境港市の財政状況を考える
~境港市の財政の現状を知ろう!~

鳥取県本部/境港市職員労働組合・青年部 


1. はじめに

 境港市では、地方自治体の投資ブームの中、92年以降文化ホール、海とくらしの史料館、水木しげるロードなど、積極的に公共事業に取り組んできました。
 この結果、
92年には33億円あった基金が、98年には15億円と半減し、地方債残高(市の借金)は92年には80億円であったものが、98年には140億円となりました。また、公債費(市の借金返済)は、地方債残高の伸びとともに94年から急増し、98年で17億円となり、今後も増え続ける見込み(2002年がピーク)です。

 地元経済の低調な状況から判断して、急激な税収の伸びは期待できず、境港市は極めて危機的な財政運営を行っている現状です。

2. 取り組みに至る背景

 境港市は96年に、経常収支比率が92.0%となり、鳥取県内で最悪の数値となりました。また同年、起債制限比率は15.0%となり、翌年から国の公債費負担適正化計画の策定団体となり、財政構造の弾力化に取り組むこととなりました。
 また、当局は危機的な状況に対処するため、
98年から3年間を財政健全化期間と定め、より一層の行政経費の節減に努める方針を打ち出しました。具体的には次のとおりです。

① 経常的経費の削減 経常的経費(人件費除く)予算は、前年当初予算対比マイナス10%シーリング。
食糧費、旅費の削減
食糧費は必要最低限、県内出張の場合は公用車を利用し削減を図る。
② 投資的経費の見直し 投資的事業は、国・県施策の動向を踏まえながら、第7次総合計画の事業の中で緊急性、事業効果の高い事業を優先する。
③ 特別職の給料削減 市長、助役、収入役、教育長の給料を3年間5%カットする。
④ 公債費負担適正化計画の推進 財政健全化に向け、引き続き地方債借入額を抑制する。
⑤ 補助金・負担金の見直し

補助金・負担金については、過去の経緯に問われることなく、行政効果を精査し、整理統合、内容の見直しを図る。
納税貯蓄組合、教育福祉事業団と文化振興財団に対する補助金の見直し(統廃合)等。

など

3. 具体的な取り組み

() 財政検討部会の設置(97年4月)
   住民福祉、組合員の労働条件にまで多大な影響を与えかねない、財政危機を回避し、境港市の財政健全化のための抜本的な方策を検討するため、執行部に財政検討部会を設置しました。

() 財政状況の検討報告(97年6月)
    2ヵ月間、財政検討部会で議論を重ね、その内容について組合員へ教宣等で周知を図りました。

() 職場オルグの実施(97年7月~9月)
    財政状況について、組合員の意見を集約するため、全職場を約2ヵ月間かけて職場オルグに回りました。

() 市長への提言(97年9月)
   
職場オルグは計18回に及び、組合員全員の意見を踏まえて、市長に「意見書」の提言を行いました。しかし、当時当局は危機的な状況は認識したものの、具体的な回答はありませんでした。

4. 現在の取り組み

 少子高齢化社会を迎え、地方分権の推進、地域福祉の充実(介護保険等)など新たなサービスが市の責務となっています。97年に実施した財政状況の提言が功を奏したのか、当局は98年から3年間を財政健全化期間と定めました。
 しかし、
98年1月に実施された機構改革では、財政健全化という名のもとに職員数が10数名削減され、2001年4月1日で職員数を300名にするという行政改革大綱が、99年3月に策定されました。権限移譲事務などにより業務量は増える一方、職員数は現在298名(条例定数319名)と激減しており、それが原因でメンタルストレスも蔓延してきています。

 最初の財政分析から2年余が経過し、現在第2回の財政分析の取り組み中ですが、それに先がけて、青年部で財政の基礎知識と現状を認識しようと、学習会を開催しました。
 ……今回はその資料を単組自治研レポートとして提出します。


◎予算と決算
○予 算(計画)
      歳入予算 = 歳出予算

   ● 総計予算主義

        予算は、地方公共団体が1年間に必要とする金銭の収支予定計画であり、この収支計画は一会計年度内における一切の収入と支出であり地方自治法第
210条でこれを総予算主義の原則といっている。

   ● 歳入予算と歳出予算のちがい
        歳入・歳出予算ともに会計年度開始以前に議会の議決を得なければならないが、歳入予算は、単に収入の見積もりであるのでそれを超過しても収入することができるが、歳出予算は見積もりであると同時に議会が執行機関に支出権限を許容するものであり、執行機関は、その内容及び金額に拘束され、予算額に不足を生じたときは、補正予算、予備費充当などの措置を講じなければいけない。
             歳入予算額 < 実歳入額  ・・ 良い
             歳出予算額 < 実歳出額  ・・ ダメ
                    ↑
             この場合は、補正予算又は予備費充当などの措置が必要
   ● 補正予算
        当初予算の調整後に生じた事由(災害の発生、物価の変動、施策の変更等)に基づいて既定予算に過不足が生じ、又はその内容を変える必要が生じた場合に、既定予算を変更する予算のこと。

