2025/06/18
6月13日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025」を閣議決定しました。これを受け、自治労は下記の通り談話を発出しましたので掲載します。(最下段よりWordファイルをダウンロードできます)
「経済財政運営と改革の基本方針2025」閣議決定に対する談話
1.石破政権としての独自色を問う機会として、一定の注目を集めた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2025」が6月13日に閣議決定された。「賃上げこそが成長戦略の要」であるとし、同時に地方創生を強く打ち出した、その姿勢については期待したい面もある。しかし、いずれの政党も過半数を有しない、ハング・パーラメントとなっている政権にどの程度の実行力があるのか、とりわけ、この間、雇用の非正規化を進め、格差社会を深刻化させた自民党政権による掛け声だけに終わらないのか、今後も厳しく注視する必要がある。とくに賃上げに向けては、適切な価格転嫁に加え、生産性の向上に数多く言及しているが、この30年、日本においては生産性が30%程度上がったにもかかわらず、賃金の上昇にまったく結び付かなかった、そうした社会状況をつくり出したことへの真摯な反省も求めたい。
2.地方創生については、「骨太方針2025」と同日に「地方創生2.0基本構想」を閣議決定しており、その本気度は伺える。地域の人材育成について、公定価格の引き上げなどにより、医療・介護・保育・福祉等における処遇改善や労務費の適切な価格転嫁をめざすとしており、その点は自治労の要望とも一致する。しかし、「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」に傾注し、買い物環境、医療・介護サービス、交通空白地域の解消など、極めて多岐・広範にわたる取り組みを全自治体に求めるあまり、またしても過剰な行政計画の策定を求めることにならないか。自治体における職員不足は深刻の度を増しており、その現実を直視した上で対応すべきである。また、地域医療構想においては、関係する労働者の処遇改善の実現はもとより、今回指摘されている病床数の適正化などが公的・公立病院のあり方にどのような影響を及ぼすのか、まず国が2025年度中に示すとするガイドラインについて注視する必要がある。
3.地方行財政基盤の強化として、2026年度の地方一般財源総額について、2024年度地方財政計画の水準を下回らないように確保するとしているが、行政需要の多様化、先の見えない物価高、また賃上げ基調時にあっては、地方一般財源総額確保から一歩踏み出し、これを拡充する方向性を求めたい。また、東京一極集中が進む中で、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築をめざすとしたことは自治労の要望とも一致し、評価したい。とくに参議院選挙を前に、各政党により消費税減税議論が巻き起こっているが、消費税こそ地方偏在性が少なく、安定的な税源である。消費税における地方税分は2.2%にあたり、7.8%の国税分には地方交付税の原資も含まれる。現在議論されている減税案が地方にどのような影響を与えるのか、各党は明確に示すべきである。
4.デジタル・ガバメントへの対応として、自治体の標準準拠システム移行に際し、移行後のシステム運用経費について対策を行うとしたことは歓迎する。移行後は30%程度削減されると見込まれていた運用経費だが、この間の自治労調査においても、実際には従前の数倍に高止まりする事例が数多く報告され、総務省・デジタル庁をはじめとする関係省庁に対し、その補填を求めてきたところである。しかし、DX推進にこだわるあまり、各省庁が独自に施策を打ち出し、自治体で大きな混乱を招いていることから、今後の総務省・デジタル庁における調整機能の発揮を強く求めたい。一方、埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえ、今後も深刻化が予想されるインフラ老朽化に対する財源対策についても記載されている。このような新たに生じた財政需要に対し、速やかな対応を実施することは引き続き肝要である。
5.プライマリーバランスの黒字化については、前年の「骨太方針2024」に記載された、「国・地方を合わせて2025年度での達成をめざす」という方針が後退し、先送りとされたことには各方面からも不安の声が寄せられている。国際情勢が不安定であり、新興感染症の発生なども懸念すれば、有事に耐えうる規律ある財政運営が求められるが、この間見られた巨額な補正予算の編成や防衛費の大幅な伸びなどがそれを阻害している。引き続き、プライマリーバランスの早期黒字化が求められる。
6.GXの推進においては、前年に続き、原子力の活用が強く打ち出されている。しかし、安全性や放射性廃棄物などの課題を解決しないままの原発再稼働は、地球環境また将来世代に対し、あまりに無責任である。原子力に依存しないエネルギー政策への転換と、地域における雇用のあり方も含めた「公正な移行」の必要性も指摘しておきたい。
7.「骨太方針2025」では「今日より明日はよくなる」とのスローガンが掲げられているが、自治体には昨日までの生活を明日も送れるよう保障することが求められている。DX推進にあたっても、誰一人取り残されないよう対応するのは、多くの場合、自治体であり、その自治体における人的リソースは非常に限られているのが現状である。その対策として、会計年度任用職員の処遇改善や常勤化なども示されているが、まずは自治体そして関係する労働者の声を真摯に聞くことが重要である。政府自身、地域の関係人口の拡大などにおいて、産官学金労言士の連携を求めているが、「減税より賃上げ」と称するなら、労働組合の社会的存在感を強めることこそが重要なのではないか。
夏の参議院選挙が目前に近づきつつあるが、自治労として組合員の賃金・労働条件の確保・改善はもとより、地方自治と地方財政を確立し、よりよい地域公共サービスの実現にむけ、「岸まきこ」の支持拡大と定着にむけた取り組みを強化する。