承』に支障がもたらされている(もたらされそうになっている)」などの現状が共通 ⇒(重大な事案・トラブル発生への対応不能になるかもしれない)「潜んでいる危機(リスク)」⇒「報道によるバッシングへの恐怖」
② 庁舎・設備・備品・消耗品への予算が不足し、業務遂行に苦慮している
  ⇒(重大な事案・トラブル発生への対応不能になるかもしれない)「潜んでいる危機(リスク)」⇒「報道によるバッシングへの恐怖」
③ 地方の急速な人口減少により、「法定業務を遂行することが困難」になるなど
④ 困難な現状の中でも、市町村や地域と連携する工夫や模索をしている
⑤ 人員不足などに対応した「外部委託化」への期待
といった傾向に分類されると考えられます。

5. まとめ ~「まったなし」を放置し続けたのは高橋知事だ

 北海道の職場の移りゆきを記憶にある範囲で記すと、「第二次医療圏の再編」など多くの職場の再編(統廃合)を伴った支庁制度改革、国の独立行政法人化に倣った医大や道立試験研究機関の独法化、そして、技能労務全廃・職務換えがありました。
 現業職場の廃止の際に多くの職場から指摘された「行政サービスへのしわ寄せ」が、今も多くの職場において潜在しており、その「しわ寄せ」がいつ決壊するかもしれないという不安が多くの職場を覆っています。もちろん、「決壊しないよう」にどこの職場も意識させられ日夜業務に邁進しています。
 高橋知事が道政の重要な課題に対するとき、「まったなしの状態です」という言葉をよく使います。今回の「自治研レポートフォーム(職場レポート用)」や「職場紹介アンケート」を集約してみると、「まったなしの状態を放置し続けたのは高橋知事だ」と言えます。
 「人事政策の失敗」が多くの職場に疲弊をもたらしていると言えますが、「人事政策」は道民目線では理解が深められ難い現実もあり、そのため職場が置き去りにされ続けてきたものと言えます。
 来春の知事選を頂点とした統一自治体選挙において、「道民ニーズに足りうる職場」を取り戻すため、外向きに「道民の安心・安全の暮らしを切り捨てるな」と職場から訴える「道民運動」が求められていると言えます。




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