○決 算(実績)
  決算は、一会計年度が終わった後、その歳入歳出予算について、その執行の実績を示すために調整される計算表です。予算は見積もりであるので、必ず予定どおりそのまま実行されるものではなく、予算執行の過程において、経済変動等により、過不足を生じるのが一般的であり、決算により地方公共団体の財政運営の適否を判断すると同時に、将来の財政計画の資料とするものです。
             歳入決算額 - 歳出決算額 ≧ 0 ・・ 黒 字
             歳入決算額 - 歳出決算額 < 0 ・・ 赤 字

◎特定財源と一般財源等
○特定財源

  使途が特定されている収入を特定財源という。特定財源に分類されるものとしては、国庫支出金(県支出金)、地方債、分担金、負担金、使用料、手数料、寄附金のうち使途が指定されているもの等である。

○一般財源
  使途が特定されず、どの経費にも自由に充当できる経費で、地方税、地方譲与税、地方交付税、利子割交付金、地方消費税交付金、特別地方交付税交付金、ゴルフ場利用税交付金、自動車取得税交付金、交通安全対策特別交付金、国有提供施設等所在市町村助成交付金をいう。

◎基金(貯金)と市債(借金)
○基金(貯金)

   ● 特定目的基金
        特定の目的のために資金を積立てる基金で、基金を取崩して、一般会計に繰入れることができる。(財政調整基金、減債基金、職員退職手当基金など)
   ● 定額運用基金
        定額の資金の運用を目的とする基金で取崩して一般会計に繰入れることができない。(土地開発基金、高額療養費貸付基金など)
   ※基金はここ数年積立てる(貯金)額より財源確保のために取崩す(引出す)額の方が多額のために積立額(貯金)が減少傾向にある。

○市債(借金)
  市債とは、市町村がある事業を行う場合、一般財源が乏しく財源不足をきたす場合、特に一時に多額の資金を必要とする場合、政府関係機関等から借入れを行い、一定の約束のもとに返済する義務を負うもので、長期の借金である。
  市債の元利償還(返済)金を公債費(一時借入金利子を含む)といい、市債残高とともに年々増加傾向にある。

◎境港市の財政状況
 ◆伸び悩む経常一般財源に対し、年々順調?に伸びていく経常的支出
 ◆借金残高の増加に伴う公債費(借金返済金)の増加
 ◆財源不足による貯金残高の減少   などなど

<主 説>
 ◆普通会計
   普通会計とは、一般会計と特別会計のうち公営企業会計(上水・下水道等公営企業会計及び国民健康保険事業特別会計等)以外の会計(住宅資金等貸付事業特別会計等)を統合して1つの会計としてまとめたものである。
   ここの地方公共団体ごとに各会計の範囲が異なるため、実際の会計区分では財政比較や統一的な掌握が困難なため、地方財政統計上統一的に用いられる会計区分であり、一般的に地方財政をいう場合、この普通会計をもととしている。
 ◆経常収支比率
   経常収支比率は、人件費、扶助費、公債費等の義務的性格の強い経常的経費に、地方税、地方交付税、地方譲与税を中心とする経常的な収入たる一般財源がどの程度充当されているかにより、財政構造の弾力性を判断するための指標である。  

 経常経費充当一般財源 

×100

経常一般財源総額

 ◆公債費負担比率
   公債費に充当された一般財源の一般財源総額に対する割合を公債費負担比率といい、その率が高いほど、財政運営の硬直性の高まりを示すものである。

 公債費充当一般財源 

×100

一般財源総額

 ◆起債制限比率
   地方債の許可制限に係る指標として地方債許可方針に規定されているものであり、次の算式により過去3年度間の平均をいい、
15%をこえると黄信号で、20%以上の団体については、原則として地方債の一部を許可しないものとされている。

      A-(B+C+E) 
       D-(C+E)
A…当該年度の元利償還金
B…Aに充てられた特定財
C…普通交付税の算定において災害復旧費等として
   基準財政需要額に算入された公債費
D…当該年度の標準財政規模
E…普通交付税の算定において事業費補正により
   基準財政需要額に算入された公債費

 ◆標準財政規模
   地方公共団体の一般財源の標準規模を示すもので、普通交付税の算定に用いられる地方税、地方譲与税等の標準税収入額に実際に算定された普通交付税の額を加えたもの。

資料1~資料6

市町村財政構造の弾力性