【戦後80年・連載第3回】平和は「願う」ものでなく「つくる」もの~平和憲法を生かした外交を、今こそ

ホーム > ニュース > 自治労全般 > 機関紙じちろう >

【戦後80年・連載第3回】平和は「願う」ものでなく「つくる」もの~平和憲法を生かした外交を、今こそ

2025/08/18

*ウクライナ現地で取材中の志葉さん

戦争と平和を考える連載の第3回では、「いま起きている戦争」を通して、日本の平和憲法と平和運動のあり方を考えてみたい。ウクライナ現地を取材したジャーナリスト・志葉玲さんに聞いた。(取材日:7月17日)

■今回話を聞いた方・・・ 志葉 玲(しば れい)さん

フリージャーナリスト。2003年3月からのイラク戦争、2006年のレバノン戦争、2014年のガザ攻撃、ウクライナ侵攻(2022年~)など紛争地取材を重ねている。環境問題にも詳しい。著書に「ウクライナ危機から問う日本と世界の平和」(あけび書房)、「13歳からの環境問題」(かもがわ出版)など。【ジャーナリスト・志葉玲さんの公式HPはこちら】

取材中の志葉さん


 直近でウクライナ現地を訪れたのは今年2月です。ほぼ毎日のようにロシアのドローンを使った空爆やミサイル攻撃がありました。最近ますます激しさを増しています。

 トランプ大統領は停戦を求めていますが、プーチンは応じるつもりはありません。彼が求めているのは、ウクライナの全面降伏です。戦争の終わりは全く見えません。


志葉さんの取材に応じた現地の高校生。戦争の中でも未来に明るい希望を抱いている。アニメや武道など日本文化に関心を持ち、日本に親しみを抱くウクライナ人は多い

「即時停戦」論はウクライナ人の主体性を無視した暴論

 日本では、リベラルと言われる知識人の中にも「とにかく即時停戦を」という意見がありますが、間違いです。「人命が第一。まず停戦」と言われると、「そうかな」と思いがちですが、ウクライナ人の主体性を無視して日本人が降伏を勧める考え方で、ロシアを利するものです。

 この戦争はロシアによるウクライナへの侵略であり、国連憲章違反です。国際社会がロシアへの圧力を強め、戦争の継続を断念させることが必要です。ロシアの撤退がないままの停戦は占領の固定化になります。

 ウクライナの人たちは、「占領は戦争より悪い」と言います。事実、ロシアに占領された東部国境地域では、住民虐殺や拷問、レイプ、拉致などの深刻な人権侵害が起きているからです。私たちは、当事者の声を聞くべきです。

ウクライナ東部 自宅が損壊した女性(志葉さん撮影)

「私たちの未来はきっと明るい」ウクライナ人の不屈の抵抗精神

「この戦争は米ロの代理戦争だ」という見方も、ウクライナ人の主体性を無視しています。2014年の「マイダン革命*(ページ下部に用語解説)」以来、ロシアは自分たちの属国だと思っていたウクライナが自立することにいら立ち、干渉してきました。ウクライナ人がロシアの侵略に抵抗するのは当然です。

 NATOの東方拡大が戦争の原因だという説もあります。しかし、それは戦争の理由の一部ではあっても、主な原因はプーチンの「ウクライナを支配下に置きたい」という意思にあるというのが、多くのウクライナの人々の見解です。

 現地でウクライナ人に会って話を聞くと、過酷な戦争の中にあるのに、意外と楽観的なのに驚きます。とくに若い人たちは「マイダン革命」で親ロ政権を倒したことを誇りにしていて、自分たちの未来に希望を持っていると言います。抑圧には抵抗する反骨精神に満ちています。

避難民の施設で(志葉さん撮影)

平和な国際秩序の維持は 日本国憲法の存立の前提

 憲法9条は「戦争放棄」を謳っていますが、このことは国連憲章や国際人道法に基づく国際秩序に日本の平和と安全が依存していることを意味しています。国際秩序を壊すロシアの蛮行は、日本の平和と安全にとっても脅威であり、平和憲法の精神と相いれないものです。

 日本の平和運動は、いかに平和をつくるかを考え、武力によらずに戦争を止める行動を起こすことが必要です。それがないと「脅威に対処するには軍事力の強化を」という主張の方が、現実的に見えてしまいます。

 日本政府はまず、サハリン島沖合で行われている石油と天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」を止め、経済制裁を徹底すべきです。そして化石燃料への依存から脱却し、再生可能エネルギーへの転換を進めることです。さらに日本は中国、インド、トルコに対し、ロシアへの制裁に加わるよう呼びかけるべきです。

 野党や労働運動・平和運動は、そうした外交努力を日本政府に対して強く求めて欲しいと思います。


*マイダン革命とは・・

2014年2月に、親ロシア派のヤヌコービッチ大統領を、EU加盟を支持する市民が倒した革命。「マイダン」とはウクライナ語で「広場」を意味する。首都キーウの独立広場で大規模な抗議行動が行われ、治安部隊の弾圧で多くの犠牲者が出た。


(機関紙じちろう2025年8月15日号より転載)

関連記事

  • 立憲民主党 参議院議員 岸まきこ
  • 参議院議員 えさきたかし
  • 自治労共済生協
  • 株式会社 自治労サービス
  • ろうきん

ページトップへ