2025/07/23
7月20日、第27回参議院選挙の投開票が行われました。選挙結果に対する自治労見解を掲載します。
第27回参議院選挙の結果に対する見解
1.7月20日、第27回参議院議員選挙の投開票が行われ、自治労組織内の「岸まきこ」は、再度、比例代表の議席を確保することができた。まず、この間、全国各地で、「岸まきこ」をはじめ推薦候補の当選にむけ、ご奮闘いただいた全ての皆さんに深く敬意と御礼を申し上げる。
2.結果として、自民党は39議席の獲得にとどまり、公明党の8議席と合わせても、石破首相(自民党総裁)が必達目標と掲げた改選50議席に届かず、非改選を含めた参議院での過半数を下回ったことにより、衆参ともに少数与党となった。
一方、野党は、立憲民主党が22議席(選挙区15、比例7)を確保し、野党第一党の座を維持した。また、国民民主党が17議席、参政党が14議席と現有議席を大幅に増加させ、その他、日本維新の会が7議席、日本共産党が3議席、れいわ新選組が3議席、日本保守党が2議席、社会民主党が1議席、などの結果となった。
3.今回の選挙結果は、野田代表自らが評したように、まさに自民党政権に対する国民の不信・不満が明確に表れたものと言える。しかし、多党化し候補者が乱立する中、立憲民主党は選挙区での議席を増加させたが複数人区での取りこぼしも散見され、比例票も前回参議院選挙を上回ったものの相対的に見れば野党第3位の得票数であり、最終的には改選議席の維持にとどまるなど、十分な政権批判票の受け皿とはなり得ておらず、厳しい結果となった。
一方で、投票率が58.51%と前回よりも6.46ポイント上回る状況のもと、国民民主党、参政党は参議院選挙の前哨戦であった東京都議選での勢いそのままに、自民党政権への忌避感や既成政党への不信感が高まる中で、エコーチェンバーなどの問題が指摘されるSNSを有効・積極活用することによって、保守層や無党派層の支持を集め、大きく議席を伸ばす結果となった。
4.他方で、今回の選挙にあたって連合は、政権交代への確かなステップとすべく、「参議院での与党過半数割れ」も念頭に置きつつ、立憲民主党、国民民主党との間で調整を行ってきたが、選挙区によっては一定の成果はあったものの、複数人区では両党が票を奪い合い、参政党の伸長のもとで議席を失う選挙区も生ずるなど、調整力を十分発揮するには至らなかった。
また、連合の各産別が擁立した比例代表10人の候補者(立憲民主党6人、国民民主党4人)は、当選9人(立憲民主党5人、国民民主党4人)であったが、得票数が軒並み減少していることは、労働組合の相対的な力量低下、ひいては働く者の立場に立った政策の実現にむけた政治的影響力の低下が危惧される結果であることを、厳しく受け止めなければならない。
5.こうした厳しい情勢の中、「岸まきこ」は、14万7,648票の個人票を獲得し、議席を獲得することができた。選挙区では、「吉田ただとも」(組織内/大分)、「森本しんじ」(政策協力/広島)は議席を獲得し、「富永あけみ」(組織内/佐賀)は議席獲得に至らなかったものの、国政の場に組織内・政策協力議員を送り出し、自治労の政治的影響力を一定維持できたのは、ひとえに、大分、佐賀、広島をはじめ、全ての県本部・単組・組合員・退職者が、支援いただいた産別・団体の皆さんとともに、最後まで取り組みを重ねた成果である。
一方で、参議院選挙は、まさに組織力、結集力が問われる選挙戦であり、「組合員1人1票以上」との基本目標を掲げ取り組みを展開したが、最低30万票以上という獲得目標に遠く及ばず、前回参議院選挙(2022年・鬼木まこと)の約17万2千票にすら届かなかったことは厳しく受け止めなければならない。とは言え、前回の得票数を上回る結果を残した一部地域もあるなど、県本部・単組、そして組合員の精力的な取り組みにより一定の成果があったことは今後につながるものとして捉えておく必要がある。
いずれにしても、今回の結果は相対的に見れば、組合員の減少だけでなく自治労組織全体の活動力量の低下がその根本にあると指摘せざるを得ず、要求・交渉をはじめとする日頃からの基本的な組合活動なくして政治活動の推進にはつながり得ないことは明らかである。
改めて、日常の組合活動の活性化は当然ながら、組織・運動の再度の点検・強化をはかり、同時に政治闘争の重要性を自治労全体で再共有し、来たる国政選挙にむけて取り組みをスタートしていかなければならない。
6.今回の選挙では物価高対策が大きな争点となった。主要な野党も選挙戦において減税政策を掲げており、今後、減税圧力がさらに強まることも想定される。しかし、財源なき減税ポピュリズムの高まりは、国・地方の財政を棄損しかねず、とりわけ消費税減税は社会保障や生活の基盤である地域公共サービスの質の低下へとつながりかねない。そうした厳しい情勢にあることを、地域公共サービスを担う労働組合としても、改めて強く認識しなければならない。
また今回の選挙では、いわゆる外国人問題が争点化された。排外主義的な言動や、多様性を否定する動きは社会を分断するものであり看過できない。とりわけ参政党は、基本的人権などを蔑ろにした新たな憲法構想を打ち出し、核を用いた抑止力の議論にまで言及している。憲法で規定される思想の自由を否定し公務員への弾圧を強める姿勢も明らかにしており、こうした政党が国民の支持を広げていることに対し、強い危機感を抱かざるを得ない。さらに、自民党を含む憲法改正に前向きな「改憲勢力」の議席数は、非改選を合わせて憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2を維持している。参政党など、保守的・排外的な政策を掲げる政党が一定議席を増やしており、引き続き、国会での動向を注視しなければならない。
7.経済対策や社会保障制度のあり方、外的圧力が強まる防衛力強化、エネルギー政策など、国会で議論すべき取り巻く課題は山積している。衆参ともに少数与党となり、今後の国会情勢は一段と不透明感が増しており、政治情勢を踏まえれば、いつ衆議院解散・総選挙が行われてもおかしくない状況にある。また、野党間の連携も極めて不透明であり、野田代表が掲げる「野党中心の政権構想」も現時点では見通せる状況にはないが、政権交代をめざすためにも、立憲民主党には、野党第一党として、働く者・生活者の視点にたった実効性ある政策の打ち出しと国会での論戦を通じて、国民から負託に値する政党と認められるよう、国会での存在感を高めていくことを強く期待したい。
自治労としては、引き続き、組織内・協力国会議員との連携のもと、「共生と連帯に基づく持続可能な社会」の実現と地域公共サービスの維持・発展、地方自治の推進など、政策実現に改めて邁進していく。そして、改めて、「中道・リベラル」勢力の拡大にむけ、尽力していく決意であり、単組・県本部、組合員の皆さんのより一層の結集をお願いする。
2025年7月22日
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 石上 千博