2025/10/20
間隆一郎保険局長(厚生労働省)に要請書を手渡す山﨑幸治副委員長
診療報酬は、医療機関が行う診察や検査などの行為ごとに点数で定められ、2年に一度改定される。改定内容は医療機関の経営や職員の処遇に直結することから、自治労は10月16日、2026年度改定に向けた要請行動を実施した。自治労からは山﨑幸治副委員長ら5人が出席し、厚生労働省からは間隆一郎保険局長が対応した。
公立・公的病院は、感染症対応をはじめ、災害時医療、救急・周産期・小児・精神医療、さらにへき地や過疎地での医療など、採算を度外視して地域に不可欠な医療を担っている。これらの役割は、地域包括ケアの進展に伴いいっそう重要性を増している。
一方で、医療現場の人手不足は深刻化しており、処遇改善と労働環境の整備は喫緊の課題である。加えて、物価やエネルギー価格の高騰が医療機関の経営を圧迫し、地域医療の安定的な提供体制が揺らぎ始めている。
要請の冒頭、山﨑副委員長は「この2年間で赤字の拡大や人材確保の困難など、医療現場はいっそう厳しさを増している。次の報酬改定では現場の声を反映した内容を強く求めたい」とあいさつした。続いて、原尾健作衛生医療局長が以下の重点項目について説明した。
〈2026年度診療報酬改定要請 重点課題〉
■物価・エネルギー価格の高騰や賃金動向を踏まえた適切な改定内容
■医療DX推進に対する評価の新設と、サイバーセキュリティ対策への十分な評価
■医療安全と質の高い看護体制を確保するための看護職員配置基準の見直し
■看護師の夜勤回数を月8回・64時間以内とする勤務改善
■特定行為の実施体制に対する適正な評価
■病院薬剤師の不足実態を踏まえた病棟薬剤業務実施加算の見直し
医療現場の実情について、衛生医療評議会の小森晃議長は「自治労に所属する医療機関の多くは公立病院だが、人事院勧告による賃上げがあっても、経営体力が乏しく実施できない病院もある。赤字の拡大により地域の病院が減少し、安心・安全な医療の提供が困難になることで、地域の人口減少にも拍車がかかっていく」と訴えた。
原尾衛生医療局長は「医療労働者が働き続けられる処遇と環境が実現する改定を強く求める」と述べ、間保険局長は「要請項目はいずれも切実な課題として認識している。地域の病院がその役割を果たしていけるよう、今後も現場の声を伺っていきたい」と応じた。
