2025/12/16
自治労衛生医療評議会は、12月12日から13日に「地域包括ケアシステムから考える、あなたとみんなの暮らし」をテーマに、地域保健・精神保健セミナーを東京・TOC有明にて開催した(ウェブ併用)。セミナーには、保健師や看護師など、保健衛生や医療機関で働く組合員、対面・オンラインあわせて約220人が参加した。
団塊の世代がすべて75歳以上となった2025年を迎え、地域包括ケアシステムは、高齢者にとどまらず、子どもや子育て世帯、精神障害のある人など、支援を必要とする誰もが地域で安心して暮らせる体制をめざす新たな段階に入っている。
一方、健康寿命の延伸や健康格差の縮小をめぐっては、「個人の責任か、社会の課題か」と迷う場面も少なくないのが現場実態だ。セミナーでは、地域の医療や暮らしを支える私たち自身が、地域の健康と生活を守り続けるために何ができるのかを考え合った。
基調講演では、埼玉県立大学理事長・慶応大学名誉教授の田中滋さんが、地域包括ケアを「多様性を認め合い、つながり合って共に生きる社会」と捉え、その重要性を示した。
現場報告では、山梨県本部の松木友幸さんが、メタバースを活用したひきこもり支援の取り組みを報告し、新たな支援の可能性が共有された。
2日目の分科会は、
①地域保健分科会「保健師に求められる『地域の暮らしと健康を守る』活動を考える」、
②精神保健分科会「患者への虐待と患者からの暴力を考える」、
③保健所分科会「外国人増加にともなう保健所の課題」
の3つに分かれ、現場報告や参加者同士のグループワークを通じて、課題や実践を共有した。
①地域保健分科会では、徳島県三好市議会議員の高橋玉美さんが「保健師活動を見つめなおす『地域に軸足をおいた活動から生まれるもの』」と題し、地域に根差した保健師活動のあり方について問題提起を行った。
②精神保健分科会では、小森晃議長(和歌山県本部)が「精神科看護倫理と虐待」、野田裕喜さん(福井県本部)が「精神病院における患者のスマートフォンの取り扱い」、村田竜介さん(和歌山県本部)が「患者からの暴力」について提起し、現場の実情と課題が報告された。
③保健所分科会では、兵庫県伊丹健康福祉事務所の須藤章さんから、外国人増加にともなう保健行政窓口での対応について、感染症対応の事例を交えて報告が行われた。現場で活用されている対応手引きや多言語資料を踏まえ、保健所が抱える課題について意見交換が行われた。
2日間を通じて参加者は、「地域包括ケアシステムから考える、あなたとみんなの暮らし」について、さまざまな角度から理解を深めるとともに、現場の課題を共有し、参加者同士の交流を深める貴重な機会となった。







