地方の実態と自主性を尊重した給与制度を求める署名~要請事項の解説~

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地方の実態と自主性を尊重した給与制度を求める署名~要請事項の解説~

2024/03/27

 自治労は3月27日に開催した臨時拡大県本部労働条件担当者会議において、総務省要請の署名行動を行うことを確認しました。本記事は、署名についての取り組みの「目的」や、要請項目についての「内容」の解説を掲載しています。

署名に取り組む目的

 いま、自治体では、民間との人材獲得競争が激化する中、採用試験の応募者の減少や技術職員をはじめとした専門人材の不足などが大きな課題となっています。行政サービスが多様化・複雑化する中、質の高い公共サービスを提供するために人材の確保は喫緊の課題ですが、現行制度では、国家公務員の給与制度を基本とすべきとされており、人材確保・定着のために、地域の実態に応じて給与上の工夫を行うことが困難な状況にあります。
 そもそも地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づき、各自治体における労使交渉を踏まえて決定されるべきものです。
 このため、地方の実態と自主性を尊重した給与制度が実現するよう、以下の事項について総務省に求める署名に取り組みます。
※署名用紙は自治労の各県本部を通じて各組合にお届けします。組合員1人2筆以上のご協力をお願いします。

要請項目1:人事院が検討している「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の具体化にあたっては、国の制度変更に準じた扱いを自治体に求めないこと。

【解説】要請項目1

(1)人事院の「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
 人事院は、2023年人事院勧告時の公務員人事管理に関する報告の中で、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の骨格案を示し、2024年夏の勧告にむけて検討を進めるとしました。
 その内容は、①人材確保への対応として、初任給近辺の俸給月額引き上げ、係長~上席補佐層(行政職(一)3級~7級)の俸給の最低水準引き上げ、勤勉手当の成績率上限の引き上げ等、②組織パフォーマンスの向上策として、本省課室長級(行政職(一)8級以上)の俸給体系見直し、地域手当の大括り化等、③働き方の多様化への対応として、扶養手当の見直し等となっています。
 人材確保の必要性は国家公務員、地方公務員に共通する課題であり、自治労としても新規採用者、若手職員の処遇改善については必要だと認識しています。しかし一方で、一部のキャリア官僚優遇となる措置事項が多く、とりわけ中堅層以上の組合員の処遇改善にはつながっていません。また、すでにある成績優秀者への恩恵が拡大することも問題だと捉えています。
(2)地域手当について
 地域手当に関して、自治労はこの間、
①地方公務員は全国で同様の職務を行っているにも関わらず、地域手当の支給割合に0~20%もの大きな格差があること
②現行の指定基準では、一体的な生活圏を持つ近隣自治体間においても支給割合に格差があるため、人材確保に支障をきたすとともに人材流出の要因ともなっていること
について問題だとして、改善を求めてきました。
 人事院は、給与制度の見直しにあたり、現行では市町村単位で定められている地域手当の支給区分を大括り化する方向で検討していますが、大括りにして支給割合を平準化するということは、自治体によって現行の支給割合から増減が生じることになります。また、地域手当の指定基準の基礎となる賃金センサスのデータが更新されることによる影響も懸念されます。
 自治労は、地域の実情は様々であることから、国の見直し内容をそのまま地方に適用するのではなく、支給割合を地域の判断で独自に設定できるよう、総務省に求めます。
(3)勤勉手当の成績率上限の引き上げ
 今回の見直しでは、能力・実績をより反映した処遇を実現するため、人事評価で「特に優秀」とされた職員に対し、勤勉手当の上限を引き上げることができるよう検討されています。
 自治労は、一部の成績優秀者のみ処遇をあげることは、かえって組織全体のパフォーマンスを下げると考えており、導入に反対の立場で人事院に対する交渉体である公務員連絡会を通じて意見反映を行っています。
 また、たとえ国で見直しがされたとしても、総務省が自治体への導入を助言・指導することのないよう求めて取り組みます。

要請項目2:現行、給与制度については、国家公務員の給与制度を基本とすべきとされているが、地方の実態と自主性を尊重した柔軟な対応を可能とすること。 

【解説】要請項目2

 この間、給与制度(給料表の構造や手当の種類・内容等)については、国家公務員の給与制度を基本とするべきとされています。
 地域手当についても、この考え方に沿って、「国における地域手当の指定基準に基づき、支給地域及び支給割合を定めることが原則である」として助言・指導がされてきました。しかしながら、上記1.の解説で示したように、地域の実情は様々であるため、支給割合を地域の判断で設定できるような制度とすべきと考えます。
 さらに、地域手当にとどまらず、人材確保・人材流出防止のための給与上の工夫や地方公務員に特有の業務に対する手当支給など、地方の実態と自主性を尊重した柔軟な対応を可能とするよう、総務省に求めます。

要請項目3:国基準を上回る手当を支給したことによる特別交付税の減額措置については撤廃すること。

【解説】要請項目3

 特別交付税は、普通交付税では算定できない災害などの特別の財政需要に対して交付されるものです。しかし、地域手当等を国の基準より高く支給している自治体は、財政状況に余裕があると見なされ、特別交付税を減額されるというペナルティ的な措置が取られています。
 自治労は、このような措置は自治体の給与決定に対する介入・制裁であるとして、ただちに撤廃をするよう求めます。

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