【戦後80年・連載第4回】極右の台頭食い止める 《連帯》が問われている

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【戦後80年・連載第4回】極右の台頭食い止める 《連帯》が問われている

2025/11/14

佐原 徹哉(さはら てつや)さん
1963年生まれ。明治大学教授。専門は東欧史、比較ジェノサイド研究。

戦後国際社会の『常識』であった「国際協調と人権」が、世界各地で、一国主義と外国人排斥を掲げる極右勢力の台頭によって揺さぶられている。その背景と意味するところを、明治大学の佐原徹哉教授に聞く。

 自国第一主義を唱え、自由と人権、民主主義や国際協調といったリベラルな価値観を否定し、特定の国家や民族、宗教などの特殊な価値観を絶対視する勢力が世界各地で台頭しています。ヨーロッパ諸国では中道リベラルの与党の地位を脅かしたり、与党の一角を占めている国もあります(下図参照)。アメリカのトランプ大統領も極右と言ってよいでしょう。

 
 

ネットワークから力を得ている《新しい右翼》の台頭

 新しい右翼は、古い右翼が依拠してきた伝統的な価値観、特定の地域限定の特殊な価値観だけでなく、国際的なネットワークからも力を得ているのが特徴です。資金、情報、プロパガンダのノウハウの共有ができるネットワークを持っているのです。
 この点では、ヨーロッパ極右が敵視しているイスラム過激派も同じです。現地の人たちが支持するから力を持つのではなく、外国からジハーディストを連れてくるネットワークを持っているから力があるわけです。
 極右の国際ネットワークは、グローバル資本主義と相似形を成しています。現代の資本蓄積は、国民国家の外にある国際的なネットワークを中心に行われています。極右の力も、ネットワークにあります。
 日本では7月の参議院選挙で参政党が議席を増やし注目されています。アメリカのトランプ派やドイツの極右にコンタクトしていると報じられています。しかし、9月にロシアのサンクトペテルベルグで極右の国際大会があったのですが、そこには日本からは参加していません。本格的に極右の国際的ネットワークに参加するには、まだ至っていないようです。しかし今後の動き次第で、より危険な存在になるかもしれず、注意が必要でしょう。
 
 

リベラル嫌いの極右だがグローバル資本主義とは親和的

 極右はグローバルエリートを敵視し、彼らの唱えるリベラルな価値観を敵視します。新自由主義が格差を生み出し、公共サービスを劣化させていることへの民衆の憤り、生活が破壊されることへの被害感情を汲み取り、それを外国人やイスラム教徒に向け、外国人や異教徒を許容する多文化主義を強く攻撃します。
 では、極右とリベラリズム、グローバル資本主義は相いれないのでしょうか。そうではありません。
 グローバルエリートは、自由や人権、性の多様性などといった価値観を唱えますが、これは効率よく投資をして利益を上げる政策を国民に受け入れやすくするための方便で、実際に恩恵を得られるのは一握りのエリートだけです。極右が移民排斥を唱えても、選択的な移民・難民の受け入れ政策を補強してくれるので、実は両者には親和性があるのです。
 
 
 

問われているのは《連帯》労働組合は力を持て

 問われているのは、《連帯》です。労働組合の力が弱いところでグローバル資本は利益を貪ろうとします。賃上げをたたかう原点に立ち帰ることが大事です。地域の公共サービスが劣化し、安全な生活が脅かされている今、労働組合が力を持つことなしには、未来は拓けません。
(取材:10月3日)

(機関紙じちろう2025年11月15日号より転載)

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