2025/08/18
木村ひとみ副委員長
組合員の声こそが「力の源泉」
単組の活性化を通して強い自治労を築こう
自治労は8月25日~27日の日程で、第99回定期大会を栃木県・宇都宮市で開催し、2026-2027年度運動方針(案)を議論する。この大会で提案する方針案作成の中心的役割を担った木村ひとみ副委員長に、重点課題とポイントを聞いた。
大会のメインスローガンは、『未来を創る、仲間とともに』としました。自治労運動のすべての活動の基盤、力の源泉は「職場の声」であること、単組の活性化を通して持続可能な組織としての自治労を強化し、未来を創るためには、仲間とのつながりが重要だという議論を、運動方針案を作成する委員会で重ねてきました。そうした問題意識と思いを表現したものです。
コロナ禍が生んだ活動停滞の「悪循環」を断ち切ろう
運動方針(案)では、重点課題を3つ設定しています。
まずは「すべての職場の仲間の自治労結集と単組活動の活性化を通した組織の強化・拡大、それを支える体制・運動の見直し」です。
自治労の現状は、新規採用職員をはじめ、会計年度任用職員や高年齢層職員の加入率が低迷を続け、組合員数の減少に歯止めがかかっていません。組織強化・拡大はすべての取り組みの基盤となるものです。運動方針(案)の構成では、「運動の強化と持続可能な組織づくり」として、各課題のトップに位置付けました。
コロナ禍によって、対面での単組活動ができない期間が4年近く続きました。その間に執行部の交代などがあったために、運動経験の継承が途絶えてしまい、「活動しない」「要求・交渉しない」ことが常態化してしまった単組があります。コロナで傷んだ単組活動は、単年度で回復できるものではないと思います。
他方で、ウェブなどを活用することで組合員の活動参加の方法を広げた単組、新規採用職員の加入促進の新しい活動手法を見出した単組など、優れた活動の報告も聞いています。単組の活動が、停滞・空洞化したところと活性化したところとに、二極化していると思います。
組合活動が低調になれば、執行部と組合員の関係性が薄れ、組合の存在意義が見えにくくなります。そして、組合員の参加がますます得られなくなり、組合員数が減って財政も活動もさらに縮小するという、悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切り、組合員との日常的なコミュニケーションを通して、組合への信頼と共感を高めるよう、「単組の活性化」を進めることが必要です。
そのためには、県本部が単組と向き合い、伴走しながら単組を支援することが必要になります。それが可能となるよう、本部は県本部に対して必要な支援を行い、連携を強めることで、県本部が本部と単組をつなぐ「要」の役割を果たせるよう、体制を整備したいと考えています。
すべての単組で「要求・交渉」を。産別統一闘争を前進させよう
2点目は「賃金・労働条件の改善の要求・交渉の徹底」です。労使交渉で自主的な全世代の賃金底上げをめざすとともに、会計年度任用職員や再任用・再雇用職員などの処遇改善、格差是正を進めます。
特に強調しているのは、「要求-交渉-妥結-書面化(協約化)」の交渉サイクルを単組で定着させることです。
こうした、要求・交渉の力の源泉は、多くの組合員が結集していることです。単組の組合員の参画を基礎に、県本部はきめ細かいオルグと支援で単組を支えます。そして本部はこうした県本部の取り組みを支援することで、自治労全体での産別統一闘争を前進させます。
公共サービスの充実にむけて、政治の取り組みを強化しよう
3点目は、「自治労の政策実現と公共サービスの充実にむけた活動、とりわけ組織内・政策協力議員を作り、その活動を支える政治活動の強化」です。
7月20日の参議院選挙では、自治労は、比例代表候補に岸まきこ、選挙区候補に吉田ただとも(組織内/大分)、富永あけみ(組織内/佐賀)、森本しんじ(政策協力/広島)を擁立・推薦してたたかい、3人が当選しました。組合員の皆さんのご健闘に、心から感謝申し上げます。
しかし、岸まきこの得票数は、目標とした最低30万票に遠く及ばず、14万7,648票にとどまったことは、厳しく受け止めています。このことは、「組合が推薦しているから」というだけで組合員の支持を求めても、得票には結びつかないことを示しています。
日常的な単組活動を通して、組合への信頼と期待を作り上げることが不可欠であり、その上で、組合が政治活動に取り組む意味を共有化できるよう、取り組みを進めたいと考えています。
カーボンニュートラルの実現/SNSと人権の課題を強調
また今回、政策課題では新たに強調した課題があります。
ひとつは、「地域からのカーボンニュートラルの取り組み」の優先順位を上げて方針(案)に記載しました。地球温暖化の危機は誰しもが実感しているはずですし、自治体でも温室効果ガスの排出削減の取り組みを強めています。化石燃料にも核エネルギーにも依存しない、地域分散型再生可能エネルギーへの転換をめざします。
カーボンニュートラルに伴って産業の転換が行われる場合、雇用や地域経済に否定的な影響が生じないよう、「公正な移行」を求めることが重要です。北海道の夕張市は、炭鉱の閉山で地域経済が衰退し、地方財政危機に陥りました。夕張を経験している自治労だからこそ、このような事態を回避する施策を、労働組合として関係省庁や経済界に求めていきます。
2点目には、先の参議院選挙でも問題になった、SNSを通した差別・デマの拡散、排外主義の扇動について強い危機感を持ち、対策を求める考えを打ち出しています。
SNSの普及により偽・誤情報、誹謗中傷が容易に拡散され、人権侵害につながる恐れがあります。表現の自由を確保しつつ、実効性のある法整備やファクトチェック体制の強化などの対応を求めます。
自治労を取り巻く環境は厳しく、課題は山積しています。大会では、出席される多くの組合員の皆さんから、現場の視点からの率直なご意見をお聞かせいただき、方針案を豊富化したいと思います。
皆さんの声こそ、自治労の未来を創る、知恵と力の源泉です。
(機関紙じちろう2025年8月15日号より転載)