真に必要とされる公共サービスの確立を―人口減少における公共サービスのあり方とは―

国による地方財政の歳出削減圧力などが続く一方で、人口減少対策や少子高齢化対策などをはじめとした社会課題のほか、多種多様な住民ニーズがあり、自治体はより一層きめ細やかな公共サービスを求められている。そんな中、これからの公共サービスのあり方や地方自治の研究を目的に、2018年5月26~27日にかけて、広島県三次市で「第32回地方自治研究広島県集会」を開催。広島県内から約300人が参加した。

 

広島県本部を代表してあいさつする戸守 学執行委員長

 

冒頭のあいさつ終了後には、講演1として関西大学社会学部・草郷孝好教授から「対話と協働で持続する幸せなまちを育む~アクションリサーチの実践~」、講演2として首都大学東京都市教養学部の山下祐介教授から「地方は消滅するのか―人口減少と東京一極集中について―」と題して講演が行われた。

 

草郷教授からは、日本が直面する少子高齢化・人口減少のほかさまざまな社会課題に対して、持続可能な社会をどう創り上げるのかと問題提起をしたうえで、「今後の社会は、経済成長による生活の豊かさを得る従来の社会発展モデルだけでは成り立たない。住民ニーズを適切にくみ取り、心の豊かさとゆとりある生活の構築を念頭に、地域社会づくりを考えていく必要がある」と説明。また、それらを実践するにあたって、自身も提唱している「協働型アクションリサーチ(※注1)」による住民自治の基盤の醸成と対話のプロセスを重視しながら、地域課題の解決や地域創りを進めてほしいと述べた。

 

※注1:アクションリサーチとは、組織あるいはコミュニティの当事者自身によって提起された問題を扱い、その問題に対して、研究者が当事者とともに協働で問題解決の方法を具体的に検討・実施・検証を行い、実践活動内容の修正を行うという一連のプロセスを継続的に行う調査研究活動のことを意味する

 

また、山下教授からは冒頭、2014年5月に示された「増田レポート」の地方消滅論の問題提起と対応策「選択と集中」を説明したうえで、現政権の地方創生へのスタンスは「選択と集中」から「競争と淘汰」というスタンスに変化しているのではないかと指摘。その上で、「人口減少社会を考えていくうえでは、まず東京一極集中との関係をどう見るか。それぞれの正体と原因をしっかりと探らなければ、問題の本質は解決しない」と説明。それらを踏まえ、結論として、人口の集中する東京と減少する地方の意識をはじめとした、そもそもの社会のあり方や意識を根本から考え直し、日本のインフラや社会保障を地域に関係なく万遍なく保障していくことが重要と述べた。

 

 

2日目は6つのテーマで分科会が行われた。

開催された分科会は以下の通り。

第1分科会:ひとづくり

第2分科会:まちづくり・自治体改革・自治体財政・防災減災

第3分科会:福祉・医療

第4分科会:平和・人権・環境

第5分科会:U-35(UNDER35)自治研入門

 

各分科会、それぞれの専門とする助言者から講演を受けたのち、関連するレポート報告を行いながら、議論を行った。

とりわけ、第5分科会では広島県内の概ね35歳以下の組合員が集め、自治研入門として「自治研って何だろう?」「自治研ってどうやるんだろう?」と参加者同士でグループワークを通して意見交換。講演では、西尾祥之さん(愛媛県本部宇和島市職員労働組合)と中村隆行さん(ひろしまNPOセンター)が登壇した。西尾さんからは「自治体職員が自治研を通してどのように地域創りに参画するか」「自治研活動の取り組み方」などについて、過去自治研で行われた事例をもとに説明。中村さんからは、「新しい公共」の考え方の中でNPOがどのように行政と連携して地域創りを進めていくのがいいかなどを述べた。

 

 

2018年10月5~7日には、高知県高知市で「第37回自治研集会(土佐自治研)」の開催を予定している。全国各地からさまざまな取り組みを報告し、熱い議論をかわし、さらなる自治研活動の活発化をお願いしたい。