2025/07/11
広島・長崎への原爆投下から80年。また「あの日」を振り返る夏が巡り来る。特別企画の連載第2回は、歴史に向き合い「ヒロシマのこころ」をつなぐ「被爆体験伝承者」の活動について、楠本昭夫さんに話を聞いた。
■今回話を聞いた方・・・楠本 昭夫 さん
1959年、広島県呉市生まれ。元県立高校の社会科教員。広島県被団協「被爆を語り継ぐ会」で、平和公園碑巡りガイドを行う。被爆者・切明千枝子さんの被爆体験伝承者として広島市から委嘱され、2023年4月から被爆体験伝承講話を行っている。
広島県原爆被害者団体協議会(広島被団協)の「被爆を語り継ぐ会」のメンバーとして、平和公園での碑巡りガイドをしています。また、広島市から委嘱された「被爆体験伝承者」として、切明千枝子さんの被爆体験伝承講話を行っています。
平和求める「ヒロシマのこころ」世界に伝える被爆体験伝承者に
私は県立高校の社会科の教員でした。生徒たちに日本史、世界史などを教え、また日教組の組合員として労働組合の平和運動に参加してきました。退職後に、広島に生まれ育った者、社会科の教員であった者として、被爆の実相と平和の尊さを伝える活動に参加したいと思い、平和公園のガイドをしてきました。
広島平和文化センターの被爆体験伝承者研修生になったのは2019年です。「ヒロシマのこころ」を直接私の言葉で外国の人にも伝え、交流したいと思ったのが応募の動機です。
「伝承者」になるには、3年間の研修を受ける必要がありました。多くの方の被爆体験を、何度も詳細に聞いた上で、特定の被爆者の体験を原稿化しセンターの指導を受け、認定されると、「伝承者」として委嘱を受け、講話を行うことになります。広島県外の人でも「被爆体験伝承者」に応募できます。
現在、日本語での伝承者は約300人、そのうち英語での伝承者は30人います。私は英語での伝承者でもあります。定時講話は1回約1時間で1日4回。日本語の講話は2ヵ月に1回、英語講話は月1~2回くらいです。全国への派遣講話も無料で行っています。
《歴史》と向き合うことを通して《未来》を見つめるきっかけに
歴史と向き合うことの意味を考えるとき、私は高校時代の世界史の先生・西尾先生を思い出します。西尾先生は「君ら、なんで『8月6日』か知っとんじゃろうのう」と言いました。ヤルタ会議、ポツダム宣言、8.6広島、8.9ソ連参戦という流れの中で、「だから(原爆投下は)8月6日だった」と、大学入試の世界史には出題されない現代史を話されました。「歴史に意味のない出来事はない。すべてはその時を生きた人々の判断があり、原因があり結果があった」と。強く印象に残っています。「昔話」は「今話」「未来話」なのです。
今の若い世代が被爆者の体験を聞くことを通して、歴史に目を向け、自分の人生と未来を考えるきっかけ、世界を見つめるきっかけのひとつになればと思って活動しています。
被爆地・広島はかつて軍都であり「戦争加害の廣島」でもあります。被爆者の中には韓国・朝鮮人、中国人、連合国の捕虜など外国人も多くいます。私は中国人留学生の被爆者を調査し、足跡を掘り起こす活動もしてきました。戦争の被害と加害の重層性、原爆投下に至る背景にあった日本の侵略という歴史を知ることは、被爆の実相、「ヒロシマのこころ」を理解する上で必要な視点です。
全国に組織を持つ自治労が地域の平和運動で果たす役割に期待しています。8月の広島・自治労平和集会で、是非お会いしましょう。
(機関紙じちろう2025年7月15日号より転載)
【特別企画】戦後・被爆80年:自治労平和集会~被爆80年 私にできること
【日時】2025年8月6日(水) 13:00~15:00
【場所】広島市・メルパルク広島 6階「瑞雲」
【内容】◎被爆体験講話
◎トークセッション
・被爆体験伝承者 楠本 昭夫さん
・第24代高校生平和大使
Connect Hiroshima 代表 大内 由紀子さん
・原水禁 事務局長 谷 雅志さん
原水禁世界大会・広島に参加している自治労組合員はお集まりください。