2025/05/16
今年は「戦後80年」。ウクライナやパレスチナなど、今も戦火は止まず、東アジアでも軍事的緊張が高まる。『戦争と平和』を改めて問う連載の第1回目は《沖縄》。基地と性暴力の問題に取り組む崎浜空音さんに聞いた。
■今回話を聞いた方・・・崎浜 空音(さきはま・そらね) さん
2002年沖縄県北谷町生まれ。慶応大学4年生。2024年12月の「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」で若者代表として発言し注目を集める。東京でも日米地位協定改正などを訴えて活動中。
「問題を見ない自分」への気づき
米軍・嘉手納基地のある北谷町の出身です。子どもの頃から基地は身近な存在で、基地の騒音で学校の授業が中断することがありました。
2016年にうるま市の女性が米兵に暴行され殺害される事件があり、大規模な抗議集会が開かれました。中学生の私は両親と一緒に参加しました。でも自分は基地のことをよくわかっていなかったので、基地の問題を勉強し始めました。その後、留学先のフランスでさまざまな運動を目にし、自分が「目の前で起きていることを見ないようにしていた」ことに気がつきました。「自分の目の前のことをやろう」と決意し、帰国後は高校の生徒会活動で制服の自由化などに取り組みました。
「沖縄と本土」大きなギャップ
大学に進学して東京に来て、周りの友だちと話してみたら、沖縄の基地のことをあまりに知らないのに驚きました。基地は元々人が住んでいた土地を取り上げて作られたことを知らず、「沖縄に基地は必要でしょう」と言えてしまう。「琉球処分」も知らない。
「問題を見ないでいることができる自分」の「加害性」に気がつかないのです。私自身も東京にいると、沖縄では米兵の性暴力に怯える女性がいることを忘れそうになります。
子や孫に同じことは言わせない
昨年の県民大会では「子や孫に同じことは言わせない」と発言しました。私が子どもの頃に参加した集会では、「同じことを繰り返さない」と大人たちが言っていました。しかし「繰り返さない」という言葉は裏切られました。今、大人になった私は、子や孫に私と同じことを言わせたくない。私で最後にしたいです。
もう一つ、女性に対する性暴力は女性蔑視があるから起きる。米兵だけの問題ではない。沖縄だけの問題ではない、ということを強く訴えたつもりです。
私は今、本土でできる運動として「日米地位協定」の見直しを訴えています。先日、SNSで新宿でのサイレントスタンディングを呼びかけたら、40人も集まってくれました。また、地位協定見直しの自治体議会の意見採択をめざして、協力してくれる議員さんに働きかけ、佐賀県鳥栖市では成果を得ました。
私は「バタフライ・エフェクト」を信じます。一人ひとりが声をあげれば、小さい声が誰かに伝わって、大きな声になり、いつか社会を変えることができる。自分が声をあげることが誰かの幸せにつながっている。
そう思っています。
コラム:日米地位協定と米兵犯罪
新・日米安保条約第6条に基づき、1960年に日本とアメリカで署名された在日米軍に関する地位協定。
協定の第3条は、アメリカは基地について「設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」としている。また第17条5(C)は、日本で裁判を受けるべき被疑者も、アメリカが先にその身柄を拘束した場合、身柄引渡しは起訴後と定めているため不当に寛大な処分がされるなど、不平等性が指摘されている。
全国知事会は2018年に抜本見直しを提言。地方議会でも同趣旨の意見書可決が相次いでいる。2023年12月に嘉手納基地の空軍兵が16歳未満の少女に性的暴行をした事件では、政府が沖縄県に連絡しなかったことが明らかになり、大きな問題となった。
(機関紙じちろう2025年5月15日号より転載)